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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
797/856

813階 フラグ

結構近付いたのにフェンリルはまだ目の焦点が合っていなかった


このままだとぶつかるぞ?いい加減目を覚ませよな


《・・・はっ!?き、貴様何をした!!》


「良かったぶつかる前に気付いてくれて。危うく熱い抱擁をしてしまうところだったよ」


すぐ目の前まで来てようやく目の焦点が合い俺に気付いて喚くフェンリル・・・あっ・・・どうせなら二三発殴っておけば良かった


《答えろ・・・何をした!》


「『零』を使った・・・それだけだ」


《なに?・・・先程までは出来なかったはずだ・・・出来ていたのならゲートなど使わずに・・・》


「出来るようになったんだよ・・・てかそもそも敵に『今の技どうやったんですか?』て聞いて答えてもらえるとでも思っているのか?そんな事ばっかり言ってると今後お前みたいに敵なのに色々と聞いてくる奴を『頭フェンリルか?』って言っちゃうぞ?」


《・・・人間・・・何故貴様はワシを怒らせようとする?》


「頭フェンリルか?」


《人間!!》


怒ったフェンリルが攻撃して来たが・・・さっきよりも大振りで単調な攻撃・・・躱すのなんて造作もない


まあ当たったら死ぬのは相変わらずだけど


《喋らぬのなら貴様を魔人にし無理矢理にでも喋らせてやる!!》


「出来るもんならやってみろ・・・っと!」


諸手突き・・・と言うより両手で襲い掛かって来るだけの攻撃に後ろに倒れ込みながら両膝で腕を蹴り上げる


そしてそのまま体を回転させ後ろ回し蹴りを放った


何だか見た事のある光景だ・・・そういやさっきもこめかみに当てたっけ


さっきと同じで全然効いてない様子・・・万能感があって負ける気はしないけど身体能力が上がった訳じゃないんだな


となるとあの技に頼るしか・・・でもまだ早い・・・何とかして・・・


《・・・アレは危険だがそれだけのようだな》


俺の思いとは裏腹に冷静さを取り戻しつつあるフェンリル


何とか怒らせないといけないのに・・・それとも別の感情で?・・・いや、怒り以外は無理か・・・


「犬にしては強いじゃないか」


《まだ言うか!!》


まだ足りない・・・もっと・・・何か逆鱗に触れるようなセリフは・・・


「そう言えばお前・・・人間の事好きだろ?」


《・・・は?》


何となく言ってみた・・・いや、何となくそうかなって思ってたりもした・・・だがまさか・・・


《・・・その口・・・二度と開かぬようにしてやる!!》


図星かよ!


「チィ!」


怒りの影響か人間の姿だったフェンリルは半分くらい狼になる。名付けて狼人間・・・って言ってる場合じゃない!


大雑把な攻撃は相変わらずだが鋭さが増した・・・おそらく威力も上がっているだろう。こっちの攻撃は通じないしいつまでも躱せるとは限らない・・・もう少し・・・もう少しだと思うのだけど・・・


《ちょこまかと!・・・ワシが人間が好きとかほざいていたな・・・逃げ回る貴様に証明してやろう・・・それが全くのデタラメだ、と》


フェンリルは口を大きく歪め不気味な笑みを見せるとある方向に走り出した


その方向は・・・


「んなろ!ゲー・・・」


フェンリルが向かった先は街の人達がいる方向・・・すぐにゲートを開き先回りしようとしたがフェンリルは走りながら狼の姿になり俺の視界を塞いだ


間に入ろうとしたのにこれじゃ見えない・・・かと言って横にゲートを繋いでも間に合わない・・・クソッ!


《そこで指を咥えて見ていろ!ワシが人間共を喰らう姿をなっブッ!?》


急にフェンリルの頭付近が沈み走っていた勢いも合わせて地面に激突する。これは・・・


「貴方みたいな三下が考えそうな事は分かるの・・・いつも見てたから」


シーリス!良くやった!そのいつも見てた三下が誰だか知らんけど!!


