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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
661/856

656階 大魔道士

「くっくっくっ・・・今日も拷問し過ぎて殺しちまったぜ」


「俺もだ・・・人間は脆くていけねえ・・・やはり頑丈そうなドワーフ族か獣人族を捕まえて・・・」


悪事を企む不届き者達が闇夜に紛れて集まっていた


そんな事は許さない・・・そう私がいる限り!


「そこまでだ!」


「っ!・・・何者だ!」


上から声が聞こえたと察し見上げる烏合の衆・・・そいつらに正義の鉄槌を下す為に私は姿を現す


「・・・お、お前は・・・巷で噂のフラフラフラン!」


「そう!私こそが神の使いであり大魔道士フラフラフラン!悪い事をする奴は神に代わって鉄槌を下す!私の・・・大魔法でな!」


「くっ!お前達!やってしまえ!」


「バカめ!魔法も使えないお前達がどうやって屋根の上にいる私を・・・っ!?」


「撃て!!」


「ひ、卑怯な!!」


奴らはいつの間にか持っていた魔銃を構え私を撃ち落とさんと撃ちまくる


「何を・・・大いなる神の息吹よ邪悪なる魔の手より我を護り給え!ゴッドシールド!!」


「なにぃ!?」


私が魔法を唱えるとマナで出来た壁が出現し魔弾を全て弾き返す


「悪の攻撃など私には効かない!正義の鉄槌を受け悔い改めよ!大いなる神の怒りよその怒りを雷に変え彼の敵を滅ぼせ!ゴッドサンダー!!」


「ぎゃあああああああああ!!」


「・・・悔い改めよ・・・来世でな」


私の魔法で消し炭になった悪党共


それを遠くから見ていた人達が集まり始める


「ああ・・・フラフラフラン様!カッコイイ!」


「フラフラフラン様がいればこの国は安泰だ!」


「・・・やるな・・・俺も負けてられねえぜ!」


「くっ・・・奴がいては我が計画に支障が・・・忌々しい!」


「組織の雑魚を倒したぐらいで調子に乗るなよフラフラフラン!我が組織にはまだ1億人の悪党がいる!」


賞賛してくれる人達、ライバル、そして敵組織が見上げる中、私は今日の勝利を噛み締めまた悪事を働く者達を探す旅に出る


そう・・・これが私の──────



「・・・」


「おはようございますフラン様。朝の準備が出来ていますが・・・」


「すまん、1人にしてくれ・・・すぐに向かう」


「畏まりました」


デネットが部屋を出たのを確認し朝の反省会を始める


・・・何が『フラフラフラン』だ・・・登場時点でやられそうではないか


しかも魔法はともかくあの状況はなんだ・・・敵の首魁みたいな奴がいるのに無視して私は・・・いやそうではない!そもそもなんでこんな恥ずかしい夢を・・・


心当たりはひとつしかない


昨日コゲツにされた事が原因だ


『俺のマナを流しておいた。普通なら体中に激痛が走るのだが攻撃性を持たせなかったので大丈夫・・・だと思う。本来なら自分の中にあるマナを感じてそれを使ってみてどれが一番自分に合うか色々と試してみるのが通常の流れなんだけど・・・時間がないから俺のマナを使って試してみてくれ。とりあえずマナを感じる事から始めるんだぞ?分かったな?』


そう言われて不思議な感覚が残ったまま私は自室に戻り瞑想を始めた


目を閉じ言われたようにマナを感じ・・・そして以前にコゲツがやったように指先に火が灯るイメージを繰り返していると・・・彼とは違い吹けばすぐに消えそうなものだったが指先に火が灯った


