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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
57/856

54階 勧誘

「姐さんそれは何です?」


組合員募集の広告をようやく作り終えギルド1階の掲示板に張り出している時にちょうどケン達がダンジョンから戻って来た


「ああ、とりあえず1人100ゴールド払え」


「ええ!?いや姐さんが払えって言うなら払うッスけど・・・何の金ッスか?」


「組合を設立した。組合員になるには月に一度100ゴールド支払う必要がある・・・そのお金だ」


「なるほど・・・って、ええ!?サラ姐さんが組合を??」


「違う。私ではなくダンジョンナイトことローグ様だ。私は組合長ローグ様のあくまで補佐的な立場だ」


「ダンジョンナイト・・・えっと・・・ちょっとよく分かんねえッス・・・」



混乱するケンの為にこれも普及の為だと場所をギルドに設置されたテーブルへと移し一から説明した


「・・・大丈夫なんスか?そりゃあ何度も冒険者を助けてるのは聞いてますけど素性の知らない奴・・・おっと、ダンジョンナイトを組合長にして・・・」


「素性なら分かるだろ?ダンジョンナイト・・・ダンジョンの守護者であり、ローグという立派な名がある・・・」


「それ以外分かってないじゃないッスか・・・ほとんどそれ未知の生物ッスよ?」


「ほう?私に喧嘩売るとはケンも偉くなったものだ」


「なぜそうなるんッスか!?」


まったく無知にも程がある。ローグ様は・・・ローグ様は・・・実際何者なのだろう?


人にローグ様の事を言われると腹が立つが実際は私もほとんど知らない・・・歳はいくつなのだろうか、どこで暮らしているのだろうか、好きな人はいるのだろうか・・・まさか結婚は・・・していないよな?


「姐さん?」


「ん?ああ・・・持ち合わせがなかったら後でもいいぞ?」


「誰もそんな話はしてないッス・・・しかも入るのは確定なんッスね・・・」


「いやか?」


「いやじゃないッスけど・・・お前らはどうする?」


ケンはそう言うとメンバーに振り返る。するとマホがケンを真っ直ぐ見つめ口を開いた


「まあ組合には入るに越したことはないけど・・・本当にいいの?」


「・・・ああ。正直迷ってたけど・・・俺はこの街に骨を埋める覚悟だ・・・当然お前らの意見は聞くけど・・・」


「なーに言ってんのよ・・・アンタがリーダーでしょ?リーダーの考えに従うわ・・・これまでもそうしてきたしこの街も案外住みやすいし・・・ねえ?2人とも」


「私は皆さんについて行きます」「俺も」


どうやら組合に入るのを少し重く考えているみたいだな・・・まあ軽い気持ちで入られても困るが・・・


「一応言っておくが抜けるのは自由だぞ?ただ抜けられると私が困るが、な」


「ものすごい抜けにくいじゃないッスか・・・そんな風に言われたら・・・抜けるつもりはないので安心して下さい。・・・ところでこの広告・・・誰が作ったんッスか?」


「私だが?」


「・・・あまり言いたかないッスけど・・・センスの欠けらも無いッス・・・」


「なっ!?結構苦労して作ったのだぞ!?」


「苦労したかどうかは別として・・・何か堅いッス・・・何ッスか?『組合員求む!』って・・・軍隊じゃねえんッスから・・・」


「それに組合員になった時の利点も分かりにくいわね。『情報共有!』『パーティーメンバー補充!』『助っ人可!』じゃなくてもっと分かりやすいように書かないと・・・」


「字がちょっと重いですね・・・もう少し可愛く書くのはどうです?」


「ちょっと何書いてんのか分かんねえ・・・」


「・・・この・・・好き放題言って・・・だったらお前達が書け!」


「ええ!?」


「『ええ!?』じゃない!私の半日を無駄扱いして・・・これが組合員の初仕事だ!さっさと取り掛かれ!」


「・・・俺・・・組合に入るの止めようかな・・・」


一生懸命書いたのに散々な言われようだ。そりゃあ不慣れだからあまり上手く出来たとは言えないが言い方と言うものがあるだろう言い方というものが



とにかく組合員募集の広告はケン達に押し付け、私は地道に冒険者達に声をかけ勧誘する事にした


ギルド内でダンジョンから戻って来た者達に声をかけると二つ返事で加入してくれる者がほとんど・・・中にはこの街に居座るつもりはなく断る者もいたがそれは仕方ないだろう


なるべく全員に声をかけたい・・・ある者達を除いて


「やあ、サラ!元気してる?」


その除いた者達から声をかけられた


ダンジョンキラー・・・Aランク冒険者のシークス・ヤグナーとその仲間達だ


「・・・そこそこだ」


ギルド内で声をかけている時点でコイツらと遭遇する事を想定していれば・・・悔やんでも遅いか・・・シークスはケン達が新しく作っている広告が出来るまでの間貼り出していた私が書いた広告に目を付けるとその内容を読みニヤリと笑う


「加入するよ」


「お断りだ」


「なんで!?」


「自分の胸に手を当てて考えてみろ『ダンジョンキラー』」


領主官邸でフリップギルド長と私を混じえた話し合いは決裂で終わった


領主、フリップ、私はダンジョンコアの破壊をしないよう頼み、シークス達はそれを拒否・・・理由を聞いても答えず話は平行線・・・結果法律で縛る事は出来ない為に放置状態・・・幸いエモーンズのダンジョンはダンジョンコアが未だ一度も発見されていない為に壊される事はないが今後ダンジョンコアが現れた時にどうなるか・・・


