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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
754/856

749階 ダンジョンブレイク

「マスター!!」


スミとセンが駆け寄るもロウニールを飲み込んだ穴はすぐに閉じてしまった。すぐにセンは穴のあった場所に向けて長剣を振り下ろすがその硬い床はセンの怪力をも弾き返す


「くっ!」


《無駄だ魔物共よ。その床はお主らごときが壊せるものではない》


焦る2人に余裕のフェンリル・・・そして混乱する2人


「一体全体どうなってやがるんだ!?ロウがあのロウニールで目の前のヤツがアーノンの言ってた狼の魔物で床がパカッと空いてロウが落ちまって・・・」


「ヒューイ」


「ああん?・・・お、おまっ・・・なんでお前がここにいるんだ??レオ!」


ヒューイが呼ばれて振り返るとそこには捜索隊を請け負っていたレオがいた。更に混乱を深める中レオは追い討ちをかける


「セシスとして同行していた。それと私の名はレオではなくレオン・・・一応元Sランク冒険者のレオン・ジャクスだ」


「Sランク冒険者のレオン!?・・・ってそりゃあの闇組合の・・・」


「ああ『タートル』のレオンだ」


混乱を極めたヒューイは頭を抱えフラフラと二三歩後退しよろめきながら腰を落とした


あまりにも情報量が多すぎて状況が飲み込めない。頭を振り何度も状況を整理しようとするが考えれば考えるほど頭は混乱してくる


「ええいヒューイ!今は考えている暇などなかろう!」


「ジット・・・あんたこの状況を把握出来てんのか?」


「把握出来ている訳ないだろう!考えるのをやめただけだ・・・今は目の前の敵を倒し仲間を助ける事だけを考えておる!考えるのは後回しだ!」


「・・・そうだな・・・その通りだ。考えるのは後にしよう・・・今は・・・」


ヒューイはすぐに立ち上がると短剣を両手に持ち構える


「仲間を助ける事が優先だ」


穴が空き落ちてしまったロウニールを助ける手段は今のところ浮かんでこない。しかし助ける為に何をすべきかは分かっている



目の前の敵、フェンリルを倒す事だ



「お前さんも手伝ってくれるのか?セシス・・・じゃなくてレオン」


「ええ、もちろん。指示は任せるよ・・・私は少しだけ魔法が得意な近接アタッカーと思ってくれ」


「魔法戦士か・・・スミ!セン!動けるか!」


「・・・」


「おい!聞こえて・・・」


「・・・マスターの気配が感じられない・・・どうして・・・」


「あん?気配?」


ロウニールが消えてしまった場所を見つめ立ち尽くすスミが呟く。ヒューイはその意味を理解出来ず首を傾げるとフェンリルは大きな口を歪め勝ち誇ったようにその意味を解き明かす


《そりゃそうだ。落としただけならゲートで戻って来ちまうからな・・・結界で覆われた部屋に閉じ込めさせてもらった。もちろんそれだけだと簡単に出て来るだろうから別にプレゼントを置いてある・・・中から脱出するのは不可能だろうな・・・ヤツが人間である限り、な》


「・・・ならば助けに行きます・・・アナタを倒して」


《その意気だ魔物よ。ところで助けに行くのはロウニールだけでいいのか?》


「なに?」


《ワシにとって邪魔だったのはロウニールただ1人・・・そのロウニールを閉じ込めることに成功した今ワシは兼ねてより準備していた計画を実行した・・・ここからでは聞こえぬか?このダンジョンの外の悲鳴が》


