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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
767/856

782階 決戦前夜

突入するメンバーが決まった


すぐにでも突入するかと思われたが女王陛下が明日の朝と決めたので全員がそれに従い今は体を休めている


住民の事を考えればすぐにでも突入するべきなのだが日は落ちて真っ暗になり一日走り回り体力も尽きかけていたので賢明な判断だったと思う


体を休め精神を落ち着かせるには・・・時間が必要だから・・・


「眠れないのですか?ギルド長」


沢山の人達が溢れている場所から少し離れ1人で歩いていると背後から声を掛けられた。立ち止まり振り返るとフェリスが立っておりゆっくりと近付いて来ると私の横に並んだ


「この状況で眠れる程精神的に強くないのでな・・・歩き続ければいずれ疲れ果ていやでも寝れる・・・そう考えて歩いていたのだが・・・なかなか上手くはいかないな」


半分本当で半分嘘だ


疲れる為ともうひとつ・・・覚悟を決める為だ


あの時・・・ギルドでテレサと対峙した時、私は何も出来なかった。動かないテレサに対して魔法を放てば終わってたかもしれない・・・そうしたらフリップは蹴り飛ばされなかっただろうしフェリスは危険な目に合わずに済んだ


彼女はテレサであってテレサではない・・・人を無慈悲に殺す魔人だ。決して・・・虫も殺せなかったテレサではない


なのに私は・・・


「・・・あの人はお姉ちゃんでした」


「フェリス?」


「間違いなくお姉ちゃんでした。姉妹だから・・・一番長い時間過ごしていたから分かるんです・・・中身は変わってもあの人はお姉ちゃんだって・・・」


「・・・」


「ラックスさんがお姉ちゃんの手で殺された時も・・・私はすぐに駆け寄って昔のように抱き締めて欲しいと思っていました・・・けど・・・」


「けど?」


「お姉ちゃんとギルド長・・・貴方が対峙した時、私は貴方に死んで欲しくないと思いました。たとえ貴方に・・・お姉ちゃんが殺されたとしても」


「・・・」


「ヒドイ妹ですよね・・・でもそれが私の正直な気持ちです・・・だから・・・」


「分かっている・・・もう覚悟は決まった・・・必ずテレサを助ける!魔人として生きるのではなく安らかに眠れるように!」


「いや違くて・・・その・・・」


「覚悟が決まったら眠くなって来た・・・明日は決戦・・・ちゃんと寝ないとな!助かったフェリス・・・さすがナンバーワンギルド受付嬢だ!」


私も冒険者の頃は受付嬢に勇気を貰っていたな・・・その度にテレサに嫉妬されていたが・・・懐かしいな・・・明日は久しぶりに冒険者に戻るか!


「もう!・・・でも・・・生きて戻って来て下さい・・・Aランク冒険者アーノンさん」


「ああ・・・ボスを倒してみんなで打ち上げだ!その時は朝まで飲むぞ!──────」





「ハッ、だからあのオッサンはあの歳まで独り身なんだよ」


外壁の上でアーノン達を見つめながら右手に持った酒瓶を呷るヒューイ・・・だがその酒瓶の中身は既に空になっている事に気付き、近くに置いてあったもうひとつの酒瓶に手を伸ばす・・・が


「感心しないね。出撃前に飲むなんて」


取ろうとした酒瓶を取り上げられヒューイは返せと手を招く


「気付けだよ。安心しろ・・・俺っちにとっては水みたいなもんだ・・・それとも旦那が飲む気か?将軍様よ」


酒瓶を取り上げたのはディーンだった


ディーンは取り上げた酒瓶を後ろに放り投げると遠くから割れる音がしてヒューイを絶望させる


「ああもったいねえ・・・何しやがる!魔物が酒飲んで酔っ払うと思ったか?」


「まだシラフの君に聞いておきたい事があってね・・・酒なら明日無事に終われば浴びるほど飲ませてあげるよ」


「・・・何が聞きたい?全部話したはずだぞ?」


「幻についてもう少し聞きたい。些細な事でもいいんだ」


「だからいつから幻なのかも分からないって言ってんだろ?現実に戻った時の方が違和感だらけだ・・・こんなはずじゃねえって目を疑ったよ・・・それだけ幻が現実だと思い込んでたんだ・・・てか、作戦じゃフェンリルの相手は同じ魔族のベルフェゴールって奴なんだろ?お前さんが気にする事じゃ・・・」


「ベルフェゴール殿は確かに強い。私よりも遥かに・・・だがフェンリル・・・奴はそのベルフェゴール殿より強いロウニール様を罠に嵌めた・・・もしベルフェゴール殿まで罠に嵌められたら・・・」


「次にフェンリルに挑むのはお前さんって訳か・・・まあ確かに何ヶ月も前から仕組んでいるような奴だ・・・他にも罠を張ってる可能性はあるな・・・」


「そう・・・だから万が一を考えて幻を破れる手段を考えなくてはならない。何かなかったか?現実と幻の違いなど・・・とにかくなんでもいい。きっかけさえあれば破れるかもしれない」


「・・・現実と幻の違い・・・ひとつだけあったな・・・」


「それは?」


「・・・当たり前の事だが幻の中だと俺っちの知らない事は曖昧だった。レオンをただの荷物持ちと思っていたし戦えると知らなかった・・・けどSランク冒険者のレオンと知りおそらくその後幻を見させられたんだ。んでフェンリルと戦っている最中、レオンが何をしているのか・・・どんな攻撃をしているのか理解出来なかった・・・けどフェンリルを追い詰めていた・・・俺っちの中でSランクイコール強いってイメージがそうさせていたのかもしれねえ・・・けど強さはイメージ出来ても実際の戦い方は見た事がねえからイメージ出来なかった・・・まあ幻の中じゃそれをおかしいとすら思わなかったけどな」


