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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
799/856

815階 ロウニール・ローグ・ハーベス

完結まで毎日投稿致します

最後までお付き合い頂ければ幸いです

「・・・なんだと?」


《だから・・・私ごと消せばいいの。そうすれば人間や魔族の体内にある魔力が消費されれば完全に魔力は無くなる》


「人間の負の感情で魔力は生み出されるだろ?なら完全に無くなる事は・・・」


《無から有を人間が生み出せると?笑わせないで・・・無から有を生み出せるのは魔力だけ・・・負の感情で9を10にする事は可能でも0を1には出来ないわ》


つまりアネボロスを・・・今ある魔力を全て集めたウロボロスを倒せば魔力は無くなりマナも使えなくなる・・・か


《何を悩む必要が?もしかしてマナが使えなくなると不便だとか永遠に生きられなくなるのが残念・・・とか?》


「それもある」


《それ『も』?》


「魔蝕が起きなくなり魔人も誕生しなくなる・・・魔物も魔族もやがていなくなるだろう。回復魔法は惜しいがそれ以外は何とかなる・・・おそらく将来的に見れば魔力は無くなった方が人間は住みやすくなる・・・平和な世になるだろう・・・けど」


《けど?》


「誰かを犠牲にして得る平和にしては魅力を感じなくてな・・・たとえその『誰か』がお前だったとしてもな」


《・・・けど人間は何かを犠牲にして何かを得ていたんじゃない?》


「人間は、だろ?」


《アナタは違うと言うの?・・・まあ確かにアナタを人間って言うにはちょっとアレだけど》


アレって何だよアレって


「メリットデメリットを考えてメリットの方が大きければ何かを犠牲にしてでも得ようとする人間は多いかもな。けど俺は何かを得ようとして犠牲にして来たつもりはない・・・誰かを守る為なら話は別だけどな」


《魔力を無くす事はその誰かを守る事になると思わない?よく考えた方がいいわよ・・・こんなチャンス二度とないかもしれないわよ?》


「答えを変えるつもりはない・・・てか死にたいのか?」


《さあね・・・けど長く生き過ぎたし未練はないわ。アナタが望むならこの命・・・あげてもいいわ》


「・・・」


《魔物に殺された知り合いだっているでしょ?魔族に殺された人も・・・魔力に侵され魔人になった知り合いもいるはず・・・けど魔力が無くなればそれらが一切なくなるのよ?さっきアナタはフェンリルを倒した事で英雄と呼ばれていたけど本当の意味で英雄になるチャンスなの・・・魔力を消し去った者としてね》


「英雄・・・ねえ。そんなもんクソ喰らえ・・・だ?」


突然禍々しい気配を感じた


ドス黒い・・・この闇そのもののような気配・・・多分・・・


《時間切れ・・・みたいね》


「そうみたいだな・・・コイツが・・・アネボロス」


暗闇に目が慣れた訳ではない・・・それなのにはっきりとその姿が目に映る


ウロボロスと瓜二つ・・・でも感情豊かな表情を見せるウロボロスと違い完全な無表情さが禍々しさに拍車をかけていた


《随分遅かったじゃない・・・もう少し早く出て来るかと思ったのに》


《面白いことを話していたのでつい真意が知りたくなりまして遅くなってしまいました》


丁寧な口調とは裏腹に久しぶりに感じる不快感・・・ダンコ達と同化して全く感じなくなった魔力が込められた声の不快感を今更感じるなんて・・・


《面白いこと?》


《自らを犠牲にして私共々魔力を消し去るとか・・・懸念していたことが現実になっただけと捉えるべきか戯言と一笑するべきか・・・私は後者と思い聞いていましたが・・・果たしてどちらなのでしょうか?》


《前者よ。アンタが懸念していた事は現実に起きた・・・それが今の私よ》


《そうですか・・・残念です》



濃密な殺気



俺に向けられた訳ではないのに思わず椅子から立ち上がり身構えてしまう


《おや?人間とは怖がりなのですね》


身構える俺に対してまるで初めて存在に気付いたかのようにこちらを向き呟いた


無表情だからか不気味で仕方ない・・・それに声も話しているのを聞いているのとこちらに向けられるのでは雲泥の差だ・・・声を聞いただけで震えが起きるくらい嫌悪感を感じる


《座っておきなさい。人間には用はない》


ぐっ!・・・これは・・・言霊?


