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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
734/856

729階 レオンとニーニャ

「・・・なかなか趣のある店だね」


「だろ?密談にはもってこいだ」


「皮肉が通じないのかな?」


暗い店内、仕切り用の布のカーテン、豪華なソファーに隣に座る女の子・・・密談にはピッタリじゃないか何を言っているんだコイツは


「わーこの人イケメーン!私今日お持ち帰りされちゃうかも!」


「ちょっ!ズルいわよ!席変わりなさいよ!」


「いやですよーだ!ねえお兄さん・・・私と後でいい事しない?」


それぞれに1人ずつ女の子が付くシステムなのか俺達5人に対して女の子が1人ずつ隣に座りお酒を注いでくれる。その中でもレオンの隣に付いた子のはしゃぎっぷりたら・・・いや、嫉妬じゃないぞ!


「・・・」


っと、1人我慢の限界を迎えてる奴がいるな


「悪いがこれから大事な話があるから席を外してくれるか?金なら通常通り払うから」


「ええー!いいじゃない私達こう見えても口は堅いわよ?お偉いさんの秘密の話とかよく聞くしー」


「いいから・・・誰かさんが暴れない内にさっさと出て行ってくれ」


「・・・はーい」


5人の女性は一斉に立ち上がると店の奥へと消えて行った


残された5人・・・俺とレオン、そしてニーニャとオードとブルはとりあえず目の前にある酒が注がれたコップを手に取り口に含んだ


「・・・元気そうだな」


「我儘を言ってエモーンズを離れて悪かった・・・せっかく居場所を提供してくれたのに・・・」


「別に・・・んでなぜアケーナに?」


「お金が少々必要になってね」


「お金?まさか稼ぐ為にダンジョンに?」


「そう・・・初めはね。今はちょっと事情が違って来てるけどね」


「ふーん・・・エモーンズで稼げばいいのに」


「戻る時は形にしてから戻りたかったからね。何も成してないのに戻るのは格好悪いだろ?」


「・・・何の為に金を?」


「街を・・・いや村を作ろうと思ってる」


「・・・は?村?」


「そう村だ・・・偏見のない私達の村を──────」




レオンの話はこうだ


エモーンズに居た頃は居心地が良いが釈然としないというかモヤモヤしていた。そのモヤモヤの正体は罪の意識・・・スウによって無罪放免になったとはいえ『タートル』の頃のレオン達は悪逆非道の限りを尽くしていた。仲間を集める為に見込みのある冒険者に課題を出しその課題をクリア出来なかったり放棄したら殺す・・・仲間にならない奴は全員敵と思っていたからなんだろうけどあまりにも非道過ぎた


そして仲間を集めたら今度は闘技場にいる奴隷闘士を王都に解き放ち街をパニックに陥れリガルデル王国を使ってフーリシア王国を落とそうとするし隙をついて当時の国王を殺そうと・・・うーん思い出せば出すほど生きているのが不思議なくらい罪を重ねてるよなレオンって


そりゃ罪の意識に苛まれるのも無理はない・・・平和の中でのうのうと暮らす自分が許せなかったのだろう


んで思いついたのが人助けをしようというものだった。幸いな事に人を助ける力は持っている・・・だから一生を賭けて罪を償う為に人助けを・・・ところがまあフーリシア王国は平和も平和・・・特に困った人などおらず途方に暮れているととある光景を目撃する


それは些細なイジメだった


子供同士でじゃれ合ってるいるだけかと思ったがよく見るとそうではなく明らかにイジメ・・・見た目を揶揄し本気ではないとはいえ小突いたり蹴ったりを繰り返す。イジメを受けている子供は抵抗することなく必死に耐えているだけ・・・見かねたレオンがイジメている子供達にやめるよう言うと子供達は逃げて行きイジメられていた子供だけが残った


