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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
662/856

657階 妄想魔道士

「ふっ・・・」


「そんなに雷が落ちた事が嬉しいのですか?下手したらフラン様に落ちたやもしれないのに・・・」


「別に・・・て言うか私はそんなに嬉しそうな顔をしていたか?」


「ええ・・・まるで童貞を・・・」


「デネット・・・それ以上続けるのであればお前とて容赦せぬぞ?」


「これは失言でした」


まったく・・・それにしても偶然とはいえ雷が・・・いやでもそんなに雷なんて落ちるものじゃない・・・時間的にも『ゴッドサンダー』を唱えた辺りだし・・・


「そう言えばそろそろ来る頃では?」


「うん?約束なんかあったか?」


「・・・お忘れですか?オーダーメイドの武器が欲しいと・・・」


「ああ、そうだった!そうか・・・今日か・・・」


やる事がいっぱいあり過ぎてすっかり忘れていた


この前は既に帰った後で聞く事が出来なかったが彼ならあの事を知っているはず・・・しかし素直に教えてくれるだろうか?


「・・・ちょうど来たようです。中に入れても?」


「ああ・・・構わない」


さて・・・どうやって聞き出すか・・・あまり接点がないから知らないが聞くところによるとプライドが高いとか・・・それに皇帝陛下よりと言うのも周知の事実・・・積極的に関わってないのはその為だ


「夜分遅く失礼致しますフラン皇子様」


「こちらから無理言って呼んだのだ・・・気にしないでくれフェルン」


エルフ族代表フェルン・ファーチノス・・・四種族会合はこのフェルンとドグマの言い争いで開幕するらしい。2人が特段仲が悪いのではなく種族間・・・エルフ族とドワーフ族がとにかく仲が悪い。その理由は単純だ・・・理想を追い求め設計図を描くものと実際に作るもの・・・その違いが軋轢を生む


理想と現実・・・近付く事が望ましいのだがなかなか上手くいかずそのもどかしさがふたつの種族の関係を拗らせているようだった


「魔銃嫌いで有名なフラン皇子様が武器を作りたいと仰られたのです・・・何があっても駆けつけますとも」


「そ、そうか・・・しかし悪いが作って欲しいのは魔銃ではなく身を守る為の・・・そう例えば盾のような物を作って欲しいのです。魔弾を弾き返すような・・・そんな防具を」


「盾・・・ですか?」


不思議そうに私を見つめるフェルン


まあそうだろうな・・・皇族の私が防具を必要とする意味が分からないのだろう


なにせ皇族が戦う事などないのだから


もしあったとしたらそれは滅亡一歩手前かそれとも・・・


「・・・しかし魔弾を弾き返すような盾を作るとなるとかなり分厚くなり重量もそこそこになり無用の長物となり兼ねないかと」


「魔弾は言わば魔力の塊だろう?なら分厚くするよりも他の方法があるのでは?」


「・・・他の方法・・・ですか?」


「そう・・・大陸を覆っている魔力障壁・・・あれは大陸で発生した魔力を外に出さない為のものだろう?ならばそれを強化すれば魔弾すら弾き返せるのでは?」


「理論上は可能です・・・が、魔弾を魔力の塊と仰いましたが少々語弊があるかと。魔銃のタンク内に蓄積された魔力を圧縮し威力を高め射出しておりましてただの魔力の塊ではございません」


へぇ、魔銃ってそんな仕組みだったのか


それにしても偉そうにペラペラと簡単に語ってくれるもんだ・・・そういうのはあまり言うものでは無いと思うのだが・・・まあ私が皇子だから・・・皇子か・・・気が引けるがやってみるか・・・


「・・・なるほど・・・魔銃の構造などよく知らないからな・・・ここは『無知ですみません』と謝罪した方が良いか?フェルンよ」


「っ!と、とんでもございません!その・・・」


「私の謝罪を受けて一族に自慢するが良い・・・皇族に謝罪させた、とな」


青ざめるフェルンを見て心が痛む


私だってこんな事を言いたい訳ではない。だが時間がない分使えるものは使っておかないと・・・例えそれが魔銃と同じく私の嫌うもうひとつの力・・・権力であろうと


「い、いや・・・その・・・あのですね・・・私はその・・・」


「皇族を謝罪に追い込んだエルフ族フェルンよ」


「ふぁ!?ふぁい!!」


「私は今、魔銃が苦手だからと学ばなかった事を恥じた。君は今、エルフ族としては歴史的快挙を成し遂げた。そのふたつを知る者は私達3人しかいない。さて・・・君は武勇伝としてこの話を広めるかそれともこの部屋だけに留めるか・・・どちらを選ぶ?──────」





