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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
740/856

735階 名執事サーテン

スミとセンの酔いが覚めるのをウロボロスの店の中で待っていたら『理不尽』と言って最期を迎えたウロボロスの頭が生えてきた


「って何すんのよ!」


「お前がスミ達に毒を飲ませるからだろ?」


「だから毒じゃないって言ったじゃない!お酒は毒にもなるし薬にもなる飲み物って言っただけよ!」


「なんだじゃあ飲ませたのはただの酒で毒ではないって事か」


「だからそう言ったじゃない!何を聞いていたのよ!頭沸いてるの!?」


「お前が勘違いしそうな言い回しするからだ・・・それに毒となるようなものを飲ませるな」


「比喩よ比喩・・・お酒は飲み方によっては身を滅ぼす事もあるからそれを『毒』で言い表しただけ・・・ハア・・・もういいわ。どうせわざとでしょ?」


「まあね・・・ここに来た理由はダンジョンの事について聞く為と・・・お前に釘を刺す為だ」


「釘を刺すどころか頭吹っ飛ばされたのでだけど・・・」


「そこはご愛嬌って事で・・・また面倒な事をされても困るからな・・・さて・・・また殺して魔力を削ぐかどこか地底にでも封印するか・・・」


「ちょ、何もしないわよ!私を何だと思ってるの?」


「アバドンを復活させる為に暗躍したりサタン大陸では裏でコソコソやってたよな?今も頭の中で描いているんじゃないか?俺とフェンリルがどう戦えば盛り上がるか、とかな」


「・・・」


「本当は俺が来る前に何か仕込もうとした・・・違うか?」


「な、何の事かしら?仕込むなんて・・・オホホホホ」


目を逸らし変な笑い方で誤魔化そうとするウロボロス・・・やっぱりそうか


おかしいと思ったんだ。わざわざダンジョンの最奥まで行ったり店を構え情報収集したり・・・コイツが動くとろくな事がない・・・何せ欲望の赴くままに生きてるからな


「・・・正直に吐け・・・今度は何を企んでいるんだ?」


「ちょっとだけよ・・・ちょっと手を貸せばそこそこ面白いことになるかなーって・・・」


「なるか!やっぱりダンジョンの奥底に封印して・・・」


「ちょ!わ、分かったから!今回は何もしないわよ!」


「今回も、だ」


「えぇ」


「『えぇ』じゃない!」


何度言ってもやるだろうなコイツは


けど借りもあるし『再生』の力に今後も頼る事もあるかもしれない・・・敵に回すと厄介だけど味方だと頼もしいことこの上ないからな・・・


まあ次に問題を起こしたら真剣に考えようっと・・・幸い居場所は分かるから何か悪さしてそうだったらすぐに捕まえられるし



ウロボロスは俺で愉しみ、俺はウロボロスの『再生』をアテにする・・・互いにそれを理解し利用し利用される関係・・・長い付き合いになりそうだ──────




一通り買い物を終えて宿に戻ると荷物を置きスミとセンを残し俺はエモーンズへ戻った


それにしても買ったな・・・何日潜るか分からないから適当に買ったけど・・・まあ最悪俺達は食事を取らなくても生きていけるからな・・・口寂しくなったら何か創造すればいいし


問題はどこまでGランク冒険者でいられるかだ


今は『元々強かった者が冒険者になった』で説明が出来る・・・けど一緒に行動している時間が長ければ長いほどボロが出そうだ。いっそ2人には話しておくか・・・フェンリルを倒した後で2人に口止めして冒険者をすればいいしな


「どうされました?戻られてから何やら考えておられるようですが」


戻ってサラ達の元へ行くと寝ていたので起こさないよう1階の広間でくつろいでいるとサーテンが話しかけて来た


「いやアケーナダンジョンの攻略をしに行くんだけどな・・・そのメンバーが俺とスミとセン・・・そしてヒューイとジットなんだよ」


「『千里眼』と『要塞』・・・それはまた本格的ですね」


「知ってんのか?・・・まあ有名らしいからな。で、その2人に俺の正体をバラそうかどうか迷っていたんだが・・・」


「もう冒険者ごっこは終わりですか?」


「ごっこ言うな・・・エモーンズダンジョンを良くする為の調査って言ってるだろ?」


「・・・そうでしたね」


なんだその間は


「とにかく色々と厄介な事が起きてるらしくてな・・・それを解決しなきゃ楽し・・・調査が出来ないから正体をバラして一気に解決しようかと思ってな」


「『楽し』?」


「聞き流せ」


「はい・・・ですがそれはやめた方がよろしいかと」


「なんでだ?」


正体バラしたらまずいか?・・・でもガートンにバラした時は何も言わなかったよな・・・という事は楽し・・・調査をやめた方がいいってことか?


「勘違いされているようですが私がやめた方が良いと言ったのは『解決する』事に対してです」


「・・・なに?」


「旦那様もここエモーンズの領主・・・なのでお分かりになるのでは?領地の問題を他の領主が解決してしまうとどうなるかが」


領地の問題を他の領主が・・・エモーンズの問題をカレンが解決・・・別に何とも思わないな。むしろ感謝したいくらいだ


いや待てよ・・・カレンじゃなくて別の・・・全く知らない領主だったら?例えばアケーナ領主の侯爵がエモーンズに突然来てこの街で起きている問題を解決してしまったらどうだろうか?


