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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
60/856

57階 ニンジャ

ケン達が心配だ


ケンとマホは動かずスカットとヒーラは動けそうだけど出口の反対側にいる・・・今の状況から動かない2人を抱えて出口まで行けるかというと不可能に近いだろう


となると現実的には私がシークス達を倒すしかない、か


「元よりランクが下の相手・・・当然1体1でやるのだろう?」


「君は魔物を狩る時に1体1で挑むのか?」


「生憎だが私は魔物ではない」


「同じようなもんだろ?魔物も人間も」


「もう少し目を開けて現実を見たらどうだ?」


「・・・なるほど・・・君はまだこの状況が理解出来てないらしい・・・ヤット、そこに転がってる男を殺せ」


奴の近くで倒れてるケンを横目で見て仲間に殺すよう命じるシークス。この距離では助ける間もなくケンは・・・


「待て!私との勝負だろ!!」


「は?遊びって言ってるだろ?ボク達が楽しむ為の遊び・・・なのでそのボク達を不快にさせたら罰が必要だろ?」


「・・・撤回する」


「何を?」


「不快にさせた発言全てだ!」


「ふーん・・・ならおっぱい出して寄せながら謝れよ・・・それくらいの誠意がないと・・・なあ?ヤット」


「うんうん!冴えてるね!シークス・・・最高だ」


くっ・・・


「さっさとやりなよ・・・あー、おっぱい見られるよりこの男が死んだ方がマシってか?分かる分かるその気持ち」


「ふざけるな!・・・それくらい・・・」


「・・・スカット!!」


服を脱ごうとした瞬間、突然倒れていたケンが立ち上がると壁際で気を失っているマホに向けて走り出す


私に注目していた4人は突然の出来事に呆気に取られ未だ動いていない


そしてなぜケンが『スカット』と叫んだかその理由が分かった


ケンとスカット・・・2人の手には簡易ゲートが握られていた


2人は離れた場所でほぼ同時に簡易ゲートを床に投げつけゲートが出来るとケンはマホをスカットはヒーラを抱き抱えゲートの中へ


一瞬の出来事だった


待機部屋の人数は9人から一気に5人にまで減り急に部屋が広く感じる


静寂の時が続き、シークスの口元から聞こえた歯軋りの音が止まった時を動かす


「・・・簡易ゲートか・・・」


「残念だったな・・・人質はもういない。それにケン達はすぐにギルドに報告するだろう・・・もうお前達は終わりだ」


ギルドまで行けなくてもダンジョンの入口に立っているギルド職員かゲートを使おうと訪れた冒険者にすぐに伝わるはず・・・そうすればたとえAランク冒険者といえども一巻の終わりだ


「ギルドがなんだって?ちょっとじゃれ合っただけだろ?」


「そんな言い分が通用すると思ってるのか?」


「通用するさ。それよりも大丈夫か?君は今から逃げた4人の分もボク達と遊ばなくてはならない。3人に代わる代わる犯されボクにバラされても今のような口が聞けるかどうか・・・興味あるな」


懐には簡易ゲートがある


けどそれを取り出しゲートを出している間、シークス達が指をくわえて見ててくれるはずもないだろう。それなら後ろの出口まで走った方が・・・


「あー、逃げようとしない方がいいよ?ボクよりも速い者がいるからね」


「貴様の速さを知らないから『貴様より速い』と言われてもピンと来ない・・・な!」


どちらか賭けに出るのではなく両方同時にやればいい


床を蹴り後方に飛ぶと体をひねりシークス達に背を向け走り出す


扉は目の前だ。更に一連の流れの中でバレないように懐に手を入れて簡易ゲートを取り出した


後はこれを割れば・・・っ!?


「少し肉付きが良すぎないか?もう少し痩せてる方が好みなんだけどな」


いつの間に!?


簡易ゲートを取り出した瞬間にその腕を掴まれ簡易ゲートを奪われた


さっきまでシークスの後ろに居たはず・・・シークスにヤットと呼ばれていた男は私の腕を掴んだまま左足で蹴りを放つ


その蹴りを屈んで躱すがその行動は織り込み済みなのか掴んでいた腕を引っ張るとヤットは空中で回転し腕の関節を極めにきた


ヤットの狙いに気付いた時には既に遅く倒れ込むと同時に腕は完全に極められてしまう


「へっ!おいお前ら俺が極めてる間に服を・・・」


「ヤット!」


私ではなければこれで終わったかもしれない・・・だが私は・・・風鳴りだ!