結果、フェルンから色々聞く事が出来た


しかし魔力障壁については頑なに口を閉ざす・・・最終的には『そこまで知りたいのであれば皇帝になられて下さい』とまで言われてしまった。裏を返せば皇帝にならなければ知れない程のこと・・・フェルンが知っているのは確かなようだが立場を利用しても無理ならば後は脅すしかない・・・が、さすがにそこまでは・・・


「・・・で、結局その魔力障壁の事は分からなかったが魔銃や他の武器の構造は聞き出せる事が出来た、と」


「はい師匠!ここに徹夜で紙にまとめたものがあります。どうぞお受け取り下さい!」


いつものように師匠と尋問部屋での情報交換・・・顔見知りまで下がったお近付きランクを上げるべく私は徹夜で作った書類を差し出した


「だから師匠じゃないって何回言えば・・・・・・ほう・・・なるほどな・・・これがこうなって・・・」


文句を言いながらも師匠は書類を手に取って私が書いた書類に目を通す。聞いた事をそのまま紙に写しただけで私は理解出来なかったがもしかして師匠は理解出来ている?


「師匠は分かるのですか?」


「いや分からん」


「・・・」


「まあ大体の仕組みは分かったけど見よう見まねで創って本当に正常に動くかどうかが分からない・・・魔力を使用するんだ・・・単純に失敗で終わる訳がない。下手すりゃ使用者の命を奪いかねない物を創る気にはなれないな」


・・・その通りだ


理想を追い求め作り出した設計図・・・それを実際に作ると設計図通りに作ったとしても不具合が起きる場合がある。だから作った後に試射を行う・・・人間ではなく獣人族が


「・・・にしても師匠・・・まるで作れるような言い方でしたが・・・」


「創れるぞ?」


「またまた・・・・・・・・・本当ですか!?」


「疑うなら見せてやる・・・お前の持ってる魔銃をテーブルの上に置いてみろ」


「?・・・は、はい・・・」


魔銃をテーブルの上に?いやいや置いてどうなる?ここには材料もなければ鍛治をする為の道具も施設もない・・・それなのに『見せてやる』とは一体・・・


「・・・仕組みを知って改めて見ると全然違って見えるな・・・まあ使う事もないし見た目だけでも・・・」


独り言を呟くと師匠は私が置いた魔銃に手を伸ばし・・・いや、その横の何も無い所に手をかざした。そして・・・


「なっ!?」


「どうだ?見た目は完璧だろ?・・・中身はお察しだがな」


「中身はお察しって・・・そんな事より今・・・何も無い所から・・・」


素早く動いて懐から取り出したとかそんな素振りは一切なかった。手をかざした場所がほんのり光ると既に私の物と同じ魔銃が・・・


「俺の知人なら知っているからな・・・別に隠す必要もないだろう。『創造』・・・それが俺の力だ」


「想像?」


「創造だ。無から有・・・何も無い所から物を創り出す力。と言っても魔力は消費するけどね」


魔力を使って物を()()()()?・・・そんなのまるで・・・


「・・・師匠はもしかして・・・神・・・様?」


「誰が神様だ。偽女神に知り合いはいるけどあんなのと一緒にすな。たまたま偶然・・・出来るようになっただけだ」


そんな偶然ある訳が・・・聞きたい事は山ほどあるけど詮索してまたランクが下がるのは避けたい・・・ううっ・・・このジレンマは辛いが仕方ない・・・目の前に起きた事実だけを考えるとしよう・・・って出来るか!魔法はともかく物だぞ?何も無い所から物を創り出すってありえない・・・いや、もし・・・魔法もありえないと思ってたのに実際出来たのだから創造も・・・


「私にも出来るのですか?」


「無理だな」


即答!考える余地もなし!・・・って事はこれは真実であり師匠は特別ってこと・・・そう・・・そうだ・・・大魔道士の師匠が普通の訳が無い!大魔道士の師匠なのだからその大魔道士を超えた魔道士・・・超魔道士!



