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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
71/856

68階 同期

「いやー、助かったぜ。もう少し門番続けてたら発狂してるところだった」


僕は今ドカート隊長と街中を歩いている


と言うのも帰って早々門番を代わってくれと言われ、ドカート隊長は僕が帰って来た事をケインに報告へ、僕は制服に着替える為に家に・・・まあダンジョンだけど・・・戻っている最中だ


「そんなにキツイですか?」


「キツイキツイ・・・お前のサボり癖がなければ一日も持たなかったな」


「サボり癖?そんな癖ないですよ!」


「なーに言ってんだ。聞いたぜ?ヘクト爺さんに。しょっちゅう腹が痛いって言って抜け出してるだろ?酷い時には一日に何度も・・・行ってずっと帰って来なかった時もあったらしいじゃねえか。その話を聞いて俺はピンと来たね・・・ああロウニールの野郎・・・サボってやがる、と」


あうっ・・・何も言い返せない・・・


「んでよ、俺もそれを真似してお腹痛いって言いまくってたらヘクト爺さんが『呪いか?』とか言い出してな・・・あの場所に立つと腹を下す呪いがかかるって疑惑が浮上して立ち位置変えたり色々したけど・・・まあ、呪いでもなんでもねえから立ち位置変えたりしても変わらんわな・・・ヘクト爺さんには悪い事したけど俺の精神崩壊を防ぐ為だ・・・思う存分使わせてもらったぜ?『腹痛大作戦』」


なんだその作戦は・・・まあでも今後も門番を続けようと思ったら腹痛は必須・・・ドカート隊長が続けてくれたお陰でヘクト爺さんに言いやすいかも・・・


「んじゃ俺はケイン隊長に伝えてくっから着替えて門番よろしく!」


「はい」


「サボんなよ!」


お前が言うな!


ドカート隊長は兵舎に向かい、僕は人気のない場所に行くとゲートでダンジョンへ


「お帰りなさいマスター」


「ただいまスラミ。何か変わった事は?」


「特には・・・それと完成した28階には今のところ誰も到達していません」


「そっか・・・まあ出来た28階と27階を繋げただけだからダンジョン変動の揺れも小さかっただろうし誰も気付いてないか・・・まあいずれ気付くだろう」


少し期待したけどまだ誰も辿り着いてないか・・・誰かが入れば評判になって28階は賑わうはず


なんてったって今までで一番苦労した分、かなりの自信作に仕上がったからだ


《まっ、すぐに来るわよ。それか組合長として発表してみれば?『28階現る!』みたいに》


それもいいかも。組合に入って最も得する部分と言えば情報の共有ってサラさんも言ってたもんな・・・今までギルドで出していた情報も組合に入らないと見れなくなったみたいだし・・・組合員を増やすにはちょうどいいかも


「サラさんに連絡してみるかな・・・」


《良かったわね・・・連絡する理由が出来て》


「うん・・・って違ーう!なんでダンコはすぐそうやって・・・なに?僕とサラさんにそんなにくっ付いて欲しいの?」


《別に・・・ペギーよりマシってだけよ》


「・・・ちなみになんで?」


《貢献度》


だよな・・・そうだと思った


でもペギーちゃんだって冒険者ギルドで受付をして間接的に売上に貢献してると思うけど・・・


僕は口に出さずに心の中でそう反論すると久しぶりに支給された兵士の制服を身に着け街の門に向かった




「はい、確認出来ました。エモーンズへようこそ」


くー、これこれ・・・これが日常ってやつだね


旅人、商人、冒険者が来たらギルドカードや通行許可証を確認して街に迎え入れる・・・簡単に見えて奥深い・・・奥深くはないかな?・・・でも街に来た人が一番初めに会話する事になる人が門番だ・・・言わば街の顔・・・やっぱり僕はこうでなくちゃ


「・・・ロウ坊、さっきの旅人の積荷・・・確認したか?」


「え?・・・えっと・・・」


「ハア・・・さっき言ったじゃろ?今後関税を取るようになるかも知れんし、中に危険な物が入ってたり不正に入ろうと荷物に紛れ込む輩もいる・・・大きめの荷物だけではなく手さげでもちゃんと中身は確認せんと・・・」


「あっ・・・気を付けます・・・」


そういえば言われてたんだ・・・忘れてた


関税・・・商品など売る物を持ち込む際に数%の手数料を貰うシステムらしいけど、そんな事したら病人が来なくなってしまうのでは?と思ってしまう


王都は必ず取っており、大きい街も取ってる所は多いらしい・・・って言うのも多くの商人はその街に店を構えその街で商品を売るのではなく、露店を開き売ってしまったら街を去る・・・その際にこの街で安く買えても他の街で高く売れる物を買ってその差額を利益にしているらしい


でもそうなると、ある問題が出て来る


商人は税金を納めない事になるんだ


定住しなければ住民リストには加えられない。つまり納税の義務が生まれない。だとすれば定住せず売り歩いた方が納税分が儲かる・・・って事になる


それを防ぐ為に関税を取り、売り歩いたとしても税金を徴収するシステムを作った・・・けどそれだとさっきも言ったように来てくれる商人が減ってしまう可能性がある


なぜなら定住している商人は売上に対して税金を払えばいい・・・けど売り歩いている商人はまだ売れてもいない商品に税金がかけられ納税する羽目になる。そうなると売れないと赤字になってしまうのだ