そうか・・・不快感や嫌悪感の正体は発する声全てが言霊と同レベルに魔力が込められているからか


《ほう?耐えますか。ならば・・・》


アネボロスがスッと手をこちらに向ける


何をしようとしているか分からないが逃げないと殺られる・・・だけどここは奴の体内みたいなもの・・・どこに逃げれば・・・


《ちょっとちょっと!私と話している途中でしょ?》


《もう終わりました。アナタは人間に感化され堕落した・・・そして我々を危険に晒したのです。生きる事は認めましょう・・・ですが邪魔する事は許しません》


堕落?それに危険に晒したって・・・どういう事だ?


《許さない?上等じゃない・・・こうなったら・・・ロウニール!やるわよ!》


「ちょ、ちょい待ち!何をする気だ?」


《さっき言ったでしょ?私が全ての魔力を掻き集めるからアナタが私にトドメを刺して!そうすれば人間は救われる!》


「話が見えないって!魔力があったって普通に・・・」


《・・・見つけてしまったのよ・・・ここで始末しなければ・・・》


「どういうことだよ!集めてもやらないぞ俺は・・・お前を斬らない!」


《・・・ふぅ・・・いい?聞いてロウニール。姉は知ってしまった・・・見つけてしまったのよ人間を滅ぼす方法を》


「そりゃ怖いな・・・で?その方法って?」


《・・・姉はこれまで魔力となり人間を魔人に変えていった・・・魔人になれば自制を失い凶暴になる・・・その理由は体内にある魔力がそうさせているのだけど・・・》


「それくらい知っている。それが人間を滅ぼす方法って言いたいのか?」


《違う・・・自制を失わなかった人間がいるでしょ?姉はその人間を知ってしまった・・・見つけてしまった・・・》


「・・・自制を失わなかったって・・・レオンの事か?」


魔人になっても魂を失わず正気を保っていたレオン・・・俺が新たに核を作ってぶち込んでおいたら正気に戻ったみたいだけど・・・そう言えばなんでレオンだけ魂が残ってたんだ?他の魔人はすぐに追い出されてたのに・・・


《・・・核を壊され魔力に侵蝕されたらどんな魂でも逃れようとその体を捨て輪廻の部屋に向かうか消滅してしまう・・・けど唯一魔力に・・・姉の魔力に馴染む魂があるの・・・それが私の子の魂よ》


「へぇ・・・ってお前・・・人妻だったのか!?」


《・・・人妻って・・・》


「いや、言い方はこの際どうでもいいだろ?てかそれじゃあレオンはお前の・・・」


《そう・・・人間とも魔族とも違う・・・私が創ったものよ》


レオンが・・・ウロボロスが創った人間・・・


《私はあくまで傍観者・・・けど直接ではないけど暇になりそうだったら種を蒔くの・・・その種がどんな花を咲かせるか分からない・・・普通の人間として一生を終えるか自分の力に気付き世に名を残すか・・・彼は途中まで綺麗な花を咲かせようとしていた・・・アナタに踏み潰されるまではね》


「待て待てちょっと待て・・・理解が追いつかない・・・仮にそうだとしてもどうして今まで・・・それとなんでそれが人間が滅ぼす方法に繋がるんだ?」


《核で魔力をマナに変えるから気付かれなかったの。けどフェンリルに核を破壊され姉はその存在に気付いた・・・彼を支配すれば姉は肉体を得る・・・私という邪魔な存在のいない純粋に姉だけの肉体を、ね》