『なぜ抵抗しない?』


『・・・抵抗するともっと強く叩かれるから』


『親は?』


『いるよ』


『なら親に言えばいい。言えないなら私が代わりに・・・』


『やめてよ!そんな事したら殺されちゃう・・・だから・・・やめてよ・・・』


『・・・』


レオンはその子とほんの少しだけ会話するだけで全てを察した


この子には居場所がないのだと


家も外も・・・この子が安心して暮らせる場所などなくただ耐えるだけの日々を過ごしているのだと


レオンはその子と一緒にその子の家に行き、両親と会った。そして一言



『この子をいくらで売る?』



と言い放つ


当然いきなりそんな事を言われて困惑する両親だったがしばらくすると下卑た笑みを見せ法外な金額をふっかけてきたらしい・・・レオンはその額に眉ひとつ動かさずその場で払うと子を連れて家を出た・・・うん人身販売だね


「・・・その子は?」


「宿にいる。さすがにダンジョンには連れて行けないからね」


「まさかその子の為に金稼ぎを?」


「違う・・・その子の為だけではなく居場所のない者の為だよ。一時的な解決なら出来る・・・イジメていた子達や両親を懲らしめれば一時的には改善されるだろう・・・だが時が経てばまた繰り返されるはずだ」


「だろうな。ならレオンがその子を鍛えてやればどうだ?イジメっ子や両親くらいすぐにボコボコに出来るくらいには鍛えられるだろ?」


「その子だけならね。けどそういう子を見かける度に鍛えて回っていたら時間がいくらあっても足りない・・・それにそういう子ばかりではないしね」


「と言うと?」


「今話した子はもしかしたら力で解決出来るかもしれない。けど別の子は違うかもしれない。例えば『タートル』のメンバーの中に同性愛者がいた・・・彼は悩んだ挙句自分の気持ちを押し殺し冒険者となった・・・『タートル』に入れるくらいだからそれなりの実力者っていうのは分かるよね?でも解決しなかった・・・結局彼は自分の気持ちを押し殺したまま・・・」


『タートル』にそんな人が・・・今彼って言ったよな?まさか・・・


と、オードとブルを見たが2人は顔の前で手を横に振り違う違うとアピール・・・まあオードに至ってはさっきまで横にいた女の子に鼻の下伸ばしてたし違うだろう・・・ブルは・・・知らん


「そう詮索しないでくれ。彼も奇異な目で見られるのが嫌で黙っていたのだから・・・」


「別に俺は奇異な目で見るつもりはないけどな・・・襲って来たらぶっ飛ばすけど」


「それは好きにしてくれ。まあもう彼は居ない・・・と、余計な事を言ったね。とにかく居場所がなく力では解決出来ないような人が知らないだけで大勢いると言いたかったんだ」


「まあ・・・そうかもな。んで村を?」


「居場所がないなら作ればいい・・・エモーンズに居たからこその発想だよ」


「それは嬉しい事を言ってくれる・・・てか、それならエモーンズの中に作っちゃえば?」


「いや、多分難しいだろうね。オードはともかくブルが一緒について来たのは無理だったからなんだ」


「無理?何が?」


「ブルはセーレン教とは違った神を崇める宗教の生き残りって言うのは知っているだろう?それでエモーンズに立派な教会を」


「寺院だ」


「・・・寺院を建てたんだけどね・・・まあエモーンズに聖女が居るってのいうのも災いして誰も来なくて・・・」


・・・そりゃセシーヌとツルッパゲのオッサンならセシーヌの所に行くわな


「ブルは聖女だけの問題じゃなく偏見というか思い込みのせいだった思っててね。『宗教はセーレン教』っていうのが当たり前過ぎるから人が来ないのだと・・・私もそれは少しはあると思っている・・・ほんの少しだけどね。既存の考えがある中で新たな考えを広めるのは難しい・・・ならいっその事セーレン教の教えが広まらない場所を作ろうかと」


「なるほどね。それをする為には新たな土地で新たな村を作る必要がある、と」


「偏見も思い込みも宗教もない村・・・もちろんブルも教えを強要するつもりはないし住んでてイヤになったら出て行っても構わない・・・住んでいて居心地がいい村を目指すつもりだよ」


