572階 ファミリシアへ
ウルティアがダンテに・・・しかも内容は細かく言わなかったがかなり酷くやられたみたいだ・・・しかもウルティアの家族まで・・・ダンテ・・・エギド・・・アドバン関係なくともお前らは謝っても許さない
「おいおいなんだ怖い顔して・・・別れ話でもしてたのか?」
「ノック」
「あん?」
「部屋に入る時はノックしてからって習わなかったか?ノックも出来ないならそんな手は必要ないな」
「ちょっ・・・この手はノック専用じゃねえってえの!」
またフェルカトの街に戻って来た
同じ宿のエドバンが泊まる部屋の隣を借りて情報収集再開・・・って時にジークから連絡が入りウルティアの事を聞いていたところだ
「・・・とにかくノックしてから入れ・・・分かったな?」
「おう。で、帰って来たって事はまた情報集めすんのか?」
「そのつもりだったけど時間をかければかけるほど犠牲者が増えそうだから・・・王都に乗り込んで直接聞いてくる」
「・・・誰に?」
「エギド」
「エギド?誰だそりゃ」
「お前は自分の国の王の名前を知らないのか?」
「ぶっ!普通王様を呼び捨てにする奴がいると思わねえよ!って王様に直接聞くって正気かよ!?」
「正気だよ。てか俺を何だと思っているんだ?」
「デカイ屋敷に住むなんちゃって貴族?」
「はーいなんちゃって貴族でーすってぶっ殺すぞ?一応これでもフーリシア王国の公爵様だ。敬い讃えよ」
「その辺の冒険者より冒険者してんのに・・・いや冒険者って言うより・・・」
「なんだ?」
「い、いや・・・それより直接聞けるなら最初から聞けばいいじゃねえか。なんでこの街でちまちまやってんだ?」
「魔族連れてたら見つかってな・・・んで、王都は監視が厳しいと判断して周辺の街から調べる事にした。それに疑わしいけど確証はなかったしいきなり王様に『アバドン知ってる?』って聞いてもとぼけられるし下手すりゃ隠蔽される可能性があるからな・・・本当は何か証拠を掴んでから直接行きたかったが・・・」
「いや魔族連れ歩くなよ」
「仕方ないだろ?相手の戦力が不透明だったから強い順に選んだら自然にそうなったんだ・・・まあでも三能ってやつも大した事なさそうだしベルは要らなかったかな」
「・・・ハア・・・てめえと話してると頭が混乱して仕方ねえ・・・今はいねえがケンもそれだけ強いのか?」
「いや全然」
「・・・ならなんで連れてたんだよ」
「気配を消すのが得意でな・・・役に立つと思って連れてたけどこっから先は気配を殺すより実力重視で行こうと思ってね」
「どうなってんだまったく・・・俺様の世界はそんなに狭かったってか?ケンだってかなり強いのに足でまとい扱いかよ・・・」
「世界は広い・・・俺ですら勝てない奴がいるくらいだからな」
「はいはい・・・世界が違いすぎてどうでもいいわ・・・んじゃ俺様はもう御役御免って訳か?」
「うん?ああ・・・何も無いと思うけど何かあったらこれで教えてくれ」
「これは?」
「通信道具。マナを流せば俺に繋がる・・・それくらい出来るだろ?」
「へえ・・・売れば金になりそうだな」
「売ってもいいぞ・・・片方だけじゃ使えないからもう片方を俺から奪えるならな」
「・・・やめとくわ」
「金が必要ならほら」
「うん?この袋は・・・げっ!いくら入ってんだよこれ!?」
「知らん。適当に使ってくれて構わない・・・パーティーの活動資金だ『ツメノビール』のリーダーさん」
「まだそれ続いてんのかよ・・・てかリーダーはてめえだろ?」
「一旦預けるわリーダー・・・何せ俺は・・・」
「俺は?」
「爪が伸びない」
「・・・」
「さて、綺麗にまとまったところで早速王都に行くとするか」
「場を凍らせておいてよく言うぜ・・・またあのインチキ移動術使うのか?」
「ああ・・・けど王都の中には行けないんだよな・・・結界か何か張ってやがる・・・まあそれだけ後ろめたい事があるって事だ。じゃあ行ってくる」
「おうもう二度と来んな」
「・・・本気で言ってる?」
「半分な」
「ならいいや・・・気を付けろよ・・・何かあったら連絡しろ」
「わーったよ!さっさと行け!」
「死ぬなよ?」
「てめえが、な」
まあ何かあったら・・・アドバンが活動し始めたらどこに居ようがみんな死ぬ・・・気を付けても意味ないよな
俺はファミリシア王国王都ファミリシアの近くにゲートを開き向かうとそこから王都を眺めた
目視では結界らしきものは見えない・・・シュルガットの結界はある程度可視化出来るから別物か?
