表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
766/856

781階 ウェルとナル

「ああーん?ロウニールが捕まってるって!?んなバカな!」


「本当だ。それとあの方が公爵様なら先に言え!下手すれば私の首が飛ぶところだったのだぞ!」


「いやそりゃ悪かったけどよぉ・・・ロウニールの奴が言うなって・・・」


公爵を呼び捨てにするな


まあそれ程の仲なのだろう・・・驚きの連続で大概の事では驚かなくなってしまった自分が怖い



陛下達との話し合いを終え今は人選の真っ最中・・・先ず声を掛けたのは旧知の仲であるフリップ。おそらくこの男も・・・


「もちろん俺も行く・・・走る事は難しいがそんなに急ぐ必要もねえだろ?」


「どうだかな・・・いざとなったら置いていくぞ?」


「構わねえ。ところで他に誰を選ぶ気だ?見たところ大した奴はいなそうだが」


「人のギルドによくそんな事が言えるな・・・と言っても今は世代交代の途中で正直かなり厳しい・・・新人が台頭して来てはいるが経験も浅く今回は使い物にならないだろう・・・一昔前ならAランクパーティーがかなりいたのだがな・・・」


冒険者の世代交代はかなりの頻度で起こること。ランクも上がりベテランと呼ばれる頃には歳もかなり重ねておりAランクになってから数年でほとんどの冒険者は引退する。才能があり早くにランクが上がった者達は何年も残るがそんなのほんのひと握りだ。アケーナのギルドで言うとヒューイとジットがそれに当たるが他はAランクになって日も浅く経験も実力もあまりない者がほとんどだ


「聞く限りじゃ俺達より弱い奴は足でまといになるぞ。少数精鋭って言うならそれこそ絞らねえと・・・」


「分かっている・・・ランクに拘らず実力で言うなら二ー達は外せないな・・・フェリスに聞いたがかなりの実力者らしいし・・・」


「二ー?」


「ん?ああ、そこにいるだろ?何だか揉めているみたいだがあの小さい子が二ーだ。見た目は幼いがかなりの・・・」


「・・・ニーニャ?それにオードとブルじゃねえか!」


「知っているのか?」


「知ってるも何もエモーンズのギルドにしばらくいて・・・て言うかお前知らねえのか?」


「何をだ?」


「ニーニャ達はあの『タートル』の一員だ。ここだけの話死んだ事になってるが実際は生きてて・・・本当に何も知らねえのか?」


タートル?・・・あの国に対して反乱を起こした闇組合のタートル?まさか二ー達がそのタートルなんて・・・


「一応表向きは死んだ事になってるが裏じゃ無罪放免って事で犯罪者じゃねえ。が、やった事はやった事だからエモーンズで大人しくしてると思いきや・・・」


「いやあれだけの事をして無罪放免はおかしいだろ・・・反逆罪だぞ?」


「色々事情があるんだよ・・・まあ今回の件が終わったら話してやる。酒でも飲まないと話せる内容じゃねえからな・・・」


「・・・分かった・・・今回の件で選ぶのは問題ないのだな?」


「ない・・・むしろ実力的には申し分ないから選ぶべきだ。まあ強制じゃねえから来てくれるかどうかは奴ら次第だがな」


闇組合『タートル』・・・国が組合を廃止にした一因にもなった者達・・・聞いた話では国をあと一歩のところまで追い詰めたらしい・・・そんな者達がアケーナで行方不明者の捜索をしていたとは・・・ん?という事はレオは・・・『タートル』のレオン?


「なあフリップ」


「ん?」


「『タートル』の長って元Sランク冒険者のレオン・・・だよな?」


「そうだ。レオンも生きてるぜ?」


「ああ、知ってる・・・どうやら最悪の展開のようだ」


「ああん?」


「おそらくレオンはレオと名乗っていた。そしてさっきまでヒューイとジットと共にダンジョンに・・・」


「・・・まさか・・・」


「もし魔人が元の強さに比例するのなら最悪の魔人の誕生だ・・・Aランク冒険者のジットと・・・元S冒険者のレオンの魔人の、な──────」





ニーニャ達はレオンと意外な形で再会する事となった


いや、再会とは呼べないだろう・・・映し出された映像の中で見かけただけなのだから


「・・・レオン・・・そんな・・・なんで・・・」


膝から崩れ落ちるニーニャ


ダンジョンに潜っていたはずのレオンはまるでフェンリルの手下のように傍に立っていた


瞬時にあらゆる可能性を考え辿り着いた答えは『魔人化』・・・他の行方不明になっていた冒険者と同じように魔人と化してしまった可能性が高かった


「・・・レオンがあんなヤツの傍で大人しくしている訳がねえ・・・って事は・・・」


「オード、皆まで言うな。それにあのレオンが・・・むっ」


ブルは近くにいたガートン達を見て言葉を止める


「あー気にしないでくれ。レオン・・・レオン(にい)の事は知っている」


「なんと」


「ああん?レオン兄だあ?」


ウェルがレオンの事をレオン兄と呼ぶとブルは驚きオードは眉間にしわを寄せた


「初めて会った時から分かっていた・・・レオン兄は覚えてなかったみたいだけどな。ワイとナルは・・・ハッシュ村の生き残りだ──────」




ハッシュ村・・・ダンジョン研究家であったゴーンの仮説が発端となり廃村になった村


実験と称して村人全員がダンジョンに連れて行かれそして閉じ込められた


当然村人は全員死亡・・・のはずだった


「・・・たまたま花を摘みに村の外に出てた・・・幼いナルを連れてね。戻ったら多くの兵士がいてみんなが連れて行かれるのが見えた・・・けどワイは怖くてその場から動けなくて・・・。しばらく村に戻らずに森で過ごした・・・一応狩人の娘だったし狩りは父から学んでいた・・・いずれ村から出て冒険者になったレオン兄について行くんだって鍛えまくってたよ・・・その頃は。その鍛えたのが役に立ってワイとナルは村に戻ることなく生き延びた・・・毎日村の様子を伺ってみんなが戻って来ないか確かめながら何日も森で過ごして・・・一週間、そして二週間が経ちようやく諦めがついた・・・もう誰も戻っては来ないと悟ったのさ。それから嫌がるナルを連れて村を離れ他の場所を転々として今に至るって訳だ」


