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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
612/856

607階 最終決戦①

王城1階



「・・・なんだこりゃ・・・」


「君の剣と同じだろう?大きくなっただけだ」


「一緒にすんな!」


シャンディに核を融合され魔人と化したエギド


表にいる魔人に比べてると一回り大きいその巨体を見て2人は冷や汗を額に浮かべ構える


「たかが2人でコレを相手するのは無理なの。何せ・・・」


シンディの言葉が終わる前にエギドはその巨体に見合わぬ素早い動きで間合いを詰めキースに襲い掛かる


「このっ・・・ぐっあ!」


咄嗟に大剣でエギドの受け止めるが勢いそのままに広間の中央から入口付近まで吹き飛ばされた


「キース!!・・・っ!」


キースの身を案じて振り返るレオンの隙をつきエギドは床を蹴りレオンに飛びかかった


「ソレはギフトは使えなかったけど魔族の末裔・・・その末裔の体に他の魔族の末裔の核を合わせたの。ノーギフトじゃ何人いても・・・っ!?」


「厄介だな・・・この巨体にしてこの素早さか・・・キース!」


「おお!」


飛びかかって来たエギドをレオンはマナで盾を作り出すと斜めに当てていなし吹き飛ばされたキースの名を呼ぶ


するとキースは剣を巨大化させ肩に担ぎ飛び上がった


「バカなの?そんな攻撃・・・」


「うおおおおお!」


まだ間合いに入っていないはずなのに剣を振り下ろすキース・・・しかし剣は振り下ろしている間にもその大きさを変えいつの間にか届かなかったはずの剣はエギドに届くまでに巨大化しその太い腕を切り落とす


「ぐあああああああああああ!」


叫ぶエギド・・・剣を元の大きさに戻したキースとレオンが並び立つ


「でかくなった時はどうなる事やらと思ったが・・・案外すぐに終わりそうだな」


「誰かさんと同じだな。所詮大きいだけだ」


「おい」


片腕を失い喚くエギドと余裕を見せる2人を交互に見てシャンディが唇を噛み締める


「・・・いつまでそうやってるの!」


彼女の怒りの声に反応したエギドは痛みに顔を歪ませながら切り落とされた腕を拾い切断面同士を合わせた。すると見る見る内に腕は繋がり始め完全にくっついてしまった


「前言撤回・・・少し時間がかかりそうだ」


「だな、どうする?」


「そうだな・・・ひとつ試したい事がある」


「へえ。俺はどうすればいい?」


「適当に攻撃してくれればそれでいい」


「なるほど・・・普段通りって訳・・・だな!」


今度は体勢を低くしてエギドの足元に滑り込むと大木のように太い足に斬り込むキース


そうはさせじとエギドが両手を組みキースに向けて振り下ろす


「さてどうなるか・・・試してみようか」


レオンは言うと指をパチンと鳴らした


するとエギドの顔の前で小さな爆発が起こり視界を奪う


「キース!来るぞ!」


少し怯んだがそのまま組んだ手をキース目掛けて振り下ろす


「チッ!」


キースの刃が先にエギドの足を捉える・・・が、少し刃がくい込んだ程で留まり切り落とすまでには至らなかった。そのくい込んだ刃を支点にして横に飛ぶとギリギリのところで上から降って来た巨大な塊・・・エギドの両手を躱した


「レオン!」


「もう一度だ!」


「・・・簡単に言いやがる・・・」


エギドの背後に回ったキースは剣先をエギドに向け今度は突きの構えを取り床を蹴り突っ込む・・・が、エギドは振り向きざまに先程キースに斬られた足で回し蹴りを放つ


キースの剣先が届くのが先かエギドの蹴りが届くのが先か・・・見極めを誤れば必死の状況でキースは冷静に判断し体を捻るとその場から脱した


「くそっ!・・・もう少しか・・・」


「情けない。逃げるとは」


「お前がやってみろ!・・・で?」


「もう少し見てみたい気もするが・・・けりをつけよう」


そう言うとレオンは手を無造作に振った


「へえ・・・何をするつもりか知らないけど・・・そこそこやるからって勝てると思わない方がいいの・・・え?何これ?きゃ!」


シンディの目の前に小さな玉が浮遊する。ホコリと見間違う程の小さな玉はシンディの前に止まると小規模な爆発を起こした


同時にエギドにも同様の爆発が目の前で起こり2人の視界は完全に閉ざされる


そのタイミングでキースは飛び上がると大剣を巨大化させ肩に担ぐ


「真っ二つにしても再生するか見てみようか!」


担いだ大剣をエギドの脳天目掛けて振り下ろし真っ二つに・・・だが大剣が当たる寸前でエギドの体から無数の突起が浮き出てそれが棘となり宙に浮くキースの体を貫いた


「キース!!」


予想外の反撃に思わず叫ぶレオン


空中で身を躱す事が出来ないキースは格好の餌食となる。体を丸め最小限に抑えるが何本かの棘がキースの体を貫通し呻き声がレオンの耳に届いた


「目の付け所は良かったの・・・バレているようだから教えてあげるの・・・そう・・・お父様はシンディが操っているの」


「だろうな。目潰しをしても背後に回っても正確にキースを狙って来た。目が複数ついてたり背後についてたり・・・もしくは気配を察知出来ると言うのなら話は別だが目も二つのようだし元の姿があまり戦い慣れてなさそうだったからおそらく君が操っているのだろうとは思っていた。なので2人同時に視界を奪えば勝てると思ったのだが・・・」


