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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
64/856

61階 処分

ヒーラの様子もある程度分かり私とローグは一旦ギルドに戻る事となった


昼近くになり宿屋に向かっている時より人通りは多い・・・にも関わらずあまりローグを気にしている人がいないのはなんでだろう?私は慣れてるけど仮面をつけた人って目立つような気がするけど・・・


「・・・私の顔に何か付いているか?」


「仮面が」


「・・・」


私の視線が気になったみたい・・・ローグが尋ねて来たので思わずそのまま答えてしまった


「あ、いや・・・少し気になったもので・・・」


「・・・この仮面は正装みたいなものだ。気にするなと言っても難しいかもしれないが出来れば・・・」


「は、はい・・・それはもちろん・・・」


そう言えば素顔といい私はローグの事を何も知らない・・・ただ一方的に私が想いを寄せているだけで恋人がいるかもしれないし・・・年齢もいくつなんだろ・・・ううっ・・・気になる・・・けど聞いてもいいのかな?気分悪くならないかな?


恋人がいるって言われたらどうしよう・・・年齢は3倍位までならなんとか・・・でももし3倍の年齢だったら私なんて孫みたいなもんだよね・・・相手にされないかな・・・


色々と考えているとあっという間にギルドが見えてきた。ただ少し様子がおかしい。冒険者数人が中に入らず外から中の様子を伺っていた


「・・・どうやらもう行ってきたみたいだな」


「え?」


「中に入れば分かる」


行ってきた?誰がどこに?・・・もしかして・・・


ローグはシークス達を処分すると言っていた・・・その結果が今まさにギルドで・・・


私はギルド前にいる冒険者達を押し退けて中に入る・・・すると予想は的中、受付にいるペギーに喚き散らすシークス達の姿があった



「だから!入れないんだって!何度言えば分かるんだよ!」


「ですから・・・そのような報告は受けていませんし他の冒険者は普通に入ってます」


「じゃあ何で俺達は入れねえんだよ!」


「申し訳ありませんが理由は分かりかねます・・・もうじき見に行った職員が帰って来ますので少々お待ち下さい」


「チッ・・・こっちは金払ってんだ!さっさとしろ!」


どういう事だ?


『入れない』そうヤットは言ってペギーに詰め寄っていたが・・・ダンジョンに入れないって事?


「一体何が・・・」


入口で思わず口に出して言った私に気付いたシークスが振り返る


「サラ・セームン・・・君の仕業か・・・」


シークスのせいでギルド内の視線が一斉に私に向けられる。仕業と言われてもまだ状況すら把握していないのだが・・・


「サラ!?お前が・・・お前がやったのか!」


「ヤット・・・少し黙れ」


肩を怒らせ私に歩み寄ろうとしていたヤットだったがシークスの一言で飼い主に怒られた犬のようにしっぽを丸め後ろに下がる


力関係ははっきりしているな・・・シークスを頂点に3人は横並び・・・そんな感じだ


「どうなんだ?君の仕業ならさっさと取り除いて欲しいのだけどね・・・それともまた調教が必要かな?」


『調教』という言葉にザワつく周りにいた冒険者達


私はと言うと・・・足が竦み逃げ出したい衝動に駆られていた



落ち着け・・・大丈夫だ・・・



「黙りか?それとも・・・声が出ないほど怯えているのか?ボク達の仲じゃないか・・・教えてくれ・・・君がやったのか?」


昨日の事が蘇り全身がこの場から『逃げろ』と囁く



この場から1秒でも早く立ち去りたい・・・逃げ出したい・・・


「何とか言ったらどう?あー、なんだ・・・あの言葉を待ってるのか・・・なら言ってやるよ・・・ボクの問いに答えないとダ・・・」


あ・・・言われてしまう・・・あの忌まわしき言葉を・・・


だけどあの言葉を遮るように暖かい声が背後から聞こえた


「結界はお気に召してくれたかな?」


「ダ・・・ダンジョンナイト!!!」


凄まじい殺気が私の背後に向かっている・・・逃げたと言っていたけどローグ・・・貴方はシークスに何をしたの?


