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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
742/856

737階 いざアケーナダンジョンへ

「お前らマジか」


待ち合わせ場所はダンジョン前・・・それ以外は特に細かい打ち合わせなどなく初めてパーティーを組む初日・・・待ち合わせ場所に3人で赴くとヒューイは首を振りため息混じりにそう言った


「何がですか?」


「・・・いや、俺っちがちゃんと言わなかったのがまずかった・・・そういやGランクだったな・・・」


「・・・まだランクに拘りますか?」


「そうじゃない。強ぇのはもう分かってる・・・おそらくそんじょそこらの奴らが束になっても敵わないくらいの強さがある・・・だからこそ忘れてたんだよ・・・ダンジョンに関しては素人だってことをな」


ダンジョンの素人?・・・おいおいこう見えてもダンジョンマスターですけど?


「どこら辺が素人なんですか?」


「おっ、一丁前に怒ったか?だがな・・・気付かない時点で素人なんだよ。これが見えるか?」


ヒューイは隣に置いてあるバカでかいリュックをポンポンと叩いた。まさか・・・アケーナではリュックの大きさが強さの証!・・・なわけないか


「分からねえか?分からねえよな?ハア・・・まあいい。組合の頭張ってた時はよく教えたもんだ・・・ろくに歩き方も知らねえヨチヨチ歩きのひよっこにダンジョンの歩き方ってやつをな」


ヒクッ・・・いやイラつくな・・・ヒューイは俺達を思って言ってくれているんだ・・・そう俺達を思って・・・


「いいかよく聞け。俺達はダンジョンを攻略しに行くんだ。適当な階で適当に狩って適当に戻る通常の金稼ぎと訳が違う・・・潜り続けるのさ・・・限界まで、な」


カッコつけて言うところがまた腹立たしい・・・1回殴ったろうか


「なるほど勉強になります」


「・・・なんか心がこもってないような気がするけど・・・まあいい。とにかく潜る・・・潜り続ける。当然限界ってのは帰り道含めての限界だ。で、だ・・・そんな事したらどうなる?」


「疲れますね」


「おう、だな。で、他には?」


「・・・」


「お前は想像力皆無か・・・限界までだぞ?限界まで・・・分かるか?ロウ」


さあ・・・よく分かりません。てか・・・


「執拗い」


「???・・・今なんて言った?」


「よく分かりません、と」


「そ、そうか・・・なんか『しつこい』って聞こえた気が・・・と、とにかく分からないなら教えてやる。腹が減る、だ」


「そりゃ減るだろ」


「???」


しまった!つい心の声がダダ漏れしてしまった


「あっ・・・そうですね。減りますね・・・お腹」


「・・・なんだかお前と話していると変な気分になる・・・まるで新人じゃなくてベテランに・・・おかしいな・・・今言った事は気にしないでくれ。んで、どこまで話したっけか?・・・あ~そうそう腹が減るくだりのところか・・・ちぃと話が長くなったから簡潔に言うと大量の水と食料を持って行かなきゃなんねえんだよ。寝具はいいとしても水と食料・・・これだけは攻略には欠かせねえ。なのにお前らときたら・・・」


ああ、そういう事か


でっかいリュック自慢されているかと思ったけど違くて俺達が手ぶらで来たから・・・


ゲートでいつでも取り出せるから物を持って歩く事がなくなったからな・・・ヒューイから見れば俺達がダンジョンを舐めているように映るのも仕方ないな。ここはちゃんと持って来ていると言わないと・・・いや、待てよ。なんて説明する?『ゲートがあるから』なんて言ったら俺の正体バレバレなのでは?


もうスウには許可は得ている。けど俺の正体がフェンリルの件を解決する前にバレたらどうなる?多分侯爵は抗議するだろう・・・流石に抗議されたらスウも許可を撤回せざるを得ないかも・・・


それはマズイ・・・さっさとフェンリルを始末してアケーナダンジョンの魅力を解析してエモーンズダンジョンに活かさないといけないのに・・・となれば!


「すみません・・・てっきり攻略もその日に帰れるかと勘違いしていました・・・」


買い込んだ食料は後でモッツに美味しく調理してもらおう。まあ俺達は食事は必要ないからヒューイ達の目を誤魔化す為に適当に選んだ物ばかりだしそのまま食べるよりはかなりの有効活用になるだろう


「いいさ。一応俺達も多めに買っておいたしな・・・それに今日はそんな長居をするかどうかもまだ分かんねえし」


うん?どういう意味だ?・・・っ!?


ヒューイの言葉に疑問を抱いていると突然リュックが宙に浮いた・・・と思ったらリュックのせいで見えなかったがどうやら誰かがリュックの陰に隠れててそいつがリュックを担いで立ち上がったみたいだ


でもヒューイとジットはいるし一体誰が・・・


「おっと、紹介が遅れたな。今回荷物持ちを連れて来た。金を稼ぐ為ならまだしも攻略時は何かと入用になる・・・けど荷物持ちながら戦闘は難しいだろ?だから・・・」


リュックがゆっくりと回転すると担いでいる人物が現れた。小さい割には力持ちだな・・・っておい!


「荷物持ちのセシスです!よろしくお願いします!」


何してんだよレオン──────





セシス・フェイ・・・別名レオン・ジャクス


元Sランク冒険者であり『タートル』の長にして王都で反乱を起こした張本人だ


アケーナでレオと名乗り行方不明者の捜索に当たってたはずだが・・・荷物持ち!?