「・・・知らなければイメージ出来ない・・・か」


「だがぶっちゃけ幻の中だと違和感に気付けるとは思えないな。痛みもあるし感情も普通にある・・・今も幻じゃないかって思っちまうくらいだ。疑心暗鬼になったらドツボに嵌るってのは分かってるけどこればっかりはどうしようもねえ・・・これは現実だって思い込むしかねえのかもな・・・それが相手の術中だとしてもな」


「確かに幻と思いきや現実だったより現実と思いきや幻だった方がマシだね。幻と思い油断して傷を負うなんて事になれば不利になる・・・間違いなく幻であると見破れる方法があれば良いが・・・違和感か・・・」


「やめとけやめとけ・・・現実だって違和感を感じる時もある。考えるだけ無駄だ・・・いやむしろ足枷となるぞ」


「幻を防ぐ方法も破る方法もないとなると現実か幻か考えずにやるしかないって事か・・・恐ろしい相手だね・・・まだ戦って勝てない相手の方がやりようがある」


「・・・勝てない相手にゃやりようも何もねえだろ?」


「勝てなければ逃げればいい・・・そして勝てるまで実力を高めればいい・・・簡単だろ?」


「言ってろ・・・世間一般の皆様はお前さんと違うんだよ・・・ディーン将軍」


ディーンの言葉に呆れたヒューイは左腕の付け根を擦りながら空を見上げた


「なあ旦那」


「うん?」


「・・・魔人になった人間は元に戻らない・・・ってのは本当か?」


「本当だ。魔蝕の初期段階なら聖者様が核の傷を塞いで下されば何とか・・・今はヒーラーでも治せるようになったけどね。でも魔人になってしまった者は治せない・・・倒す他ないんだ」


「そっか・・・約束破っちまったな・・・何が『必ず助ける』だクソッタレ!」


「・・・魔人になった方を倒す・・・それがその方を助ける事になります・・・助けましょうその人達を」


「・・・」


様々な人達の心に闇を落とし夜は更けていった──────





アケーナダンジョン200階



「・・・あれからどれくらいの時間が経った?ゲートも使えないし出口もない・・・ダンジョンを乗っ取ってやろうとしてもそれも出来ない・・・何がどうなってんだか・・・」


フェンリルの野郎に落とされて真っ暗な部屋に閉じ込められた。ダンコ達と同化してから腹が減ったり喉が渇いたりしなくなった分、時間の経過が分かりにくくなった・・・前までなら腹の減りで時間が分かったのに


しかも真っ暗だから余計だ。もはや目を開けているのか閉じているのかも分からない


「ゲートが使えないってのは多分魔力の膜・・・結界が張られているはず・・・けど・・・」


右手に魔力を集中し真上に向かって放った


壁が破壊される音が聞こえ、これで結界も穴が空いてゲートが使えるようになるはず・・・なのに・・・


「うーん・・・ダメだ・・・もしかしてもっと大きな結界が張られているのか?でもぶっちゃけ数十階は貫くぐらいの威力で放っているはずなのに・・・」


何階まで落とされたかは分からないけど元いた180階位までなら余裕で届いているはず・・・いやもしかしたらウロボロスが嘘をついて200階以上あってかなり下まで落とされた?それか・・・


「実は上と思っている場所が上ではないとか?・・・あっ、そうだ!」


暗いなら明かりを付ければいい・・・そんな事も思い付かなかった事に恥ずかしくなりながら魔法で火を起こす


「・・・何も無い・・・いやマジで何も無い・・・上は?・・・あれは俺が空けた穴か?それとも落ちて来た穴?・・・ふ・・・ふふ・・・ふふふ・・・フェンリルゥ!いい度胸だ・・・次会ったら目ん玉ほじくり返しててめえの口の中に放り込んでやる!」


このダンジョンのマスターだかなんだか知らないがよくも俺をこんな目に・・・ん?そう言えば俺も昔サラを襲ってた奴らを同じように閉じ込めたような・・・・・・・・・まあ、それはそれこれはこれだ


とにかくこの四方を壁に囲まれた部屋から脱出しないと話にならない。スミ達が簡単にやられるとは思わないが相手は魔族・・・おそらく全員で掛かっても厳しい戦いになるだろう


けどどうやったら脱出出来る?・・・このダンジョンを上書きしてみるか?フェンリルのダンジョンから俺のダンジョンへの上書き・・・それが出来れば簡単に脱出出来るはずだ


手のひらを地面につけ集中する。ダンジョンを創る時のようにマナを流し・・・・・・・・・ダメだ・・・コアが見つからない


おそらくだがフェンリルはダンジョンコア・・・このアケーナダンジョンのサキュバスを飲み込んだはずだ。俺と同じように


それが偶然なのかウロボロスの入れ知恵なのかは分からないが・・・フェンリルはダンジョンコアを飲み込みダンジョンマスターになっている


つまり俺がこのダンジョンのマスターになるにはフェンリルの中にあるコアに触れないとダメ?・・・ヤバイ・・・もしかして詰んでるかも


置かれた状況に焦りを感じつつ何かないかと炎で照らし辺りを再確認する。だがやはり何も無い・・・あるのは天井に空けた穴のみ・・・穴?


「・・・いいだろう・・・やってやろうじゃねえか・・・ここが何階だか知らねえが上り続けてやる・・・待ってろよフェンリル!──────」


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