「・・・んなことはいいから・・・」


「ああ、串刺しになったままだったな・・・ウインドカッター」


「っ!?・・・貴方何者?魔人の一部をたかだか初級魔法で・・・」


レオンが片手を振り上げると風の刃が発生しキースを貫いていた棘を切り落としていく


腕や足に比べてかなり細い棘だが魔人の一部には変わりはない。その魔人の一部をいとも簡単に初級魔法で切り落としたレオンに対しシャンディは警戒を強める


「まったく・・・油断し過ぎだ」


「お前なぁ・・・いいからさっさと回復しろ」


「回復魔法まで?・・・ちょっと舐めてたの・・・普通のノーギフトとは違うの・・・」


キースとレオンは元々2人パーティーだった。普通のパーティーが前衛、後衛、回復、盾、斥候を揃えるところをたった2人でパーティーを組んでいた理由はレオンの存在があったからだ


全てをこなせるレオンにトップクラスの火力を出せるキース・・・この2人だったからこそ最小人数でSランクパーティーとなる事が出来た


初見でキースの火力を見てレオンはキースのオマケだと侮っていたシンディはその認識を改める


「・・・もしさっきの爆発が目眩しじゃなくシンディを攻撃していれば負けてたかもしれないの・・・最初で最後のチャンスを逃したのは大きいの」


「かもしれないな」


「格好つけるなバカ・・・幼女趣味のお前にゃあの子は殺せねえだろ」


「だから・・・まあいい。と言うか君も同じだろ?お互い彼女を殺す事は出来ない・・・で、彼女が操る再生能力が高く普通より大きく様々な能力を有する魔人と戦う・・・か。一気に分が悪くなったな」


「違いねえ・・・お仕置なら出来るが斬ることは・・・。どうする?レオン・・・逃げるってのも手だぞ?」


「そうも言ってられないだろう・・・分が悪くなったとはいえ負けた訳ではない・・・今度は私も出る」


「まあそうなるわな・・・面倒だがいっちょやるか」


キースとレオンは並んで魔人エギドと対峙する


フーリシア王国より生まれた最強の冒険者と最凶の犯罪者・・・2人が今ファミリシア王国の王に挑む──────




王城3階



《なるほど・・・ここでもですか》


「今更気付いてももう遅い!あまり強力にすると他の階にまで影響を及ぼしちゃうからそこまで強く出来なかったけど・・・アンタ一人の魔力を乱すには充分・・・チーに舐めた口を聞いた事を悔やみながら死にな!」


手のひらの上で魔力を操ろうとすると乱れ消え去ってしまいベルフェゴールは街や王都に仕掛けられていた魔力を乱す装置がここにも仕掛けられている事に気付く


《厄介ですね・・・・・・ぐっ!》


無理矢理魔力を溜めて魔法を形成しようとしたが失敗し暴発・・・手を負傷し顔を歪めるベルフェゴールを見てチーは満面の笑みを浮かべる


「観念したら?あの時と同じ状況・・・アンタがジジイを置いて無様に逃げ出した状況と同じなんだから・・・」


《それはそれは・・・やはり貴女は乗せるのが上手い》


「・・・その余裕の表情・・・すぐに引っぺがしてやるよ!!」


両手足の付け根が引きちぎれ骨のようなものが剥き出しになるとその体を天井付近まで持ち上げる


そして四足で立つとチーは白目を向きケタケタと笑った


《今度は逃がさなーい・・・アンタの核を貪り食ってやるぅ》


《・・・魔人に核はないのですが・・・それにしても興味深いですね・・・そのような姿になってまで従う理由は何ですか?》


《うるさい!全部アンタらのせいだ!アンタらが来なければ・・・来なければぁ!!》


《笑ったかと思えば今度は怒る・・・そのような姿になっても『人間』なのですね》


《もう黙れよ!!》


《そうですか・・・こういう時人間は『後は拳で語る』とでも言うのでしょう?お望み通り語りましょう・・・拳で──────》




王城前



「うわあぁぁぁ!」


「ケン!無茶をするな!ダメそうなら退け!」


魔人の攻撃を受け吹き飛ばされるケンを見てケインが叫ぶ


セシーヌやシル達と共に戦場に参加したはいいものの魔人相手に苦戦を強いられていた


シルはタンカー部隊に、セシーヌはヒーラー部隊に、ジーナは魔法部隊に配属され、シークスは片腕を失った事もあり後衛の護衛として残りケン一人だけが前線へと配属されていた


剣を盾に変えてしれっとタンカー部隊に入っておけば良かったと後悔するも時すでに遅く今や魔人に囲まれ必死に戦っていた


「ん?」


そんな時ふと魔人と魔人の隙間から人の姿が見えケンは剣を盾に変えるとその隙間に突っ込み魔人を弾き隙間を広げさせた


「大丈夫か!今引っ張る!」


そう言ってもう片方の手で隙間より這い出そうとしていた人の手を掴み引っ張り上げるとズルリと抜け出す


「動けるか?動けるなら壁際にゲートがある!そこからヒーラーの所に行けるから治療してもらえ!・・・ってあれ?」


振り向くとそこに引っ張り上げた者はいなかった


「・・・魔人の群れの中で怪我してなかった?んなバカな・・・てか何処かで見た事あるような・・・」


首を傾げるケンだったが魔人は待ってはくれない・・・次々に襲い掛かって来る魔人に向け再び盾を剣に戻し立ち向かう間に助け出した者の事など忘れてしまった



「へえ・・・ゲートね。そりゃ助かるわ」


男は地面に落ちていた誰のかも分からないマントを頭から被り顔をすっぽり隠しケンより教えられたゲートへと向かう


その足取りは軽くまるで無傷のようだった・・・が、服にはおびただしい程の血が付着していた為に誰も彼を戦場へと向かわせはしない


「せいぜい頑張れや・・・生き残ったらオレが殺してやるよ・・・ジーク」


男はゲートの前で振り返り最前線で闘うジークへと振り返り呟くとゲートの奥へと消えていった──────

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