表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
762/856

757階 参上

「・・・執拗い!」


ニーは2本の剣をワックの両目に刺し顔面を踏み台にして宙を舞う。すると視界を奪われたワックの前にいくつもの火種が現れ次々と爆発し始めワックは煙に包まれた


「これで終わりか?・・・って、んな事はねえよな」


煙が晴れて姿を現すワック・・・それを見てオードは苦笑いを浮かべた


てかこれ俺ら必要か?・・・まあ行方不明だった冒険者かどうか判断する為には必要か・・・でもな・・・ウチのお姫さん達ゃそれで納得するとは思えねえんだよな・・・


チラッと見てみると鬼の形相で二ー達を見つめるウェルとナル・・・かと言って無理矢理戦闘に加わるバカな真似はしないみたいで安心した。二ー達の連携な洗礼されていて付け入る隙は全くない・・・無理に加わろうとしたら邪魔になるだけだ


その辺を弁えているのは不幸中の幸いだが仲が良くなる事は一生ない気がするな・・・


「トドメぇ!」


ようやくワックとの戦闘に終止符が打たれる


両目を失って視界を奪われても二ー達3人に囲まれても互角とも言える奮闘を見せたワックは俺の知るワックでない事は確かだった


偽物?・・・違う・・・あんな偽物がいたらたまったもんじゃねぇ・・・なら一体ワックはどうしちまったんだ?


「悪いねぇ・・・助けられなかったよ」


「へ?い、いやあの状態のワックを捕まえるのは無理ってもんだ。ギルド長も自分の身の安全を優先しろって言ってたし・・・なあ、ワックはどうしちまったんだと思う?」


「・・・元々の強さは知らないけど多分魔人だねぇ・・・魔人と何度か戦った事があるけど魔人のそれに近い動きをしていたし何よりマナを使わずに魔力で戦っていた・・・と言っても魔力を使うと言うよりは振り回されていた感じだったけどね」


「魔人・・・随分聞いてた見た目と違うな」


「だね。普通の魔人は明らかに人をやめている見た目をしているけど・・・ワックだっけ?実は元々は今より小さかったとかないよね?」


「ないない。下手すりゃ少し痩せて小さくなったくらいだ」


行方不明者が全員ワックと同じように魔人?になってたらえらいことだな・・・魔人になったら元に戻れないって聞くし倒すしかない・・・けどワックと同じように強くなってたらほとんどの冒険者は太刀打ち出来ないだろうな


「ふーん・・・普通と違う魔人に突然起きたダンジョンブレイク・・・まあダンジョンブレイクは兆候なんてなく突然起こるって聞くけどあまりにもタイミングが良すぎるねぇ」


「誰かが仕組んだって言いたいのか?」


「じゃないとこんな立て続けに起きないでしょ?」


「そりゃ分かるけど・・・こんな事誰が出来るってんだ?」


「魔族・・・くらいだろうね。ロウニールちゃんなら造作もなくやってのけそうだけど・・・まあやらないだろうしそうなると魔族しかいないからね」


ロウニールの名前が出て一瞬ドキッとしてしまった


あの野郎なら確かに出来てもおかしくない・・・てか待てよ・・・マジでアイツなんじゃ・・・アイツが来てからすぐに起きた訳だし・・・のあっ!?


「な、なになに!?」


いきなり地面が揺れて慌てふためく二ー・・・こうして見ると幼い子供みたいだ・・・ってそれどころじゃねえ!


周りを見渡していると遠くで壁がせり上って来るのが見えた


外壁?・・・違う・・・もっと奥だ!