まるで恨みでも晴らそうと言わんばかりの殺気にこの場にいる全員・・・ヤット達でさえ顔を引き攣らせているのにローグは平然と私の横を通り過ぎシークスに歩み寄る


「貴様が・・・」


「不要だと言っただろ?目障りだから消えてくれるか?ダンジョンに入れないのに冒険者ギルドにいても意味がないだろ?それともダンジョン以外の依頼でも受ける気か?なら大人しくそこのテーブルにでも座ってろ」


「きっ・・・・・・何をした?」


「何をしたとは?」


「しらばっくれるな!今朝ダンジョンに向かったら入口に透明の壁があるみたいに入れなかった!ボクだけじゃない・・・4人全員だ!他の冒険者は何事もなく入っているのに・・・貴様一体何をしたというんだ!結界とはなんだ!」


「ほう・・・怒ると目がだいぶ開くな・・・普段は閉じてるのに」


「・・・・・・殺す・・・・・・」


「ここで、か?」


「場所なんて関係ない・・・殺す殺す殺す・・・貴様なんざボクにかかれば・・・」


「随分と物騒な話をしているな」


誰?


今にでも襲いかかりそうなシークスに新たな来訪者が声をかける。私が振り向くとそこには・・・


「この場所がどんな場所か牢屋で頭を冷やして考えてみるか?Aランク冒険者シークス・ヤグナーよ」


国から派遣された騎士団・・・なんでここに・・・



ケイン・アジステア・フルー・・・第三騎士団所属であり現在はこの街の兵士長を務める彼が騎士を大勢連れてギルドに乗り込んで来た


「・・・チッ・・・別に何もしてませんよ?」


さすがのシークスも騎士団には手が出せない。もし手を出せば一級犯罪者として国から追われる事になるからだ。いや、騎士団ではなくとも・・・この街やギルドで暴力を振るえばフーリシア王国の法に触れる・・・ダンジョンとは勝手が違う


「フン・・・通報があって来てみればこの有様・・・次に暴れているのを見かけたらAランクなど剥奪してやる」


「だから暴れてませんて・・・それよりもそっちの男の方が怪しいのでは?仮面なんてつけて街中を歩いてる・・・不審者どころじゃないかと・・・」


このっ!ローグに向かってなんて事を・・・


ケインは言われてローグの存在に気付いたようで振り返り彼を見て首を傾げる


「・・・?なんだお前は・・・なんで仮面をつけているんだ?外せ」


「なぜだ?」


「なぜ?不審者を調べるのが我らの仕事だからだ。外せ」


・・・何この展開・・・ローグの素顔に興味はあるけどこの展開で見れるのはちょっと違う・・・どうにかして誤魔化さないと・・・するとギルドの奥からケインに向かって何者かが声を掛ける


「野暮なこと言うなよアジステア卿。その男は俺が保証する」


今度は誰?・・・って思ったらフリップか・・・てかギルド長ならいの一番で出て来なさいよ!使えないわね!


