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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
633/856

628階 断罪の炎

「ダンジョン・・・だと?」


《つっても即席のダンジョンだけどな・・・出来たてホヤホヤの》


ロウニールは歩みを止めずダンテの問いに答えるとそのままダンテの横を通り過ぎサラの元へ向かった


そして・・・


《遅く・・・おっと・・・遅くなった」


そう言ってロウニールはゲートを開くとマントを取り出しサラに掛ける


「・・・色々聞きたい事があるけど・・・とりあえず言っとくわ・・・()()()


「それは良かった。何かされてたらここら一帯吹き飛ばすところ・・・まあ見ただけでも万死に値するから生きて山から下りる事はないだろうけどね」


「・・・ごめんなさい・・・」


「?なんで謝るんだ?サラは俺を助けてくれようとここまで来たんだろ?」


「・・・浅はかだった・・・私だけなら何をされてもと・・・けど実際は・・・」


そう言ってサラはロウニールに掛けてもらったマントをギュッと握り締めある物を見つめていた


それは床に転がっている木の棒・・・ロウニールもその棒の存在に気付き首を傾げる


「あの棒で突かれそうに?」


「怒らない?」


「?・・・それは聞いてみないと・・・」


「・・・あの棒を私の中に突っ込んで・・・お腹の中の子を・・・」


「・・・なるほど・・・ね・・・ったく・・・殺気を抑えるのも限界があるって・・・よし、とりあえず」


「ちょっ!?」


言うとロウニールはマントをめくり下から覗き込んだ。突然の行動に慌ててマントを押さえて隠すサラ・・・そのサラを不満気に見上げるロウニールに怒りを抑えながら問い質す


「何をしているのかな?」


「・・・目の保養と怪我をしていないか確認を・・・」


「蹴るわよ?」


「足を上げると見られるぞ?あまり殺す理由を増やさないでくれ・・・ただでさえ何回殺しても足りないくらいなんだから・・・」


そう言うとロウニールの放った殺気により未だ身動きの取れない男達を見回した


「ダンテ以外逃げてもいいぞ?もちろん俺に立ち向かうのも勝手だが・・・どうする?」


「う・・・う・・・うわあああ!!」


ロウニールの言葉を聞き男達は全て小屋の入口へと殺到する。そしてダンテ以外の者達が全て小屋から出て行くとロウニールはダンテと向き合った


「お前だけ逃げれなくて不服か?ダンテ」


「まさか・・・てかさすが魔王ってところか・・・悪いヤツだね本当」


「何が?」


「すっとぼけんなよ・・・逃がす気もねえのに期待持たせやがって・・・やるじゃねえか」


ダンテが笑みを浮かべた瞬間、小屋の外から絶叫が聞こえてきた。その絶叫はしばらく続く事になる・・・男達が死を迎えるまで・・・


「逃がす気はあったさ・・・奴らが全員Sランク冒険者くらいの実力があれば1人くらいは逃げれたはずだ。もし逃げれなかったとしたらそれは・・・弱かったから・・・だろ?」


「無茶言うぜまったく・・・で?オレをどうするつもりだ?殺すならさっさとしてくれ・・・男と見つめ合う趣味はねえ」


「俺もない・・・まだ寝起きで頭が回らなくてな・・・どう処理するか考え中だ」


「処理って・・・まあいい。なら決まるまでの間、聞いてもいいか?」


「聞くだけなら」


「・・・サラがここまでしたんだ・・・破壊の因子の件は嘘じゃねえだろう。ならどうやって回復したんだ?オレの力なしじゃ・・・」


「分かってるくせに聞きたいのか?」


「・・・やはりそうか・・・チッ・・・手を出して来ねえと思ったのに最悪だぜ」


「まあ俺もなぜ手を貸してくれたか謎なんだけどな・・・」


「ロウ・・・もしかしてウロボロスが?」


「そそ・・・アバドンの破壊の力とやり合ってたら突然その力が弱くなって・・・んで、抑え込んで目を開けたら目の前にいたんだ・・・ウロボロスが。とまあその話は後にして今は・・・」