「・・・なぜレオンと分かっていて話し掛けなかった?もしあの村の生き残りと分かればレオンも・・・」


「あんたらがいたからだ。これでも色んな経験をして来ててね・・・特にナルは幼い頃から色んなものを見て来たから敏感になった・・・危険な存在が近付くと直感で分かるようになったのさ。血の臭いや佇まいでどれだけ危険か分かる・・・ナルは特に鼻が利くからそれでこれまでも危機を乗り越えて来た。そのナルがあんたらを危険と判断した時点でワイは思った・・・コイツらがレオン兄を唆しているんだってね」


「だから喧嘩売ってきた訳か・・・レオンから引き離す為に」


「そういうこと。レオン兄が一人になった時に話し掛けたかったけどあんたらはいつもベッタリ・・・それに怖かった面もある・・・もし話し掛けてワイらの事を忘れていたらと考えると・・・だから気付いて欲しかった・・・レオン兄に思い出して欲しかったんだ・・・けどいくら顔を合わせても思い出してくれない・・・段々と不安は大きくなり顔を合わせづらくなって・・・それと同時にあんたらへの怒りが大きくなっていった・・・レオン兄を奪われた・・・そう思うようになったんだ」


「・・・なんで今話す気になったんだ?」


「レオン兄が囚われているのを見た時の反応が騙している連中のそれじゃないって分かったからだ。本気で心配している奴の反応だった・・・だから・・・」


「なるほどな・・・だとよニーニャ」


オードがニーニャに話を振ると呆然としていた彼女は立ち上がりウェルとナルの2人を見た


「・・・本当にレオンの村の?」


「証拠は何もないけどな。なんだったらレオン兄の両親の名前を言おうか?あんたらが知ってるかは知らないけど・・・『ラレンとナオナ』・・・2人にはワイもよくしてもらった・・・レオン兄が旅立ってからは特にな」


「・・・信じるよ・・・その名は聞いた事があるし・・・そんな嘘をついてもあんたらにメリットはないし・・・」


「なら聞かせてくれないか?あんたらは一体レオン兄とどんな関係なんだ?」


「それは・・・分かったよ・・・どうせレオンの口から聞くことになるだろうしねぇ・・・教えてあげるよ・・・レオンが滅びた村を見た後でどんな道を歩んで来たかを──────」





それは壮絶な人生だった


Sランクという頂点に立ったレオン・ジャクス。彼は出身地である村にその事を伝えに戻った


ところが村は廃墟となっており誰もそこには居なかった


もしかしたらどこかに移り住んでいるかもと思い探すも見つからない・・・そもそも廃墟となった村には荷物などがそのまま残されている事に疑問を抱いていた


そして真実を知る事になったレオンは国に復讐する為に仲間を集める・・・闇組合『タートル』の長として


「ニーニャは違法である奴隷商人に売られていたところをレオンに助けられ、ブルは信仰する宗教が国に認められず異教徒扱いされ、オードは変人扱い・・・」


「誰が変人だ!」


「他にも国に不満を持つ者達で結成されていた。けど国を相手するには仲間が足りなくてね・・・方針として味方にならない奴は敵って感じで強引に仲間を集め仲間にならなきゃ殺しも厭わなかった」


「・・・」


「あの時のニーニャ達は『普通の人』ってのも敵だったんだよ・・・二ーニャ達が苦しんでいる時に平然と暮らす奴らが許せなかった・・・何食わぬ顔をして平和に暮らす奴らが・・・憎かった。今では後悔しているよ・・・どんなに後悔しても・・・謝罪しても許されない罪を犯した。国を落とせなかった時、死ぬつもりだったけど生きて罪を償う道を選んだ・・・そして償いながらニーニャ達のような人達を受け入れる村を作ろうって決めたんだ」


「村?」


「うん、村・・・しばらく住んでいたエモーンズはいい街だった・・・偏見もなく誰もが普通に接してくれる・・・けどニーニャ達自身の負い目があるせいか何となく居づらく感じてしまっていた・・・レオンはそれに気付いていていきなり旅に出ようって・・・エモーンズに無理なく溶け込んでいた仲間を置いて旅に出て・・・そして思い付いた・・・一から村を作れば負い目を感じる事もないんじゃないかって・・・そして同じような思いをしている人達を救えるんじゃないかって・・・まあでも村を作るには莫大なお金が必要で協力してくれる貴族の資金でも足りなくてね・・・地道に稼いでたって訳さ」


「稼ぐったって冒険者じゃたかが知れているだろ?」


「そうでもないよ。捜索隊としてギルドからは貰えるしついでに狩った魔物の魔核も売れるし・・・勝手にニーニャに貢いでくれる冒険者もいるしねぇ」


「・・・」


「まあでもお金も必要だけどもっと必要なものがある・・・会わせなきゃいけない人も現れたからねぇ」


そう言ってニーニャは街の方に振り返る


「・・・ワイ達だって会いたいさ・・・会って伝えたい・・・『レオン兄、ワイ達は生きてたよ』って・・・でもレオン兄は・・・」


「諦めるのはまだ早いよ・・・さっきは不意をつかれて絶望していたけど希望まだある・・・多分・・・いや絶対に──────」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