「・・・お久しぶりですレノス卿・・・いや、今は冒険者ギルドのギルド長フリップ殿でしたね。フリップ殿が保証するのなら・・・」


フリップってケインと知り合いなの?年代も違うし友達って訳じゃなさそうだけど・・・


「・・・という訳だシークス・ヤグナー。まだ続けるか?続けるのなら・・・」


「続けるも何も暴れてないんでね・・・居心地が悪くなって来たので帰らせてもらいますよ・・・」


そう言ってシークスは後ろにいる3人に視線を送ると出口・・・ではなくローグの元へ歩き出した


何をする気?まさかローグに・・・


「・・・これで終わったと思うなよ?ダンジョンナイト」


「それはこっちのセリフだ。まだサラと組合員のお礼が済んでないからな」


互いに顔を見ずボソッと呟く


一触即発の雰囲気だったが結局シークスはそのまま3人を連れてギルドを出て行った


それにしても・・・くふっ


「アジステア卿・・・助かったよ」


「・・・職務を全うしたまでです。それと私も今はただのエモーンズ兵士長ケインです・・・フリップ殿」


「そうだったな。今度飯でも奢るよ・・・それはそうとお前ら!ギルドでたむろってないでさっさとダンジョンに行け!邪魔だ!」


フリップの一喝で蜘蛛の子を散らすようにギルドの外に出て行った


ケイン達騎士団も出て行って残ったのは私とローグとフリップ・・・それにギルド職員数名となる。するとフリップは私とローグを自室へと招いた



「お前さんの言った通りになったな・・・ダンジョンナイト」


自室に戻り開口一番フリップはローグを見てニヤリと笑いそんな事を言った。言った通り?どういう事?


「ダンジョンナイトではなくローグです。少しヒヤヒヤしましたが・・・概ね計画通りです」


計画・・・その言葉でようやく思い出す



『処分』



ローグはシークス達を処分すると言った・・・つまり処分とは・・・ダンジョンから追い出すこと・・・でもどうやって?


「なんだお前さん・・・もしかしてダンジョ・・・ローグから聞いてなかったのか?」


「・・・そう言うギルド長はいつ聞いたのよ・・・」


()()?・・・あ、ああ・・・今朝突然ローグが俺の部屋を訪ねて来てな・・・そこで聞いた」


今朝・・・そうか私の部屋に来る前にフリップの部屋に寄って・・・


「すまんな、話しておこうとも考えてたが少し反応を見てみたかった。どれくらい重症なのかを、な」


「あっ・・・」


そっか・・・私がシークスと遭遇したらどうなるか実際見て・・・


「なんだ?まだ調子悪いのか?」


「い、いえ・・・それより部屋に呼んだ用事はなんですか?」


「ああ・・・ローグにちぃと聞きたくてな・・・どうやってダンジョンに入れないようにしたんだ?他の冒険者は入れるが奴らだけ入れないって現象なんて聞いたこともないぞ?」


そう言えばヤットが喚いていたっけ・・・『入れない』って


「それは・・・」


どうやったらそんな芸当が出来るのか・・・私とフリップが固唾を飲んでローグの言葉を待つと彼は仮面の口にあたる部分に指を一本立てた


「秘密だ」


「秘密かよ!・・・まあいい・・・こっちとしては奴らがダンジョンに入れないってのは好都合だ。これでダンジョンコアを破壊される可能性がなくなったからな」


うん、それはかなり大きい。ダンジョンコアが見当たらないとはいえいつか突然出て来る可能性もある・・・その時にもしシークス達がダンジョンにいたら・・・


「話はそれだけか?なら私は用事があるのだが・・・」


「おう、引き止めて悪かったな。また何かあったらよろしく頼むわ組合長」


「了解した。・・・それと受付の子が私を睨むのを止めさせてくれ。どうやらダンジョンへの不正入場を疑ってるらしいのだが・・・」


「・・・ああ、言っておく。ダンジョンナイトはダンジョン入場料免除になった、ってな」


「・・・いいのか?」


「構わねえよ。その代わり頼むぜ?」


「ああ・・・それでは」


行ってしまう・・・ローグが・・・


「?どうしたサラ・・・ギルド長に何か用か?」


「え?・・・いえ・・・」


「なら行くぞ。やる事は山ほどある」


「は、はい!」


「・・・まるで乙女だな・・・」


お黙り!フリップ!


確かにたった一言『行くぞ』って言葉で喜びを爆発させてしまったけど・・・乙女言うな!



こうして『ダンジョンキラー』ことAランク冒険者のシークス達の一件は終わりを見せた


私とヒーラにトラウマという置き土産を残して──────

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