《人間~貴様ぁ!!》


フェンリルはシーリスの魔法で躓き倒れ、起き上がると今度はターゲットをシーリスに移す


その時フェンリルの怒りは頂点に達していた・・・そうこれを待っていた


「ゲート!!」


すぐにフェンリルとシーリスの間にゲートを繋ぎフェンリルの前に躍り出るとイメージする


右手には一番目であり綺麗好きなスラミ剣、左手には俺の影であり陰ながら支えてくれたシャドウセンジュ剣・・・二本の剣に創造と破壊の力を流し込む


《邪魔だ!どけ!!ロウニール!!!》


「手間取らせやがって・・・『お前』を待っていた!!」


魔力に支配されている『魔帝』フェンリルじゃない・・・感情剥き出しの『幻影』のフェンリル・・・お前を討たなきゃ意味が無い


苦労したんだ・・・次会った時は懐いてくれよ?


《ロウニールゥ!!》


完全に標的は俺に移り怒りのまま大きな口を開け襲い来るフェンリル


俺はそのフェンリルに対し飛び上がると両手に持った剣を振り目の前で交差させた


「これで終わりだ!・・・『零』」


スラミ剣とシャドウセンジュ剣・・・創造と破壊が交差し『無』を創り出す。膨大な魔力すらも消し去る『無』は一筋の闇となりフェンリルを貫く


《ガッ・・・ま、まだだ・・・こんなもので・・・》


「いや終わりだ・・・その闇は全てを喰らう」


《な・・・クガアアァァァ!!!》


フェンリルを貫いた闇・・・『零』が蝕み始める。するとフェンリルは叫び空に向かって魔力を放出し始めた


しばらく放出が続くと巨大な狼だったフェンリルは縮んでしまいその辺にいる普通の犬くらいになっしまった


《・・・何を・・・した・・・》


「何ってお前の存在を『無』にした。創造と破壊の力を使ってな。あ、安心しろ・・・魂までは『無』にしてないから輪廻転生は出来るぞ」


《・・・存在・・・を・・・》


「あー、それと悪かったな・・・怒らせたのには理由があって・・・とりあえずすまなかった」


《・・・?・・・》


「魔力に支配されかかってただろ?あれって肉体を支配されると言うより魂を支配されるみたいでさ・・・魔力に完全に支配された魂は輪廻から外れる・・・そのままだと輪廻の部屋にいる魂まで魔力に侵蝕されちゃうから・・・だから引っペがす必要があったんだ。魔力の支配からお前をな」


《・・・なぜ・・・そこまで・・・》


「ん?・・・まあ別に魔力ごとお前を『無』にしても良かったんだけど・・・何となく境遇が似てるって言ったろ?俺と。だから放っておけなくて・・・」


《・・・》


納得したのかただ弱っているだけなのか険しい表情から穏やかな表情へと変わっていく


《・・・フン・・・もし輪廻転生したとしても・・・貴様の仲間になぞならぬぞ・・・また同じように・・・》


「いや仲間にならなくてもいいから・・・飼わせてくれ」


《?・・・飼わ・・・》


「ペット欲しかったんだよね・・・犬の」


《・・・》


あれ?・・・殺気?


《・・・くたばれロウニール》


そう言うと両方の前足の中指を立ててフェンリルは力尽きた


どこで覚えたんだその仕草・・・これは躾が必要だな


「バカ兄貴!」


フェンリルが倒れたのを見てシーリスが駆け寄って来る。さっきまで『お兄ちゃん』と呼ばれていたような気がするけど・・・気のせいか?


「・・・助かったよ。間に合わないところだった」


「もっと感謝しなさい・・・どうせああいう行動に出ると思ってたのよ・・・だから『グラビティ』を準備してて・・・まあ効くかどうか分からなかったけどフェンリルに掛けると言うよりフェンリルの鼻先に狙いを定めて掛けたら効くかなって・・・」


