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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
656/856

651階 襲来

ボサボサ頭の戦い方は異質だ


銃も武器すらも持たず己の体を駆使して戦う・・・まるでそれはあたかも己の拳や脚が武器であるかのように・・・


「ね、狙いが・・・」


「よせ!無理に撃てば味方に当たる!」


11人もいるのにたった1人に圧倒される


囲んでいたのにあっという間に崩され1人また1人と崩れ落ちていくのを見ているだけ


その洗練された動きを・・・ただ見ていることしか出来なかった


「く、来るな!」


また1人の仲間に彼が近付くとそいつは慌てて銃口を向ける・・・が、その銃口から身を捩り逃れると体を回転させ足を高く上げ頭を蹴る・・・意識を刈り取られ倒れる仲間・・・そのタイミングで魔銃を構えるがその時には既に彼はその場にはいない


まるで瞬間移動でもするかのように次のターゲットに近付きまた倒していく・・・俺達とは違う・・・獣人族の狩りを見たことがあるがその動きとも違う・・・獣人族の動きは獣と同じ・・・本能の赴くままに狩りの対象を威圧し爪や牙で襲いかかる・・・それは獣を狩る獣という印象だった。けど彼は言うなれば人間を狩る人間・・・とても俺には真似出来ないが人間が出せるであろう動きで俺達を一人一人仕留めていく


「ぬぅ!離れるな!1箇所に固まれ!」


「そうしてくれると助かる」


「なっ!?」


各個撃破されるならと十人長が指示するがそれは彼にとって単に的が大きくなっただけのようだ


なぜなら固まっても所詮銃口が向く位置は同じ・・・2人が魔銃を構えて撃とうとする時二つの銃口は彼のいる場所に向く・・・だがその銃口から彼は容易く逃れ素早く近付きあっという間に倒してしまうからだ


魔銃の弱点は超近距離攻撃にある。銃口の先より近付かれると俺達は為す術なくやられてしまう・・・彼のような拳や脚を使った攻撃は教わっていないから・・・


「十人長!距離を取るべきです!」


「くっ!分かっている!だが・・・」


「そう・・・それも正解じゃない」


彼との距離を保つ・・・それが正解に思えたが彼は俺達より素早く動く・・・簡単に距離を詰められ慌てて魔銃を撃っても躱されやられてしまう・・・一体どうすれば・・・


ケイトを救い国を守る・・・その為にはここで彼を足止めし救援を待つ・・・もしくは情報を・・・彼はとてつもなく強く変装する事が出来る事を伝えなくては・・・


「さてと・・・残りは3人か・・・」


瞬く間に8人の仲間がやられてしまった。気絶しているのかそれとも殺されてしまったのか・・・その場に倒れピクリともしない


俺が兵舎の中庭で呆けている間に他のみんなはかなり進んでしまっていたようで戦闘音が届いてないみたいだ。誰も駆け付けては来やしない


「十人長!ここは俺とヘルノで食い止めます!十人長は応援を・・・っ!」


「さっきから正しい判断をしているな・・・褒美をくれてやる」


いつの間に!?


さっきまでかなり離れていたというのに声がしたと思ったら目の前に・・・ダメだ・・・やられる!


「──────」


「え?」


衝撃に備え全身に力を入れギュッと目を閉じると彼は耳元で囁く・・・その言葉はあまりに信じられない言葉で思わずハッと目を開き目の前にいる彼を見た


「少し痛いぞ・・・ダット」


そう言うと彼の肘が俺のお腹にめり込む


足が浮いたと思ったら景色が物凄いスピードで動き出すと背中に衝撃が走った


息が出来ない


視界が狭くなる


何とか息が出来るようになる頃、ようやく自分が吹き飛ばされて建物の壁に打ち付けられた事を理解した


顔を上げるとヘルノと十人長が同じようにやられている姿が・・・隊は素手の相手に全滅してしまった



「よくやった・・・十人隊」


声がした方向を見るとロザリオ将軍達が駆けつけてくれていた


そうか・・・兵舎は街の奥にありみんなは街の入口に向かって進んで行っていた。遅れた俺達はみんなの後方・・・つまり後ろ・・・しかも上を見上げていないと俺の魔弾には気付かない。けどロザリオ将軍達はまだ兵舎に残っていた為に俺の魔弾に気付き・・・


「おっ・・・ようやく偉そうな奴が出て来たな・・・雑魚の相手はうんざりしていたところだ・・・階級と名前を聞いても?」


「貴様に名乗る名などない・・・と言いたいところだが健闘を称え特別に名乗ってやろう・・・ブルデン帝国将軍ロザリオ・リュドルフ・・・貴様を真っ二つにする者だ」


そう言うと将軍は持っていた棒を構えた


すると棒の先から魔力が放出されある武器と酷似した形を形成する


その形とは斧・・・木こりが使うような斧に似ていた。だが斧との違いは魔力の部分・・・つまり刃の部分が異様に大きく振ればそれこそ人体など真っ二つにしてしまいそうな斧だった・・・これがロザリオ将軍の専用武器・・・


「魔力を固定しているのか?技術力だけは凄いな・・・そこだけは尊敬するよ」


「驚くのはまだ早い・・・見ただけでは分からない事もあるだろう・・・貴様の体に刻み込め・・・この『大斬戦斧』の斬れ味をな」


「いやいやちょっと待て・・・ネーミングセンスは認めるが俺はまだ名乗ってな・・・うぉい!」


問答無用とばかり将軍は斧を片手に間合いを詰めるとまるで小枝でも振るうかのように大斬戦斧を振り下ろす


躱されたけど魔力で出来た刃は簡単に地面を裂いてしまう。あれはもう人間どころか触れれば何でも斬り裂いてしまいそうだ


それにしても全身鎧なのに素早い動きにあの大きな斧を軽く振る怪力・・・いや・・・そもそも最も重たいであろう斧の刃の部分が重さのない魔力の塊なのだから実質棒を振っているのと同じか・・・