まあ中に入れば分かるだろう・・・行くか
ゲートは使えないからもちろん徒歩で向かう。変身も見破られるから素の俺で・・・つまりファミリシア王国王都ファミリシアにフーリシア王国公爵であり大陸の守護者がやって来た事になる
「お、おい!」
王都に近付き中に入ろうとする列を無視して先頭に向け歩いて行くと列に並んでいる冒険者らしき人物が怒鳴り俺を止めようとした
それも無視して先に進むと門番達が鋭い目付きでこちらを睨む・・・まあ動きやすいように武道着着てきたから貴族には見えんわな
「止まれ!列の最後尾に回り順番を待て」
「気にするな」
「気に・・・貴様!止まらなければ逮捕するぞ!」
「誰が誰を逮捕するって?エギド国王に伝えろ・・・『大陸の守護者が来たぞ』ってな」
「大陸の?訳の分からぬ事を・・・であえ!不審者がいるぞ!」
おいおい不審者扱いかよ・・・やっぱりリガルデル王国と同じで大陸の守護者の事は世間には伝えてないか・・・でもせめて兵士にくらいは伝えろよな・・・
「なあコイツ俺がやっていいか?横入りされて無視されて・・・ムカついてんだわ」
「ふっ・・・協力感謝する」
さっき俺に声を掛けた冒険者風の男が後ろでボキボキと拳を鳴らす
前に門番と待機していた兵士達がわらわら・・・んで背後には冒険者風の男・・・ハア・・・面倒臭い
「俺は名乗ったからな?」
「ふん!続きは牢屋で聞かせてもらおう!」
っていきなり顔面に槍を突き出す門番・・・逮捕って言ってなかったか?
同時に後ろからも迫ってきてるし・・・あーもう!
槍が顔面を捉える寸前で掴んで止めて顔を横にズラすとそのまま力強く引っ張った
すると槍は門番の手から離れ勢いよく後ろに向けて飛んで行き冒険者風の腹に穴を空ける
「ぐっ!・・・お・・・お?」
「貴様ぁ!」
「得物を簡単に離すなよ・・・刺さっちゃったじゃないか」
「何を・・・全員コイツを取り囲め!不審者から侵入者・・・いや敵に切り替える!」
へえ・・・実はこの門番は立場が他より上なのか?
王都から駆け付けた兵士達は門番の指示に従い俺を取り囲んだ
「観念しろ・・・もう貴様用の牢屋はないぞ」
「あるのは墓場だ・・・って?そりゃ困った・・・とりあえず{跪け}」
「なっ!?」「ぐっ」「うぁ!」
呻きながら跪く兵士達・・・それを横目に前に進み出ると同じく跪いている門番の肩に手をかけた
「大陸の守護者でありロウニール・ローグ・ハーベスだ。一応これでもフーリシア王国の公爵をやっていてな・・・それでも王都が拒むのならとことんやるが・・・どうする?」
「こ、公爵様!?そんな・・・お見えになるなど一言も・・・」
「そりゃそうだ。予告無しの訪問だからな。証明するものは・・・あー、置いて来た。どうする?追い返すか?」
「・・・ロウニール・ローグ・ハーベス公爵様でしたら御拝見した事がある者はいるはずです・・・その者に確認を・・・」
「待つのか?」
「き、規則ですから・・・」
「ハア・・・もういい・・・邪魔するならかかって来い・・・通るぞ」
「こ、公爵様!お待ち下さい!」
知るか
急に結界みたいなの張るからこんな面倒が起きてるんだ・・・悪いのはエギドだ
王会合に誘った時は問題なかったのにその後で結界を張ったって事はどうせ俺対策だろ?ならその対策を正面から破ってやる
門に向かって進むと残りの門番達は槍を構えるが向かって来る気はないみたいだ。とりあえず無視して進むと門を越えた辺りで違和感が・・・結界?
