表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
560/856

556階 唯一の希望

「そ、創造主?頭沸いてんのかてめえは!」


まあいきなり『創造主です』と言っても『はいそうですか』にはならないよな・・・いきなり『お父さんですよ』と知らない人に言われても俺なら受け入れる自信はない


けど他に言いようがないし・・・『お前の力の元である魔物を創造したサキュバスと同じ力を持つ者です』と言ったらいいのか?・・・んーそれこそ訳が分からんな


「創造主って神って事よね?つまりアンタは自分が神とでも言いたいわけ?」


神・・・神?


そう言えば神って人間を含めた生物を創造したものって感じだったような・・・三大魔族以外を創造したのはインキュバスでそれを倒したのは俺・・・で、インキュバスと同等の力を持つ俺は・・・


「そうか俺・・・神だったかも」


「・・・」


〘・・・〙


静寂が訪れる


もしかしてみんな俺を神と崇めて・・・


「~~~!バカかてめえは!」


「随分と見窄らしい神ね・・・なら私達は神殺しかしら?」


一瞬の静寂の後、罰当たりな2人が動き出す


フェルノは直接攻撃に切り替え逆にロアはそれをサポートすべく土を操り俺の足を拘束した


「炎が効かねえなら直接ぶち込んでやる!」


神に対して拳を振り上げるとは愚かな・・・天罰を下してやろう


足の拘束は簡単に外せるがあえてそのまま動けないフリをしてフェルノと対峙する


全身炎に包まれたフェルノの拳は当然炎を纏っており普通に受けたら少し火傷しそう・・・なので手で軌道をズラし火傷しないよう受け流す・・・題して『神受け流し』


それからフェルノは神に対して無礼極まりない猛攻を繰り広げて来た


それを神受け流しで躱していると卑怯にも拘束された足を狙い蹴りを放つ


仕方なく足の拘束を強引に足を上げて外すと華麗に蹴りを躱しもう片方の拘束も外すとその場で飛び上がり華麗に後方に宙返りしてフェルノと距離をとった


「くっ・・・しっかり捕まえてろ!ロア!」


「うるさいわね!やってるわよ!」


醜いな・・・仲間同士で罵り合うなんて・・・


〘ねえ・・・その神様ムーブは何時までやる気?〙


飽きるまで


まあぼちぼち飽きてきた頃だ。もし本当に神がいるとしたらそれは三大魔族を創ったものだろうな・・・いやもしかしたら三大魔族を創ったものを創ったものかも・・・考えたらキリがないけどとりあえず俺が神じゃない事は確かだ


「クソが・・・てめえらいつまでそうしてやがる!さっさと動け!!」


未だ言霊によって跪いたままの仲間達を叱責するフェルノ


仲間が動けば勝てると思ってるなら・・・


「あ・・・」「動く・・・動くぞ!」


言霊を解いて動けるようにした。すぐさま冒険者達は構え各々のギフトを放つ為に構えをとる


「ハッハー!これで形勢逆転だ・・・どんなギフトか知らねえがこの人数を相手に出来ると思うなよ?」


と、さっきまで全員跪いてた奴が言う


学習能力がないのか危機管理が出来ないのか・・・こういう奴には力を見せつけて圧倒しても無駄なんだろうな・・・痛みを与えないと


「見た目に騙されるな!ギフトを使われる前に全力でぶち込め!!」


フェルノの命令に従い全員が一斉にギフトを発動させる


色んな能力が発動したけど少なくとも王都に行かなかった冒険者達よりは強い魔物の魔核を融合したらしい


けど・・・


「なんで効かねえ!・・・なんでっ!」


「一つ賢くしてやる・・・魔物が放つ能力は魔力を使う。人間はマナを使い魔物は魔力を使うって訳だ。けど実は魔力はそのまま使った方が威力がある・・・それなのに魔物が魔力をわざわざ変化させるのには理由があるんだ」


「さっきから訳分かんねえ事言いやがって!魔物だ?魔力だ?いいか?よく聞け・・・これはギフトだ!」


「だからそのギフトが魔物からの贈り物なんだよ。で、話の続きだ・・・魔物が魔力を変化させる理由・・・それは魔物によって使える魔力のりょうが決まってるから。弱い魔物は使える魔力が少なく、強い魔物は使える魔力が多い。単純だろ?」


「・・・」


「つまりだ・・・その魔物の能力は努力の証・・・使える魔力量でどうにか威力を出そうとした結果なんだ。人間が鍛えたり練習するのと一緒・・・強くなろうとした証」


「ハア・・・だから・・・だからなんだってんだ!!」


「お前が聞いたんだろ?『なぜ効かないんだ』って。だから答えてやってるのに・・・」


「それのどこが答えだってんだよ!」


「・・・だから・・・ハアもういいや。せっかくつい最近教えてもらった魔物の能力について教えてやろうと思ったのに・・・自分が使ってる能力がどんなものか知ってて損は無いだろうに・・・それと・・・どうやっても抗えない存在を知る事も」


「あん?なんだっ・・・て?」


「使える魔力量は個人によって差がある。その差を埋めようとするのが能力・・・けど決して埋められない差っていうのは存在するもんだ・・・お前達が努力していればまた別だったかもしれないけど貰った能力にかまけているようじゃとても埋まらない差だ」


