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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
636/856

631階 記憶

『この船で海を渡れ。ここから真っ直ぐに進めば人が暮らせる大陸がある・・・そこで大地を耕し作物を育て暮らすんだ』


『でしたらみんなで・・・』


『誰も居ないとあれば気付くやも知れぬ・・・なーにちょうど一戦交えてみたいと思ってたところだ・・・困った事があったら手紙でも寄越せ・・・ヤツを倒して悠々自適に暮らしていたら果物くらいなら送ってやる・・・だが決して戻って来るな・・・分かったな?』


『・・・どうして・・・せっかく平和が訪れたと思ったのに・・・』


『そう嘆くな・・・どうやら神は平和な世が退屈らしい。だがお前達はその神に一矢報いるのだ・・・平和な世を築いてな』


『・・・くっ・・・』


『ほら早くしろ・・・ヤツが・・・アバドンが来る前に──────』




「っ!アバドン!?」


・・・夢・・・か・・・


周りを見渡すといつもの寝室・・・うへっ汗でビショビショだ


にしても今の夢はなんだ?


大きな船の前で話をする人達・・・見た事ない人達だったが最後の最後でとんでもない名前を出しやがった・・・『アバドン』・・・彼らは奴に追われていた?てかこれって・・・


「・・・ロウ?」


「ああ、ごめん起こしちゃった?」


「うん・・・アバドンがどうしたの?」


「いや・・・夢?を見て・・・いや夢じゃないかも・・・」


「?夢じゃない?」


「うん・・・記憶かも・・・」


「記憶・・・サキ達の?」


「多分。俺の記憶にはない人達が話している様子を傍から見てる感じで・・・その人達が口にしたんだ・・・『アバドン』って・・・」


随分と追い詰められている様子だった・・・今の歴史上アバドンを知っている人は限られているしアバドンに追い詰められたことはない・・・となると今の歴史よりもっと前の歴史の可能性が高い。アバドンに滅ぼされた人類の歴史・・・待てよ・・・じゃあ・・・


「ロウ?」


「ん?あ、いや何でもない。とりあえず寝よう!寝不足は胎教に良くないって聞くし」


「起こしといてよく言うわ・・・何だか目が冴えちゃった・・・温かいミルクでも出してくれない?」


「お安い御用ですお嬢様」


サラの要望に応えすぐさまお盆を創造しその上に程よく温かいミルク入りのカップを2つ創造した


「言ってみたものの・・・本当に便利ねその能力」


「だね」


ダンコ達と同化してからというもの万能感が更に増したって感じだ。これまでは絵に描いたりちゃんと想像しないと上手く出来なかったけど今は頭の中でイメージすれば簡単に創造出来てしまう。もちろん複雑なものはそれなりの工程を踏まないと難しいけどね


