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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
598/856

593階 援軍

シャリファ王国国王フレシア・セレン・シャリファの号令に応え兵士達が魔人の群れに突撃する


その先頭には『氷盾騎士』シャス・クーデリ・アンキスの姿・・・そしてサラと顔馴染みでもある冒険者ガシャ達の姿もあった


「お怪我はありませんか?サラさん」


「マーナまで・・・一体なんで・・・それに代わりって・・・」


「友が傷付けられて黙っていられるほど冷たい人間じゃないわ・・・それにまだ恩を返してないしね」


「・・・フレシア・・・」


見つめ合うサラとフレシア


国も身分も超えた親友ともいえる2人は互いに笑みを浮かべた・・・が


「ってやっぱり遅かったかしら・・・」


ふとフレシアが視線を前線に向けると笑みを消し真顔で呟いた


「え?・・・ロウ!!」


さっきまで動きがあったロウニールのいた場所は魔人に埋もれてしまっていた


シャリファ王国軍が向かっているが距離がある為まだ魔人の前線にすら辿り着けていない・・・やはり自分がとサラが動こうとしたその時・・・地面が揺れた


「今度は何!?・・・・・・嘘・・・・・・」


「言ったでしょ?『私達だけじゃなかった』って」


シャリファ王国軍に気を取られ気付かなかった


シャリファ王国軍よりも遥かに多くの兵を従えた彼らの存在に


「ケイン・・・後ろの人達は・・・」


「彼が各国を回って集めた人達よ・・・頭を下げ訴えたの・・・『人類を救う為に力を貸してくれ』と・・・彼の為に、ね」


「そんな・・・」


エモーンズにアバドンが現れ絶望に打ちしがれるロウニールとサラを置いてケイン達数名はその姿を消していた


ロウニールに愛想を尽かしたと囁く者もいた・・・しかし彼らはこの時の為に準備していた・・・人類の命運を賭けたこの戦いの準備を


「いつまで寝てやがる・・・大地を鳴らせ!!希望を揺り起こせ!!」


ケインの号令に後ろに控える兵士達が足で大地を揺らす


その揺れはサラ達の場所に留まらず魔人の、ロウニールのいる場所まで揺らしていた


「やっぱりロウニにゃ天は荷が重すぎるんじゃねえか?なあ?アーキドの」



ラズン王国国王ワグナ・ザジと護天達



「さあ?・・・今回ばかりはうちの陛下も天秤にかけていないから・・・ただ友を・・・それだけでアタイらを送った・・・損得勘定や勝敗度外視でね」



アーキド王国海将ネターナ・フルテド・アージニス



「アーキド王国の国王陛下は見る目があるからてっきり出兵したのは勝ち目があるからと踏んだのだが・・・困ったな・・・帰ったら子供と遊ぶ約束をしたというのに」



リガルデル王国『伏龍』アルオン・マダスト・エシリス



「誰も彼も節穴ね・・・バカ兄貴があんなもんで死ぬ訳ないでしょ?ねえ?将軍」


「そうですね・・・何せ我が国の公爵ですから」



フーリシア王国宰相兼宮廷魔術師シーリス・ローグ・ハーベス、『至高の騎士』ディーン・クジャタ・アンキネス



「・・・各々方・・・喋ってないで足を動かせ。あのバカが起きるまで」


「た、隊長・・・じゃなくて将軍!失礼ですよそんな言い方・・・」



ロウニール公爵軍将軍ケイン・アジステア・フルー、その補佐ジェイズ



「大丈夫だジェイズ。今は国王だろうと将軍だろうと俺の騎士団の団員だ・・・このケイン騎士団のな」


「誰が団員だこら!てめえが泣いて頼むからわざわざ殿であるこの俺が出張ってやったのに・・・」


「アタイも団員?・・・まあいいけど高くつくよ?お給料」


「ロウニール卿の配下はどうしてこう一癖も二癖も・・・」


「ケイン騎士団?シンプルにダサい」


「遂に先を越されたみたいだね・・・部下として死力を尽くすよ」


「・・・ふん・・・」


文句を言う面々を鼻を鳴らしてあしらうケイン。その横にいたジェイズが慌てた様子でケインに話しかける


「・・・将軍・・・じゃなくて団長?大丈夫ですか?まとまりがないのは仕方ないにしてもシャリファ王国軍は先に行ってきまいましたしどうやら公爵はあの魔人の群れの中に・・・」


