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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
579/856

574階 斜陽

城を出た直後、飛ぶように走り王都から飛び出した


すぐさまゲートを開こうとすると・・・


〘っ!・・・なに?〙


〘どうした?ダンコ〙


〘ううん・・・いやでも・・・〙


〘な、なんだよ・・・気になるじゃないか〙


〘激しい怒り・・・悲しみ・・・そんな・・・嘘よ・・・〙


〘ダンコ?一体どうしたっていうんだ・・・一体何が・・・〙


〘・・・ロウ・・・ダメよ・・・戻らないで〙


〘はあ?エモーンズにか?・・・ちょっと待て・・・何があった?エモーンズでなにがあったんだ!!〙


〘・・・〙


くそっ!何なんだよ!エモーンズにはケインやキース・・・レオンだっている・・・サラにはバフォメットも付けてるし・・・考えても仕方ない・・・もう戻れるんだから俺は戻る!誰が何と言おうと・・・


「ゲート」


〘ロウ!・・・くっ・・・いい?聞いて・・・戻るならこれだけは約束して・・・決して『絶望しない』と〙


「・・・」


俺はその言葉に答えずゲートをくぐった


愛する妻と子が待つ場所に向かう為に



ゲートをくぐるとそこはいつもならもう少し明るいはずだった



違う



見回すと行く時はなかった染みや床に穴が空いていた



違う



ベッドに人集りが出来ていて誰かが俺に気付き喚いて何を言ってるか分からない



違う



その人集りに向い歩いて行くとベッドがあり横たわるサラがいた



違う



寝息を立てる彼女を見てホッと安心する



違う



サーテンが俺の所に来て泣きながら頭を下げる



違う



そして・・・


「・・・し訳あり・・・守れ・・・」



違う



「何を言ってんだ?・・・何を言ってるか分からない・・・なんでみんなここに?セシーヌまで・・・一体何が・・・」



違う



「すまねえ・・・駆け付けた時にはもう・・・」



違う



「・・・ロウニール君・・・」



違う



キースは意味も分からず謝るしレオンは悲しそうな顔をして俺を見つめる


一体何がどうしたって言うんだよ・・・



違う



《ロウ》


「ああ、サキか・・・言ったろ?サラの前では魔力を使わずに喋れって・・・胎教に良くない気がするしな」


《・・・》



違う



《ロウ・・・バフォメットが死んだにゃ。それと・・・》


「なんだって!?一体誰に・・・くそっ!絶対俺が仇を・・・」


《聞くにゃ!》



違う



《サラ()無事にゃ・・・かなりショックを受けていたみたいでまだ起きてこないけど・・・外傷はほとんどないにゃ》



違う



「そうか・・・誰だか知らないが俺の仲間と妻に手を出したこと・・・死ぬほど後悔させてやる・・・で?相手は誰だ?」


《子供は死んだにゃ》



違う



「ケイン守備を固めろ!シュルガットは結界を張れ・・・誰も通すな!それと・・・」


《ロウ!》



違う



「なんだ今忙し・・・」


《子供が死んだの・・・アナタとサラの・・・子供が死んでしまったの》



違う



違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う


そんな訳ない・・・そんな訳・・・ないだろ!!