ふたつでひとつ・・・2人で1人だったウロボロスが2人になる・・・1人は『再生』・・・『創造』のウロボロス・・・となるともう1人は・・・


「・・・『破壊』のウロボロス?」


《正解・・・姉は私と正反対の力・・・『破壊』を司る・・・だから肉体を作る事が出来ず他人を支配する事しか出来なかった。けど人間は魂が逃げ出し自制を失うし魔族はフェンリルみたいに抵抗する・・・完全に支配出来なければ姉の理想とする世界は構築出来ずただ人間を滅ぼすだけに終わってしまう・・・けど彼なら・・・思い通りに操る事が出来るの・・・私の創った彼ならね》


「・・・アネボロスの理想ってのは?」


《全ての人間の魔人化・・・ただ魔力を吐き出すだけの存在にすることよ》


「・・・」


《そこに魔族もいなければ魔物もいない・・・他の動物も存在しなくなるでしょうね。草木は枯れて大地は腐敗する・・・そんな中で魔人が魔力を吐き出す世界・・・それが彼女の求める世界よ》


「・・・趣味悪いな」


《でしょ?暇もいいとこだわそんな世界・・・ただ食っちゃ寝したいだけなのよ・・・堕落したのはどっちだか》


「・・・で?俺はどうすればいい?レオンを守ればいいのか?」


《無理よ。フェンリルのお陰で一時的に実体化しているだけだけど姉を止める術はないわ・・・実体化が解ける前に彼女はレオンを手に入れてしまうでしょうね・・・だけどただひとつだけ方法がある》


「それがさっきの方法か」


《その通り・・・それ以外に方法はないわ。たとえアナタがこの場で姉を倒せたとしても姉は知ってしまった・・・多分どんな手を使ってでもレオンを手に入れようとするでしょうね》


「なるほど・・・これまでよくバレなかったな・・・レオン以外にもいたんだろ?」


《ええ・・・実際ドキドキだったし・・・良い暇潰しになったわ》


「この諸悪の根源が」


《テヘ》


無性に殴ってやりたい・・・なにが『テヘ』だ


と、今はウロボロスを責めている場合じゃないか・・・選択肢はふたつ・・・ひとつはウロボロスに魔力を集めさせウロボロスごと消し去る・・・もうひとつはここで俺がアネボロスを倒して今後レオンをアネボロスから守る・・・


《あ、ひとつ言い忘れてたわ。アナタの両手に宿ったインキュバスとアバドンの力は一時的なものよ・・・しばらくしたら2人の魂は消え二度と使えなくなるから決断は慎重にね》


「・・・お前・・・今言うか普通?」


《今言わないでいつ言うのよ・・・だから言ったでしょ?こんなチャンス二度とないかもしれないって》


クソッ・・・なら選択肢はないってことか?この力を失えばレオンを守ることは出来ないかもしれない・・・そうなればレオンは支配されて人間は魔人化して・・・でもだからと言ってウロボロスを?・・・



〘悩んでも仕方あるまい。どうせ答えは出ているのだろう?〙


インキュバス!?


〘ウロボロスの言うように我らはしばらくしたら消える・・・悩んでいる暇なぞないぞ?〙


アバドンまで


んにゃろ・・・他人事だと思って・・・まあ答えは出てるし悩んでも仕方ない、か



《ようやく決心が着いた?なら・・・》


「ああ」


俺が返事をするとウロボロスは微笑み振り返るとアネボロスと対峙する


《待たせたわね。久しぶりに姉妹仲良く遊びましょ》


《・・・愚かな・・・》


アネボロスは一言そう呟く・・・全部聞いていたはずなのに逃げようとも足掻こうともしない・・・もしかして何か秘策でもあるのか?・・・まあどうでもいいか


「何やってんだ?退いてろ」


《っ!ちょっとロウニール!!》


アネボロスと対峙するウロボロスを押し退け前に出る


うーん怖い・・・マジでチビりそうだ


《ロウニール!バカな事は考えないで!全て失う事になるのよ!?仲間も知り合いも・・・サラだって産まれたばかりの子だって・・・》


「だからだよ」


《は?》


「子に誇れる親にならないとな・・・誰かを犠牲にして世界を救いました・・・なんて言えねえだろ?」


《だからって・・・》


「安心しろ・・・俺を誰だと思ってる?俺はロウニール・・・ロウニール・ローグ・ハーベスだ──────」

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