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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
724/856

719階 ギルドカード

フレシアとの話も終わりシャリファ王国からエモーンズの屋敷へと戻って来た


やる事は沢山歩けれどやはりここはダンジョン都市・・・ダンジョンが流行らなければならない・・・という訳で山ほどあった書類をある程度目を通すとリフレッシュを終えたジェファーとセイムにお返ししといた


「アケーナに?」


「うん。最近ダンジョンの件で悩んでてね・・・それで長年ダンジョン都市として栄えているアケーナを見に行こうかと」


「あー・・・確かここを去る予定の冒険者達とたまたま会ったとか言ってたっけ?その時に言われた事をまだ引きずってるの?」


たまたま会った・・・サラにはそう説明している。まさかローズの墓を荒らしに来た連中・・・とは言えないもんな


「エモーンズがダンジョン都市としてこの先栄えるには冒険者が必須・・・その冒険者に飽きられるのは死活問題だしね」


お金はいくらでも創れる・・・けどそれをするとお金の価値が下がるって話だし・・・となると真っ当にお金を稼がなければならない。ダンジョン都市であるエモーンズの資金源はダンジョンだ・・・多くの冒険者を集めその冒険者達が経済を回す・・・その為には飽きられないダンジョンを作らないと・・・


「・・・仕方ない事とはいえまたジェファーが発狂しそうね」


「もうしてたよ・・・てかサラは平気?一応毎日戻って来るつもりだけどまだ乳母も決まってないし・・・なんなら乳母が決まるまで・・・」


「私は大丈夫・・・最近メイド達にも慣れてきたのか最初ほど拒絶しなくなったしね。乳母は要らないかもとも思ったけど彼女達も自分の仕事もあるし・・・」


・・・俺の時は抱っこするとまだ仰け反るのにメイド達には慣れただと?・・・やはり一緒に過ごしている時間が違うからか?くっ・・・羨ましい・・・


「それで誰と行くの?毎日戻って来るなら1人?」


「そのつもりだったけど1番他のダンジョンを見ておいた方がいい人を連れて行こうと思う。アケーナダンジョンが参考になるか分からないけどね」


「見ておいた方がいい人?」


「うん・・・エモーンズのダンジョンは今後も任せっきりになると思うからね・・・彼女に──────」




そんなこんなでサラの許可を得たので着いてからスムーズに事が進むようにエモーンズのギルドでギルドカードを作ってから行く事にした


いつの間にか建て直されていたギルド・・・今までと比べて倍以上の大きさになったギルドに入ると外から見た時よりもかなり広く圧倒される


「・・・」


俺の知らない冒険者・・・って事は相手も俺を知らないのだろう・・・冒険者達は入って来た俺達の事をジロジロと品定めするように見ている


そして・・・


「3人組・・・スカウト、魔法使い、近接アタッカーってところか?」


「ぽいな・・・野郎共はともかく女はえれぇべっぴんじゃねえか・・・そそるぜ」


わざと聞こえるように会話する冒険者・・・惜しいな2人は合ってるけどスカウトじゃなくヒーラーだ


んで2人は・・・あん?


コソコソと話していた冒険者の1人が椅子から立ち上がるとこちらに歩み寄り先頭に立つ俺を通り過ぎた


そして俺の後ろにいる女性の前に立つ


「こんな冴えない奴らと組んでないで俺達と組まねえか?イケイケのCランクパーティーだぜ?」


コイツ・・・あっ!


「スラ・・・じゃなくてスミ!」


男が女性・・・スミに手を出そうとした瞬間、彼女の腕は巨大なハンマーの形に変わり男の頭の上でピタリと止まる


俺が止めなかったら・・・彼は建て替えたギルドの床のシミになっていただろう


「ば・・・化け物・・・」


彼女・・・スミの正体はスライムのスラミだ。こうなる事を懸念したからこそ彼女は『魔法使い』だったのに・・・


スラミの本来の戦い方はスライムボディを活かしての格闘・・・つまり近接アタッカーだ。しかしアケーナダンジョンで冒険者として挑むなら他の冒険者の目もあるからスライムボディを活かした今のような攻撃・・・つまり体を変化させて戦うとスライムってバレないまでも人間ではないとバレてしまう


その点拙いまでもある程度の魔法が使えると分かったので魔法使いを演じるよう伝えていたのだが・・・


「化け物?・・・それが遺言ですか?マスタートドメを刺してもよろしいでしょうか?」


「・・・よろしくないです」


創った当初は命令にただ従う魔物だった。けどどういう訳か少しずつ変わっていき今では人間と同じように感情で動くように・・・


命令しなくても動くようになったのは非常に助かるが今みたいに感情で動くと余計なトラブルが起きそうで危険だ


ちなみにもう1人はシャドウセンジュだ。以前よりは感情が芽生えて来たような感じもするがスラミよりはマシだ


ちなみにスラミをスミと呼ぶようにシャドウセンジュもセンと呼ぶことにしている・・・ってそれどころじゃないな・・・スラミ・・・じゃなくてスミの腕の変化を見てギルド内はかなりザワついている