その時は感動して失神しそうになった


もちろん冷静に考えればこれは彼のマナが起こした奇跡・・・だがもし自分のマナでも同じ事が出来たら・・・そう考え一日を費やした


結果は・・・まあそう簡単にはいかないな・・・彼のマナが尽きたのか指先には火は灯らなくなり体中を巡ってた不思議な感覚はさっぱりと無くなった


けど・・・まだあの不思議な感覚は覚えている


あの感覚を自ら出せれば・・・そう考えながら眠りについた結果があの夢だ


「・・・ハア・・・自信がつき余裕が出来るどころか悩みの種が増えただけだ・・・残された時間も少ないと言うのに・・・ハア・・・」


ベッドから降り着替えると部屋を出て食堂に向かう


朝の支度を終えたら行かなくては・・・師匠の元に──────




「・・・分かった。おっと来客だ。また連絡する」


師匠・・・コゲツは独房の中で光る石に向かって独り言を呟いていた


もしや精神に異常が?・・・とも一瞬頭をよぎったが彼に限ってそんな事はないとすぐにその考えを否定する


「・・・来客とは私の事か?それと君には私が見えない誰かが見えているのか?」


「もうここに住んでいるみたいなもんだし外から来た人は来客みたいなもんだろ?それと見えない誰かはいないけど・・・」


そう言って彼は同じような石を投げて寄越した


近くで見ても何の変哲もない石・・・先程の石は光っていたがこの石は光ってはいなかった


「それを使えば見えない誰かと話せるかもな」


「話せる?この石を使って?」


「知人に対する答えはこれまでだ。さてどうする?今日も帰って自分の可能性を探るかそれとも・・・」


「今日は尋問部屋行きだ・・・聞きたい事が山ほどあるからな」


そう言って彼を連れ出し尋問部屋へ


中に入るといつもの椅子に座るや否や私はテーブルに当たりそうなくらい頭を下げた


「・・・何の真似だ?」


「・・・昨日帰ってから色々試した・・・私に魔法の才能があるかどうかは分からないが君がやったように指先に火を灯す事も出来た・・・しかし君のマナが無くなった瞬間からは何も・・・どうか教えてくれ!どうやったら自分のマナを感じる事が出来るのだ!」


「俺のマナで指先に?」


「ああ!しかしかなり小さい・・・まあ室内って事もあって大きくするつもりはなかったがもう少し・・・じゃなくて君のマナではなく自分のマナで試したいのに一向にマナが感じられないんだ!何かコツはないのか?例えばどこか力むと出やすいとか!」


「・・・いやないな・・・それより驚いた」


「何が?」


「自分のマナならまだしも他人のマナで・・・指先に火を灯すのは簡単に見えて実際は難しい。大抵は火が一瞬で消えたり思ったよりも大きく燃え上がったりで制御なんて出来ないはずだ・・・変化・・・つまり魔法の適性があるのかもしれないな」


「・・・え?」


「順番が違ったけどこれでマナを感じられればすぐにでも魔法を使えるようになるかもって言っているんだ。ちょっと言い過ぎたから気晴らしになればと思って言っただけなのに・・・もしかしたらなれるかもな・・・この国で唯一のマナ使い・・・いや魔法使いに」


・・・足と手・・・いや体全体が震える


夢が現実になるかもしれない・・・そう考えただけで頭が真っ白になる


「師匠!」


「誰が師匠だ」


「あっ、つい・・・コツがないのならどうすれば・・・」


「・・・ハア・・・じゃあとりあえず行くか」


「何処へ?」


「ここでずっと鉄格子越しに話すつもりか?尋問部屋だよ尋問部屋!」



・・・という訳で勝手知ったる何とやらという感じで2人で尋問部屋へと向かうと机を挟んで向かい合って座る


すると師匠・・・コゲツは机の上に私に渡したと同じ丸い石をポンと置いた


「えっと先程貰いましたが・・・」


「あげてないし貸しただけだ。てか敬語やめろ気持ち悪い」


「酷い・・・それでこの石が何なのだ?」


「さっきの石とは全く別物でこれは『マナ測定器』だ」


「マナ測定器!?そんなものが存在したなんて!!」


「今創った」


「・・・え?」


「いやなんでもない。とにかくこの石はマナが流れると光る仕組みになっているから光らせろ」


「いやだからそのマナがよく分からないのだが・・・」


「コツはないし感じ方もそれぞれだから説明しにくい・・・だから念じ続けろ・・・光れ光れってな」


「それで本当に・・・」


「出来る頑張れ」


何だか適当言ってるような気もするけど・・・



それから無言の時間が続く


私は石を握ったり天にかざしたり念じてみたり・・・彼はと言うと椅子に座り腕を組んで目を閉じ・・・絶対寝てるなこれ


力を抜いたり力を入れたり心を無にしたり光れと念じても何も起こらない石・・・本当に光るのかと疑問に思うが実際に彼が実演してくれた時は間違いなく光った。其れがマナのお陰かどうかは分からないが・・・


「・・・マナは」


「っ!・・・起きてたのか・・・師匠」


「師匠言うな・・・マナは体内にある核が有害な魔力を自分に無害な力に変えたもの・・・つまりその時点で自分の味方だ。特別な力と思わず・・・考えて出そうとするのではなく自然に『この石にマナを流せば光る』と考えて石に触れてみろ」


特別な力と思わない・・・そう言われても・・・


これまで生きて来てマナなんて存在すら知らなかったのにそれがさもあって当然のように思えと?無理無理そんなの・・・


「出来る出来ないじゃなくて出来て当然、出来るのが当たり前と考えろ。何故出来ないか焦ってないで出来て当然なのだから気長に待て・・・お前は歩く時に『右足出して次に左足出して』って考えるか?歩けるようになったら考えなくても自然と足は出るだろ?目的地に向かって歩くか石を光らせるか・・・違うようで同じようなもんだ」


全然違うだろ!


だがまあ言いたい事は何となく分かった


光れ光れと念じるのではなく光って当然と考える・・・自然に・・・力まずに・・・当然だと・・・



一時間?二時間?・・・もうどれくらい経ったか分からない


石は相変わらず光を灯さない・・・このまま続けても一生・・・


「ンゴッ!」


くっ!彼は呑気に鼻ちょうちん作って寝ているし!弟子の成長を見守るのが師匠というものではないのか!師匠にしてやらんぞ!・・・へ?