必ず売れると分かっていればいいが、そんな商品はそうそうない・・・となると来てくれる商人が減るって訳だけど・・・


「領主も必死ですね・・・定住者を増やすのに・・・」


「うむ・・・裏目に出なければいいがのう・・・」


関税免除の方法はあるにはある


それは商人が店を構えこの街に定住する事だ


そうすれば関税は免除・・・普通に利益を上げたらその分を納税すればいい・・・つまり赤字になった場合は税は免除される事になる


「ヘクト爺さん・・・もし関税が適用されれば・・・僕達で徴収する事になるんですか?」


「いや、そうなれば門番とは別の人材を配置する事になるじゃろうな・・・さすがに責任が重すぎるしのう・・・下手をすると袖の下を渡して通すなんて事も・・・」


「する訳ないですよ・・・そんなの」


「だとしても監視は必要になる・・・計算間違えや見逃しなんていうのもあってはならなくなり、街に入るのにかなりの時間を要する事になるじゃろうのう」


うへぇ面倒だ


「到着時じゃなくて出発時に手続きとか支払いをすればいいのに・・・」


「そうすると行き先を偽る商人も出て来るから難しいのう・・・例えば関税の掛からない街に行くと言って実際はかかる街に行ったりと・・・まあ何にせよ抜け道はあるだろうがのう・・・」


なら全ての街や村に関税を・・・とも思ったけど村に商人が現れなかったら正直キツイ・・・エモーンズが村だった頃は商人なんて1ヶ月に1人か2人・・・それすらもなくなれば物を買うのに売っている場所に行かないといけなくなる


エモーンズは街になってかなり商人も増えたけど他の村は人口も少なく商人も売上が見込めないと判断してしまうからなぁ・・・仕方ないかも知れないけど世知辛い世の中だ


「関税・・・やりますかね?」


「どうじゃろうのう・・・なかなか定住者が増えぬようだから苦肉の策で・・・っていうのはあるかもしれんのう」


やって欲しくないけどやらざるを得ないのかも・・・ヘクト爺さんが言うように『苦肉の策』として・・・


「ほれ、無駄話をしてる間にお客さんじゃ・・・うん?あれは・・・」


ヘクト爺さんはこちらに向かって来る団体を見て目を細めた。僕も確認すると・・・あっ・・・僕の・・・同級生だ・・・


「よう!ロウニール!本当に兵士になったんだな!久しぶり!」


「ただいま~ロウニール、それとヘクトさん。ダンジョンが出来たって言うから戻って来ました」


「おう!」


「あれ?少し変わったロウニール・・・鎧のせいかな?」


僕の同級生で冒険者となった4人・・・ジケット、ハーニア、マグ、エリンだ


確かジケットがスカウトでハーニアが剣士、マグが魔法使いでエリンが盾使いだったかな?


「あ、ひ、久しぶり・・・」


「相変わらず暗いなぁ死神・・・そんなんじゃ女にモテねえぞ?」


久しぶりに言われたよ・・・死神って


どうしてもあの当時の知り合いに会うと当時の記憶が蘇りスムーズに話せない


仮面をつけたら喋れるのになぁ・・・


「ほれほれ、全員並んでギルドカードを見せんか。ランクは上がったのか?」


「もっちろん!・・・って言いたいところだけど頭打ちだよ・・・1年やそこらじゃ新人扱いされて組合に入っても組んでくれる冒険者が少なくてさ・・・やっぱヒーラー居ないとキツいわ」


そう言って見せてくれたギルドカードはEランクとなっていた。1年でEランクだったら御の字じゃ・・・


「最初は勢い任せで突っ込んでってランクはふたつも上がったんだけどね・・・そっから先は量より質って言われて・・・ボスを討伐するにも、ねえ?」


あー、それで頭打ちか


ボスはそれまでの魔物より強い事がほとんどだ。となるとその階や上の階でいくら戦えたとしても負ける可能性は十分にある


だからボス部屋に挑む時は万全・・・つまり装備とパーティーメンバーを充実させなくてはならない


気軽に入って敵わないからと言っても出口は閉まってしまうからね


長期戦になる可能性を考えるとヒーラーは必須に近いかも・・・サラさんくらい強ければそうでもないけどボス部屋までギリギリ行けるってレベルなら長期戦になる可能性は高いし


傷付いたら戦線離脱してたらいくらパーティーメンバーがいても足りなくなるしね


「ハア・・・せっかく10階まで到達したのにさぁ・・・って悩んでる時に村の噂を聞いてな・・・なんでもダンジョンが出来たって言うから戻ってみるかって話になった訳よ」


「そうそう・・・で、見てびっくり・・・何なのこの壁・・・それに村じゃなくて街になるんでしょ?1年で変わり過ぎって感じ」


「うむ」


「ねぇー、私もびっくりしちゃった。多分中を見てもびっくりなんだろうなぁ・・・ねえロウニール、街を案内してよ!」


「へ?」


「おー、いいなそれ」


「エリン名案!外壁を見る限りもう別の場所って感じだしね~生まれ故郷で迷子になったらシャレにならないし・・・友達に案内してもらうのが一番よね」


と、友達!?


世間話はもちろん、挨拶すらした事がないような・・・いや、あの当時は僕がみんなを避けていたって言うか・・・ほとんど喋らなかったからか


「決まり!ヘクトさんいいよね?」


「・・・ふぅ・・・まあよい・・・久しぶりに戻って来たんじゃ戸惑う事もあるじゃろう・・・ロウ坊、案内してやれ」


げっ・・・マジですか!?


「そろそろ腹痛が起きる頃じゃろ?後はワシがいるから今日はもう上がっていいぞ」


・・・なんか色々見抜かれているような気がする・・・でも僕はドカート隊長みたいにサボってる訳じゃないのに・・・


「分かりました・・・じゃあ僕が・・・」


「よろしく頼むわ!それと俺らより先に戻って来た奴いる?まあダンは戻って来てないとして・・・」


いる


彼らより先に戻って来た・・・僕の同級生であり・・・友達が


「・・・案内するよ。君達より先に戻って来た・・・ラックの元に──────」

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