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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
736/856

731階 謎の店

「見損なったよダストンくん。攻略組から抜けたと聞いたが?」


「ダス()()です侯爵閣下・・・それに抜けたのではなく抜けさせられたのです」


跪く男が異を唱えると椅子に座りふんぞり返る男は鼻を鳴らし側に立つ男を見た


「聞いたか?レースト。抜けさせられただと」


「はっ、目の前にいるダステンはこの街の実力者と聞いております。抜けさせられたと言うのは些か疑問が残る言葉かと」


「だよな?本当は抜けたんじゃないのか?この私に逆らう為の方便にしか聞こえないもんな」


「そ、そんなことはっ!」


「ダストンくん・・・今はレーストと話しているのが分からないのか?これだから冒険者というのは・・・なあ?レースト」


「はっ、弁えも知らぬ無法者の集まり・・・彼はマシな方だと思っていましたが所詮は同じ穴のムジナだったということかと」


「・・・」


「そう言えば冒険者の中に私の誘いを断った者もいたな・・・せっかくその汚れた身体に高貴なものを注いでやろうと思ったのだが・・・」


「あの女ですか・・・しかし抱いてしまうと閣下のお身体が汚れてしまうのでは?」


「それもそうだな・・・さてダストンくん・・・私の望みは分かっているよな?」


「・・・ギルド長の目的を探りもし目的がダンジョン攻略なら全力で阻止する・・・」


「分かっているじゃないか・・・それなのに攻略組から抜けてどうする?もし万が一ダンジョンコアを攻略組が破壊しようとしたらどうやって止めるつもりだ?」


「アケーナダンジョンを破壊する事はないはずです!そんな事は・・・」


「おいおいダストンくん・・・君の感想など聞いてないのだよ。私だってそんな馬鹿な真似なんてするはずはないと思っているさ。だが言っただろ?『万が一』と。もし万が一ダンジョンが破壊されたとしたらその損害は計り知れない・・・君が保証したとしてもし万が一破壊されたら・・・君の命じゃとてもじゃないが足りない・・・家族や仲間を含めても足りないのだよ・・・ダストンくん」


「っ!・・・」


「私もね・・・君や君の家族、そして仲間の命でダンジョンの補填が出来るのならその言葉を信用するさ。補填が出来ない者の言葉はただの戯言であり信用する方が馬鹿を見るのだよ・・・ダストンくん」


「・・・軽率でした・・・」


「やはり冒険者にしては賢いなダストンくん。ではこれから君がやるべき事は分かるだろ?・・・何とか攻略組に入り阻止するのだ・・・分かったな?」


「・・・はい」


ダステンは頷き立ち上がると一礼して部屋を出て行った


「・・・やはりどうしようもないな冒険者は」


「仰る通りです」


「それにしてもギルド長め。ギルドが国の管轄でなければとっくに首をすげ替えているところだが・・・」


「王都の総ギルド長に送ったプレゼントは効果あったのでしょうか?」


「あったはずだ。歳を取ると自分の事より身内の事を優先するのは世の常・・・それが可愛い孫であったら尚更だ。なので女王陛下の耳に入る事はあるまい・・・あの小娘は庶民の味方を気取っているからな・・・これまで国に貢献していた貴族を蔑ろにし庶民に肩入れするなど愚の骨頂だと気付く頭もないらしい」


「・・・閣下・・・」


「おお、すまんすまん。つい、な。しかし貴族を減らすだの地位を見直すだの言われればついつい悪態も出るというもの・・・お陰で今まで相反していた派閥が手を組むことになったのは不幸中の幸いだがな」


「・・・女王陛下も反発があると知りつつなぜそのような・・・」


「公爵・・・ロウニール・ローグ・ハーベス公爵の存在が大きい。後見人のような立ち位置であり小娘の発言に公爵が見え隠れしている。虎の威を借る狐とは正に小娘の事を言うのだろう。だが反対に公爵さえどうにかなれば御しやすい利点もある」


「あの公爵をどうにか出来るのですか?」


「出来る出来ないではない・・・するのだ。正攻法ではなく搦手で落とす・・・必ずや意のままに・・・そしてゆくゆくは私がこの国を・・・統べるのだ──────」





「なん・・・だと?今日はお前抜きで?」


「はい。どうせ回復が必要な場面なんて来ないと思いまして」


ギルドで待ち合わせしていたガートンに『今日はスミとセンだけを連れて行ってくれ』と言うと露骨に嫌そうな顔をした


「お前なぁ・・・俺はよくてもウェルのやつそういうのめっちゃ嫌うんだよ・・・あんなだけどいい加減なやつに容赦なくてさ」


「ではこう伝えて下さい。『レオとの食事が決まりました』と」


「・・・いい性格してるな」


「よく言われます。では、スミとセンをよろしくお願いします・・・ガートンさん」


「チッ・・・分かった分かりましたよ・・・まあ色男との食事が出来るって聞けば2人も文句は言わねえだろ・・・ったく・・・」


ブツブツ言いながらもガートンは2人を連れて受付に行きダンジョン行きの申請を行いギルドを出て行った


残された俺はそのままギルドを出て街に繰り出す


どういう訳かウロボロスの反応はアケーナからしていた・・・俺を追って来たのかそれとも何か企んでいるのか・・・とにかく1000年前の真実を知る為にウロボロスを探し始めた


