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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
56/856

53階 組合発足

「意外だな・・・ダンコは反対するものだと思ったのに」


サラさんと別れた後、僕は司令室に戻り仮面とマントを外し椅子に腰かけた


人喰いダンジョンで魔物と戦ってたら突然スラミから『ダンジョンの中でマスターの名前を叫んでいる人間がいます』と聞いた時は何事かと思ったよ


急いで戻ってみれば今度は組合長にならないかって驚きの提案されるし・・・でもその会話の中でダンコが『いいじゃない・・・なってみれば?』って言ったのには更に驚いた


《例によって授業を聞いてないロウにその理由を説明してあげるわ》


聞いてないのは誰のせいだ誰の


「で?その理由ってのは?」


《組合は分かるわよね?》


「それくらいなら・・・同じダンジョンに行く冒険者達が互いに手助けをする組織みたいなもんでしょ?」


《まあ、大体合ってるわ。それで組合長は何をするか分かる?》


「・・・まとめ役?」


《大雑把ね・・・組合長の役割は大きく分けて二つ。組合員の管理と運営よ》


「運営?」


《組合は営利目的ではないけどお金を徴収する・・・その理由は組合員の装備や道具に当てる為が第一。そうする事であまり強くない冒険者でも良い装備が得られるからよ》


「それって・・・自分で稼げる冒険者は組合員になるメリットがないような・・・」


《そんな事はないわ。弱い者に装備を与える・・・すると組合としての底上げになるわけ。将来的には稼げている冒険者の助けにもなるし徴収金のもう一つの使い道・・・手伝った者に報酬金を出すの》


「なるほど・・・装備を買うだけじゃなくて手伝った報酬にも徴収金を使うのか・・・」


《そういう事。で、組合長の役割って何かに似ていると思わない?》


「何かに?・・・管理と運営・・・ダンジョン経営?」


《そそ・・・組合員は魔物、お金はマナってだけで同じようなものよ》


「つまりダンジョン経営のレベルアップの為に組合長の職に付けと?」


《まあそうね。それにそれだけじゃないわ。この街の冒険者が強くなればなるほど売上(マナ)が上がる・・・下手な人間が組合長になって冒険者の質が下がったら目も当てられないからね。その点アナタが組合長になってその辺を上手くコントロール出来れば売上(マナ)爆増間違いなし・・・ダンジョン経営も上手くなり売上(マナ)も上がるなんて最高じゃない》


さすが売上至上主義・・・咄嗟にそんな事まで考えるとは・・・


「でもローグとして表舞台に立つのは少し気が引けるなぁ・・・ダンコもあまり目立つなって言ってたろ?何があるか分からないし・・・」


《その為のあの人間じゃない。こちらから連絡して一方的に命令すればあの人間は言う事聞くわ・・・何せアナタに・・・いえ、ローグにベタ惚れだからね》


うっ・・・それは薄々気付いているけど・・・その感情を利用するのは・・・


《あまり気乗りしない?でも向こうもアナタを利用しようとしているのよ?お互い利用し合うのだから気にする必要ないんじゃない?》


まあサラさんもダンジョンナイトの名を利用しようとしているのだからお互い様か・・・にしても僕が組合長・・・ダンジョンマスターであり門番であり冒険者であり組合長・・・寝る暇あるのかな・・・


《まっ、一晩考えてみれば?》


「そうだね・・・今日はもう人喰いダンジョンには戻らないで久しぶりにダンジョンの調整でもしようかな」


日中はスラミに任せっきりだったしダンジョンの壁や床が傷んでいる所もあるだろう。人の居ない所から点検して・・・


「マスター」


「うん?どうしたスラミ」


「マスターにやってもらいたい事のリストです。各階の修繕が必要な場所と少なくなった魔物のリスト・・・それとバランス調整が必要な箇所がいくつか・・・」


「え?」


何この有能補佐官ぶりは・・・スラミってスライムだよね?魔族になったからといってここまで成長するの?


《言われた事だけではなく自分で考え始めたわね。これでロウの負担も少なくなるし前向きに検討してみたら?組合長とやらを》


「うん・・・そうするよ」


スラミに渡された紙に目を通して驚いた。各階の修繕が必要な箇所がこと細かく書かれており、更に魔物の残りの数と魔物の強さをスラミなりに数値化したものが書かれていた


更に驚くべきことにダンジョンに進入して来た冒険者パーティーの事まで書かれている・・・これはもし組合長になったらかなり役に立ちそうだぞ


スラミの成長に驚くと共に少しだけ末恐ろしさを感じてしまう


このまま成長したら一体どうなってしまうのだろう




「んで?今は返事待ちってか・・・門前払いされて終わると思ったんだがな・・・」


「私も同じです。最初は戸惑った様子でしたが・・・」


ローグ様に組合長をお願いして一日が経過した


フリップに現状を説明する為に部屋を訪ねて昨日の話をするとかなり驚いている様子だ。まあ私も意外な反応に少し驚いているが・・・


「その通信道具ってやつを見せてくれ。俺も話には聞いていたが個人で持ってるやつがいるとはな・・・」


「確かギルドには王都と連絡が取れる道具が支給されていると聞いてますが・・・」


あまり人に見せたくないのだが、仕方なくフリップにローグ様から渡された通信道具を見せる


「ああ・・・かなり高価だから盗まれねえように保管してある。月に一度の収支報告以外で使う事はほとんどねえしな。それが貰った通信道具か・・・かなり小せえな・・・近距離用か?」


「ギルドにある物はもっと大きいのですか?」


「そうだな・・・それの倍くらいはある。ちょっと貸してみろ」


「嫌です」


「別に壊しゃしねえよ・・・って、何かそれ光ってねえか?」


!・・・光ってる!