「サキ・・・いい加減にしろ・・・そんな訳ないだろ?」


《・・・アナタも本当は分かってるはずよ・・・流れてくる感情で分かるの・・・拒否しないで・・・受け入れないと前に進めない・・・》


何を言ってんだ何を受け入れろって言うんだ・・・俺が何を分かってるって?俺は何も・・・


その時ふと再びサラが視線に入る


寝息を立てるサラ・・・だが俺は意図的に顔しか見てない事に気付く



違う



顔をそのままに目だけを動かし彼女のお腹を見た


そのお腹は以前とは違った


以前はシーツの上からも膨らみを見てとれた


けど今は・・・膨らみも温もりも感じない




「・・・誰だ・・・」


《・・・》


「誰なんだ!!」


《アバドンよ・・・奴が活動を始めた・・・もう人間も他の動物も・・・魔族もおしまい・・・世界は終焉を迎えるのよ──────》






「・・・もうあれから何日よ?」


「1ヶ月・・・だな」


「世界は終わんねえな・・・その気配すらねえ」


「どうだろうな・・・突然来るのかもしれないし気付いていないだけかもしれない・・・」


「はっ、何とも締まらねえ終焉だな。まあ俺にとっちゃあの姿を見てる方がよっぽどこの世の終わりだよ」


「あの姿?」


「ロウニールだよ・・・空元気出しやがって・・・見てるこっちの方が胃が痛くなるってもんだぜ」


「それについては概ね同意だな。怒りをぶつけるのではなく悲しみに暮れる訳でもなく・・・ただひたすら待っているように思える」


「待ってる?何を?」


「終焉が訪れる時を」


「・・・チッ!つまり諦めちまったって訳か?」


「彼らは私達より知っている・・・だからこそ諦めざるを得ないのかもしれない」


「だからって!・・・子供も部下も殺されて・・・しかも・・・」


「ハクシ殿・・・か」


「ああ・・・爺さんはアバドンの野郎にやられた訳じゃないにしても何かしら反応があっても良くねえか?それを・・・」


「なら復讐を勧めるか?やられたらやり返せと?」


「違ぇよ・・・いや違くねえけど・・・あーもういい!訓練所に行くぞ!!」


「断る」


「てめえ・・・この流れで断るか?普通」


「それは君の流れだろ?私は特に苛立ちを覚えてない」


「マジか・・・大人になったな『タートル』」


「・・・君に言われると無性に腹が立つ・・・その喧嘩買ってやろう『太剣』」


「『大剣』だ!余計な点入れんな!」



2人は睨み合いながら屋敷を出て訓練所へと消えていく


それを見ていた者が大きなため息をついて呟く


「ハア・・・私辞めようかしら」


「ちょっとジェファーさん!?」


「だってあれから仕事ないし・・・お金も充分貯まったから余生を満喫しようかと・・・」


「余生って・・・まだそんな歳じゃないですよね?」


「セイム君に比べたらもう結構な年齢よ・・・ハア・・・そう言えば最近の街の様子見た?」


「いえ・・・ずっと屋敷に居ましたので・・・」


「開発が突然止まって困惑しているみたいだったわ。かと言って全員に何が起きたか伝え回るのも難しいし・・・街の人達に伝えるのに何か良い方法ないかしら?」


「あまり触れ回るのも・・・」


「別に詳細までは伝えるつもりはないわ。何か理由を伝えないと不安になるでしょ?それが嘘だったとしても理由があれば不安は解消されると思うのよね」


「嘘はダメでしょ嘘は」


「なら正直に伝える?それとも伝えずに不安な人達を放置する?」


「・・・」


「私ならどちらも選ばない・・・だから嘘をつくの・・・まあまるっきり嘘って訳じゃなくてぼやかしたり脚色したりしてね」


「それなら・・・でしたら掲示板はどうですか?」


「見ない人もいるでしょ?大都市計画でかなり広くなったから全員に見てもらうのにかなり多く立てなきゃならないしそうなると景観も損ねるし・・・」


「確かにそうですね。一箇所ならともかく乱立させたら景観が・・・貼り変えるのも大変ですし・・・かと言ってひとつだと見る人は見るでしょうけど見ない人も出て来てしまう・・・一番怖いのは見た人が見てない人に伝えて内容が変化してしまう事ですね」