もう片方の手に持った風牙扇を振るう


風は凶器となり私の腕を極めているヤットの首を刈り取った・・・ように見えた


「あっぶねぇ・・・シークスが叫んでくれなかったら首が飛んでたぜ」


そこにいたはずのヤットはいつの間にかいなくなり風の刃は空を切る


あまりにも動きが速過ぎる・・・とてもじゃないが目で追えない



これが・・・Aランク──────



「ん?なんだよ当たらなかったからってそんなに驚いて・・・当たり前だろ?俺らはAランク・・・お前はBランクなんだから」


「ランクの差など・・・」


「ない・・・って?なら見せてやるよ・・・そのランクの差ってやつを・・・」


ヤットは顎にかけていた布を口元を覆うように持ち上げる。顔は半分隠れ元々被っていたフードと合わせると目元の部分しか見えなくなった


「さぁて、じっくりと味わえ・・・Aランク冒険者が如何に強いかを、な」


スカウトの能力なのは間違いない。人はあれほど速く動けないから


だが、ただのスカウトではないのは確か


『ダブル』・・・二つの能力を使う冒険者の可能性がある。それが何なのか・・・


「お前ってスカウトと何かの能力でレンジャーだったよな?俺も能力は二つ使う・・・スカウトと・・・魔法使いだ」


隠しておけばいいものを・・・ハンデのつもりか?


本来適性とは一つだけ。稀に二つの適性を生まれ持っている者もいるが本当に稀だ。なので冒険者はある程度の所まで進むと二つの選択を迫られる


そのまま適性を伸ばすか適性ではない能力を鍛えるかだ


適性を伸ばした者の代表として『至高の騎士』ディーンが挙げられる。近接アタッカーの能力を極限まで高め剣聖の再来とまで言われている男だ


反面いくつもの能力を鍛えた代表として挙げられるのは国内でも僅かにしかいないSランク冒険者レオン。いくつもの能力に長けているがその存在自体が幻ではないかと噂されるくらい謎の多い冒険者・・・だが幻ではなく実際に存在し、見たことのある者は口を揃えて言う・・・



『彼は全ての能力を使える』と



適性ではなくても全ての能力を使うのは可能だ。ただもし高水準で全ての能力を使えたとしたら・・・神にも等しい力を持っている事になるのではないだろうか・・・


対象的な2人だがフーリシア王国では最高峰の実力者


どちらを選択しても強くなれる事を示してくれている


Aランク冒険者ともなれば既にどちらかを選択し極限まで高めている存在・・・つまりヤットは魔法が高水準で使えて身体能力も高い事になる


「奇遇だな・・・私もスカウトと魔法使いの能力を使う」


「おお・・・運命じゃん!でもなんでレンジャーって名乗ってんの?カッコ良くニンジャでいいじゃん」


「ニンジャは戦闘特化だろ?私は探索が好きなのでね」


「なるほど・・・じゃあ尚更勝負にならないな」


「なに?」


「だってそうだろ?戦闘特化のニンジャと探索特化のレンジャー・・・どちらも戦闘は出来るが戦えば差は歴然。それにAランクとBランクだ・・・もう戦わずに脱げよ」


「・・・お宅の誰かさんは私がBランクでもAランクと差はないと言っていたが?」


「まーたシークスそんな事言ったのか?ウチのリーダーはそうなんだよな・・・ランクは関係ないって・・・でも俺らは違う・・・ランクの差はそのまま実力の差って考える派よ」


俺らと言うって事はシークス以外はランクと実力は比例すると思っているということか・・・まあどう思おうと関係ない・・・


「試してみるか?Bランクの実力を・・・」


「試すまでもねえけど・・・まあいい・・・すぐに裸にひん剥いてやんよ」


ヤットが動く


両手を複雑に動かし始めたと思ったらニヤリと笑い叫んだ


「『火炎地獄』」


突然地面から炎が立ち上がり私の周りを取り囲む・・・なるほど・・・あの両手の複雑な動きは魔法を唱える際の詠唱の代わりってところか


「少々暑いな」


風牙扇を開き振ると風が起こり炎の壁を掻き消えた・・・が、消えた炎の壁の向こうにいるはずのヤットの姿が見えない


「やるじゃん・・・Bランク」


後ろ!