「こっ・・・ば、化け物め・・・」


「努力しろ・・・そうすりゃ一撃くらいは入れられるかも・・・いや無理か」


魔力を可視化出来るくらいの量纏うとフェルノ達は後退り始めた


「何が目的だ・・・なぜ俺に近付いた・・・」


「答えてもいいけど知られたらマズイ情報だ・・・それでも知りたいか?」


「ま、待て!・・・・・・それを知ったら俺はどうなる?」


「それも知られたらマズイかもな」


「なんでだよ!・・・あ、い、いや、怒鳴るつもりは・・・」


しまった・・・完全に戦意を喪失している


もう少し痛い目をみてもらった後で情報を聞き出そうと思ってたのに・・・このままじゃ情報は得られるかもしれないけど俺達がいなくなったらすぐ王都に報告しちゃうよな・・・またザード達にやったみたいに教育か・・・面倒なんだよなあれ・・・


〘魔力を放出し過ぎなのよ〙


やっぱり?力の差を分からせたかっただけなんだけど・・・


〘冒険者になりたての人間が下級魔物を討伐しようとしたら実は魔王でした・・・そんな状況で戦意喪失しない訳ないでしょ?〙


・・・確かに。でも冒険者なりたて言うほど弱くないだろ?コイツら


〘・・・そうね。けどアナタとの差を表現するにはそれくらいが妥当かなって思ってね〙


なるほど・・・ね


もはや立ち向かう気はないようで言霊を使ってないのに膝をつき両手を祈るように合わせてブルブル震えるフェルノを見てため息をついた


「えっと・・・ゴメン・・・やり過ぎた──────」




これは単なる言い訳になる


魔王との戦い以降は魔王より格下との戦いが続いた


勇者ですら成長途中であった為に実力は魔王に及ばず・・・そんな相手ばかりで戦い方が下手になってきた気がする


加減が出来ないと言うかどう対応すればいいか分からないと言うか・・・とにかく全力を出して戦えば良かった時からするとあれこれ考える事が多くなり結果力加減を間違える・・・で、こうなってしまったわけだ


「へへ・・・何なりと聞いてくれ」


上目遣いで俺の機嫌を伺いながら話すフェルノを見ると否が応でも自分の失敗に気付く


そしてどうすれば成功だったかも分からなくなった


とりあえずコイツらから得られる情報を得てから出直そう・・・情報収集に焦って自分を見失ったままではいずれ大きな失敗をしてしまいそうだ


「あー・・・聞きたいのはなぜ俺達の事が?」


「分かったか・・・か。魔族と王都に入ろうとしたろ?しっかり見られてるぜ?と言っても下手な似顔絵だったけどな」


「その下手な似顔絵でなぜ俺達と分かったんだ?」


「下手くそだが特徴はとらえていた。描かれた人物を見た事がなければただの下手くそな絵だが見た事があれば誰の事を描いたか分かるような絵だったって訳だ。で、俺はピーンときた・・・これは雑用じゃねえかってな」


見てみたいなその絵


「それで?俺達を捕まえてどうしようと?」


「それは・・・」


「捕まえるのが私達の役目だから捕まえようとしただけよ」


言い淀むフェルノの代わりにロアが答える


「役目?」


「ギフトを与える代わりに約束を果たせ・・・それがギフトを貰える条件だったの。で、その約束って言うのが王都周辺で冒険者をしながら外敵から王都を守れ、よ」


「つまり俺が外敵って訳か・・・なぜそうまでしてギフトを?」


その約束って裏を返せば一生そこで暮らし言う事を聞けって言ってるようなものだもんな・・・割に合わないと思うけど・・・


「そうまでして?私達には破格の条件よ?誰でも簡単に貰える訳じゃないギフトをタダ同然で貰えるのだから・・・指定された街に住む事も苦じゃないし何より人間扱いされる訳だし・・・」


「別にギフトを持ってなくても・・・」


「本当に他所の国から来たみたいね。貴族の生まれや手に職を持ってる人や店を構えている人・・・それに土地を持っている人以外は家畜同然・・・いえ家畜以下とも言えるかも・・・奴隷制度が残っていれば正しくギフトなしが奴隷と呼ばれていたでしょうね」


「安い給料で働かされるからか?」


「ええそうよ。簡単に言うけどギリギリ生きていけるだけの給与と過酷な労働・・・それを毎日続けてみなさい?毎晩考えるのは『生きている意味』になるから」


「それを打開する唯一の方法がギフト・・・って訳か」


「そういう事・・・犯罪者になるかギフト持ちになるか・・・はたまた生きる屍となるか・・・この世でギフトを選択しない人がいるかどうか甚だ疑問だわ」


「けどギフトを貰って冒険者になっても縛られているのは同じだろ?」


「同じだなんてとんでもない・・・雲泥の差よ。冒険者になれば美味しいもの食べれるし服だけ好きなだけ買えるくらい稼げるわ。もちろん制約や義務が生じるけどそれも些細な事・・・それに功績を挙げれば貴族になるチャンスもあるのよ?」


「チャンスがあったとしても死んだら終わりだろ?」


「死んだら?餓死するか魔物にやられて死ぬかどっちが多いと思ってるの?」


「いや・・・」


待てよ・・・もしかしてリスクについて話してない?融合は失敗するかもしれないし成功したとしてもギフトを使い続ければ魔人になってしまう・・・そのリスクを話してないのか?


それなら確かにギフトを選ぶだろうな・・・マジかよファミリシア王国・・・


「とにかく他所の国は知らないけどこの国では生まれた環境によってはギフトは神からの贈り物なの・・・人間として生きられる唯一の希望なのよ──────」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