「なんだ・・・ライバル出現って訳か」


「そうなるね。ただ先立つものがなくて今のところ実現は相当先になりそうだけど・・・出資者もいるにはいるけど・・・」


「ジース?」


レオンの後ろ盾になっていた貴族ジース・バクアート・クルアク・・・センジュの兄でもあるジースがその出資者か


「はい・・・ただバクアート家は闘技場の件でかなり財を失ったから・・・今は持ち直して来たみたいだけど村を作るには全然足りないんだよね」


「それでアケーナダンジョンに出稼ぎに来た、と」


「だけどなかなか上手くいかないものだね・・・来て早々冒険者の行方不明者が多く出ていて・・・捜索隊を結成するとか何とか言ってたから立候補したら稼ぐどころじゃなくなってしまったよ。まあもちろんギルドから対価は貰っているけどね」


人命救助の為だからそこまで金も貰ってはいないだろう・・・けど人助けを目的としていたから断る訳にもいかずって感じか


「早く原因が突き止められればいいのだけど・・・そう言えばロウニール君はなぜアケーナに?」


「エモーンズから冒険者が離れ始めたからアケーナダンジョンがどんなものか見に来たのだけど・・・今はお前と同じような立場だな」


「と言うと捜索隊?」


「いや、調査だな。フリップが余計な事を言ったからアケーナのギルド長に頼まれて・・・色々とややこしい事になってるよ」


「君らしいな・・・あの連れの2人は?見ない顔だったけど・・・」


「ああ、あの2人は・・・」


「邪魔するぜ!困るなぁお客さん・・・ここは女の子と楽しく会話する店だ。女の子を出て行かせたとあっちゃこっちも黙ってられねえな」


レオンとの会話を邪魔するようにカーテンを開けて入って来たのは・・・うん、お前か


「居させるのも出て行かせるのも客の自由だろ?エイム」


「あん?なんで俺の名前を・・・・・・・・・兄さん?」


「その『兄さん』だ。また店で暴れるぞこの野郎」


「か、勘弁してくだせぇ!」


顔を強ばらせるエイムを見てレオンは振り返り俺を見た


「・・・知り合いかな?」


「まあね。この街ケッペリを仕切るダーザン一家の跡取り息子のエイムだ」


懐かしいな・・・ここで暴れてテリトー一家の所に乗り込んだのが遠い昔に感じる


「あ・・・えっと・・・兄さんならいくらでも飲んで好きにしてくだせぇ!お代も結構なんで」


「飲んだ分は払うよ・・・けどボッタクったら・・・」


「そんな事する訳・・・ねえです・・・」


コイツ目を逸らしやがった・・・さては俺と知らないでボッタクろうとしてたな?


「・・・潰すか・・・この店・・・」


「ま、待ってくださいよぉ!この店潰されたらおまんまの食い上げに・・・」


「人を食いものにしてよく言うよ・・・ボッタクるな!誠実に働け!あと女の子の衣装を何とかしろ!」


「え?・・・脱げと?」


「薄着だって言ってんだ!もう少し肌の露出を抑えろ!」


「・・・はい」


ショボンとしたエイムは頭を下げるとか細い声で『お楽しみ下さい』と言い残し去っていった


ったく・・・誰が脱げと・・・裸で接待なんかされたらサラに殺されるわ!・・・ん?そう言えば・・・


「そう言えばどうしてニーニャはナル達と揉めてんだ?」


かなり険悪な雰囲気だったし気になる・・・何かきっかけがなければあそこまで険悪にならないだろう


昔ならともかく今は真っ当な冒険者してるみたいだし・・・


「ふん!あの犬が粉かけて来たんだよ!ニーニャの旦那に!」


「・・・ニーニャの旦那?誰それ」


「ニーニャの旦那はレオン様・・・じゃなくてレオンに決まってるでしょ!」


そっかそっかレオンに決まって・・・え、ええ!?レオンとニーニャが・・・結婚!?──────

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