咄嗟に風牙扇を閉めて背後に回ったヤットに向けて放つがその腕を止められて顔に蹴りを食らう


瞬時に仰け反りダメージは軽減し次の攻撃に即座に備えるとまたいない


「どこを見てる?」


また背後から声が聞こえ、今度は振り向く間もなく背中に一撃を食らった


いいように遊ばれている・・・だが、私が手も足も出ないからかシークス達はヤットに完全に任せているようで出て来る気配はない


もし私がヤットを倒せたら・・・逃げる事が出来る


僅からなが希望が生まれ手に力が入るが問題は私がヤットを倒せるかどうかだ


流石はAランクと言わざるを得ない動き・・・魔法は今のところ大したことなさそうだが目に追えない素早さは今の私ではどうにもならない・・・となると・・・


「なあ・・・いい加減降参してくれないか?ボロボロの女を犯しても大して楽しくないんだが・・・」


「・・・頭の中はそればかりか・・・貴様のような男に犯されるくらいなら死を選ぶ」


「みんな最初はそう言うのさ・・・でも結局は・・・まあいい・・・その時になれば分かる」


()()()・・・今の言葉で今回が初犯ではないことが分かる。散々他のダンジョンでこのような事をしてきたのだろう。なぜ国はこのような者達にAランクなど・・・


「おいヤット!さっさとやれよ!それとも代わってやろうか?」


「そうだぞ!ちなみにそのまま犯すんじゃねえぞ!順番は決まってんだからな!」


「油断すんなよーヤット。何か企んでるぞー」


「うっせぇ黙って見とけ!今から見せてやるよ・・・俺の真骨頂・・・忍術ってやつをよ!」


そう言うとヤットはまた手を複雑に組み始めた。するとヤットの周りから煙?いや蒸気が立ち込める


「なんだ?・・・まさかお前はスモークフロッグの化身だったか?」


「てめっ・・・カエルと一緒にすんじゃねぇ!これから見せるのは・・・」


何やら大層な事をしそうなので試しに風牙扇を振って蒸気を払ってみる。すると簡単に蒸気は晴れ何事も無かったようにヤットはその場に佇んでいた


「・・・」


「・・・?」


「て・・・てめぇ・・・よくも『雲隠れの術』を・・・」


「・・・なんかすまん・・・」


どうやらあの蒸気が『雲隠れの術』とやらだったらしい


理不尽に怒るヤットに思わず謝ってしまったが一体どういった技だったのだろうか・・・少し気になるな


「てめぇ死んだぞ!」


思ったよりも怒っているヤット


かなりの速度で向かって来ているが一直線に向かって来ている為に目で何とか追える・・・ここで!


「バカめ!Bランク如きが!」


これがラストチャンスだろう。未だ私を侮り力でねじ伏せようとするヤットに対して私はあえて風牙扇をしまい迎え撃つ


ヤットは私の前に立つと拳を突き出す


それを私が受けると彼は笑みを浮かべた


「Bランク如きに止められるか!」


スカウトの能力的には完全に上・・・ヤットの言う通り拳は止まらず私は打ち抜かれるだろう・・・スカウトの能力同士ならば


「・・・あ?」


「悪いな・・・私はスカウトと近接アタッカーのレンジャーだ」


ヤットの拳をマナを纏った手で受け止める。そしてそのまま拳を流すと体をヤットの懐に潜り込ませ肘を放つ


ヤットは体をくの字に曲げ呻き声を上げた


これでしばらくは動けないはず・・・逃げるには今しか・・・



「逃げるな!!!」



体が竦む


離れた場所から放たれたシークスの声に体全体が警告を鳴らす



言う通りにしなければ殺られる、と



「・・・なるほど・・・風魔法はさっきの鉄扇の能力か・・・すっかり騙されたよ・・・サラ・セームン・・・」


震えが止まらない


これが本当のAランク冒険者・・・シークス・ヤグナー・・・


「なっ?Bランクでもそこそこやるだろ?本当はこのままヤットにやらせてやりたいがサラがスカウトと近接アタッカーの能力って言うなら話は別だ。高ランクの同類には中々会えないからな・・・」


「・・・同類?・・・まさか・・・」


「ああ、そうだよ。ボクは近接アタッカーとスカウトの・・・武闘家だ。嬉しいよ・・・同じ能力に会えるなんて久しぶりだ・・・」


拳士かと思ったが武闘家か・・・参ったな・・・あと数歩で待機部屋を出れるのに・・・生きた心地がしない──────

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