「よくまあ当てられたもんだ・・・てかそう言えば何て言って連れて来たんだ?まさか『犠牲になってくれ』じゃないよな?」


「・・・えっと・・・そ、そんな事より倒したんだよね?まさか復活するとか・・・」


「英雄の誕生だ!!」


誰かが叫びシーリスの心配をよそに街の人達が歓声を上げる。そして遠くにいたスウ達がこちらに駆け寄って来るのも見えた


「英雄?」


「い、いいじゃない・・・それより本当の本当に・・・」


「ナイスフラグ」


「へ?・・・っ!?ちょっと何すん・・・」


そろそろ来る頃だと思い、巻き込まれないようシーリスを突き飛ばした


「っ!!お兄ちゃん!!」


一瞬で俺の視界は真っ暗になる


ふむ・・・やっぱりちゃんと言えるじゃないか・・・『お兄ちゃん』と──────






「な、何が起きたんだ!シーリス!!」


「・・・突然上から黒い・・・大きな蛇のようなものが現れて・・・お兄ちゃんを飲み込んで・・・」


「それは見ていた!アレは何なのだと聞いているのだ!」


「分からない・・・分からないわよ!」


駆け付けたスウ達は呆然と立ち尽くすシーリスに尋ねるが首を振り取り乱すばかりだった


「ディーンよ・・・アレはフェンリルだと思うか?」


「多分・・・違うかと」


スウの言う『アレ』とはシーリスが言っていたロウニールを飲み込んだ巨大な黒い蛇・・・ロウニールを飲み込んでからは少し離れた場所でとぐろを巻き微動だにしていなかった


「狼の次は蛇か・・・しかも見上げる程に大きいと来たものだ・・・これは骨が折れるね」


「・・・何をするつもりだレオン」


「何って・・・腹をかっさばいてロウニール君を救わないとだろ?それとも消化を待ってるつもりかな?」


「そうですね・・・それしかありませんね」


剣を抜き黒蛇に向かうレオンに追従しディーンも剣を抜き歩き出す


《ワタクシにもあの蛇の正体は分かりませんが・・・やるなら急いだ方が良さそうですね》


「レオン!ディーン・・・それにベルフェゴールまで・・・くっ!」


スウは止めようと手を伸ばすがその手を握り止めるのをやめた。どうせ止めても3人は行くだろうという思いとロウニールを救出しなくてはという思いがそうさせたのだがその横をある人物が通り過ぎ3人に声を掛ける


《やめときなさい・・・フェンリルにすら届かなかったのにアレに貴方達が届くわけないでしょ?》


その人物はウロボロス


先程まで姿を消していたのに再びスウ達の前に姿を現し3人を止める


《・・・アナタは御存知のようですね・・・アレを》


ベルフェゴールが立ち止まって振り向き尋ねるとウロボロスは肩を竦め笑みを見せる


《ええ、知っているわ。誰よりも深く》


《そうですか・・・時間があれば聞きたいところですが今は聞く時間がありません・・・止める理由が『敵わない』だけでしたら止まるつもりはありませんが・・・他にありますか?》


《あるわ。私が行く》


《・・・》


その場にいる全員が驚きウロボロスを見つめる


『再生』のウロボロス・・・何度も戦場に姿を現しているが未だ謎の多い魔族であり本人が戦っている姿を見た者はいない。ほとんどの者がパーティー内のヒーラーのように後方支援しか出来ないと思っていたから『私が行く』と聞いて驚いた


《・・・何かの冗談ですか?》


《冗談じゃないわ、本気よ。て言うか私以外じゃ傷一つ付けられない・・・魔力は吸収しマナはこの大陸中にいる全ての人間を集めたとしても足りないはずよ・・・アレは意志を持った魔力の塊なのだから》


《・・・意志を持った・・・魔力の塊・・・》


《そう。フェンリルの中に居たのにロウニールがわざわざフェンリルと分離させちゃったの・・・あのまま消しちゃえば良かったのに・・・本当手間のかかる・・・》


ブツクサと文句を言いながらウロボロスは歩き出しベルフェゴール、そしてレオンとディーンの横を通り過ぎ黒き巨大な蛇へと突き進む


その後ろ姿を見てベルフェゴールは口を開いた


《・・・ロウニール様は・・・》


《無事よ・・・多分ね。大丈夫・・・彼は・・・彼だけは必ず助けるわ・・・だって・・・大事な『暇潰し』だし、ね──────》

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