これまでダンコと分担して創り出していたものを1人でやるようになったので効率化したのだろう


「一応適温にしたつもりだけど気を付けて飲んでね」


「ええ・・・うん、ちょうどいい。体が温まってよく寝れそう」


「すみませんね・・・よく寝てたのに起こしてしまって」


「嫌味を言った訳じゃないわよ?・・・・・・もうすぐ2ヶ月ね」


「何が?」


「調査団が旅立ってからよ。大丈夫かしら・・・」


もうそんなに経つのか・・・あれから音沙汰無いけど大丈夫なのだろうか・・・まあ一緒に行ったゲートちゃんに何も無いようだから無事なのは分かってるけど・・・


「ゲートちゃんに何かあればすぐに分かるし通信道具もゲート倉庫も渡したし大丈夫でしょ。逆に何も無さ過ぎて暇しているかも」


「それならいいけど・・・本当は一緒に行きたかったんじゃないの?」


「まさか!いるかどうか分からない人達を探すなんて真っ平御免だね・・・確実にいるって分かっているならともかく」


「そう?ワグナ国王なんて行きたくて行きたくて仕方なかったらしいじゃない?冒険だロマンだとか言って」


「若いよなあのオッサン・・・デュランも行きたかったらしいぞ?あの2人はどうかしてる・・・一国の王様なのに・・・」


「あなたも同類かと」


「ええ!?やめてくれよ」


「だって領主なのに領地放ったらかしてよく色んな所に行くじゃない?その度にジェファーの愚痴を聞く羽目になる私の身にもなってもらいたいものだわ」


「うっそれは・・・」


「それに気にならない?鱗の生えた腕・・・『助けて』とだけ書かれた手紙・・・もしかしたら私達の知らない人類が何処かにいるのかもって考えると・・・」


「もしかして妊娠してなかったら調査団に入ってた?」


「・・・うーん・・・ロウが行くなら一緒に行ったかも」


「根っからの冒険者だね」


「あなたも・・・でしょ?」


「どうだろうな・・・俺は根っからの・・・っ!」


言葉を遮るようにドアが激しくノックされた


まだ夜は明けてない・・・って事は・・・


「何事だ!」


「夜分遅く申し訳ありません。火急の用ゆえ入ってもよろしいでしょうか?」


声の主はナージだった。夜中に来るって事はかなり急用なのだろう


「・・・ロウ・・・」


「俺は根っからの門番気質なんだけどね。サラはこのまま寝てて・・・執務室で待てすぐに行く!」


ったく・・・嫌な予感ってのはどうしてこう当たるもんかね──────




「連絡が途絶えた?」


「はい。1時間に1度は必ず取っていた連絡が急に取れなくなったらしく・・・」


着替えて執務室に行きナージから報告を受けた


何でも調査団との連絡が急に途絶えてしまったらしい


「それで?」


「原因解明と出来れば捜索に手を貸して欲しいとの事です」


「断れ」


「・・・畏まりました。両方共ですか?」


「ああ・・・原因解明も何も通信道具の通信可能な距離は何とも言えないしな・・・それも含めて貸しているからとやかく言われる筋合いはない。てか距離的なものなのか妨害があって通信出来ないのか調べようがない。それと捜索に手を貸すのなんて言語道断だ。俺はここから一歩も動く気はないぞ?」


「ゲートちゃんはどうされますか?調査団と同行しているはずですが・・・」


「それは向こうの責任だろ?」


ゲートちゃんとは通信道具を使わずとも通信出来るし視覚も共有出来る・・・が、試しに話し掛けたり視覚を共有しようとしたけどダメだった。それだけだと距離的な問題かどうか分からないが・・・


「ロウ・・・行ってあげて」


「・・・サラ・・・」


執務室に入ってきたサラが開口一番手を貸すよう言ってきた。それはつまり救援に向かえと言っているのと同じ・・・救援に向かってしまうと・・・


「前にあった事を悔いてるのは分かるし私も出来れば傍にいて欲しい・・・けど調査団の件を解決出来るのはおそらくあなただけ・・・。それにあの時とは違うわ・・・もうアバドンはいないし周りには心強い味方も大勢いる。私は大丈夫・・・だから・・・」


2人を守れなかったという思い・・・その思いがここから離れるのを拒絶する。もう二度とあんな思いはしたくない・・・サラのお腹が大きくなる度にその思いも強くなっていった


