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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
645/856

640階 四種族会合

「結局はじゃあ単に長く生き続けた魔人なだけ?」


「そうなるな」


ふーん・・・色々気になることはあるけど・・・


「暴れる時は無意識なんだろ?よく民とブルデン関係を区別出来るな」


「敵意に対してのみ反応しているようだ・・・君達の仲間のコゲツ・・・彼を殴ったのも敵意を感じたからだ。まあ私が突然船に乗り込んだのが原因なのだが・・・」


「・・・つまりそれって普通の人間が敵意を向けても・・・」


「そうなる。魔神と崇められているがもし私を崇めている者が敵意を向けて来たら私は容赦なく攻撃するだろう。それに・・・」


「それに?」


「意識を失う度にその間隔が長くなっている。今回も今まで意識がないままだった・・・恐らくいずれはこうして話す事も出来なくなるだろう・・・感覚的なものだがあと数回・・・いや、もしかしたら次で・・・」


ずっと無意識の状態に?敵意を向けられたら攻撃する・・・そうなったら・・・


「何千年も生きて・・・ここに来て時間に追われるとは思わなんだ・・・」


「魔人が魔力によって暴れるのは普通の事だと思うけど・・・むしろ今まで理性を保っていた方が不思議だよ。それに時間じゃないだろ?大人しくしてれば・・・」


「そうもいかん・・・この命を賭としやらねばならぬ事がある」


恋人と地位を奪う為に崖からヒースを落とした人間・・・ブルデンはもういない・・・となるとヒースがやらなければならないって事は・・・


「ブルデンの遺した・・・ブルデン帝国を滅ぼすつもり?」


「・・・帝国など要らぬ。ただアバドンという脅威から逃れ平穏を手に入れるはずだったのに新たな脅威と成り果てたブルデンと・・・私はその存在を消すべきだ」


「なっ!?存在を消すって・・・自分も死ぬ気?」


「何千年も生き続けているのにまだ生きよと?ただ生きていただけの私が目的を果たすというのだ・・・死くらいくれてやる」


「何千年も生きてるのに安い命だね・・・オレの妹が聞いたら殺されるよ?」


「なに?」


「オレ達兄妹に命を吹き込んだマスターはこう言った『たまに手伝ってくれ。けど後は好きに生きろ』と・・・妹はマスターを盲信しててね・・・死のうとする奴を猛烈に嫌う」


「なるほど・・・妹はそうだとして君はどうなんだ?」


「・・・オレは出来損ないでね・・・マスターの言葉は理解出来るけど反抗したくなる・・・だから死ぬ事は厭わない・・・ただしマスターの為ってのが前提だけどね」


「・・・君達に命を吹き込み君達を盲信させるそのマスターとやらに会ってみたいものだな」


「会えるさ・・・サラ様がオレが行く前に言ってたんだ・・・『問題が起きても安心して・・・彼はどこからともなく現れ解決してくれるから』ってね」


まあ『行く先々で問題を起こすけど』とも言ってたけどね


「そうか・・・楽しみにしておこう・・・私は少し寝る。外に出てもいいがあまり遠くに行くなよ?」


「子供扱いするな!」


てか、寝る?魔人って寝たっけ?・・・つくづく変な奴だ


それにしても外に出ていいなんて信用されているのかな?まあ逃げても行く宛てなんてないけど・・・魔力障壁さえなければ帰れるのに・・・


ヒースは宣言通り座って腕を組んだと思ったらそのまま寝てしまった。もう1人の見張りである魔人は起きているがオレが動いても気にする様子はない・・・ヒースに従っているって事かな?まあいいや


鎖に繋がれ薄暗い洞窟の中で捕まってたけど別に苦痛ではなかった。少し鉄の輪っかが擦れて痛かったけど・・・それも我慢出来た。我慢出来たけどやっぱり外の空気はたまには吸いたくなる・・・まだ見てないこの大陸の光景にも興味あるしね


足取り軽く外を目指して歩く


住んでる大陸はゲートを使って色々な場所に行った・・・もしかしたらほぼ同じ光景だったり・・・それとも・・・


頬を掠める空気は同じ・・・じゃあ目に入る光景は・・・どうなんだ?


「っ!」


言葉を失った


『なんだ変わらないじゃないか』という言葉を用意していたのに・・・とてもじゃないがその用意した言葉を口に出す事は出来なかった


代わりに出て来た言葉は・・・


「・・・なんだこりゃ・・・夢でも見てんのか?・・・」


洞窟を抜けると周りは岩だらけ・・・けど少し高い位置に行き遠くを見るとそこには天まで届くかと思うくらいの建物が建ち並ぶ


今は夜で辺りは真っ暗だけどその建物がある場所・・・恐らく街は昼間のように明るい。まるでそこだけ太陽が街を照らしているかのように


あの建物はどうやって建てたんだ?それにあの光は?


ダンジョンにも光る魔石が埋め込まれていたりするけどあれだけの光は発することはない。どうやって・・・魔法・・・じゃないよな?