「ギルド内での私闘は如何なる場合も禁止です!たとえそれが公爵様であろうとも」


ギルドの空気を一変させた声の主はペギー


わざわざ言わなくていい事を言ったのは場を収める為か・・・冒険者が貴族を苦手としてるのは・・・と言うか嫌いなのは周知の事実だしな


「公爵?・・・まさかこの街の・・・」


「領主だ。別に畏まらなくていいから・・・スミに謝れCランクパーティーの冒険者」


少しやり過ぎたがそもそもコイツがスミにちょっかいを出そうとしなければ起こらなかったことだしな


「・・・も、申し訳ありませんでした・・・」


「うむ死罪」


「え!?」


「冗談だ。スミ、気が済んだか?」


「はいマスター」


「ロウと呼べと言っただろ?・・・まあいい受付に行くぞ」


「はいマ・・・ロウ様」



スミとセン・・・この2人を連れて行く事に決めたのは今後もダンジョン経営はこの2人に任せようと思っているからだ


これまではスミにダンジョン経営を任せっきりだった。今の俺の立場上これからもそうせざるを得ないだろう。しかしこのままではいずれ冒険者達に飽きられてしまうかもしれない・・・なので実質的な経営者であるスミと器用で何でもこなすセンをお手本となるかもしれないアケーナダンジョンに連れて行き盛り上げてもらうんだ・・・エモーンズダンジョンを!


もちろん俺もアケーナダンジョンに行き意見は出すつもりだけどね


という訳で


「この2人のギルドカードを!そして俺のギルドカード再発行をお願い!」


「・・・再発行?まさかギルドカードを無くされたのですか?それにそのお2人・・・『普通』ではありませんよね?」


受付に行きペギーにお願いするとジト目で返される


「あ、いや・・・多分探せばあると思うのだけど・・・」


「では探して下さい」


「えっと・・・これを機に作り直してしまおうかと・・・ほら、本名だと貴族ってバレるから偽名で登録し直そうかと・・・」


「再発行ならまだしも偽造をせよと・・・そう仰るのですか?公爵様」


「偽造って・・・ま、まあそうなる・・・かな?」


あれ?ちょっと雰囲気が・・・あっ!そういえこれまでは偽造カードってサキに作ってもらってたんだった・・・言えばすぐ作ってもらえてたから勘違いしてたけど普通に考えて偽造なんてダメに決まってる・・・


「・・・私では判断しかねます・・・と言うかお断りする案件だとは思いますが一応はギルド長に確認してみますので少々お待ち下さい」


終始不機嫌そうに言うとペギーは席を立ち奥へと消えて行った


その際にペギーの肩に乗るリスのリルがペコリと俺に挨拶する・・・まるでペギーの代わりに謝っているような・・・そんな仕草だった


しばらくするとまだ不機嫌なペギーに案内されて2階にあるギルド長の部屋へ


どうして不機嫌なのか結局分からずギルド長であるフリップと話す事となった


「・・・話は少し聞いたが・・・ギルドカードの偽造と訳の分からん輩のギルドカードを作れ・・・だと?」


挨拶もそこそこにフリップも怪訝そうな顔で尋ねる


「ダメ?」


「当たり前だろ!・・・ハア・・・誰だお前を貴族にしたのは・・・」


王様です


「いいか?ギルドってのは冒険者を管理する機関だ。そのギルドがギルドカードを偽造してみろ・・・ギルドカードの信用度はガタ落ちして冒険者が街に入れなくなっちまうぞ?」


うっ確かに


ギルドカードは偽造が出来ないからこそ許可証の代わりになる。俺の周り・・・レオンやら俺自身が偽造していたから忘れていたけどギルドカードとは本来そういう物だ。それなのに俺は・・・


「しかもペギーの話だと連れの2人・・・1人はどうか不明だが1人は魔物・・・だろ?」


「・・・分かる?」


「連れているのがお前じゃなければ特殊技能か何かだと思うかもしれねえが連れているのがお前だとな・・・腕がハンマーに変化したって聞くとどうしても魔物じゃねえかって疑っちまう。なあ?魔物の親分さんよぉ」


「誰が魔物の親分だ・・・てか他の街なら・・・」


「アホか。魔物にギルドカードなんて発行出来る訳ねえだろ・・・ギルドカードは人間の冒険者用なんだよ」


「そこをなんとか」


「ダメだ!てかペギーにそれを頼むかねぇ・・・不正しろって言ってるようなもんなのによぉ」


あっ・・・だから不機嫌になってたのか・・・


そりゃそうだ。いきなり訪ねて来て『不正してくれ』なんて頼まれたらそりゃ不機嫌にもなるって話・・・後で謝らないと・・・


けどそれとは別でどうしてもギルドカードが必要だ。ゲートを使ってダンジョンに入ることも可能だがそれだと冒険者目線で見るのは不可能・・・ちゃんと冒険者として入る為にも・・・そうだ!


