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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
630/856

625階 ダンテ・キノキス

ファミリシア王国港町ワムロードで馬を買い走らせること3日で目的地であるスーザンに辿り着いた


すると意外とすんなり情報を得られた


仮面を付けてサラートに変装し冒険者ギルドに行くと貼られていたからだ・・・山にいる連中の討伐依頼が


「おいオッサン・・・その依頼はやめときな」


オッサン!?・・・あ、今私サラートだった・・・


私に話し掛けて来たのはそこそこ年季が入った冒険者だった。強さも・・・まあそこそこっぽいな


「なぜやめとけと?」


「その依頼を受けた奴らは誰一人として戻って来てねえからだよ。この街の領主もすっかり諦めちまって依頼を取り下げる勢いだ・・・山賊の野郎共はアメとムチの使い方をよく分かっていやがる」


「アメとムチ?」


「最初は暴れて奪い去り、今度は暴れない代わりに寄越せと言って来た・・・そりゃどうせ暴れて奪われるならと献上してるのが現状だ」


「その話のどこにアメが?」


「最初のムチがあまりにも痛過ぎてな・・・それを振るわれないだけアメになってんだよ」


なるほどね・・・甚大な被害を被り頼みの綱の冒険者も失敗したとなれば素直に差し出していた方が良いと判断したか・・・国がこんな状態だと軍にも頼めないし・・・


初めから知っててやったのなら王都の壊滅を知ってた可能性が高い・・・となるとやはり・・・


「最初の襲撃はいつ頃ですか?」


「・・・半月より少し前だったか・・・それくらいだ」


「半月より少し前・・・そうですか。教えて下さりありがとうございます」


「おう!命は大事にしろよ!」


命は大事に・・・か・・・



話を終えて冒険者ギルドを出ると街の人に山の場所を聞きすぐに向かった


あの冒険者に怒られそうだけど私には命より大事なものがある・・・その為には行かないといけない・・・ただ・・・


ワムロードで買った馬に跨り走らせながらゲートを開く。そして懐に簡易ゲートと風牙龍扇を忍ばせると手綱を強く握り締めた


()()の命ならいくらでも賭けよう・・・だけど今私は一人ではない・・・無論死にに行くつもりは毛頭ないけど相手は十二傑のダンテ・・・しかもジークに首を刎ねられても生き返る『不死者』だ・・・おそらく取り巻きは大した事はないだろうけどダンテ相手に油断していたら持っていかれる・・・この子の命ごと


未だお腹は目立つ事はないがセシーヌにも確認してもらったから確実にいる彼との子・・・この子だけは絶対に守らなくては・・・今度こそ!


本当なら屋敷でベルフェゴールとヴァンパイアを待つべきなのだろう・・・けど・・・母のワガママに1回だけ付き合って・・・あなたを2人で迎える為に



山に辿り着くと麓に馬が数頭繋がれていた。その横には馬が引く荷車・・・ここから歩いて山を登り下りては街に物資を奪いに行っているみたいだな


行き来だけでそれなりに時間はかかるし量もそこそこあるだろう・・・なのに山に住み着くという事は理由があるはずだ


最初は暴れたが今は穏便に済ませているのも目立たない為・・・領主が依頼を出したみたいだがそれも取り下げるかもしれないと言っていたしそうなれば目立つことなく自由になれる・・・同じ街に住んでいれば何かのきっかけで追われるかも知れないが普段は山にいるのなら多少の痛みだけで済むと考えるだろうし・・・上手く考えたものだな


馬から降りると繋ぐことなく自然に帰す。歩いて山を下りる事は無いだろうしここで繋いでいたら上にいる連中に使われて・・・うん?待てよ・・・もしここにいるのがダンテじゃなかったら・・・簡易ゲートを使ってしまうとエモーンズに逆戻り・・・となるとダンテじゃなかった場合は普通に山を下りて街に戻らないといけないのに・・・


考え直した時には時すでに遅し・・・乗って来た馬はこれでもかってくらいの全速力で行ってしまっていた・・・帰る時は上の連中の馬を拝借しよう・・・うん


という訳でダンテがいなかった場合の馬も確保出来たので山を登り始めた


山ってもっと木がいっぱい生えていたような気がするけど・・・確かここってベリトとバフォメットがしょっちゅうケンカしていたとかそんな場所よね?もしかして2人のせいで木が少ないのかしら?