彼を睨みつけ恨み言を頭の中で叫んでいた時、ふいに石を見たら微かにだけど・・・


「師匠!光りました!!」


「んなっ!?・・・・・・・・・ん?」


「ひか、ひか・・・光って・・・」


「当然・・・だろ?ったく大袈裟な・・・そしたらその感覚を覚えて今度は石に流すのではなくそのマナを変化させろ。俺のマナで出来たんだ・・・それくらい容易いはずだ」


そんな簡単に・・・・・・・・・あっ


「で、出来た・・・」


「・・・もう少しそっちを驚け・・・俺達の大陸ならともかくマナを昨日今日知った奴がマナを変化させてそれだけ巨大な火の玉を作るなんて・・・向こうじゃ天才と騒がれてもおかしくないぞ?」


つい本の挿絵で描かれていた火の玉・・・ファイヤーボールを想像したら目の前に大きな火の玉が出現した


これを私が?・・・この私が出したと言うのか・・・


「え、詠唱は?魔法には詠唱が付き物なのに・・・」


「詠唱は想像する為の準備・・・しっかり想像出来てれば要らないんだよ。まあ普通に想像するより詠唱した方がより上手く想像出来るなら詠唱してもいいが・・・」


「そうですか・・・」


魔法イコール詠唱だったので必要ないと言われると少しガッカリしてしまう・・・けど詠唱が必要ないのならそれだけ短時間で・・・


「・・・おい・・・」


と言うかそんな事を気にする必要あるか?私は自らの手で魔法を・・・物語の中でしかありえないと思っていた魔法を使ったのだぞ?


「・・・おおい・・・」


これで私は・・・勇者と共に戦う・・・


「大魔道士に・・・」


「・・・おい大魔道士・・・いつまで火の玉を目の前に浮かべてくれてんだ?熱いんだけど・・・もしかしてこれも拷問の一種か?」


「・・・そうは言われましても師匠・・・出し方は教わりましたが収め方は教わってないのですが・・・」


「え?・・・そんなもん適当にポイしろよ」


ええ!?そんな雑に扱ってよいのか?・・・まあ師匠が言うのなら平気なのだろう・・・ええいままよ!


「ポイッ!」


「バッ、ボフッ!」


「・・・あれ?」


適当にと言われたのでそのまま手を下ろすと吸い込まれるように師匠の顔面に・・・


「・・・おいこら()()()()・・・何の恨みがあって俺の顔面に魔法をぶち込んだんだ?」


ヒィ!お近付きランクが知人から顔見知りに下がってるぅ!!


「だっ、だって師匠が適当にって・・・」


「ほう?適当に俺に向けて放った、と」


「だったらちゃんと指示して下さいよ!そして師事して下さいよ!分かる訳ないじゃないですか!!」


「大魔道士なんだろ!それくらい分かれや!」


「あ、あれはつい口走っただけで・・・」


「つい口走っただぁ?『魔法使いに』とかならまだしも『大魔道士に』なんてついで出る言葉じゃねえだろ!どうせ普段から妄想してたんじゃないかのか?架空の相手に決めポーズなんかしちゃって『そこまでだ!』なんつって颯爽と現れる大魔道士様の姿を・・・ん?お前顔真っ赤だぞ?・・・まさか本当に・・・」


「・・・大いなる神・・・」


「あん?大いなる何だって?」


「・・・大いなる神の怒りよその怒りを雷に変え彼の敵を滅ぼせ!ゴッドサンダー!!」


「・・・ほう?彼の敵・・・ねえ・・・」


テーブルに足を乗せて夢の中で見た大魔道士フラフラフランの詠唱を真似てみる・・・もちろん倒すつもりはなく少しだけ記憶を無くせれば、と思った次第だ


しかし巨大な雷が師匠の頭に落ちてくる事はなくただただ時間だけが過ぎていく


「・・・ごふっ・・・不肖の弟子をお許し下さい・・・師匠」


「なーに何も食らってないのに瀕死を演出してんだ?しかも敵に許しを乞うなんて大魔道士の風上にもおけんなぁ・・・いっぺん死ぬか小僧・・・」


あ・・・終わった・・・



それから地面に擦り付けるように土下座し何度も謝罪することによりお近付きランクは『敵』から『顔見知り』に戻った


今日は情報交換も出来てないし私が魔法を使えるようになっただけ・・・そしてお近付きランクも2歩下がって1歩上がった・・・つまり朝から言うと1歩後退していた


こんな事で彼らと協力出来るのか・・・差し迫った期日が焦りを駆り立てる


あ、ちなみにこの後城に帰ってデネットから聞いたのだがアビニオン監獄近くに雷が落ちたらしい・・・ただの偶然・・・だよな?──────

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[一言] 仲良し師弟いいですね
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