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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
77/856

74階 28階

「それでお金と人の管理が出来る人を・・・ああ、美味しい・・・探していたんですね」


領主のメイド、ジェファーは近くにある小洒落た店に私達を誘導するとテーブルに着くや否やパフェなるものを頼んだ。テーブルに置かれていたメニューを開き値段を確認すると『パフェ50ゴールド』と書かれていた


50・・・ダンジョン亭で腹一杯飯が食えるぞ?


「ああ・・・私の予想ではこの街はもっと栄える・・・それこそアケーナと同じくらいに・・・。それに合わせて冒険者の数も増えるはずだ。その頃にはいくつか組合も増えていると思うが古参の組合は人が入りやすい・・・新規の組合と比べて信用度が違うからな」


「・・・そうなる前に会計役を決めておこうと・・・でも今の規模で給金は出せるのですか?さすがに無償奉仕は・・・」


パフェを食べる手を一旦止めて私を見る目は鋭い。あながちロウニールの言ったことは間違いではないのかもしれないな・・・交渉する時の商人の目だ


「無論給金は出すつもりでいる。今の給金はいくら貰っているか知らないが5000・・・能力に応じて増やすか減らすかするかもしれないが、な」


「5000!?・・・あ、いえ・・・資金管理と組合員の管理・・・その他にもあるのですか?」


「主にそれだけだ。他に雑用を頼む機会もあるかもしれないがな」


「・・・受けます」


「そ、そうか・・・私としては受けてくれてありがたいのだが・・・もう少し考えてもいいのだぞ?」


「・・・今更条件を変えたりしませんよね?」


「どういう意味だ?」


「そのままの意味です」


特段多く出しているつもりもないし、今働いている所を辞めさせてやってもらう訳だし・・・まあ能力が低ければ辞めてもらうかもしれないが・・・


「変えるつもりはない」


私が答えるとジェファーは堰を切ったように今の状況を話し始めた



どうやら街の経営が思わしくないらしい


村から街になる際に国へ支払うお金があるらしくフリップから聞いたその額は100万ゴールドだったはず


そこで領主は徹底的に経費を削減・・・つまり人員整理を始めたらしい。その中にはメイドであるジェファーも入っている可能性があるのだとか・・・なるほどな


「今回の提案は渡りに船だったって訳か」


「はい。父と母はそれなりの要職の為に辞めさせられる事はないと思いますけど私は・・・」


ふむ・・・街に入って来る人の集計をしていたと聞くしメイドになる前は雑貨屋でお金の管理もしていたと・・・それならば組合の管理もすぐに覚えられそうだな


しかも頭もそこそこキレるみたいだ


先に条件を聞き出し自分の不利になる材料は話さなかった・・・別に私も聞かなかったしな。変更しないと分かってから素直に話す分信頼も出来そうだし・・・


「本来なら先に伝えておかないといけなかったが冒険者ギルドの2階に空き部屋があってそこを使ってもらう予定だ。ギルド長の承諾は得ているがもしそれが嫌ならギルドの近くに引っ越して・・・」


「住みます!むしろ住ませてください!今の仕事も住み込みでして住む場所はどうしようか考えてたところです・・・もはや天運と言ってもいい・・・ロウニール・・・私を推薦してくれてありがとう!」


「え?はあ・・・」


どうやら組合の方は何とかなりそうだな・・・後は28階を調査して夜には・・・


「・・・あのぉ・・・サラさ・・・師匠?何か悪巧みでもしてます?ジェファーさんが師匠の顔を見て引いてますが・・・」


ハッ!夜になったらローグに連絡出来るって考えたらつい・・・ていうかなんで私の顔を見て引くんだ?顔に出てたとしても幸せそうな顔をしていたはずなのに──────




あれから2人と別れてダンジョンに来た


27階・・・その先に出現した28階に行く為に


「実戦で使うのは初めてか・・・ここで使うのは少し勿体ないな」


27階は何度も来ている。ローグから貰った装備をここで初めて使わず初めて訪れる28階で使う事にした


ここの魔物なら・・・


両足をマナで強化する


最奥への道順も覚えているから迷うことなく最短距離で行けるはず・・・後は道中に現れる魔物を如何に避けられるかだな


「よし・・・行くか!」


普段は遭遇した魔物は必ず倒して来た。だが今回の目的はあくまでも28階。27階で時間をかけている暇はない


走り出すといきなり魔物が現れるが床を蹴り速度を上げると攻撃される前に通り過ぎる。その後も同様に魔物が現れてもこちらからは一切攻撃せず走り続け最短で27階の最奥であり28階の入口へと到達した


さすがに全力疾走を続けた為か息があがる・・・呼吸を整えながら階段を降り、いざ28階に辿り着くと言葉を失った


「・・・・・・これは・・・・・・」


ケン達からあまり詳しく聞かなかったが何となく想像はしていた。壁に囲まれていて無機質な雰囲気のフロアとは違い木や草が生い茂る外と見紛う程自然に溢れているフロア・・・だが想像していたものよりもかなり自然に近い・・・確かにこれは・・・外だ


「妙に階段が長いとは思っていたがこれ程とはな・・・地面も土か・・・しかもかなり深い・・・もしやずっと下まで土・・・いや、それはないか」


地面の土に指を入れてみると本物の土と差程変わらない・・・もしかしたら本物なのか?それともやっぱり作り物?