「あーね。実際に見た人の主観が入っちゃうからどうしても話がネジ曲がるもんね・・・何か別のアイデアを考えないと・・・」


「ふふっ」


「・・・なによ?」


「辞めようかと言ってた人が真剣に考えている姿を見ると・・・」


「バッ・・・別に良いでしょ?それよりナージはまだ帰って来ないの!?どんだけ薄情なのよ!」


「・・・今回の事を伝えた時に『そうか』の一言だけでしたから・・・ボクもあんなに冷たい人だとは思いませんでした・・・」


「まあ・・・見た目通りっちゃ見た目通りだけどね・・・」


「・・・」


「やーめた!」


「え!?」


()()()、よ。今日はもうサボる・・・ほら行くよ!」


「え?ボクも・・・ですか?」


「じゃあ一体誰がお昼ご飯代とか出すのよ?」


「・・・」


「さあ行くわよ!明日は明日の風が吹く・・・今日は吹かないだけで、ね──────」




リガルデル王国王都王城内執務室


「・・・ナージ殿・・・少し休まれては・・・1ヶ月もの間ほとんど休まれてないのでは?」


「・・・テメント、クーガ両陣営の戦力はほぼ判明しました。前王とハムナートの動向が気になりますが・・・まあ出来るとしても伝手を使い少数で事を起こすくらいでしょう。戦争を仕掛ける戦力はないので暗殺を警戒した方が宜しいかと」


「ナージ殿!・・・焦る気持ちは理解するが・・・」


「・・・申し訳ありません。女王陛下と違いなにぶん足りないところが多い方なので・・・周りが支えなければならないのです」


「ナージ殿以外にも大勢いるのでしょう?」


「ええ・・・不思議と人が集まる方でして・・・ですがそれぞれ負担している場所が違うのです。例えばセイムは経済をジェファーは財務管理を私は軍事を・・・など分担し補っております」


「ならば尚更では?軍事は今は必要ないでしょうし・・・」


「そうでしょうか?」


「え?」


「いえ・・・そうですね。()()私の出来る事は少ないかも知れません・・・ですがこの国が安泰になる事は後々ロウニール・ローグ・ハーベスの役に立つ・・・私はそう信じております」


「この国の安泰が?・・・どうやら借りた借りは返せそうですね」


「必要ありません。前にも申し上げた通り公爵様には笑顔でお返し下さい。ただ・・・」


「ただ?」


「私は公爵様のような大きな器は持ち合わせておりませんので返して頂けると助かります・・・働きに対する対価を」


「そっちは高く付きそうですね」


「その分働いてみせます・・・その為に先ずテメントのいる──────」





リガルデル王国某所


「恩知らず共が・・・王の権威を失ったらすぐに手のひらを返しおって・・・」


「・・・幸い我が家の爵位までは取り上げられておりません・・・ただ多勢に無勢・・・もし下手に動けば瞬く間に・・・」


「分かっておる・・・それにしても許せぬのはあやつだ」


「ロウニール・ローグ・ハーベス・・・ですか?」


「いや・・・っ!そうだハムは確かフーリシアの暗殺ギルドに伝手があると申していたな?」


「何度か情報収集に使ったくらいですが・・・まさか暗殺を?」


「フーリシアは代が変わり暗殺ギルドと蜜月の関係では無い可能性が高い・・・王会合で見たフーリシアの王は単なる小娘だったからな・・・如何にも綺麗事を吐きそうな見た目をしておったわ」


「しかし今フーリシアに関わっている場合では・・・」


「ハムよ・・・お主も老いたな。依頼は単なるパイプ作り・・・大金を弾んで暗殺依頼をし成功したあかつきには更に多くの大金を積んでこちらに抱え込む・・・ゆくゆくはこちらの手勢に加えサシャめを・・・」


「なるほど・・・しかし誰を狙うと?公爵は難しいと思いますが・・・」


「決まっておる・・・あの小娘・・・まるで神の使いのごとく朕を断罪しおった・・・何が『真実の眼』だ・・・その腐った目をほじくり返してくれよう」


「と言うと聖女・・・」


「ふん聖女など烏滸がましい・・・セシーヌ・アン・メリア・・・あの小娘が死ねばロウニールの奴めも悲しみに暮れよう・・・それで少しは溜飲が下がるというものだ。先ずは目を奪い・・・いずれは手足をも奪ってみせよう・・・朕が王座に返り咲いたあかつきには、な──────」

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