「・・・あまり嬉しくはないかな?」


「それはそれは・・・領主としてはあるまじき感想をありがとうございます」


「・・・にゃろ・・・俺は思うがまま答えただけだ・・・どう言えば正解だったんだ?」


「完全なる越権行為・・・かなり重めの処罰があると認識して頂ければと。なので正解は『殺す』でしょうか」


急に変な顔をして『殺す』とか過激な発言してるけど・・・もしかして今俺の真似をした?


「そうかな?問題を解決してくれたっていう恩義もあるから知り合いじゃなければ勝手に解決したことと相殺されて特に何も感じないような・・・てか今俺の真似したろ?」


「してません。旦那様は器が大きいのか器の底が抜けているのか・・・領主にとって領地とは国王陛下にとって国と同義です。つまり自国の問題を他国が無断で解決した・・・と考えたらどうでしょうか?」


「そう言われると・・・てか今度は俺の事をバカにしたろ?」


「してません。旦那様はもう少し領地が自分の領域であると深く考えられた方がよろしいかと・・・自覚が足りないのでは?」


「うっ・・・ちょっと言い過ぎじゃないか?」


「足りないくらいです」


このっ・・・でもサーテンの言わんとしている事は分かる。もっと真剣に領地の事を考えていれば他人に問題を解決されたら怒りもするのだろう・・・領民の事を考え、領地の事で頭を悩ませ解決の道を探っている時に横から掻っ攫われたらそりゃ腹も立つ。裏を返せば俺があまり真剣に領民や領地の事を考えてなかったって事になる


「・・・ダメ領主だな」


「ですね」


「おい!」


ったく・・・でも確かにサーテンの言う通り解決してしまったらややこしい事になりそうだ。アケーナギルド長と領主ヘギオンの争いに加担してしまうとヘギオンからしてみれば他領主が攻めて来たと思われても仕方ない。俺が一介の冒険者でアケーナギルド所属であったのならさして問題もなさそうだが・・・


「もう既にお1人旦那様の正体を知っている方がいます。1人か2人かはたまた3人か・・・数は関係ありません。1人でも知っていれば旦那様はアケーナに公爵として言ってるも同義・・・自重して頂ければ幸いです」


「・・・人の心を読むな。もうどうにもならないのか?」


「私はそっち方面は専門外でして・・・ナージ様ならお答えを持っておりるかと」


「ナージか・・・アイツの答えなら俺も分かる」


「お聞きしても?」


「『戦争を起こせばいいじゃないですか』だ。バレても問題ない・・・アイツは軍略家だからな・・・その腕を振るいたくてウズウズしているだろうし」


サタン大陸を任せておいて正解だったかも・・・真っ先に相談してしまいそうだが答えは分かりきってるもんな


領地間の戦争は度々起こる・・・カレンのところとも戦争になりかけたし・・・


互いの主張があまりにも変ではない限りスウも介入せず戦争に発展してしまうだろう。そして頃合いを見て国が介入し戦争を止める・・・その時の優勢度によって裁定が下されるって訳だ


まあ俺が負ける事はないだろう・・・俺1人でもお釣りが来るくらいだ


けど向こうはどうだろうか・・・戦争になれば犠牲になるのは貴族ではなく一般の兵士達だ・・・本気でかかって来たら俺も全員を死なせずにいられる自信はない


・・・待てよ・・・別に普通の戦争をする必要はないのでは・・・ゲートで侯爵のいる屋敷に忍び込み侯爵を討てば・・・


「だいぶ物騒な事を考えているようですね」


「だから読むな・・・そうだな・・・ちょっと考えが物騒だった・・・ナージの影響かな?」


「元々かと」


「おい」


「・・・平和的・・・とは言えませんがひとつだけ浮かんだ事があります」


「専門外なのに?」


「はい。凡人の考えかも知れませんがアケーナ領主である侯爵様と争っておられるのは冒険者ギルド・・・ですよね?」


「そうだな・・・争っていると言うか・・・揉めている?」


「同じ意味ですね。でしたら構図としては貴族と国になるのでは?」


絶対俺をバカにしてるよな・・・サーテンって


「まあギルドは国直属だからな・・・それで?」


「でしたら国を巻き込んではどうでしょうか?」


「?・・・つまり?」


「・・・旦那様が勝手に動けば貴族対貴族となってしまいます。ですが旦那様が国から依頼されたとしたら?」


国から?・・・そうか・・・今の段階は一介の冒険者のフリをした貴族である俺が長とはいえ一ギルド職員に過ぎないギルド長に依頼されたから問題であって国から公爵の俺に依頼されれば・・・


「侯爵も文句は言えない、か。侯爵の領地とはいえ国の所有地・・・どちらが上かと問われれば国となる・・・」


「はい。侯爵様に黙っていたとしてもそれは国から隠密にと言われていたからと申し開きすれば問題ないかと」


「だな・・・事が事なだけに領主に黙って調査していたとしても問題はない・・・まだ疑惑の段階だったから黙っていたと言えばいいだけだし・・・専門外のくせによく思い付いたな」


「誰でも思い付くかと」


「・・・」


遠回しに・・・いやド直球で悪口を言われた気分だ。よし、しれっと給料を下げておこう


「ちなみに」


「?」


「アイデア料は要りません。旦那様の忠実な執事ですので」


「・・・お前の方が何もかも上手だな・・・サーテン」


「恐れ入ります」


忠実な執事の給料を下げるわけにはいかないな・・・んのやろう・・・本当に心を読めるんじゃないか?


まあでもこれで問題はなくなった・・・後はフェンリルを探して本当に異変の犯人なのか聞くだけだ・・・ダンジョンコアの行方も気になるしな


その前に一応話しておくか・・・事後承諾でも良さそうだけど念の為に、ね──────

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