大体の場所は分かるけど細かい場所までは分からない・・・ダンジョンにいるかとも思ったけどダンジョンとは反対側に進むと気配を強く感じるのでそれはないみたいだ


この街にウロボロスが興味を引くところが他にあるのだろうか・・・うーむ


当てもなく彷徨うよりは反応を追った方が早いと判断し反応の強さを確認しながら歩いた


「ん?」


人気も少なく寂れた繁華街とも言うべき場所で反応が強くなる。そして建ち並ぶ店を通り過ぎていると一際大きな反応を示す場所の前で立ち止まった


「・・・ここだよな?」


潰れているのか開いてないだけなのか閉まっている両隣の店に挟まれるようにして存在する地下への階段・・・この下からウロボロスの気配を感じる


まるでダンジョンに挑むかのように階段を一段ずつ降りると正面に扉が現れその扉を押し開けた


「まだ開店前・・・よ?」


扉を開けられた事に気付いたカウンター奥の女性・・・っぽいものが俺の顔を見るなり固まってしまう


「・・・」


「・・・」


互いに見つめ合うこと数秒


ボス部屋に突入したが如くの緊張感が漂う・・・訳もなくウロボロスは片眉を上げて首を傾げた


「なんで・・・」


「こっちのセリフだ・・・何してんだ?」


「何って・・・店?」


「なぜ疑問形・・・人間を操って接客させたりメイドに成りすましたりする魔族は見た事があるけど店を開く魔族は初めて見たぞ?」


「別にいいでしょ?暇なんだもの」


「暇で店を開くな・・・ってここは何の店だ?」


「見たら分かるでしょ?お酒が飲めるお店よ。採算度外視でやってるからかなり安くて人気なのよ?私という目の癒しになる美女もいるし」


「はっ倒すぞ?」


「何でよ!・・・てか何しに来たの?たまたまふらりと入った店に私がいた・・・って訳じゃないわよね?」


「そうだった・・・質問が雪だるま式に増えていくから当初の目的を忘れてたよ。この店の事は後で聞くとして・・・単刀直入に聞く・・・1000年前にインキュバスを倒した後の勇者アークを倒したのは誰だ?」


「フェンリル」


「そうか・・・フェンリルって奴が・・・え?」


「なに?」


「いや・・・そう・・・なんだ」


あまりにもあっさり答えが聞けて拍子抜けしてしまった・・・フェンリル・・・へえ・・・


「なによ?聞いてきたから答えただけでしょ?」


「いやまあそうなんだけどな・・・色々考えていたのが馬鹿らしくなったと言うかなんと言うか・・・ちなみになんでアークはそのフェンリルをアバドンと勘違いしたんだ?」


「勘違い?」


「ほら、ヒース達が新たな大陸を目指して旅立ったのはインキュバス大陸にアバドンが出現したからって言ってたからさ・・・アークはアバドンを見て勝てないと思ったからヒース達を送り出した・・・けどどうしてアークはフェンリルをアバドンと勘違いしたのか気になってな」


「・・・そう言えばそうね。対アバドンとか言って大層なものを作ってたくらいだし・・・けど本来ならあの時代の人間はアバドンを知らないはず・・・となると」


「となると?」


「幻・・・を見たってところかしら」


「幻?アバドンの?」


「そうよ。正確に言うと見せられたかしら?フェンリルの能力は『幻影』・・・幻を見せる能力を持つ魔族・・・実力的には大した事ないけど人間にとっては最悪の魔族よ」


「大した事ないのに最悪の魔族?」


「そそ。人間は想像力豊かだから幻に弱いのよ・・・フェンリルの出す幻をお得意の想像力で膨らませてしまう・・・逆に同じ魔族には幻が効かなくて・・・だから魔族の強さとしては下の方だけど対人間では最強に近いかもね」


「なるほど・・・そのフェンリルにアバドンの幻を見せられて・・・ん?なんでアバドンなんだ?」


「それは決まってるじゃない。インキュバスを倒した勇者に対抗するにはインキュバスと同等もしくは強いアバドンしかないって考えたんでしょ」


そっか。アークはインキュバスを倒した勇者・・・だから並大抵の魔族じゃ太刀打ち出来ないと判断してフェンリルが知る中で最も強いと思われるアバドンを・・・


「じゃあその幻のアバドンを使ってアークを?」


「幻じゃ殺せないわ。幻と戦わせて疲弊したところでガブリ・・・って言うのがフェンリルのやり方だから勇者にもそうしたんでしょ」


「ウロボロスはその場面を見てないのか?」


「フェンリルの戦いは面白くないからね。幻を使い高みの見物を決め込んで疲れたところでトドメを刺すなんて戦いが面白いと思う?」


「知らんがな・・・でもまあ確かに面白くはないかもな・・・」


魔族に幻が効かないって事は人間が幻を相手に剣を振り回していても傍から見れば1人で剣を振り回しているようにしか見えないって事だもんな・・・んで疲れたところで・・・ガブリ?


「フェンリルってのは獣かなんかか?ガブリって人間に噛み付いたように聞こえるけど・・・」


「獣・・・そうね・・・獣って言葉がピッタリかも。動物で例えるなら犬・・・いえ狼が近いかしら。狼の姿をした魔族・・・それがフェンリルよ──────」


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