前にこの階と同じようなフロアを経験した時は深くは考えなかった。一緒に居た冒険者にこういった場所もあると得意げに語られて聞き流してたからという理由もあるが・・・よく考えてみるとこれ程のものを生み出せるダンジョンとは何なのだろうか・・・魔物という生物を生み出すだけでも驚嘆に値するがこうやって土や木々・・・草までも・・・もしや作り出しているのは・・・神?


・・・何を考えているのだか・・・確か国にはダンジョンを解明しようとしている研究者がいるとか・・・考察はその辺の者に任せて私はダンジョンの調査に勤しむ事にしよう


風魔法を使いフロアの隅々まで調べ尽くす


かなり広い・・・大きな森がスッポリダンジョンの階層に収まった感じ・・・魔物は・・・なるほど・・・!?


一体だけ場違いな魔物がいる・・・徘徊するものの可能性が高いな。これは組合員には伝えておかないと・・・


「!」


徘徊するものと思われる魔物に近付こうとした時、空から私を見下ろす存在がいた


さっきまで結構離れていたと思ったが・・・やはり空を飛べるというのは便利だな・・・移動速度が半端ない


「シャープバード・・・お前から狩るか」


シャープバード・・・全てが鋭い魔物だ。嘴も翼も羽根も・・・目つきさえも


「おっと!」


攻撃手段は三つ・・・その鋭い嘴で突っつくか鋭い翼で切り付けるか・・・羽根を飛ばしてくるかの三つだ


遠近両方の攻撃手段を持つ魔物は少ない・・・しかも空を自由に飛び回るので近接アタッカーにとっては厄介極まりない魔物。下手したら空からの羽根攻撃で完封される可能性すらある。だが・・・


飛ばして来た羽根を躱し見上げると翼のない私を嘲笑うように上空を飛び回るシャープバード


「飛べはしないが相手が悪かったな・・・千牙!!」


三つ開いた状態で風牙龍扇にマナを流しシャープバードがいる方向に向けて一振・・・すると幾多の風の牙が現れシャープバードに向かっていきあっという間にズタズタに・・・避ける暇というより避けるスペースなど存在しないほどの広範囲に飛んでくれば為す術ないよな・・・かなりオーバーキルだったようだ


威力が上がったというより全くの別物と考えた方が良さそうだ・・・風牙龍扇・・・調整すれば使えるかもしれないがパーティーを組んで他の者と行動している時は考えて使わないと私以外の者を全滅させかねん


落ちて来たシャープバードの魔核を取ると腰に提げた袋に入れ徘徊するものを目指し歩く


こういう時に欲しくなるな・・・あの指輪・・・


知らなければ当然と取った魔核を持ち運ぶがあの指輪があれば持ち歩く必要がない。それどころかマナポーションや携帯食糧、水なども入れておけるし・・・今度ローグにお願いしてみるか・・・いやでも流石にそれは・・・ん?


足を止め気配を探る


どうやらこのフロアは魔物にとって色々と利点があるらしい・・・複数の魔物が木の上から私を見ているのが分かる


木を利用し姿を隠し、通り過ぎ様に飛びかかって来るつもりか・・・数は4・・・魔物はヴァイトモンキーか


あまり強い魔物ではないが群れるとそこそこ厄介だ。噛みつかれたりでもしたら怪我はどうでもいいがローグから貰った服が破ける・・・ここは慎重に


「まとめて吹き飛ばしてやろう・・・竜巻!!」


四つの開きで風牙龍扇を通じて振ると私を中心に竜巻が起こり木々を薙ぎ倒す。当然木の上にいたヴァイトモンキーは竜巻の渦に弾かれ彼方へと飛んでいってしまった・・・これは・・・魔核を回収出来ないし使い所に困るな・・・



続いて歩いて行くと今度は小さなウサギ・・・ジャンピングフットが現れた


コイツは見た目の割には凶悪だ


飛んで襲って来るのだが空中で回転したと思ったら後ろ足を巨大化させて踏みつけてくる


ウサギやラビットと名が付けられずジャンピングフットと名付けられたのもその為だ


ここは襲って来る前にまだ使ってない開きで方を付けるか・・・


「龍の(あぎと)!!」


一振で上下に風の牙が発生し獲物を喰らうが如くぶつかり合う


衝撃で目を背け収まった頃に見てみると・・・うん、何も残ってない


ふむ・・・ここを低階層と呼べるかどうか分からないが、風牙龍扇にとっては完全に低階層・・・使うに値しない魔物ばかりという事か


調整し能力を制御出来るようになるまで使うべきではないか・・・


「お前のような魔物が出て来るまでは、な。ビッグアーム」


ゴリラに取って付けたような巨大な腕・・・この広いフロアを見渡しても一体しかいないし私を見ても攻撃する素振りすら見せないのは徘徊するものの証拠・・・中級でもそこそこの強さを持つビッグアームを前に風牙龍扇をしまい構える


「一の開きは試すまでもない・・・それよりも新しいこの服を試すとしよう。さて・・・お前の破壊力とローグがくれたこの服・・・どちらが上か勝負しようじゃないか・・・なあ!ビッグアーム!──────」

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