そんなことを考えながらゴツゴツとした岩山を登って行くと上の方から人の気配を感じた


見上げると監視役だろうか・・・2人の男が遠くから私を見ては何かを話している


そして・・・


「止まれ!冒険者か?」


「違うわ。少し確認したい事があって来たのだけど・・・」


「・・・違う()?」


あっ・・・男に変装しているの忘れてた


「・・・えっと・・・と、とにかく上に繋いでくれないか?」


「仲間なら募集してねえぞ?」


「誰が仲間に!・・・じゃなくて・・・」


ああ、ヤバイ・・・嫌悪感が表に出てしまったようで2人は顔を見合わせると腰に差した剣に手を伸ばす


「討伐でもなけりゃ仲間になる気もねえ・・・確認?何を確認するつもりだ?」


「それは・・・」


『ダンテを探している』と言えればどんなに楽か・・・自分を探しに来たと知れば逃げるかもしれないし言わない方がいい・・・だから・・・


「ん?なんだその袋は」


「中に金貨が入っている・・・これはほんの手付金で私の依頼を受けてくれればこの倍は出すつもりだ」


「依頼・・・てか俺らがお上品に買い物でもすると思ってんのか?金なんて・・・」


「いつまでもこの山に住めると思ったら大間違いだ。いずれ山を下りる時が必ず来る・・・その時に金はあっても困らないんじゃないか?」


「そん時はそん時だ・・・金じゃ交渉の材料にならねえぞ?ウチの頭は『金なんてなくても生きていける』ってのが持論だからな」


どんな持論よ・・・まあどうせ無ければ奪えばいいとでも思ってるのでしょうけど・・・


「だとしてもその『頭』に相談せずに追い返していいのか?依頼を受けようが受けまいが払うと言っているのだぞ?」


「・・・はっ!そんな上手い話があるかってんだ。何を企んでいるか知らねえが帰れ帰れ」


意外としっかりしてるのね・・・このままじゃ埒が明かないか・・・仕方ない・・・


「じゃあ私はここで待っているから伝えてくれるか?その頭とやらに『ジークの剣は痛かったか?』と」


これで何かしらの反応があれば頭とやらはダンテという事になる。逃げても追いかければいいだけ・・・ここから探知し続けて逃げる奴を・・・捕まえればいいだけだ


「は?何だそりゃ・・・っ!?」


「これはその駄賃としてくれてやる・・・金に興味無さそうだが持っていて損は無いだろ?」


金貨の入った袋を男達の前に投げるとさすがに目の色が変わる。無くても困らないかも知れないけど有っても困るものでもない・・・いや、寧ろ困るどころかありがたいはず・・・この山での生活も決して磐石ではないはずだから


「お、おい」


「あ、ああ・・・聞くだけなら・・・ただし」


「分かっている。わたしはここで待っているから聞いてきてくれ」


下手に近付いて刺激しても厄介だ。それに探知を使えばちゃんと伝えたか分かるだろう


この場で待つフリをして探知を使い2人の内1人が奥へと消えて行くのを見計らってマナを使って後を追う


少し離れた場所みたいだがまだ探知の範囲内・・・更に拡げて男を追い越すと小屋がありその中に・・・1・・・2・・・結構多いな・・・18人か・・・私を見張っている男と伝えに行った男を合わせると合計20人か・・・他は・・・特に気配はなさそうだ


「おい」


「・・・なんだ?」


まさか探知している事が気付かれたか?


「頭が会うって事になったとしても金の事は・・・」


ああ、そういう事か


「口外しないから安心しろ」


「へへっ分かってんじゃねえか・・・会って頼み事を聞いてもらえるといいな」


現金なヤツだな・・・しかし最初は私を追い返そうとしていたから組織的にはしっかりとしているみたいだな


あ・・・伝えに行ったあの男はちゃんと小屋の中に・・・話している内容までは分からないが知らない人にとっては意味不明な言葉だし伝えても問題ないと考えるはず・・・もしあの言葉を聞いてもダメだったその時は・・・っ!


小屋から伝えに行ったあの男だけがこちらに戻って来た


理由は分からないけど行きよりもかなり早く・・・おそらく走っているみたいだった


そして・・・


「ハア・・・ハア・・・ハア・・・」


「おいどうした?そんなに息切らして・・・」


「頭が・・・連れて来いって・・・」


「マジか!?じゃあ・・・」


そう言って2人は同時に私を見た


そう・・・連れて来いって言ったという事はあの言葉の意味を理解したという事・・・つまり頭と呼ばれている人物は・・・いやまだそうと決まった訳ではない・・・実際にこの目で見るまでは・・・


逸る気持ちを抑え1人を残し案内されるまま小屋へと向かう


本当なら走って行きたいところだが我慢だ・・・焦りは隙を生む・・・その隙をつかれないよう細心の注意を払わなければ・・・もしそうだったとしたら失敗は許されないのだから



小屋の前に着くと男は顎で入れと合図する。それに頷き扉を押して中に入ると・・・山賊と呼ばれるに相応しい格好をした連中の中に彼は居た


この世で唯一かもしれない再生の力を持つ人間


「・・・ダンテ・・・」


「んん?あの事を知ってるって事は知り合いが訪ねてきたと思いきや・・・知らねえな」


「私は知っている・・・そんな事はどうでもいい・・・頼みがある」


「おいおい・・・礼儀ってもんを知らねえのか?オレはお前を知らねえって言ってんのに何で頼み事を聞かなきゃいけねえんだ?」


「私の事を知っていれば聞いてくれるのか?」


「思い出させてくれるのか?だが生憎だが記憶力はいい方だ・・・オレが知らねえって言えば知らねえんだよ」


「では記憶を呼び起こしてやろう」


「なに?」


顔に手を近付け仮面を取るとサラートからサラへとその姿を戻す。服装はそのまま・・・ロウなら服も自由自在に出来そうだが私にはこれが限度・・・格好はそのまま男物を着た状態だがこれで思い出すはず・・・


「っ!!・・・サラ・・・サラ・セームン・・・」


「今はサラ・ローグ・ハーベスだ。思い出したか?」


山賊風の男達は驚きを隠せない様子だが一番驚いているのは何故かダンテだった


口を半開きにし目を見開き私を見つめたまま固まっている


「どうやら思い出してくれたようなので話の続きを・・・」


「か、頭・・・女・・・男が女に・・・」


フラフラと1人が私に近寄って来る


それを見てため息が出る・・・自然と懐に手を忍ばせ風牙龍扇を掴んだ


「待て!・・・サラ・セームン・・・いや、今はサラ・ローグ・ハーベスだったか?まあどっちでもいい・・・驚いたぜ・・・あのサラがオレを訪ねて来るなんてな」


「それで?話は聞いてくれるのか?」


「もちろんだ・・・オレとお前の仲じゃないか。話せよ・・・そして叶えてやるよ・・・お前の頼みなら何でもな──────」

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