「・・・・・・うーん、分からないな。理由を聞いても?」


「白々しい・・・では組合の規則として『ダンジョンコアを破壊しない』と追記しておこう」


「それだと入れないな・・・って勝手に規則を追加していいの?組合長はここに書いてあるローグって奴じゃ・・・」


「ローグ様が組合長で私はその補佐だ。それに『ダンジョンコアを破壊しない』というのは当たり前の事なので私が勝手に追加しても問題はない」


「へえ・・・組合『ダンジョンナイト』・・・ダンジョンナイトの名前がローグって訳か」


「さあな」


噂ではシークス達はダンジョンコアが見つからないからダンジョンナイトことローグ様を探しているらしい。何の為に近付こうとしているのか分からないが、良くない事が起こるのだけは分かる・・・今度ローグ様と話をした時に伝えておこう・・・


「・・・まっ、いいや。気が向いたら組合に入れてね・・・じゃ」


そんな時は来ない事をシークスも理解しているはずだ・・・確かに組合は共にダンジョンを攻略する為に助け合うもの・・・だが攻略と破壊は違う。それを理解するか改心するまではどこも彼らを組合に入れたりはしないだろうな


シークス達がギルドから出て行った後にまた勧誘を再開しようとしたがケン達の広告も出来、受付のペギーも勧誘を手伝ってくれると言うので直接の勧誘はストップした


ケン達からこの後食事に誘われたが私にはやる事がある為に断った


やる事とはもちろんローグ様への報告


今日加入した人数と今後の方針などをじっくりと話さなければならない・・・これは組合長とその補佐の義務・・・決して会話を楽しみたいからではない


部屋に戻ると一応ローグ様から連絡が来ないか通信道具を前に座って待つ


だが通信道具は一向に光らない


まだ時間が早いか?それとも何かされてるのか?


ローグ様も色々と気になっているはず・・・全てお答え出来るように紙にしたためであるので準備は万全だ


さあ光れ


光って私に至福の時間をもたらしてくれ


・・・・・・・・・


・・・・・・


・・・


光らない!


やはり私から連絡するべきか・・・話さずマナだけ流して光らせるなら大丈夫なはず・・・


と手に取ろうとした瞬間・・・


「うわ光った!!」


思わず部屋の中で叫んでしまう


これは・・・どうすればいいのだっけ?


えっと・・・


「はい!サラです!」


・・・違う!


こちらもマナを流して・・・


「・・・あの・・・」


〘今話せるか?〙


「はい!全然大丈夫です!」


〘そうか。組合の事だが・・・〙


「はい!現在43名の組合員となっております。恐らくこの街に残る冒険者はほとんど加入するかと・・・となると組合費は月に1万ゴールドを超えると思いますが、ローグ様の給金は1万ゴールドで足りますでしょうか?足りなければ他で・・・」


〘待て待て・・・43名?1日で?・・・そんなにすぐに集まるものなのか?〙


「はい。冒険者は組合に入ってた方が何かと都合が良いので・・・特にこの街を拠点にする者でしたら入って当然かと」


〘なるほど・・・それで給金の話だったな。私は給金など要らない。その金を冒険者の装備品や道具に充ててくれ〙


「そんな・・・組合長が給金を貰うのは当然の権利です。どうかお納め下さい」


〘ふむ・・・それならば何かに使う時が来るかも知れないので君が持っててくれ。それと・・・少し畏まり過ぎではないか?もう少し砕けた物言いをしてくれると話しやすいのだが・・・特にローグ『様』はやめてくれ。ローグでいい〙


「えっ!・・・いや・・・でも・・・」


〘それが出来ないのであれば私もサラ様と呼ぼうか?〙


「うっ・・・・・・ロ・・・ローグ・・・」


〘それでいい。後は話し方だな・・・私は組合長となったからと言って偉そうにするつもりは無い。なので畏まった言葉で話されると非常にやりづらいのだ〙


ええ!?名前を呼ぶのも緊張するのに話し方まで?・・・そんな・・・一気に距離を縮め過ぎじゃ・・・でも・・・ローグさ・・・ローグが言うのなら・・・


「・・・こ、こんな感じで・・・いいかし、ら?」


〘ああ。これからもよろしく頼む・・・サラ〙


「はい!・・・じゃなくて、ええ!一緒にエモーンズを盛り立てて行きましょう!」


いいのかな・・・いいのよね?


話し方ひとつでグッと距離が縮まった感じがする・・・



それからローグと細かい打ち合わせをして通信を終えた


夕食を取るのをすっかり忘れていたけど何故かお腹がいっぱいだ


今度はいつ話せるだろうか?明日は早過ぎるかな?


冒険者として色んな男性とパーティーを組んできたけど、これ程までに心を動かされた事はない


助けてもらったから?・・・違う・・・それはきっかけに過ぎない・・・私は・・・本気で・・・



今日はもう寝よう・・・明日はまた話せるだろうか・・・



おやすみなさい・・・ローグ──────

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