『くっ・・・私もここまでか・・・殺せ!』


『そんな簡単に殺すかよ・・・ここで見ていろ・・・貴様が守ろうとしていた者達が死んでいく様をな』


『やめろ・・・やめろー!!』


『諦めな・・・そしてこの大虐殺兵器レジェンドデストロイヤーが火を吹く所をその目に焼き付けるんだな!・・・・・・・・・なにぃ!?』


『・・・これは・・・あの方のゴッドバリアー・・・』


『ホーホッホッホッ!派手にやられたのうフランよ・・・いや、今はフラフラフランだったか?』


『師匠!!』


『安心せい!善良なる人達には指一本すら触れさせぬ。安心して戦うが良い大魔道士フラフラフランよ!』


「うおぉぉぉ!やってやる!やってみせる!見てて下さい師匠!」


「・・・おい。何を見せるつもりだ?」


・・・はっ!?しまった妄想がつい声に・・・恥ずかしい・・・何とか誤魔化さねば・・・


「・・・何をお見せするかと言うと・・・白昼夢?」


「斬新な拷問だな」


「拷問なのでは・・・ありません・・・いえ・・・忘れて下さい・・・」


誤魔化しようがなさそうなので素直に謝った


昨日寝てない影響かまさか起きたままあのような夢を見るとは・・・けど師匠キャラ・・・やはりイイ!


「・・・今度はいきなりニヤニヤして・・・気持ち悪い奴だな・・・」


「・・・ゴホン・・・師匠が只者ではないのは分かってましたがまさか超魔道士とは・・・」


「超魔道士?」


「あ、いや・・・とにかく凄いのは分かりました。ちなみにこの創った魔銃・・・頂いても?」


「いいけど使うなよ?ほぼ確実に爆発するぞ?」


「へ?」


「魔力を溜めるタンクとやらは握る所にあるのは分かったけどどうやって魔力を放つのかは構造からだとよく分からなかった・・・何がどう動くか分からないから魔力が穴の先から出て来ないで行き場を失い爆発する・・・ような気がする。試したい気持ちもあるがほぼ爆発すると分かっているからそれも難しいし・・・」


そっか・・・設計図があればそのまま創り出せる・・・そうすれば動く順番なども正常に動きそうだが言葉だけでは正確に創るのは難しいだろうな・・・


「・・・それでも貰っていいですか?師匠が創った物を頂きたいので・・・」


「勝手にしろ。・・・それでどうするんだ?時間はもうないぞ?」


暴発するかもしれない魔銃を懐にしまいながら考える


期限は今日入れて4日か・・・尋問権の独占が切れたらロザリオ将軍が師匠に尋問を・・・そうなればやられた腹いせに苛烈な拷問をするのは目に見えている・・・いや、師匠がそれを甘んじて受けることはないだろうから以前のように脱走してしまうか・・・そうなるともう師匠とは・・・


今なら確信出来る・・・師匠となら私の目的は達成出来ると


もしかしたら命を使わずに・・・いやそれは虫が良すぎるか・・・でも・・・犠牲が少なくて済むのなら・・・


「師匠・・・これから私が知りうる全てのことを・・・そして私が具体的に何をしようとしているかを話します。それを聞いて判断して下さい」


「・・・いいのか?それを聞いた後で俺が裏切ったらお前は終わるぞ?それにこの国も・・・」


「構いません・・・とは言えませんが・・・きっとこのままズルズルと情報交換しているだけでは期日に間に合いませんし・・・それだったら全てを話、判断を委ねる事にします。もう師匠なしでは・・・」


「その言い方は勘違いされるからやめてくれ。・・・分かった・・・とりあえず聞こうか」


「はい・・・では掃除の内容から・・・簡単に言えば現皇帝陛下を含む皇族を全てこの国から排除します」


「『この国』ってこの大陸にはこの国以外ないのだろう?って事は・・・それに皇族って括りならお前も・・・」


「・・・この国は皇族に支配されています。絶対的支配・・・殆どの人は皇帝の姿を見ず恐れ敬い死んでいく・・・何もしてくれないと知っていながらも・・・その支配・・・洗脳にも近い支配から抜け出すには皇帝だけではなく皇族の死が必要です。わたしも含めての死が必要なのです──────」

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