「人の話を聞けよ」


「墓標でも建てて欲しいのか?そうでなければこれから死にゆく者の名など聞く必要なし!!」


今度は縦ではなく横に薙ぎ払う


彼は器用に仰け反り躱すとそのまま地面に手を付き一回転して身構える


「酷い奴だ・・・まあいい勝手に名乗ってやる。俺の名前は・・・」


「必要なしと言っている!!」


将軍が鋭く踏み込み振り上げた斧を彼目掛けて思いっ切り振り下ろした


ガンと大きな音が鳴り裂ける地面・・・そこに彼の姿はなく気付いたら将軍の背後にいて鎧にそっと手を添えていた


「拳豪コゲツだ・・・覚えておけロザリオ将軍・・・流波」


彼は特に何かした様子もない・・・それなのに斧を振り下ろしたままの将軍の体が一瞬震えるとそのまま前のめりに倒れてしまう


「将軍!!貴様・・・何をした!?」


「硬そうな鎧だし殴ると拳が痛そうだろ?だから中身だけ攻撃し・・・おっと!」


副官が魔銃を放つ・・・確か将軍の副官は千人長と同等の魔銃を所持していると聞いた事がある。つまり俺の腕を撃ち抜いた威力と同等の魔銃・・・だが彼は飛んできた魔弾を素手で弾き飛ばした


「ッテ!・・・これまで食らった中で一番痛いな。ひとつ聞きたいんだがそれ以上の威力を出せる魔銃ってあるのか?」


「・・・化け物め・・・全員撃て!将軍に当たらぬよう奴の頭を狙え!!」


「会話にならない・・・てかする気がないか・・・なら・・・」



それからは彼の独壇場だった


目にも止まらぬ速さで間合いを詰めて殴るもしくは蹴るだけでバタバタと倒れていく・・・将軍の副官や側近だから弱いはずがない・・・にも関わらずあの方法でこられたら俺達の強さなど意味をなさない・・・魔銃の威力など当たらなければ意味がないのだから・・・


「さて・・・お前に聞きたい事があるんだけど」


「くっ・・・私は何も喋らぬぞ!たとえ口が裂けても絶対に!!」


副官・・・将軍の最側近である事を鼻にかけて偉そうにするだけの人かと思ったら・・・カッコイイじゃないか


「ほう・・・つまり子孫を残したくない、と」


「それはやめろ!いややめて下さい!子はいるがまだ使い足りない!」


・・・副官・・・


倒れた副官の股間に足を乗せた彼の次の行動は容易に想像がつく・・・俺だったら何でも話してしまいそうだが子供がいるなら諦めろ・・・副官


「・・・子供は何人だ」


「・・・さ、3人・・・」


「可愛いか?」


「も、もちろんだ・・・当然だろ」


「そっか・・・可愛いか・・・」


なんだこの会話は・・・もしかして彼が聞きたかった事ってこれなのか?そうなのか?


「・・・まあ3人もいれば充分だろ・・・なーに新たな世界が開けるかもしれないし・・・」


「やめろ!本当にやめてくれ!!」


いやもう潰せ


「ん?・・・なんだ?」


不意に彼が後ろを振り向く


するとその直後に何かが地面に落ちて来て土煙を上げる


その土煙が晴れる頃・・・副官が聞き慣れた言葉を口にした


「・・・ま、魔神・・・」


「なに?・・・魔神だと?」


何となく魔神なんて存在しないのではと思うようになっていた


訓練を繰り返すも魔神は姿を現した事はなくその姿は想像すらつかなかった


もし実在してたとしても人知れず死んでしまったのでは・・・そう考える者も多くいた


だが今・・・俺の目の前に魔神が姿を現す


副官がその姿を知っているのは謎だけど俺も何となく分かる・・・コイツが魔神だと


「おいおい・・・予定にないんだけど・・・お前の登場は」


見つめるだけで震えがくる・・・それなのに彼は怖くないのか?あの魔神が目の前にいるんだぞ?


《グルアァァァ!!》


魔神が叫ぶと地面が揺れ空気が刃のように鋭くなる。実際に頬は切れ血が流れ出るがそれを拭う事さえ出来ない


動いたら死・・・いやここにいたら動かなくても・・・死ぬ


そう予感させる程魔神の存在は凶悪だった


「チッ・・・言葉が通じないのか・・・どいつもこいつも・・・」


「ちょ、踏んでる!踏んでるから!!」


・・・


「まあ気になってなかったと言えば嘘になる・・・魔人が時を経て魔神になるなんて聞いた事がないしな。この大陸は不思議な事ばかりだ・・・魔力を通さない鉄に人間以外の種族・・・そして魔神・・・少し離れているとはいえ同じ大陸なのになぜこうも違う?・・・ダンコ達なら答えを知ってるかもな・・・ハア・・・」


副官の股間から足を離すと彼はブツブツ言いながら頭を掻き魔神に向かって歩き出した


どうやら副官の股間は無事・・・ではないのかも・・・いつの間にか口から泡を吹いて気絶していた


「魔銃の威力はある程度把握した・・・本当は次の目的に移りたかったけど仕方ない・・・ちょっくらつまみ食いといこうか──────」

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