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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
63/856

60階 リーダーの素質

朝起きてすぐに顔の腫れを確認するとほとんど引いてて安心した。その直後にドアがノックされローグが来てくれた事を告げる


「あ・・・す、少し待ってて・・・すぐに着替えるので!」


昨日はダンジョン行きの服のまま寝てしまっていた。恐らく私は治るまでダンジョンには行けないだろう・・・治るまではしばらく普段着のままでいよう。それと髪も・・・普段は邪魔にならないように頭の上で団子にしてるけどローグはどんな髪型が好みなのかしら・・・そのままストレート?それとも束ねた方が?・・・分からないから毎日変えて反応を確認した方がいいわね。けど・・・仮面で反応が見えないかも・・・うーん・・・




「お、お待たせ・・・」


結局髪は束ねてみた


前に男は女のうなじが好きと聞いた事があるし・・・どうだろう?あと服装も少し可愛めの・・・まあ私が持っている中でだけど・・・ハア・・・今度スカート買おうかしら


「・・・よく眠れたか?」


「はい・・・お陰様で・・・」


余程疲れていたのだろう・・・ローグが帰った後、私はすぐに眠りについた


それにしても・・・やっぱり仮面で反応が分からない・・・ローグは今の私を見てどう思っているんだろう・・・


「すまんが治すと言ってもこれといって方法がある訳ではない。普段通り生活して徐々に治していくしか・・・どこか行きたい場所はあるか?」


普段通りってダンジョンになるんですけど・・・そう考えると色気もへったくれもないわね・・・私・・・女子力無さ過ぎ!


「あの・・・昨日言ってたケン達のパーティーが・・・」


「ああ・・・見に行ってみるか?」


「はい!是非・・・あっ、ローグはそのまま街を歩いても平気なのです?」


あまり目立ちたくないって言っていたし・・・もしローグが街を歩けば目立つこと間違いないと思うけど・・・


「大丈夫だ・・・目立つことはない」


「は、はあ・・・」


いや目立つでしょ?・・・とは言えずにギルドを出てケン達が滞在している宿屋に向かう事となった


ギルドを出る時に何やらペギーがローグを睨んでいるように見えたけど・・・何かあったのかな?


「・・・ふう・・・」


「ギルドで何かあったのです?・・・もしかして2階に上がる時に揉めたとか・・・」


ギルドの2階には勝手に上がれない事になっている。事情を知らないペギーが2階に上がろうとしたローグと一悶着あったとか・・・


「・・・いや、ペ・・・受付の女性に無断でダンジョンに入っていると責められてな・・・」


あっ!そう言えばそんな疑惑があったような・・・実際どうなんだろう・・・ローグはどうやってダンジョンの中に・・・別の入口があったりするのかな?


「もし良ければ私の権利を譲りましょうか?私ギルドの手伝いをしているので入場料は免除されてるのです・・・100ゴールドなんてすぐ稼げるし・・・」


「あー・・・問題ない」


この流れでどうやってダンジョンに入っているか聞けたらなぁ・・・ううっ、気になる



外に出ると街は朝を迎えていた。来た時と比べて人はかなり多くなり商人や街ゆく人々の声が聞こえる


そんな中で私はローグと共に宿屋に向かって歩いている・・・昨日まで想像だにしなかった状況に興奮してしばらく気付かなかったけど・・・誰もローグを見ていない!?


私は平気だけど普通街中に仮面を付けた人が歩いてたら気になるよね?目立つよね?それにダンジョンナイトの存在は冒険者だけではなく街中でも有名になりつつある・・・助けられた冒険者が飲み屋でダンジョンナイトの事を話したりしてるのを聞いて『ダンジョンナイトの正体は誰だ?』で一時期街中が盛り上がった程だ・・・それなのに・・・もしかしてただのコスプレと思われてるのかしら?