「囲まれた?オード!これって魔法?」


「出来るかこんな事!土魔法が得意な宮廷魔術師でも無理だよ!・・・出来るとしたら俺の知る限りじゃロウニールくらいだ」


「ならロウニールちゃんが?もしかして外から何か攻めて来てそれから守る為に壁を?」


「・・・俺には閉じ込める為に作ったように見えるけどな・・・内側に魔物がわんさかいるのに外から敵が来たっていって普通壁を作るか?」


オードの言う通りだ。外から・・・例えば魔物が襲って来たからと言って壁を作ったら内側に湧いている魔物の格好の餌食になってしまう。それよかこんな芸当が出来るならダンジョンを囲うことも出来たはず・・・となるとあの壁は・・・俺達を閉じ込める為に作ったと考えの方が妥当だ


「・・・マズイねぇ・・・もしこれがロウニールちゃんの仕業じゃないとするとロウニールちゃん並みの魔族が今回の件を仕組んだって事になる・・・そうだとしたら二ー達じゃ・・・」


「なんだ?少し強そうな奴が出て来たと思ったらすぐ弱音を吐くのか?大方捜索もそんな感じなんだろうな・・・『疲れちゃった~もう歩けない~どうせ死んでるから捜索は打ち切ろう~』なんてね」


ウェル・・・またかよ・・・


「・・・今のは聞き捨てならないねぇ・・・こっちは命懸けで探してたんだ・・・今謝れば特別サービスで腕一本で勘弁してあげるよ?」


「命懸け?・・・どうだか・・・見てないならなんとでも言える」


「・・・謝る気はないって事ね・・・」


「サラサラない・・・いい人ぶるのはやめてサッサとこの街から出て行きな・・・レオンを置いて、ね」


「っ!・・・貴女・・・」


レオン?レオじゃなくて?


ウェルの奴が言い間違えたのか?でもレオンと聞いて二ーの表情が変わった・・・いや、二ーだけじゃなくオードとブルの表情も


驚いている?・・・って事はレオは本当はレオンって言うのか?・・・レオン・・・どこかで聞いた事があるようなないような・・・


「ウェル!ガートン!あれ!」


変な空気が流れる中、ナルが何かを見つけて叫んだ


ナルが見たものは・・・こちらに向かって来る大勢の兵士達


「な、なんだぁ!?」


「兵士ってダンジョン前を取り囲んでいるはずじゃ・・・」


二ーの言う通りだ。ダンジョンブレイクが起きてダンジョンから出て来る魔物達を抑え込んでいるのはヘギオンの兵士達のはず・・・その兵士がこれだけの数移動するって事は・・・まさか手に負えなくなって逃げてるのか?


「お、おい!何があったんだ?」


通り過ぎる兵士の1人に声を掛けるとその兵士は立ち止まり俺達を見た


「あ、ああ冒険者か・・・お前達も早く街の外へ!」


「そんなに魔物が出て来ているのか?この数の兵を超えるほど?」


「違う・・・魔物がダンジョンからだけではなく至る所から出現し始めた・・・もはやダンジョンから出て来る魔物を対処するだけでは済まなくなったのだ。我々はディーン将軍に従い南門へ向かい避難している住民を保護する・・・街は・・・放棄するとの事だ」