「っ!・・・ガッ!!」


ロウニールは突然ダンテとの距離を詰めると前蹴りを放ちダンテを吹き飛ばす。ダンテは小屋の扉をぶち破り外へと放り出された


「・・・チッ・・・いきなりかよ・・・」


「・・・かし・・・ら・・・たす・・・」


「あん?・・・っ!?」


立ち上がる際に後ろから声が聞こえ振り向くと巨大なドラゴンに下半身を咥えられ今にも呑み込まれそうになっている仲間がいた


他にもゴブリン達に四肢を引っ張られ絶叫を上げる者やスケルトンに串刺しにされる者・・・圧倒的な数の魔物達に囲まれ為す術なくやられる仲間達を見てダンテは思わず苦笑する


「簡単に殺さず嬲り殺すつもりか・・・いい趣味してるぜ」


「殺してやるだけ感謝してもらわないと・・・延々と苦しめ続けることだって出来るんだぞ?」


「感謝だと?つーかてめえの怒りは分かる・・・てめえの女が犯されそうになったんだ・・・ぶっちゃけ()()()()を見ていたら怒り狂ってただろうな。けどよぉ・・・殺すほどの事か?」


「あの場面?」


「気になるか?気になるよなぁ?サラが全裸で何してたと思う?しゃがんで足を広げて大事な部分を見せびらかして、その後は四つん這いになり全てをさらけ出した・・・もしかしたらてめえより知ってるかもな・・・色々な部分が丸見えだったからな」


「・・・言ってる事が支離滅裂だって事に気付いてるか?殺すほどじゃないと言いつつ煽りやがって・・・魔物達が俺の殺気に反応して・・・トドメを刺しちゃったじゃないか」


一際大きな悲鳴と共に男達は次々と絶命していく。主の気持ちを察した行動に魔物達を責める気持ちをグッと抑え肩を竦めおどけてみせた


「細かいことは気にすんなって・・・そんなんじゃモテねえぞ?」


「別にサラがいればモテる必要ない」


「ああ・・・それもそうか。ちなみにそのサラだが右ケツの中心にホクロがあるの知ってたか?」


「・・・お前は生きる意思ゼロか?」


「意思とは関係なく生き残る自信があるだけだよ」


「ウロボロスの力・・・再生の因子か」


「御明答・・・死にたくても死ねねぇんだわこれが。しかも知ってるか?痛みってのは『これ以上放っておくと死ぬぞ』みたいな一種の警告みたいなもんなんだ・・・って事は何をされても死なねえオレには必要ないもの・・・言ってる意味分かるか?」


「なるほど・・・痛みを感じないのか・・・」


「そういう事・・・残念だったなぁ?いくらてめえが強かろうが関係ねぇ・・・どぎつい殺気を放とうが殴ろうが蹴ろうが痛くも痒くもねぇんだよ。手下なんざ後でいくらでも集められる・・・こちとら手間が増えるだけで・・・うおっ!?」


得意気に語るダンテの足元の土が盛り上がると手足に絡みつき動きを封じた


「もう喋るな・・・お前の処理方法は決まった」


そう言うとロウニールは人差し指を立てその先に炎を灯す


黒く禍々しい炎・・・その黒い炎をダンテの足元へと放ると最初は小さな火種程度だったが次第にその勢いを増しダンテの全身を包み込む大きな炎と化した


「火炙りかよ!ひでぇなてめえは!けどいくら焼こうが意味なんてねぇんだよ!痛みがねえって事は熱くもねえ・・・煙が少々うざったい程度だ!残念だったなぁサラの旦那さんよぉ!」