「フリップギルド長・・・少しある人と話したいんだけどいいかな?」


「構わねえけど俺の目が黒い内は何しても不正は許さねえぞ?」


「ああ・・・不正じゃなければいいんだろ?」


「あん?」


偽造カードは不正だけどもし不正にならなければ?それが出来るのはコイツしかいない


通信道具を取り出してマナを込める。すると少しして反応があった


《・・・なんだ?日程が決まったのか?》


「それは後回しだ。ひとつ頼みたい事がある」


《頼みたい事?珍しい・・・言うてみよ》


「俺と2体の魔物のギルドカードの発行許可をくれ」


「おい!」


《?誰ぞ居るのか?構わぬがこちらは責任を負わぬぞ》


「即答かよ・・・大丈夫、責任は全て俺が負う」


まあ何も起こらないと思うが・・・


「待て待て待て・・・誰か知らねえが勝手に決めるな!いくらロウニールが公爵だろうとこの件はギルド管轄だ。ロウニールは偽名で登録しようとしているし魔物なんて論外・・・総ギルド長ならともかく何処の馬の骨とも知らねえお前さんが許可したところで俺は許可しねえぞ!」


話がまとまったかに思えたがフリップは頑なに許可を出す気はないと主張する


《ほう?セデスの許可なら通るが妾の許可は通らぬか》


「いや『わらわ』とか言われても誰だが知らねえし」


《名乗ればよいのか?スウ・ナディア・フーリシアだ》


「あのなぁ、どこぞのスウ・・・スウ!?」


《呼んだか?》


「ぱっ・・・」


通信の相手が誰だがようやく気付き通信道具を指差し口をパクパクさせるフリップ


「やるな。女王を呼び捨てにするなんて俺でも出来ん」


「ふざっ・・・・・・・・・マジ?」


《よう言うわ・・・お主に女王陛下と呼ばれた事など数える程しかないわ。それでそこに居るのは誰なのだ?》


「・・・通りすがりのオッサンだ」


《そうか・・・では通りすがりのオッサンに伝えておけ。フーリシア王国国王スウ・ナディア・フーリシアが命ずる『同国公爵ロウニール・ローグ・ハーベスの言う通りにせよ』とな》


「伝えておくよ。今は会話どころじゃなさそうだからな」


《うむ。それで(くだん)の件はどうなった?早う顔が見たいのだが》


「何時でもいいって言われてるけど俺も色々と忙しい・・・ゲートで行き来した方がいいだろ?」


《いや、視察がてらにそちらに向かおう。お主のゲートは味気ないからな》


確かにパッと行ってパッと帰るじゃ味気ないか・・・会う為にわざわざ来る・・・そうした方がありがたみもあるってもんか・・・


「分かった。サラには伝えておく・・・いつ到着するかは手紙か俺に通信で教えてくれ」


《あい分かった。長旅は久しぶりだ・・・ついでに他の街の視察も兼ねるとするか・・・では早速準備にかかるとしよう》


「・・・意外と国王って暇なんだな」


《バカをぬかせ。お主の子に会うのは何より優先すべき事であろう?》


「いやいや・・・まあいいや。とりあえず連絡くれ」


《うむ。では通信を切るぞ・・・妾はこう見えて忙しい》


嘘つけ・・・てか見えないし


でもこれでギルドカードの問題は解決・・・あとはアケーナに行って・・・


「おいロウニール!」


「ん?なんだ通りすがりのオッサン」


「てめえコノヤロウ陛下に繋ぐなら繋ぐって言え!あの方の一言で家族全員どころか一族全てが路頭に迷う事になるかもしれないんだぞ!」


「え!?そんな人を呼び捨てに!?」


「・・・てめえ・・・」


「『スウ・・・スウ!?』ってププッ・・・あの時は笑いを堪えるのに苦労した・・・ん?」


「・・・表に出ろ・・・この戦斧の錆にしてやる!!」


どうやら少し煽り過ぎたみたい・・・まっ、とにかくこれで準備万端・・・待ってろよアケーナダンジョン!調べ尽くして真似してやる!──────

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