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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
637/856

632階 貴族の給与事情

「・・・つまり・・・モッチャモッチャ・・・空に浮かぶ・・・モッチャ・・・星の一つを・・・モッチャモッチャ・・・目指して?」


「・・・食べながら話すのはお止め下さい・・・正確には潮の流れを読みある程度目的地を予想し位置の変わらない星との角度を保ちながら進んでいました。距離はおおよそですが方向は間違いないかと」


アーキド王国の航海士マルネは海図を広げると船が消息を絶ったであろう場所を指差した


「ンクンク・・・フゥ・・・お茶が美味い。ところでこの左端にある場所は?」


「この大陸です」


「随分とまあ小さいな」


「これくらい縮小しないと入り切らないので」


「なるほど・・・それだけ遠くまで行ったってことか。そして運悪く見つけてしまった・・・この大陸以外の人か住む大陸を」


「運悪く・・・ですか?」


「見つけなきゃ何事もなく戻って来ただろ?」


「結果的にはそうなりましたが・・・」


「結果が全てだろ?もし友好的だったとしてもかなり離れているようだから今後の交流も難しいし・・・ぶっちゃけなんで行ったんだ?」


「意地悪言うなよ・・・気になるだろ?それにもし見つけたら夢が広がるしな・・・この大陸が狭く感じるくらいにな」


「閉鎖的な国の王がよく言うよ。まあいい・・・大体方向は分かったからそこを中心に探すか・・・」


距離的な問題じゃなければゲートを使って連れ戻せる・・・問題はどうやって見つけるかだな・・・通信道具とゲートが使えないってまるで以前のファミリシア王国の王都みたいだ。この消息を絶った付近に大陸があったとしたらそこは結界で覆われているって事か?何の為に?


「あの・・・私も連れて行ってもらえませんか?戦いの面では役に立てませんが航海士として道中でしたら少しはお役に立てるかと・・・」


「え?いや1人でササッと行って来ようかと思ってんだけど・・・」


「はあ?1人で行くってお前・・・」


「船は1人では動かせません!簡単に動いているように見えますが色々とやる事が・・・」


ワグナとマルネ・・・それに謁見の間にいる人達が信じられないといった顔をする


「誰が船で行くと言った?」


「え?しかしでしたらどうやって・・・道中も行先も一面海なのですよ?」


「決まってるだろ?海を渡るのに船じゃないのなら答えは・・・空だ──────」




「・・・お帰りなさいませ。随分とお疲れのようですね」


「ああ・・・精神的に、な」


エモーンズに戻って来た時には既に夜は明けていた。魔族になって寝る必要はなくなったけどこれまでの習慣からか精神的なものなのか疲れると眠たくなる・・・んで今は眠気MAXだ


「・・・サラは?」


「今は寝室でお休みに・・・起こしますか?」


「よせよせ・・・昨日の夜に俺が起こしてしまったせいであまり寝てないからな・・・寝かせといてあげてくれ」


「・・・もう臨月間近なのであまりご無理は・・・」


「違ぇよ!寝てるつもりだったのに本当に寝てたみたいでな・・・夢を見て起きてしまって・・・」


「夢・・・ですか?」


「ああ・・・夢か現実か定かじゃないけどな」


あれは夢なのか記憶なのか・・・ダンコに聞けたら分かるかもしれないけど・・・


「・・・それでお話の方は・・・」


「ああ・・・結局俺が探しに行く事になった。まあゲートちゃんもいるし他の奴らも知らない仲じゃないしな・・・んで1人で行こうとしてたら全力で止められて今の時間までかかったって訳だ」


「当たり前です。お1人で行かれるおつもりだったのですか?」


「の方が楽だと思ったんだよ。けどそんな事はさせられないって・・・少人数で行く場合でも最低5人は連れて行けってさ・・・その内の2人はアーキド王国とラズン王国から出すと言ってきている。連れて行く奴全員出てもいいと言ってきたがそれは丁重にお断りした」


「そうですね・・・5人は最低ラインとして・・・誰をお連れに?」


「まだ決めてない・・・てかなんで5人も連れて行かないといけないんだ?護衛も要らないし必要ならすぐに戻って来れるし・・・まあ道案内としてマルネって航海士は連れて行ってもいいかもしれないけど・・・」


「何があるか分からないから・・・もありますが送り出す者としての心情的なものが大きいと思います。私などは『主を1人で行かせた』と思われたくないから・・・アーキド王国、ラズン王国の両国は自分達の失態を閣下1人に背負わせるのは世間体が悪いからでしょう」


「・・・そういうのは普通取り繕うんじゃないのか?」


「だから言わなかったのでは?」


「お前は言ってるじゃん」


「言わざるを得ませんからね。取り繕うにしても理由が思い付きませんので」


「そこは必死に捻り出せよ・・・」


「捻り出した理由を述べた方が閣下の気分を害すかと・・・今から適当な理由を述べましょうか?」


「適当言うな!・・・ハア・・・もういい。で、世間体としては5人くらい連れて行けばいいんだな?」


「はい。護衛4名に道案内1人・・・連れてく者の見栄えさえ気にして頂ければ大丈夫です」


「見栄え・・・護衛っぽい奴って事か?」


「はい。それと・・・」


「まだあるのかよ」


「出来ればエモーンズでの業務に差し支えない人物を連れて行って頂けると助かります」


「・・・兵士の中からと思ってたけど・・・」


「ケイン将軍に見回り強化の旨を伝えたところクレームが・・・ただでさえ広くなった領土に見回りの強化となりますと人手がかなり厳しいらしく休暇が取れないと・・・その上人を連れて行かれたら怒りで屋敷に乗り込んで来るかも知れません」