けど・・・


「・・・ハア・・・ナージ、先ず何処に向かえばいいか聞け。それとその場所に美味しいお茶菓子を用意しとけと伝えろ」


「畏まりました」


「あーそれと今から俺が戻るまで何人たりとも屋敷に入れるな。無理に入って来ようとしたら殺しても構わない。てかむしろ殺せ」


「・・・食材の搬入などは・・・」


「屋敷の前まで持って来させて後は兵士に運ばせろ・・・とにかく外部の者は入れるな」


「畏まりました。徹底致します」


やり過ぎかもしれないがこれくらいしないととてもじゃないけど安心して行けない・・・そうだ・・・ベルを軽く超えるような魔族を創って・・・


「ロウ?」


「はい」


「余計な事はしなくていいからね?」


「・・・余計な事とは?」


「これ以上護衛は要らないって言ってるの。ベルやヴァンパイアそれにシュルガットで充分ってこと」


「・・・ダメ?」


「ダメ。普通に産ませて」


「・・・はい」


チッ・・・さすがサラ・・・俺の行動を読んでたか。『普通に産ませて』と言われたら引き下がらずを得ないな・・・サラに気付かれないよう遠くから守らせるとしよう


眠くなってきたとサラは寝室に戻り、すぐに部屋の外で護衛するようにベルとヴァンパイアに伝えるとちょうどナージが帰ってきた


「お待たせ致しました。ラズン王国でお待ちしているとの事です。もし可能なら今からでも、と」


「分かった。すぐに向かう・・・ケインに夜の見回りを強化するよう伝えろ」


「畏まりました」


さてと・・・じゃあ行くか・・・本当タイミング悪いことこの上ないな



屋敷はナージに任せゲートを開いてラズン王国へ


どうせここに居るだろうと踏んで謁見の間にゲートを開いたが案の定ワグナとその他の者達は謁見の間に集まっていた


「やってくれたな」


「うお!?ロウニ・・・悪ぃな夜遅くに」


「時間はどうでもいい・・・とりあえず人伝に聞いただけだから状況を教えてくれ」


「話が早くて助かるぜ・・・船の奴らとの通信が途絶えた・・・今は5時間・・・いやもう6時間か・・・経過してるが一向に返事がねえ」


「向こうが寝てるだけって事は?」


「ないな。船の航行中は誰かしらが交代で起きてる手筈になっている。定期連絡は1時間に1回・・・進み具合と通信が出来るかの確認の意味を込めてこちら側と向こう側とで交互にやるようになっていた」


「距離が離れて通信道具が限界を迎えた可能性は?」


「1時間に1回の連絡が取れなかった場合、その場所から一旦戻るよう指示している。そっから先に進むか一旦戻るか決めようって話だったから離れ過ぎって事はないと思う」


なるほどね・・・距離が問題なら戻れば普通に使えるはず・・・が、6時間経っても連絡がないって事は・・・


「捕まった・・・か」


「その可能性が高ぇ。いや捕まったならまだしももしかしたら・・・」


「何かあったのは確かだろうが無事の可能性は高い。同行しているゲートちゃんとも連絡は取れないが死んでいないのは間違いない。死んだら分かるようになっているからな」


「そりゃいい事を聞いた・・・が、死んでなくとも怪我している可能性はあるってことだろ?なら無事とは言い難いんじゃ?」


「生きてれば構わないだろ?死ぬよりマシだ」


「そりゃそうだけど・・・なあ・・・そのゲートちゃんの所にヒョイっと行ったり出来ねえか?」


「今となっては無理だな。視覚を共有しようとしてもダメだった・・・距離が問題ではないのなら待っても無駄だろうな」


「なんでだ?」


「逃げれるならとっくに逃げてる・・・そういう役目とちゃんと教えているからな。要は今、調査団の連中はマナも使えず魔力も使えない状態にある可能性が高い。通信道具はマナを使うしゲートは魔力・・・どちらか片方でも使えれば何とか連絡の取りようもあったが・・・」


「チッ・・・何かがいるのは間違いなさそうだな」


「良かったじゃないか証明出来て」


「良かねえよ!・・・あの腕の持ち主みたいな奴が大勢いて捕まった・・・その線が濃厚か・・・」


「だな。んで調査団のメンバーは?」


「総勢40名。主なメンバーはウチからはコゲツにリュウダ・・・アーキドからは『海将』ネターナだ」


簡単に捕まるようなメンツじゃないな・・・帰りたくなってきた


「消息を絶った場所はある程度把握してるのか?」


「アーキドから派遣された奴が海図とやらに色々書き込んでる。推測の域を出ねえが指標にはなるはずだ」


ワグナが視線を向けるとその人物が俺に頭を下げた。おそらく彼女がアーキド王国からの・・・1人格好も違うし礼儀正しいし間違いないな


「よし・・・とりあえず茶菓子を出してくれ・・・話はそれからだ──────」

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