「だから鳴らすのだ軍靴をだから揺らすのだ大地を・・・あんなもので殺られるならとっくに死んでいる・・・それに起きれば場所が分かる・・・そうすればあの2人が何とかするだろう」


「あの2人・・・あ・・・」


「もう一度だ!大地を揺らせ!奴を揺り起こせ!・・・寝ている場合じゃないぞ!!ロウニール!!」


ケインが連れて来た数万の兵士が一切に踏み鳴らすとまたもや大地は激しく揺れた


寝た子を優しく揺り起こすというより叩き起すように──────





──────ロウ──────



・・・誰だ?



──────起きて──────



起きて?・・・朝?



──────起きて・・・起きて戦わないと・・・でも怒りは抑えないとダメ・・・怒りに支配されては勝てない・・・決して──────



怒り・・・そうだ俺は・・・アバドンを見て・・・



──────怒り任せに突っ込んで死ぬ寸前・・・間抜けでとても勇ましかった──────



間抜けで勇ましいって言葉初めて聞いたよ・・・ハア・・・ダメだな・・・ヤツの顔を見た瞬間に頭に血が上って・・・



──────それでは勝てない・・・更に言うとそんな事しているとまた犠牲が出る──────



っ!・・・悪かった・・・



──────別に責めてない。怒るのは当然・・・ただ怒りだけでは勝てない──────



・・・他に何が必要なんだ?



──────愛?──────



おい



──────魔力では決してアバドンには勝てない。怒りは負の感情・・・つまり魔力。それだけでは・・・──────



分かってる・・・いや分かってるつもりだったけど・・・・・・なあ



──────なに?──────



さっきから揺れるんだけど・・・何の揺れ?



──────アナタを起こそうとしているの──────



誰が?



──────みんな──────



みんな?みんなって誰だ?



──────みんなはみんな・・・アナタの軌跡よ──────



意味が分からん・・・奇跡?



──────軌跡。・・・もう起きて・・・いくら魔力で守っているとはいえ限界がある──────



守るって誰から?・・・あれ・・・痛い・・・痛いんですけど・・・



──────痛みはいい・・・生きてる証拠──────



いやよくないだろ!イテテ・・・痛いって・・・言ってん



「だろ!!・・・おお!?」


目が覚めると目の間には魔人魔人魔人・・・魔人の大行列


白目でどっち向いてるか分からないけど明らかに殺意を持ち俺に向かって襲いかかって来ていた


「んなろ!!」


とりあえず目の前の魔人を次々と魔力で吹き飛ばし視界が一瞬開けるがまたそれを埋めるべく他の魔人が襲いかかる


エンドレス魔人にふつふつと再び怒りが込み上がる


「このや・・・」


「ここにいたか」


「1人ではしゃぎ過ぎだ」


湧き上がった怒りを魔人にぶつけようとした時、目の前に2人の男が現れ魔人を始末する


1人は指を鳴らし魔人の頭を吹き飛ばし1人は大きな剣で魔人を一刀両断に・・・なんでこの2人がここに・・・


「レオン!?キース!?」


2人は瞬く間に周辺の魔人を始末する・・・が、押し寄せる魔人の数はその速度をも凌駕し3人に迫り来る


「チッ!来る時はこっちに見向きもしなかったくせに・・・」


「誰かの指示か・・・やたら死角をついてくるな」


囲みを抜けようにも迫る魔人に身動きが取れない。そうこうしている内に次第に魔人の攻撃が2人を掠め始めた


「ちぃとまずいなこりゃ・・・置いて行くか・・・」


「そうだな。狙いはロウニール君らしいし私達だけなら無事抜け出せるかもしれない」


「おい・・・てか別に俺だけで・・・っんん!?」


あれ?痛いぞ・・・足が・・・痛い・・・


「それ折れてんな・・・バカが考えなしに突っ込むからだ」


「くっ!うるさい!・・・仕方ないだろ・・・」


「人を脳筋みたいに普段は言うくせにてめえの方が脳筋じゃねえかバーカバーカ」


「・・・キースに言われると無性に腹が立つ・・・ザ脳筋のキースに脳筋言われてしかもバカにされるなんて・・・」


「おいコラ真っ二つにしてやろうか?」


「やってみろ脳筋」


本気で俺の挑発に乗ってキースが剣を巨大化させた時、レオンがため息をつきながら呟く


「そろそろ冗談はやめてゲートを開いてくれないか?」


「あっ!」「あっ!」


ゲート・・・そうだゲートだ!