「おい世間体」


「冒険者を雇うなり知り合いの伝手を使うなりして頂けると助かります」


冒険者か知り合いか・・・キースは暇そうにしているけど屋敷に居てもらった方が安心出来る・・・レオンが居てくれたら連れて行くのだけど・・・


レオンとニーニャは『タートル』の面々を連れて旅に出てしまっていた。また戻って来るとは言ったがいつになる事やら・・・ちなみに過去の王都襲撃の件はスウが王になった段階で無罪放免となった。王家の過去のやらかしていた事を顧みるとレオン達の行動も致し方無しと判断されたのだとか・・・あとアバドン討伐に協力したってのも大きかった


エモーンズにずっと住むのもいいけどまだ動ける内は罪滅ぼしも兼ねて人助けでもするんだと・・・やった事はアレだけど基本行動理念は『誰かの為』だもんな・・・キースと違って人間が出来てる


だからこそ今から行く場所に連れて行きたかった・・・強いし頭もいいし・・・どうせ連れて行かなきゃならないなら1人くらい優秀な人材が欲しかった・・・


「冒険者を雇うか・・・金を積めば来てくれる奴はいるだろうし・・・」


「その資金は閣下個人のものでお願いします」


「・・・なぜ?」


「どっかの誰かさんが商会を敵に回しそうな出来事をやらかしてその火消しにかなりの資金が必要でして」


「・・・どっかの誰かさんも悪気があってやった事じゃないと思うんだ、うん」


「その方が余計にタチが悪いかと。悪気があれば罰せますが善意からとなると・・・」


「・・・」


「あ、かと言って金貨を創ったりしては・・・」


「分かってるよ!」


くそっ先に言われたら創れないじゃないか!


てか創れなかったら俺・・・無一文なんじゃ?そう言えば領主として給料貰ったことないような・・・いやそもそも領主って誰に給料貰うんだ?


「なあ、ナージ・・・俺の給料は?」


「・・・何を仰っているのか理解出来ません」


「いやいやいや・・・働いているんだから給料が発生するだろ?けど貰った記憶が無いんだけど・・・」


「・・・本気で仰ってますか?」


「うん」


「・・・閣下は国王が給料を貰っているとお思いですか?」


「いや貰わんだろ」


「ではそれが答えです」


「あん?」


「閣下が『国王は給料を貰えない』と思う理由・・・その理由が閣下にも当てはまると言うことです」


「つまり・・・何となく貰えない、と」


「・・・そんな理由で貰えないと思ったのですか?」


「うむ」


「・・・」


「なんだよ!別にそんな事知らなくたっていいだろ?別に生きていく上で必要ない知識だし」


「その知識がないから疑問に思われているのでは?」


「・・・」


「・・・給料とはお金と決まっている訳ではありません。お金の方が都合がいいので働いた分を賃金として支払うのが一般的になっているだけです。つまり働いた分の対価を受け取ればそれが給料ということになります」


「で?」


「閣下はこの屋敷に住み、毎日食事をし、いい服を着てますがそのお金はどこから?」


「そりゃ・・・街の税金?」


「元を辿ればそうですね。領地にいる者達から税金を徴収し一部を国に収め残った分を使う事が許されています。その残った分で私兵や執事、メイドの給料を払っている訳ですが・・・」


「そこには俺の給料も・・・」


「含まれていません。いえ、厳密には含まれていますが・・・」


「あ、そういう事か・・・屋敷や食事・・・それに服とかで使われている・・・」


「そういう事です。街が潤えば税金も増えその分閣下も潤います。労働の対価としてお金ではなく『貴族の暮らし』を貰っているという事になります」


そっか・・・王族も豪華な食事や服・・・何不自由ない贅沢な暮らしが出来るのは労働の対価として受け取ってるって事に・・・習ったことはないけど無意識にそれを認識してたって事か


「じゃあ冒険者を雇うのも・・・」


「話を聞いていましたか?どっかの誰かさんのせいで・・・」


「分かったよ!財政難だから出せないって言いたいんだろ?」


「財政難ではありませんよ?」


「おい」


「ただ無駄な支出を抑えたいだけです。閣下の護衛などにお金を掛けるなどフルプレートアーマーを着た騎士に木の盾を持たせるようなものですから」


「世間体は?」


「お金を掛けている掛けてないは傍から見て分かりませんから」


「なるほどね・・・ハア・・・」


お金を掛けずに都市経営に関係のない人を俺の伝手で探さないとか・・・かなり限られてくるな


「ナージ・・・一緒に行くか?」


「この街に何か恨みでも?」


「だよな・・・何があるか分からないから死なないような頑丈なヤツを連れて行くか・・・」


「それか死んでもいい人を」


「そんなヤツはいな・・・くもないか。まっ、3人くらいなら何とかなる・・・かな──────」

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