「街を放棄って・・・」


「分かったらお前達も街の外に避難しろ!他の場所からも魔物は出現しているがダンジョンからも相変わらず魔物が出て来ている・・・街は間もなく魔物に飲み込まれるだろう」


そう言い残し兵士は移動する兵士達の群れに戻った


残された俺達は兵士達が通り過ぎるのを待ち顔を見合わせる


「い、至る所から魔物がってどういう事だ?」


「そんなの分からない・・・ただあの兵士が嘘を言ってるようには見えなかった・・・街を放棄だって?・・・クソッ・・・なんでこんな事に・・・」


ウェルは近くにあった建物を拳で殴る


物に当たっても仕方ないのだが俺も同じ気持ちだ・・・昨日までの平穏はどこへやら・・・まるで戦火に巻き込まれたみたいだ


「・・・ゲート・・・」


何やら考え込んでいた二ーが呟く


ゲート?ゲートってダンジョンから脱出したりするゲートの事か?まさか魔物がゲートを使って外に?・・・でもゲートが繋がっているのってダンジョン入口じゃ・・・


「まさかロウニールが乱心したか?」


「だったら最悪だねぇ・・・ありえないと思うけど・・・」


ロウニール?・・・ああ、そう言えばあの野郎はゲートを使う事が出来たっけか・・・一瞬で俺をエモーンズに拉致ったし・・・


けどあの野郎がこんな事するか?地位も名誉もある奴が・・・だとしたらマジで狂ったとしか思えないな


「とにかく一旦ギルドに戻らねえか?まだギルド長達も残ってるかもしれねえし・・・」


「そうだね・・・とりあえず戻ろう」


まったく最悪の日だ・・・頼むからこれ以上何も起きねえでくれよな──────





冒険者ギルド


アーノンとテレサが向かい合い膠着状態が続いていた


テレサは虚ろな目で立ち尽くし特に何も仕掛けて来ない。反対にアーノンは仕掛けたくとも仕掛けられずにいた


目の前で仲間を殺されたというのに怒りは湧いて来ず息苦しさがアーノンを疲弊させていく


「・・・ギルド長・・・お姉ちゃん・・・」


まるで時間が止まったような感覚・・・フェリスは早く終わって欲しいという気持ちと何かの間違いであって欲しいという気持ちの中で揺らいでいた


姉であるテレサの身に何が起こったか未だ不明・・・もしかしたら助かる道があるかもしれない。しかしそれを調べようとすれば床に転がる冒険者のようにアーノンも殺されてしまう


「・・・ギルド長・・・お姉ちゃんは・・・姉テレサはずっと前に・・・死んでいます・・・目の前にいる姉は・・・姉ではありません!」


「分かっている!・・・けど・・・どうやら無理そうだ」


アーノンはフェリスに振り返り寂しげに笑った


そしてテレサに向き直るとゆっくりと進む


彼女の元へ


「ギルド長!」


フェリスが呼び止めようとするがアーノンは足を止めない。テレサは相変わらず虚ろな目をしているがアーノンが近付いた瞬間にピクリと指を動かした


アーノンが殺される・・・姉のテレサに


そう思った瞬間にフェリスは無意識に走り出していた


今ならまだ間に合う・・・そう思い走りながら手を伸ばす。その時・・・


「邪魔するぜ!・・・・・・・・・なんだこの状況は?」


ギルドの扉が開け放たれ一人の男が現れた。肩で戦斧を担いだ偉丈夫はギルド内の状況を見て首を傾げる


「・・・お前・・・フリップか?」


「そういうお前はアーノン?老けたな・・・てか、老け過ぎじゃねえか?いくらなんでも・・・ん?もしかして君はフェリスか?」


「・・・フリップお兄ちゃん・・・」


「『お兄ちゃん』なんてよせやい。もうそんな歳じゃねえよ。いやーしかしなんだ・・・久しぶりに戻って来たらだいぶ街並みも変わってんな・・・それにフェリスも姉ちゃんに似て美人になってるしアーノンは老け込んでるし・・・ところで何してんだ?ダンジョンブレイクが起きたって聞いたけど・・・ウゲッ!なんで死体がここに・・・・・・そこの女がやったのか?もしかして修羅場ってやつか?」


「何しに来たフリップ・・・お前はエモーンズの・・・」


「いいから質問に答えろ・・・とても仲良く3人でお喋りしている雰囲気には見えねえし・・・厄介事なら手ぇ貸すぜ?」


「・・・」


「アーノン?・・・まあいい・・・言わねえなら俺が直接聞いてやる・・・お前さんか?この冒険者を殺ったのは?」


「よせっ!フリップ!!」


フリップは背中を向けるテレサに近付き話し掛けながら肩に手を伸ばした。するとテレサは振り返りもせず背後にいるフリップに蹴りを放った


「ガッ!」


「フリップ!!」


フリップは吹き飛び扉を突き抜け外へと放り出された


それを見た瞬間、アーノンは初めてテレサに向かい構える


「テレサ!!水よ水よその姿を槍と変え彼の者を・・・貫け!ウォータースピア!」


テレサに向けた手のひらから水がその姿を槍と変え一直線にテレサの元に


しかしテレサはその水槍を無造作に手で払い除ける


「くっ!ならば・・・」


「ちょっと待てぇい!・・・テレサだと?イチチチ・・・お前今テレサって・・・」


テレサの蹴りを戦斧で咄嗟に防いでいたフリップがギルド内に戻って来るとアーノンに尋ねる


アーノンは次の魔法の準備をやめテレサ越しに戻って来たフリップを見て頷いた


「そうだ・・・彼女はテレサ・・・私達のパーティーメンバーだったテレサだ──────」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