〘空間に歪み・・・いえ、魔力に歪みね。なるほど考えたわね〙
〘結界じゃない?〙
〘ロストフラワーって言って方向感覚を失わせる霧を出す魔物がいるの。おそらくその核を使ってるわ〙
〘方向感覚を・・・それでゲートは使えなくなる?〙
〘ええ・・・魔力を乱されたらゲートは開けないわ。でも・・・誰か入れ知恵しないと分かるはずもないはず・・・裏に魔族がいるのは確実ね〙
〘テューポーンって奴か?〙
〘さあ・・・でもテューポーンはやってる事は気に食わないけど魔王に反抗的ではなかったはず・・・そもそも実験さえ出来ればいいって感じだったし・・・〙
そう言えばサキも嫌ってるのはインキュバスが創ったものを融合して違うものに変えてたからであって敵対しているとは言ってなかったな・・・実験する為に手伝ってるとか?それとも違う魔族が・・・
・・・考えても仕方ないか・・・どうせ今から王様に会いに行くんだ・・・本当に魔族と協力関係にあるのなら向こうから出て来るだろう・・・まあ多少脅しは必要かも知れないけど・・・ん?
王都の中を城を目指して歩いていると真正面から兵士を率いた男がやって来る
視線は俺に向いているって事は門のいざこざを聞き付けて来たって事かな?
案の定俺の前で止まると行く手を阻むように陣取った。これ以上先に進めないようにする気ならさっきの門番のように・・・
「お初目にかかりますロウニール・ローグ・ハーベス公爵閣下。私はファミリシア王国侯爵ファーロン・バレク・アスターニアと申します」
ファーロン・・・それって確か・・・
「・・・三能・・・」
「ご存知でしたか・・・それで今回はどのような御用向きでしょうか?」
「・・・エギドと話がしたい」
あ、しまった・・・つい・・・
「き、貴様ぁ!!国王陛下の名を呼び捨てにするとは!」
ファーロン以外の兵士達が殺気立ち剣に手を伸ばす。ファーロンはと言うと・・・
「そうですか・・・『大陸の守護者』としてお越しになられたのですね」
「ファーロン様?」
「皆剣から手を離せ。これより国賓待遇に切り替えよ・・・すぐに馬車を手配するのでお待ち頂けますか?ロウニール様」
「馬車は要らない・・・歩いて行くから」
「畏まりました。でしたらお供させて頂きます」
「それも要らないと言ったら?」
「同じ方向に向かって歩くだけと嘘をつきます」
「・・・それなら仕方ないな・・・行かせてもらうぞ?」
「はい」
俺が歩き出すとファーロンと兵士達は道を開ける
そして俺が通り過ぎると一斉に俺の後について歩き出した
同じ方向に向かって歩いているだけだから文句も言えない・・・兵士達は未だ納得していない表情だがファーロンは全て知っているみたいで俺の振る舞いに何の疑問も持っていないみたいだった
追い返そうとしてくれた方がやりやすいのだが・・・仕方ない、このまま城に向かうとするか・・・
こうして俺はファーロン達を引き連れて城へと向かった
アバドンに関わっているかもしれないファミリシア王国国王エギドの元へ──────