燃え盛る炎の中、ダンテは平然としながらロウニールを煽る


「んにゃろ・・・」


「ロウ?」


「・・・サラ・・・」


小屋の中から着替えたサラが出て来た。その姿を見て怒りが鎮まるとロウニールは彼女の元へと向かった


「これで終わりかよ?こんなもんかロウニール!!」


「・・・何か言ってるわよ?」


黒き炎に包まれて尚挑発するダンテを無視しているとサラは目を細めてダンテを見つめロウニールに尋ねた


「言わせておけばいい・・・拘束も炎も周囲の魔力を取り込むようになっているから彼は永久に燃やされ続ける・・・つまり何を言っても負け犬の遠吠えにしかならないって訳だ」


「負け犬の遠吠えだと?今に見ていろ・・・最後に吠え面をかくのはどっちか・・・何かの拍子でオレがここを抜け出した時・・・てめえは後悔することになるだろう!数年でも数十年でも・・・数百年後でもオレはてめえやてめえの子孫を襲い続けてやる!てめえに関係する奴全員だ!精々この炎が絶えぬよう祈りオレが自由になる事に怯えながら暮らせ!平穏など来やしない・・・オレがいる限りな!!」


「・・・そりゃ怖いな。けどそんな事考えてると拘束も炎もなくなりはしないぞ?負の感情は魔力を生み出す・・・自分で自分の首を絞めてるのと同じってわけだ。自力で抜け出すにはなるべく負の感情を抑えるしかない・・・まあそれが無理なら親切な人が来るまで燃えてろ」


「・・・」


「さあ帰ろうサラ。もう腹が鳴って腹が鳴って・・・」


「そう言えばモッツさんあなたの為に毎日料理を出してくれてたのよ?ちゃんと謝っときなさい・・・毎日残してたのだから」


「いや食べれる状態じゃ・・・ハア・・・まあそうだね・・・謝っとくよ」


「それとみんなにもね」


「はいはい・・・あ、そう言えばサラのお尻にホクロってある?」


「・・・は?なんで今そんな事聞くの?死にたいの?」


「あ、いや・・・しばらく見てなかったからあったかなーって気になっただけで・・・死にたくはありません」


「そんなの・・・・・・・・・」


「え?今何て言った?聞こえなかったんだけど・・・」


「そんなの後で確認すればいいでしょ!!」


「・・・確かに。さあ帰ろういざ帰ろう!じゃあなダンテ・・・寂しいだろうけど魔物達も引き上げるから一人でそこで自分の犯した罪を償っとけ・・・そうしたらもしかすると・・・まっいっか。ゲート」


ロウニールはダンテに向けて手を振るとゲートを開きサラと共にエモーンズへと帰って行った


すると魔物達は役目を終えとばかり振り返るとその先にあるこの場所とエモーンズのダンジョンとを繋ぐゲートを通り去って行く


一人残されたダンテは自分を燃やす炎がパチパチと音を立てるのを聞きながら既に動けるようになった後の復讐を企てていた。すると・・・


《気分はどう?さすがの私も焼かれ続けた事はないから興味あるわ》


「っ!?・・・ウ・・・ウロボロス様・・・」


磔にされ焼かれているダンテの目の前に突如として現れたウロボロス・・・その目は言葉とは裏腹に冷ややかだった


《で?どうなの?》


「これは・・・まだオレは諦めてねえ!解放してくれればきっと・・・」


《聞かれた事に答えて》


「え?・・・あ・・・熱さは特に・・・ウロボロス様の力の方が上回っており焼かれた瞬間に再生して・・・」


《あっそ・・・それで?》


「え?」


《『きっと』何なの?》


「あ・・・きっと期待に添える事が出来るかと・・・もう既に考えてて・・・サラの腹の中には子がいて後一年もしない内に産むことになる・・・その時に隙をついてその子を奪って・・・」


《ねえ・・・誰がそんな事を期待していると?・・・ハア・・・とんだ()()()ね》


「・・・え?」


《まったく・・・アナタが望んだから私の能力を少し分けてあげただけなのに・・・なんでアナタはその能力を使って自分の望みを叶えようとせずに私の望みを叶えようとしているわけ?しかも見当違いだし・・・》


