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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
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73階 紹介

初めての訓練にしては厳し過ぎたか・・・いや、限界までやってこその訓練・・・甘えさせるのは禁物だな


ロウニールとの訓練を終え、私は真っ先に風呂屋に訪れていた。やはり汗をかいた後の湯浴みは最高だ・・・今日はのぼせたりしないようにしないとな


迷惑をかけた店員に謝罪した時、今度のぼせたら出入り禁止ですとはっきりと言われてしまったからな・・・規則で店員は客のいる部屋に入れないらしいからそれも仕方ないか・・・のぼせたまま放置すると死に繋がるらしいし・・・死者が出れば営業停止になりかねん・・・一回目で出入り禁止にならなかっただけでもよしとしよう



さて・・・またのぼせてしまった要因である通信道具を中に持って来てしまったがどうしよう・・・報告するべき事もないし向こうからの連絡がなければすることもないのだが・・・取り留めのない会話をしたくて仕方ない


もしかしたら私が風呂に入りながら通信してると知ったら私の裸を想像してくれるやも知れない・・・そう考えるとまた体の熱が少し上がった気がした


・・・今度光ったら湯船から出て話すとしよう



だが・・・結局通信道具は光らなかった



期待しないようにと頑張ってみたがやはり期待してしまってたようだ・・・光らない通信道具を眺め続けまたのぼせてしまう寸前までいってしまった


出入り禁止は避けなくてはとの思いで何とかあがり事なきを得たが・・・少し入浴時間を考えないといけないな



風呂屋を出て向かったのはお馴染みの『ダンジョン亭』


ギルドの隣ということで通いつめてるがそろそろ別の店を開拓してもいいかもな・・・だが、ハズレないと分かっているからかついついココに来てしまう・・・はっ!もしかしたら他の店に行けばローグと会うかも・・・というか仮面をしながら食事って出来るものなのか?・・・謎だ・・・


「サラ姐さん!」


「ケン・・・お前達今帰りか?」


何度も姐さんはやめろと言っているにも関わらず治らんなケンは・・・もう諦めて受け入れる事にしたが・・・どうやらダンジョンでの成果がかなり良かったらしい。ホクホク顔で私に向けて手を振っている


「はい!・・・えへへ、店行くんッスよね?奢りますんで一緒に行きましょう!」


「ほう・・・どうやらかなりの成果があったらしいな」


「それもあるんッスけど・・・新情報ッス」


「新情報?」


「とうとう28階が・・・現れたんッスよ──────」




店に入り聞けばケン達は新装備の実戦訓練としてダンジョンを攻略して行ったらしい。これまで苦労していた魔物にも余裕で対応出来、思ったよりもサクサク進んで行くと気付いたら27階まで降りていて、その最奥で下に降りる階段を見つけた


まあローグが作った・・・かどうかは定かではないが、恐らく作った武具を装備しているのだ・・・それくらいは当然だが・・・まさか28階が出現しているとはな。組合の情報共有として挙げとかなくては・・・


「で、ですね・・・これが28階が凄いんッスよ!」


「凄い?魔物が?」


「ふふふ・・・なんと!外なんッス」


「?・・・マホ、分かりやすく説明してくれ」


「サ、サラ姐さん・・・」


「当たり前でしょ?『外なんッス』で分かれば苦労しないわよ・・・えっとですね・・・・・・外なんです」


「おい」


マホまで・・・外?28階が・・・待てよ・・・


「他の階より明るく自然に溢れていた・・・か?」


「そうッス!なんで分かったんッスか!?」


「他のダンジョンでもそういったフロアは存在する。全ての階が今言ったようなダンジョンすらあるくらいだ。それにしても・・・そうか・・・」


「へへっ、興味津々ッスね」


「ああ、組合として情報が多いに越したことはない。新しい階が出現したのなら詳しく調べる必要があると思ってな」


「・・・真面目ッスか・・・」


組合の最大の利点である情報共有。その情報が組合に入ってない者の方が持っている状態はなるべく避けたい。組合だからこそ知り得た情報であると認識させた方が辞める者も少ないだろうからな


「なら細かく言いましょうか?結構探索して来たのでそれなりに話せる事もありますけど・・・」


「・・・いや、実際に見てから伝えた方がいいだろう。マホ達が組合の者に伝えるのは構わないが、マホ達から聞いた情報を私が伝えれば事実と異なる情報になりかねん。説明する者によって解釈は変わるからな」


「あー、そうですね。でもサラさんってしばらく弟子を鍛えるとか・・・もしかしてその弟子とダンジョンに?」


「いや・・・ロウニールは冒険者ではないからな。いずれは魔物とも戦ってもらうつもりだが今はその段階ではない・・・ふむ・・・どうせ明日は午前中は用事を済ませようとしていたから思い切って休みにするか・・・」


かなりへばっていたから明日は体もキツいだろうし・・・一日で目の下のクマが取れるとも思えんが休まないよりはマシだろう


「私の事よりお前達はどうなんだ?新しい装備には慣れたのか?」


「その質問・・・待ってましたッス!聞いて下さいよ・・・もう最高ッス!!」



それからケン達の話を聞きギルドにある私の部屋に戻った


ローグから貰った装備のあの性能・・・やはりケン達に合わせて作られているようですぐに馴染んだらしい。戦っている姿を見た事がある訳でもないのに話を聞いただけでそのような事が可能なのだろうか・・・そもそも一晩で私のを含めて6つの装備を作る事が可能なのか?