俺とキースは同時にその手があったかと驚き互いに顔を見合わせる


「テメエ自分の能力だろ?さっさと気付けや!」


「うるさい!キースだってたまに風呂に入ったあとパンツを履き忘れてメイド達に汚物を披露してたじゃないか!」


「お前それ今言うか?」


「いいから・・・さっさとゲートを」


いがみ合う俺達をよそに冷静だったレオンの堪忍袋の緒が切れた・・・怒鳴るより静かに怒る人の方が怖いよね・・・本当


「ゲート」


「どこに繋げた?」


「ヴァンパイア達がいる場所・・・そこにサラ達もいるはずだ」


「上出来だ・・・殿(しんがり)頼んだぞキース」


「俺!?・・・チッ!さっさと行け!」


そう言うと巨大化させていた大剣を横に振り魔人達を追い払う。するとレオンは俺の首根っこを掴みまるで猫のように持ち上げた


「・・・あの・・・どうするつもりで・・・」


「その足では歩けないだろう?時間がないから少し手荒くなるぞ」


「え、ちょっと・・・まっ」


手にマナを流したのか掴む力が強くなる・・・そして引っ張られたと思ったらゲートに向かって投げられた


ゲートをそのまま潜り抜けると地面が広がり着地しようとするが足が痛くて前に出ない・・・仕方なく回転し勢いを殺す為に何回か回るとようやく勢いが止まり見事着地に成功する


決まったとドヤ顔をしながら顔を上げると・・・目の前にサラさんが鬼の形相で立っていた


「・・・にゃん」


「これは大きい猫だこと・・・どこから迷い込んだのの・・・・・・蹴り殺そうかしら?」


「うおい!途中まで乗ってたのに放棄すな!・・・いや悪かったよ・・・でもヤツを見た途端に・・・」


「・・・私はいいからみんなに謝って」


「みんなって・・・」


「お話中申し訳ありませんがよろしいでしょうか?」


「ぬわっ!?・・・・・・ナージ?」


サラとの会話を邪魔するように不機嫌そうな顔がぬっと現れたと思ったらリガルデル王国に出張中のナージだった・・・なんでナージがここに?


「お知り合いの方はかなり気が短い方が多いようなので手短に話させてもらいます。これより『アバドン討伐作戦』の概要を説明したいと思いますので閣下には天幕を用意して頂きたいのですが」


「お知り合い?気が短いって・・・」


そう言われてようやくその存在に気付いた


ケインを先頭に各国の見知った顔がズラリと並びその奥には何万もの大軍・・・更に魔人達と戦っている兵士達・・・あれはシャス!?って事はシャリファ王国か?


「一旦引き上げても大丈夫かしら?」


「はい・・・そのままこちらに向かってくれば迎え撃てば良いだけです・・・おそらくですがそれはないと思いますが・・・」


「女王まで??」


ナージに声をかけたのはフレシア・・・一国の女王が・・・


「ロウニールさん治療しますね」


「マーナも・・・一体全体どうなってんだ??」


「どうなっているのかは私が聞きたいところです・・・何の作戦もなく魔人の群れに突っ込むとは・・・どうやら私がいないとダメみたいですね閣下は」


「・・・リガルデル王国にくれてやろうかコイツ・・・あっ!てかリガルデル王国は大丈夫なのか?」


「ええ恙無く・・・ところで天幕はまだですか?出来れば20人くらい用のものが欲しいのですが」


「分かったよ!・・・人が必死に戦ってたのに涼しい顔してしかも更にこき使うなんて・・・」


「閣下」


「なんだよ!」


「ただ今戻りました」


「今言うかそれ・・・まあいいや、お帰りナージ」


どうやったら数ヶ月で広大なリガルデル王国を・・・しかも味方が少ない中でまとめたんだか・・・優秀過ぎるだろ・・・いや優秀なだけでそんな事が可能なのか?よく見ると目の下に隈が・・・まさかここに駆け付ける為に無理をして・・・


「閣下?」


「分かった分かった・・・んじゃあその『アバドン討伐作戦』とやらを聞かせてもらおうか──────」

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