「見当・・・違い」


《どうせなら彼女がここに来た時に余計な事をせず彼を助ければ良かったのよ・・・そうすれば私がわざわざ出向く事もなかったのに・・・本当使えない》


「・・・オレは・・・」


《私が望むものはね・・・『死』よ》


「・・・え?・・・『死』?」


《戦いを観るのが好き・・・でもそれは『死』を賭してこそ観る価値があるの・・・少ない生を更に縮める愚かな行為・・・けどだからこその輝きがあるだからこその尊さがある。私が得る事のない『死』を間近に感じられる。そう・・・私はこの世界で誰よりも『死』を望んでる。手に入る事の無い『死』を》


「・・・」


《アナタが彼を助けていれば良かったと言ったのは彼が私に『死』をもたらしてくれる可能性があるから・・・インキュバス・・・そしてアバドンさえも葬った彼なら私も・・・けどアナタはサラで遊ぶだけで・・・》


「ち、ちげぇ!そりゃサラを犯そうとしたがその後ちゃんと約束通り治そうと・・・」


《サラを犯し・・・殺した後で、ね》


「っ!・・・それは・・・」


《どれだけの長い間アナタを観てきたと思ってるの?実力者の妻や彼女・・・友人知人を犯し嬲り殺す・・・そうやって小さな火種を大きくして世界をも巻き込む戦争を起こす・・・何年経ってもそればっかり。まあ好きにやればいいのだけど今回最悪なのはサラに手を出そうとした事》


「・・・なぜ・・・」


《今の彼は魔族であって人間でもあるの。長い歴史の中で初めて生まれた特異な存在・・・それが彼、ロウニール・ローグ・ハーベスなのよ。偶然が重なって生まれた奇跡の存在・・・だからこそ確立していなくて不安定なのよ。今の状態が続く事もあれば単なる魔族になる事も充分ありえる。そんな彼を支えているのが彼女・・・サラ・セームンよ。もし彼女を失えば彼は魔族となるでしょう。そうなればもうインキュバスやアバドンを葬った力は出せないかもしれない・・・つまりアナタは私のたった一つの希望を奪おうとしたの・・・それなのに『ご期待に添える』?呆れるわ・・・本当》


「な、何を・・・ウロボロス様!」


ウロボロスは不意にダンテに近付くと手を伸ばし胸に爪を突き立てる


《何をも何も・・・返してもらうのよ・・・私の力》


「ま、待ってくれ!今この状態で抜かれたら・・・」


《ええ・・・当然死ぬわね》


ウロボロスは微笑む


ダンテはその微笑みを遠い過去に一度だけ見た事があった


それは彼が子供の頃・・・両親に連れられ街から街へと馬車で移動していた時の事だった


馬車は運悪く野盗に襲われ両親は彼の目の前で殺された。彼もまた野盗の刃にかかり瀕死の状態に・・・


野盗が去り両親の亡骸の傍から離れ必死に助けを求めるダンテ・・・這いずり手を伸ばすとその先にウロボロスが立っていた


《生きたい?》


シンプルな問い掛けにダンテは考えることなく頷くと・・・ウロボロスは微笑んだ


忘れもしないウロボロスの微笑み・・・その笑みがもう一度見たくて彼は・・・


「は・・・ははっ・・・ウロボロス・・・様ぁばばばばばば!!」


再生の因子が抜かれた瞬間にダンテの体は再生を止め、全身の水分は一気に蒸発し皮膚は焼かれ爛れていく


《アハハ!『ぁばばば』って・・・変なの》


ロウニールの黒き炎はダンテを墨に変えても燃え続け骨すら溶かしてしまう


残ったのはダンテを拘束していた土と黒き炎だけ・・・その炎に照らされながらウロボロスは呟く


《いつ見ても綺麗ね・・・命の輝きは》


ウロボロスは羨ましそうにひとしきり眺めた後、踵を返し山を下り始めた



いつの間にかダンジョン化は解けいつもの山へと戻る


しかし炎は燃え続け、いつしか人々からその炎は『断罪の炎』と名付けられる事になる──────

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