謎は残るがそれは置いといて、あの装備の性能を引き出せればこれからケン達はかなり強くなるだろう・・・装備に頼ってしまうのだけが怖いがな


・・・今日は結局1度も光らなかったな・・・明日は私から報告すべき事があるから話せるだろうけど・・・出来れば毎日話したいものだ──────




翌朝、下に降りると目を疑うような光景が・・・


ローグが冒険者に囲まれている!?


「あ、サラさん!」


違った


振り向いてこちらに笑顔を向けるのロウニール・・・なぜ私はローグとロウニールを勘違いした?


確かに背格好は似ているような気がする・・・それに仮面から覗く髪型も似ているような・・・今度ロウニールに仮面をかぶらせてみようか・・・いや、私は何を考えているんだ!?


「サラさん?」


「あ、いや、すまん・・・存外元気そうだな・・・一晩寝ただけではまだ体全身が痛むと思ったが・・・」


「そこは若さですよ!・・・って実は相談なんですけど今日は訓練程々にしてもらえたらと・・・今日の夜同期とご飯を一緒に食べる約束をしていて・・・その・・・昨日の状態だと・・・」


ああ、話していたのはジケット達か


「今日は訓練は休みだ。気にせず行ってこい・・・ただ自主鍛錬は怠るなよ?」


「え、本当ですか?良かった・・・ってじゃあなんでギルドに?」


「昨日聞いた事を覚えてるか?」


「聞いた事・・・もしかしてお金の管理が出来て信用出来る人物って言ってた・・・」


「そうだ。ロウニールの心当たりのある人物が必ずしもやってくれるとは思ってないが、話をしない事には先に進まないだろう?だから話だけでも早めにしておきたくてな」


あの時ロウニールはかなり小さい声だが『います』と言っていた。その人物が受けてくれるかどうかは分からないが話をして損は無いだろう。その人物がダメでも他を紹介してくれるやもしれないし・・・


「えっと・・・いるにはいるんですけど・・・その人働いてますよ?」


「それはそうだろうな。だから話をして決めてもらう・・・今の仕事を辞めて組合に入ってくれるかどうかを」


元々商人を勧誘しようとしていたしある程度の能力を持っていれば仕事もしているだろう。どのような仕事をしているか分からないが給金をはずめば少しは検討してくれるはず・・・足りなければ私が払えばいい


確か一般的な人の給金は月に3000から5000ゴールド


組合が軌道に乗るまで私が出しても平気だろう・・・蓄えはかなりあるしな


「そうですか・・・ちょっと同期に今日行けると伝えて来てからでいいですか?」


「ああ、構わない」


ロウニールはそう言うと先程話していたジケット達に伝えに行った



同期か・・・私には嫌な思い出しかないが・・・



「お待たせしました!ではその人のいる場所に行きます?それとも最初にどんな人か伝えましょうか?」


「うーん、私が会って決めたいから話は聞かずに行こう。近いのか?」


「まあ、街の中なんで・・・」


それもそうか


ロウニールはジケット達に別れを告げギルドを出ると私を案内してくれた。誰かと2人で街を歩くのはローグと歩いた以来か・・・また歩ける日がすぐに来るといいのだが・・・


そんな事を考えながら歩いていると突然ロウニールが立ち止まる。この場所は・・・


「ここです」


「ここって・・・領主の屋敷?」


前にシークス達との話し合いで一度だけ訪れた事がある領主の屋敷・・・ここで働いている者がロウニールの言うお金の管理が出来て信用出来る人物?


「まさか領主・・・とは言わないよな?」


「さすがに領主は辞めないでしょ・・・違いますよ」


だよな・・・となると・・・


ロウニールは慣れた感じで屋敷の敷地に入って行き、扉を開けると私達に気付いたメイドが近付いて来た


「あらロウニール・・・報告・・・の時間には早過ぎるよね?何か用?」


「ちょうど良かったジェファーさん。実は折り入ってお願いが・・・」


「私に?何よお願いって・・・」


「待て待てロウニール・・・彼女なのか?」


「ええ。お金の管理も信用も出来る人っていったらジェファーさんが真っ先に浮かんだので・・・」


このメイドが?とにかく誰彼構わずやらせる訳にはいかないからな・・・


「ここからは私が話そう。仕事終わりに少し話せないかな?私はサラ・セームン・・・この街で冒険者をやっている者なのだが・・・」


「知ってます知ってます!なんなら今からでも大丈夫ですよ。朝の仕事は終わりましたしちょうど休憩時間だったので・・・長くなりそうなら母・・・じゃなくてメイド長に言っておけば・・・」


「そうか、少し長くなるかもしれない・・・それとここでは話せないから外で・・・そうだな・・・その辺の店で話すっていうのはどうだ?」


「そ、それならこの領主館の近くに美味しいと噂されるスイーツのお店が!すぐに準備しますので少々お待ち下さい!」


お、おお・・・私の返事を聞く前にスカートの裾を掴み屋敷の奥へと走って消えて行ってしまった


・・・確かに横領とかその辺の心配はなさそうだが・・・本当に大丈夫か?──────

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