「おいレオン・・・どういうつもりだ?」


ダンジョンの中を歩きながら周りに聞こえないようにレオンに話しかけると少年の姿に変装したレオンは無邪気な笑みを浮かべる


「今回の騒動は捜索隊では解決出来そうにないからね。君の方を手伝おうと思って・・・それに捜索ならあの3人で充分だしね」


そりゃあの3人なら平気だろうけど・・・


「こっちも充分手は足りてるけど?お前の目にはそんなに頼りなく映ったか?」


「君はどちらかと言うとキースと同系統だからね・・・頼りないと言うより心配になるんだ」


「脳筋と一緒にすんな・・・一応頭脳派で通って・・・おい驚き過ぎだ」


「・・・すまない・・・流石にそれはないと思ってね」


失礼な奴だ・・・頭脳派・・・だよな?



「おい何くっちゃべってんだ!そろそろだぞ!」


アケーナダンジョンの1階・・・もう既に調べ尽くされた場所なのだが俺達はAランク冒険者と共にその調べ尽くされた1階を進んでいた


その理由はとある隠された場所に行く為だ


「ここの壁をこうやって・・・ほら開いたぞ。誰にも喋るなよ?」


ヒューイが行き止まりと思えた壁を触り一見何も無いように思えた壁の一部分を押し込むと隠し扉が出現した


「さて・・・ご案内しましょうかね・・・アケーナダンジョンの100階へ」


そう・・・この隠し扉の奥にはゲートがある。しかも100階まで直通のゲートだ


ヒューイ曰く一方通行のゲートである為、戻る事は出来ないらしい。行先は100階のボス部屋待機所・・・つまりいきなりボス戦となるらしい


もちろんボスに挑まず戻る事も出来るが戻るには91階のゲートまで歩いて戻らなくてはならない


俺は11階、スミとセンは21階のゲートを使用した事がある為に今のパーティーでゲートで行けるのは11階まで・・・それだと攻略するのに時間が掛かる


だからこそ一般には知られていない一方通行のゲートを使用して100階まで下りる事となった


「101階にもゲートはある・・・が、そこで戻るかその先に進むかはボス戦次第だ」


「勝つ前提なんですね」


「そりゃそうだ。俺っちとジットが何度100階のボスに挑んでいると思ってんだ?お前達が使えなくても目を瞑ってでも勝てるさ」


「つまり今回は腕試しの続き・・・実戦編ってところですか?」


「そんなところだ」


なるほど・・・さっき長居するか分からないと言ったのはそういう事か


俺達が100階のボスに通用しなかった場合、ヒューイとジットでボスを倒し101階のゲートで戻って来る、と


「言っとくが勝つのは当たり前だぞ?問題は内容だからな」


それって勝ってもダメな時があるって事か?しかもそれを見極めるのはヒューイとジット・・・2人が納得しなけりゃたとえ圧勝したとしても不合格とか言われるかもしれないってか


かなり厳しい条件だがヒューイの考えは大体分かる


おそらくだが今回は強さよりも戦い方を見極めようとしているのだろう・・・臨機応変な戦い方が出来なければこの先は難しいとかそんなところだろうな


ナメるなよ


〘スミ、セン、相手が弱くても瞬殺するな。相手を観察し弱点と思われる箇所を突け。それとヒューイとジットの2人から指示があれば従え・・・たとえ間違っているとしてもな〙


〘はい〙


〘・・・〙


センは分かってるのか?・・・まあいい・・・都度俺が2人の指示に被せて命令すれば何とかいけるだろう


「用意はいいか?・・・行くぞ」


そう言ってヒューイは一方通行のゲートへ足を踏み入れた


その姿が消えると次にジットが進み出てゲートに入る


「なかなか面白いことをするね。まさか100階のボスで腕試しとは」


「それだけ余裕があるんだろ?・・・まあ言い換えれば余裕がないとも言えるけど」


2人がゲートに入った後、セシスとして荷物持ちをしているレオンが呟いた。面白いかはともかく俺は2人が焦っているように感じていた


「責任感が強いのだろうね。それに組合があった時も2人は互いに別の組合の長をやっていたみたいだし・・・行方不明者の中には元組合員もいたようだしね」


「なるほどね・・・だから焦っているのか」


「だろうね」


時間があれば危険を冒す理由は無い。慣れたとはいえ100階のボスを相手に腕試しでGランク冒険者を連れて行く事なんて普段ならしないだろう


「まあ君達なら100階のボスであろうと楽勝だろうけど・・・」


「期待に添えるよう頑張るよ・・・ほら、あまり遅いと怪しまれるから早く行け」


「そうするよ・・・あと私は・・・いや、僕はあくまで荷物持ちだから当てにしないでくれよ?」


「してねよ。早よ行けレオン」


「・・・セシスだ」


そう言ってゲートに入り消えたレオン


残された俺達も順にゲートを潜り全員が100階のボス待機部屋に到着する


ふむ・・・確かに一方通行みたいだな。1階にあるゲートに繋がっているゲートはどこにも感じられない


「さて・・・体も温まってねえのに酷かもしれねえが・・・まあそういう事は今後もあるだろうから気にしても仕方ねえ。この5人で100階のボスを叩く・・・セシスは段取り通りなるべく遠くで隠れていてくれ」


「はい」


「それとお前達は・・・これから戦うボスの対策を考えろ。俺っちとジットはその対策に従うからよ」


「・・・対策と言ってもボスがどんな魔物なのか知らないのですが・・・」


「・・・そうだったな・・・本当なら自分で調べて来るべきだが100階に行くなんて思いもよらなかっただろうし今回は仕方ねえか・・・とりあえず魔物は教えてやる。この扉の奥にいるボスは・・・」


ヒューイはニヤリと笑い待機部屋の奥にある扉を指差すと信じられない事を口にした


「ヴァンパイアだ」


「・・・は?」


アケーナダンジョンの100階のボスが・・・ヴァンパイア!?──────

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