結局何の騒ぎも起きずに宿屋に到着し宿屋の主人に事情を話してケン達が泊まる2階へと向かった


「スカット?」


2階に上がると部屋の前で誰かが蹲っている・・・よく見るとそれはスカットで私が声をかけると顔を上げこちらを見た


「・・・あ・・・」


「どうした?なぜ部屋の前に居る?中には・・・」


「・・・そこの部屋にケンが居るんでケンに聞いてもらっていいですか?」


疲れ果てた表情のスカットはその部屋ではなく違う部屋を指さした


私は何か事情があるのだと思い頷いてスカットが指した部屋をノックする


「・・・はい」


「私だ。少しいいか?」


「え?サラ姐さん!?・・・ちょ、ちょっと待って下さい!」


部屋の中から慌てるケンの声


しばらくしてドアが開くと寝癖たっぷりのケンが顔を覗かせる


「うわ・・・どうしたんッスか?こんな朝っぱらから・・・」


「少し事情を聞きたくてな・・・入れるか?」


「え、ええ・・・大丈夫ッス・・・」


私は振り返りローグに視線を送ると彼は頷き廊下に背を預ける。これが以心伝心というやつか・・・私だけ入るという意思が通じたらしい


嬉しさか爆発するのを必死で抑え部屋の中に入ると・・・そこには衝撃的な光景が!


「お前達・・・そういう関係だったのか・・・」


「ち、違うッス!これは・・・その・・・」


服は着ているが部屋の中にはケンとマホ・・・2人の男女がひとつの部屋に・・・経験のない私でも分かる・・・この状況は・・・


「サラさん違うんです!これには事情があって・・・」


「事情?情事の間違いだろ?」


「違ーう!・・・えっと・・・順を追って説明するッス・・・」



しどろもどろに状況を説明するケン・・・どうやら思ったよりも深刻な状況だった


昨日私が目覚める前の事・・・私よりも先にダンジョンから脱出したケン達は急いで助けを求めにギルドへと向かった。そこで別の冒険者に治療してもらいながら事情を説明するとギルド長のフリップがそれを聞き付け冒険者を募り救援に向かってくれたらしい・・・ただ20階にゲートで行ける者が少なく当然フリップもゲートを使えないので間に合わなかったとか・・・


そしてケン達はしばらくギルドで私の無事を祈っていたがヒーラの様子がおかしいので一旦宿屋に・・・一言も喋らずずっと俯いていたらしい


そして宿屋の部屋に戻るとヒーラがガタガタと震えだしたと思ったら暴れだしたというのだ。普段は大人しいヒーラ・・・その彼女が暴れた事に驚き、とりあえずなだめようとしたが収まらず・・・結局暴れ疲れるまで暴れ続けそのまま寝てしまったらしい


元々宿屋で落ち着いたらすぐにギルドに向かおうと思っていたケン達はヒーラを1人にする訳にもいかず困っているとスカットがヒーラを看ると言いケンとマホの2人がギルドへ


そこでローグに抱き抱えられた私と遭遇し共に私の部屋に戻ったのだとか・・・


「そうか・・・そんな事が・・・」


「ええ・・・ダンジョンナイトさんにも色々と聞いて・・・ヒーラの事も話して・・・ほら、俺あの時気を失ってたりしたから事情があんまし分かんなくて・・・そしたら恐らくシークス達に酷いことされてショックを受けてんだろうって・・・」


ローグも助けに来てくれた時は私だけだったからな・・・事情はあまり分かるまい


「あ・・・サラ姐さんに謝らないと・・・」


「ん?何をだ?」


「その・・・すんませんでした!・・・俺・・・サラ姐さんが助けに来てくれたのに・・・俺達だけ逃げて・・・」


「なんだそんな事か・・・謝る必要は全くないぞ?あの行動は百点満点・・・あれ以上はないだろうな。もしケンが判断を誤りあの場で私と共に戦う事を選択していたら・・・恐らく私達は共倒れしていただろう。ケンはリーダーとしての素質がある・・・私はそう思うがな」


「でも!」


「ケン・・・もし次に同じような事があっても同じ選択をするんだ。他の誰かが反対したとしてもな。それでもし・・・悔しいと思うなら強くなれ・・・逃げる必要がないくらい強く・・・」


「・・・サラ姐さん・・・」


ケンはまだ申し訳なさそうにしているが、私は本心からそう思っている。情に流されあの場に残ったとしたら私はこの場にいないだろう・・・ローグが来てくれる前に・・・殺されていたはずだ


ケン達を人質に取られ陵辱されるか・・・私が耐え切れず激昂し殺されるか・・・どちらにせよ・・・


「・・・ありがとうございます・・・それで・・・気になったんッスけどなんでサラ姐さんはあそこに?」


「ん?ああ・・・昨日ダンジョンに行く前に受付のペギーに『20階に挑戦する』と伝えただろ?」


「・・・そう言えばスカットがカッコつけてそんな事言ってたような・・・」


「ペギーからそれを聞いてな・・・間に合うか分からなかったが激励にでもと思って待機部屋に向かったらあの場面に遭遇したって訳だ。運がいいやら悪いやら・・・スカットのカッコつけもたまには役に立つようだな」