「聞こえるわけないでしょう?何を言って・・・」


《ならば聞かせてやろう!今外で何が起きているのか・・・見せてやろう!》


そう言うとフェンリルは両手を広げ頭上にいくつもの映像を映し出す


「なっ!?なんだありゃ!!」


その映像を見てヒューイが叫ぶ


目を疑うような光景・・・街には魔物が溢れかえり逃げ惑う人々が映し出されていた


「・・・ダンジョンブレイク・・・」


「はあ?ダンジョンブレイクはマナ不足が原因なんだろ?ギルドにゃ充分過ぎるくらいの冒険者がいて毎日のようにダンジョンに潜ってる・・・マナ不足になるなんて・・・」


《そこの人間が言うようにマナは充分であり不足などしていない。普通のダンジョンコアなら外に求めるほどではないだろうな》


「・・・普通のダンジョンコアなら?・・・アナタは何をした・・・まさかこのダンジョンのサキュバス様に何かしたのか!」


スミが問い詰めるとフェンリルは目を細め笑みを深める


《クッカッカッ!まだ分からぬか?貴様のマスターとやらと同じ事をしたまでだ》


「・・・まさか・・・」


《そう・・・喰らった・・・ロウニールがダンジョンコアを喰らったようにワシも喰らってやったのだ!ダンジョンコアを、な──────》





──────少し前、ロウニール達が180階に到達した時に遡る


ダンジョン入口前にはギルド職員の2人が立っていた


「・・・こんなに暇なのか・・・そりゃ不正もするわな」


「おい!滅多なことを言うな!ギルド長に聞かれでもしたら・・・」


「分かってるよ!けどアイツらのせいで俺達が尻拭いさせられてんだぜ?愚痴のひとつも出るってもんだ」


「愚痴じゃないだろ。どうせ金を貰ってて羨ましいとか思ってるんだろ?」


「バレた?だってよ・・・アイツらいくら貰ってたか知らねえけど給料の他に侯爵様から金を貰ってたんだろ?いつからか知らねえけど噂じゃかなり貰ってたらしいぜ?」


「・・・けど捕まった。それでも羨ましいか?」


「どうせ大した罪にはならねえよ。職は失ったけど別の街に行けば普通に職にありつけるだろうし・・・結局貰い得になるに決まってる」


「そうだとしても・・・」


「本当にそう思うか?俺なら提案されたら金を受け取らねえ自信はないぜ?ちょっと嘘の報告すりゃ金が入るんだ・・・それくらい・・・ん?どうした?」


「・・・そんな・・・嘘だ・・・」


「嘘なもんか。お前だって・・・」


「違う!後ろだ!」


「ああ?まさかギルド長がいるとか俺を騙そうとして・・・」


振り返るギルド職員


するとそこには冒険者らしき人物が立っていた


「なんだびっくりさせるなよ・・・今ダンジョンからの帰りか?・・・うん?ソロ?」


「違う・・・そいつは・・・」


「なんだよ何が違うって言うんだ?どっからどう見ても冒険者だろ?」


「・・・そいつは・・・半年前に行方不明になった冒険者だ・・・」


「おおっ!マジかよ!よく半年の間・・・え?半年?」


そこで振り返っていたギルド職員は気付く


冒険者が行方不明扱いされるのは冒険者のギルドカードに埋め込まれている魔核の欠片が光を失った時である。光を失うイコール冒険者の死・・・これはギルドの機密事項であり冒険者には知らされていないが職員なら誰もが知っている事実


つまり目の前に現れたら冒険者は半年前に死んでいるはずなのだ


「えっ・・・ちょっと・・・でも・・・」


後退る職員


その動きに合わせて冒険者が前に進み出ると突然腕を上げた


「・・・あ・・・ぺ・・・」


「あぺ?何言って・・・ギャッ!」


「ベネス!!・・・ヒィ!」


突然振り下ろされた腕に頭を潰され倒れる職員。それを見てもう1人の職員が叫ぶと冒険者はギロリともう1人の職員を睨み再び歩き出す


「・・・何なんだよ・・・なんで・・・え?」


冒険者に気を取られ気付かなかった


近寄って来る冒険者の背後・・・ダンジョンから次々と行方不明になった冒険者と魔物達が這い出て来ている事に


「・・・ダンジョンブレイク・・・そんな・・・嘘だろ・・・」


ダンジョン前にいるギルド職員の仕事には主にふたつある


ひとつは冒険者からダンジョンの許可証を受け取る事


もうひとつはダンジョンブレイクが起きた際に『扉』を閉めること


アケーナダンジョンは街の中にある為にダンジョンは高い塀で囲われている。そして唯一の出入口に職員が立ちダンジョンに入る冒険者達を見届けているのだがそこには唯一の扉があり、そこを閉めればダンジョンから万が一魔物が出て来たとしても塀の中に封じ込める事が出来る


なのでダンジョンから魔物が出て来た際にはその扉を閉めることこそが最も重要な仕事になるのだが・・・


「ダメだ・・・もうお終いだ!」


生き残ったギルド職員は恐怖のあまり扉を閉めずにその場から逃げ去ってしまった


ダンジョンから塀の中に続々と集まって来た元冒険者と魔物達が徐々に唯一の出入口を通り外へと歩み出す



街に・・・魔物が溢れ出した──────





前日にダンジョンから戻り今日は次のダンジョンに向けての買い出しをしていたガートン達


すると何やら慌てて走って来る男を見て眉をひそめる


「なんだぁ?アイツは確か・・・おいお前!」


男はガートンに呼び止められ立ち止まる


「なにガートン・・・知り合いか?」


「いやほらギルドの職員だよ。確か今日からダンジョン前に立つ事になったって・・・何かあったのか?」


ウェルに答えると尋常じゃない様子の職員に尋ねるガートン。すると職員はガートンの肩を掴み目を見開き顔を近付ける


「おい何すんだ!」


「まも・・・まも・・・」


「まも?」


「魔物が・・・こうしちゃいられない・・・早くギルド長に知らせないと・・・」


そう呟くと再び職員は走り出す


「おい!・・・行っちまった。魔物がどうしたってんだよまったく・・・」


「・・・なあ」


「ん?」


「今の職員はダンジョンの前に立ってたんだよな?」


「ああ・・・ほら話したろ?ギルド職員が何人か解雇されたって。んで昨日ギルドに行ったら今の奴が解雇された連中の代わりにダンジョンの前に立たなきゃいけなくなったって嘆いてたんだよ」


「へぇ・・・なるほどね・・・ダンジョン前に立つ職員が職務を放り出してギルドに向かって走って行く・・・『魔物が』と言い残して・・・」


「何をそんなに慌ててんのかね?」


「ダンジョンから魔物が出て来たとか?」


「・・・」「・・・」「・・・」


パーティーメンバーのナルの一言で無言になる3人。互いに顔を見合せしばらくするとガートンが口火を切る


「ま、まさかー・・・そんなダンジョン都市でダンジョンブレイクなんかあった日にゃ・・・」


その時、遠くの方から悲鳴が聞こえた


それは職員が走って来た方角・・・ダンジョンのある場所付近からだった


3人は再び顔を見合わせる


「・・・買い物は中止だ・・・一旦ギルドに向かおう」


「ギルドに?」


「えぇ・・・」


「うるせえ!今はそんな事言ってる場合じゃねえ・・・下手すりゃ滅びるぞ・・・この街は──────」

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