遠くから見ても明らかに住んでいた場所と違う光景にただただ呆然と眺め言葉を失う


別世界


大陸を隈なく見て来たオレの脳裏に浮かんだ言葉がその言葉だった──────





ブルデン帝国帝都某所


その部屋に集まったのは各種族を代表する者達


「だから設計図通りに作ればいい!何度言ったら分かるんだ!」


エルフ族代表フェルン・ファーチノス


「お前さんも懲りないのう・・・この設計図通りに作ったところで放熱出来ず使い物にならんわい。連射機能を付けるなら従来通りエネルギーパックを別に付けんと無理だわい」


ドワーフ族代表ドグラ・ドグマ


「そう声を荒立てるなフェルン殿。実際に作るのはドワーフで使うのは我ら獣人族と魚人族・・・現場の意見も聞いて欲しいと言っているだけだ」


獣人族代表ヒュノス・カーチス


「海の中ならある程度の熱は抑えられるやも・・・ただ陸上では・・・」


魚人族代表タック・カプレス


「ええい!それをどうにかするのが貴様だろ!ドグラ・ドグマ!皇帝陛下はより確実に魔神を仕留める武器を所望だ!それを私達が考え形にするのがドワーフ族であろう!」


「作る前から欠点が分かっておるのだ。それを指摘して何が悪い?無駄な時間を費やすのは疎か試しに使う者の気持ちも少しは考えたらどうだ?お前さんらの出すものはいつも机上の空論で話にならんわい」


「以前に作ったものでこちらは負傷者も出ている。事前にドグラ殿から暴発するやもしれぬと聞いていたから負傷で済んだもののもし聞かされてなかったら死者が出てたかもしれん」


「貴様ら・・・負傷者くらいなんだ!皇帝陛下の為になるのであればそれくらい買って出るくらいの気概を見せよ!・・・話にならん!いいか?作って改良が必要と判断してからものを言え!やる前からグダグダと抜かすな!期限は1週間・・・必ず作り報告しろ!分かったな!」


「・・・ワシは言ったぞ?使い物にならんと」


「くどい!貴様は何も考えずただ作ればいいのだ!これ以上議論は無駄・・・必ず期日までに作って来い!」


一方的に怒鳴り散らすとエルフ族代表のフェルンは席を立ち部屋から出て行ってしまった。すると・・・


「ではワタシも・・・あれが居ない時に集まっていると何を言われるか分かりませんので」


魚人族代表タックも続いて立ち上がり部屋を後にする。残された2人・・・ドワーフ族代表ドグラと獣人族代表ヒュノスはそれを見て同時にため息をついた


「作り手の事も使い手の事も考えられぬ者が設計した物など怖くて扱えんわい・・・また獣人族から負傷者が出そうだのう」


「今の話では作る他ないからな。作らねばドワーフ族が割を食うだろう・・・作られたら割を食うのは我らだが・・・」


「なるべくそうならないように作りたいが・・・設計図通りに作らねばあの色白い顔が真っ赤に染まるからのう・・・それだけならいいが怒りの矛先はワシだけではなく・・・」


「・・・使用上の注意事項を細かく指示してくれ・・・起きると分かっていれば対処のしようがある」


「ふむ・・・ワシらが試せればいいのだが・・・」


「それで怪我をしていたら目も当てられまい。役割分担は帝国が決めたもの・・・逆らえばどうなるか分かったものではない・・・やはり設計上問題があるのか?」


「小型で連射可能・・・確かに出来れば強力な武器となろう。しかし魔力は動くと熱を持つ・・・一発二発はどうにかなるが三発目以降は持っていられない程の熱を出すだろうのう。まあ設計図通り作ったところで欠陥品の出来上がりだわい」


「確かに今までのも連射すれば熱くなる・・・それが自動で連射になると使っている側の意図とは関係なく熱は上がり続けてしまうか・・・」


「そういう事だ・・・熱くなってきたら止めればいい・・・だがこの設計図だと熱はかなりの勢いで上昇し持っていられなくなる・・・いやそれどころか火傷してしまう可能性が高い。そんなものを納品してみろ・・・ワシの首が幾つあっても足りんわい。かと言って作らねば長耳が何を言うか分からんし・・・すまぬがもしかしたらお前さん達の肉球は守れんかもしれん」


「・・・おい・・・俺らの手のひらは普通の人と変わらない・・・肉球なんて・・・」


「すまん肉球!さらば肉球!」


「おいてめえジジイ!その髭全部引っこ抜いてやろうか!?」


「肉球でか?」


「・・・本気で喰らうぞコラ」


「怖いのう・・・冗談・・・っ!」


「おっ!・・・こ・・・皇子様!」


部屋のドアがガチャリと音を立て開かれるとドグラとヒュノスは立ち上がり突然の来訪者に頭を下げた


「会合中と知っていたが突然すまない。・・・もう会合は終わったのか?」


皇子が部屋を見回し尋ねるとドグラは頷いた


「ええ・・・つい先程・・・それにしても皇子様がなぜこのような場所に?」


「少し聞きたい事があってな。魔力障壁について何か知っているか?」


「いえ・・・特には・・・長耳なら知っているかと思われますが・・・なぜ魔力障壁についてお調べに?」


「・・・単なる興味本位だ。特に理由はない」


「・・・」


「・・・」


『んな訳ないだろう!』と心の中でツッコミを入れる2人。しかし皇族にそのような事は口が裂けても言えず無言でいると再びドアが開け放たれた


「皇子!大変です!」


「・・・何事だ」


「別大陸のコゲツという者が決闘を申し込みました・・・相手はアギニス将軍です・・・」


「なん・・・だと・・・」


「すげぇな・・・おっと失礼・・・ハハッ・・・今のは聞かなかった事に・・・」


思わず呟いたフェルンを皇子が睨むとフェルンは苦笑いをし悪びれる。だがその言葉は皇子フランには届いていなかった。爪を噛みある方向を見つめ眉間に皺を寄せる


「早まった真似を・・・クソッ!」


「お、皇子!何処に・・・」


「決まっているだろう・・・止める事は叶わぬが見届けなければならない・・・決闘場へと急ぐぞ!──────」

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