「本当ッスね・・・もしサラ姐さんが来てくれなかったら今頃・・・・・・そう言えばシークス達はどうなったんッスか?ダンジョンナイトさんってあんまり喋らないから聞けなくて・・・」


「私もあまり聞けてない。『逃げて来た』とだけ聞いただけだから恐らくシークス達は生きているのだろう・・・」


「マジッスか・・・そうなんッスね・・・」


ケンは複雑な表情を見せる・・・それもそうだろうな。再びダンジョンでシークス達と出会す可能性があるから・・・


ダンジョンの中での出来事は法では裁けない


何が起きたのか誰が何をしたのか証明する事が出来ないからだ。もし中立の立場・・・例えばギルド職員などがその現場に居合わせたら話は別だが冒険者の証言で裁くのは無理・・・なぜなら嘘をついても誰にも分からないからだ


もし・・・ダンジョンの中まで法を適用するのであればダンジョン各所にギルド職員や兵士を配置しなくてはならなくなる。それは現実的ではないし、もし現実にやるとなったら入場料も高騰するだろう・・・まあ無理だな


「現状はローグが処分してくれるらしいからそれを待つしかない・・・今度も逃げれるかどうか分からないからな・・・」


「ッスね・・・でも処分って一体・・・」


「さあ、な・・・私もそうとしか聞いてないから何とも・・・」


どう処分するのか私も少し気になるがローグのやる事だからきっと良いようにしてくれるという妙な安心感がある・・・これが信頼というやつか・・・


「サラさん・・・もし良かったらヒーラに会ってくれませんか?もしかしたらサラさんになら・・・」


「マホ・・・そうなら嬉しいのだが今の私にはヒーラにかけてやる言葉が見つからない。上辺だけの言葉では・・・今のヒーラには届かないだろう・・・それに私としては最も近しい君達が無理なら他の誰でも無理だと思うがな・・・」


「そう・・・ですか・・・」


「すまない・・・情けない話だが私もシークス達にやられてな・・・実は治療中なんだ」


「え?どこを・・・だって傷は・・・」


「ああ、傷はほとんど回復した。だがヒーラと同じく心を、な・・・ある言葉を聞くと体が竦むようになってしまった・・・このままだと冒険者を引退せざるを得ないだろうな」


「そんな・・・」


「マジッスか!?サラ姐さんが・・・引退!?」


「治療中だと言っただろ?引退するつもりはサラサラない・・・が、今の私にはそういった事情で他の者を気にかけている余裕がないのだ・・・そんな私の言葉などいくらかけても心には響かないだろ?」


「・・・すみません・・・無理言って・・・」


「謝る必要はないさ。それにさっき言った言葉が本心だ・・・君達が無理なら無理だと思う・・・時間をかけてゆっくり治していくしかない・・・もしそれでも無理なら・・・」


「ッスね・・・そうなったら俺達も引退かな・・・」


「・・・そうね・・・ヒーラ以外考えられないし・・・」


「その言葉をヒーラには聞かせるなよ?」


「分かってるッス・・・プレッシャーになるッスもんね・・・ヒーラなら私のせいでってなるに決まってるし・・・」


「うん・・・」


時間が解決してくれればいいのだが・・・難しいだろうな


何かきっかけがあれば・・・それこそ私にとってのローグのような・・・


「サラ姐さんは大丈夫なんッスか?その・・・」


「ああ、私は大丈夫だ。ローグが治るまで共に居てくれるらしいし・・・」


「え?」「え?」


「な、なんだ2人して・・・」


心配そうに私を見つめていた2人が怪訝な顔に変わる


「いやだって・・・ねえ?」


「ああ・・・それでヒーラと同じとは言って欲しくないよな」


「何を・・・こっちもかなり深刻なんだぞ?」


「そうッスか?なんなら今の顔は『治らない方がいいかも』みたいな顔ッスよ?」


「うんうん・・・なんか幸せ~みたいな・・・」


「そ、そんな訳あるか!・・・いやでもまあ・・・その・・・」


「あー、心配して損した・・・やってらんねえよな、まったく」


「本当・・・災い転じてってこういう時に使うのね」


「ちょっと待て!違うぞ?断じて・・・違うからな!」


どうやら盛大に勘違いされたみたいだ・・・私は決して治らなくても良いなどと・・・


思ってない・・・よな?──────

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