えっと、どうすれば・・・そ、そうだ・・・マナを流して・・・


〘・・・聞こえるか?〙


来たー!ローグ様の声!!まさかこんなに早く連絡が来るとは・・・くっ!なぜ私はフリップの部屋に居るのだ・・・しくじった・・・


「おい、返答しなくていいのか?」


「お黙り!」


「おだ・・・」


〘誰か他に人が居るのか?〙


「気にしないで下さい!家畜が鳴いているだけです!」


「か・・・おまっ・・・」


殺気を込めて睨みつけてようやく黙るフリップ・・・ローグ様に変に勘繰られたらどうするんだ!まったく!


〘そうか・・・それで昨日の話だが・・・〙


「はい!その・・・断って頂いても全然大丈夫なんで!」


「おいお・・・ングッ」


〘・・・昨日の話だが受ける事にした〙


「え!?・・・受けて下さるのですか?」


〘ただし私は表立って動くことは出来ない。それでも良ければだが・・・〙


「もちろんです!」


嘘みたい・・・まさか本当に受けて下さるとは・・・



それから後日細かい決まりなどを話す事にして、最初に決めないといけない事だけを話した


まずは徴収金


こちらに任せると言って下さったのでとりあえず相場の1ヶ月100ゴールドで決まった。お金の徴収も管理も私がする事になった


それから名前!


これから組合が増えるかもしれない・・・そうなるとどの組合に所属しているか区別する為に組合の名称が必要になる


ローグ様は私に任せると言ってくれたので万が一受けて下さった時にと考えていた名称を提案した


組合『ダンジョンナイト』


それを聞いたローグ様は少し渋っていたけど任せると言った手前か渋々了承してくれた


こうしてエモーンズ初の組合はローグ様を中心にスタートする事となった



「それではまた何かありましたらこの通信道具にマナを流します。話し掛けずマナを流すだけなら良いんですよね?」


〘そうだ。会話が可能な状態であればすぐに返答する。緊急時の時はずっとマナを流し続ければ輝きが増すから流し続けてくれ〙


「はい!」


冒険者となってここまで心動かされた事があったであろうか・・・いや、ない


「あー・・・もう喋っていいか?」


通信道具は既に光を失っている。恐らく向こうのマナが尽きるとこっちの道具の光が消えるようになっているのだろう・・・つまり2つの道具は繋がっている・・・繋がって・・・


「聞いてるか?おーい」


「聞いてます!」


余韻を楽しむ暇もない


やはりタイミングが悪かった・・・もし私の部屋で受けていれば半日はこの余韻を楽しむ事が出来たというのに・・・


「お、おお・・・そうか。てか人を家畜扱いしやがって・・・」


「文句なら後で聞きます。今は()()()()()組合員を増やさなくてはならないので」


「待て待て・・・てかそれならお前さんが組合長やった方が手っ取り早かったんじゃねえか?結局ダンジョンナイトはその通信道具で指示してくるだけだろ?」


「・・・ハア・・・ローグ様が組合長だからこそ意味があるのです。実行するのが私だとしても」


「・・・クソでかいため息つきやがって・・・まあお前さんがそれでいいなら何も言わねえが・・・組合員を集めたいなら下の掲示板を使え。それとダンジョンの情報は剥がしていいぞ」


「組合員の特典にするって事ですか?」


「ああ・・・組合に所属してくれた方がギルドも何かと助かるからな。今までギルドが発信していた情報が組合員のみに知らされるとしたら月100ゴールドの価値は生まれるだろ」


「ええ。たとえ固定したパーティーがあり、装備が整っている冒険者も情報は欲しいですからね」


冒険者にとって情報は命にも等しい


特にボスの情報はあるとないのとでは攻略難易度が天と地の差があると言っても過言ではない。ボスによってパーティー構成や必要な能力が変わるのだから当然だろう


「では早速募集の紙を貼り付けて来ます」


「ああ・・・金の管理は最初の内はウチの職員を使っても構わねえぞ?信頼出来る組合員が出来ればそいつに預けても良いが・・・」


「組合員は冒険者なのでお金の管理は厳しいかと・・・外部の者に頼もうかと思ったのですが・・・」


「それが良いかもな。まっ、いくらか包んでくれりゃ俺がやってもいいが?」


「遠慮しておきます」


「少しは考える素振りくらい見せろよ・・・まっ、その辺は任せる」


お金の管理は当分私がするか・・・商人に任せるのが一番だが信頼出来る者でないと持ち逃げされる可能性があるし・・・難しい問題だな


組合員の数が何人になるか定かではないが、現状エモーンズには100人くらいの冒険者が居たはず・・・全ての冒険者が加入したとしたら月に1万ゴールド・・・割と少ないな・・・それくらいなら一日で稼げる


もっと増やすか?ローグ様に渡すお金も必要だし・・・いや、ダンジョン1回分だから入る者もいる訳でこれ以上増やすと入らない者も出てくるかも知れない・・・他の組合はどれくらい取っているのだろう


「ギルド長・・・相場は月に100ゴールドと聞いてますが少な過ぎでは?」


「ん?ああ・・・他にも冒険者の紹介や装備の売買などで儲けりゃいい。それに魔核の買取額の数パーセントはギルドから組合に支払われるから金なら心配しなくていい。組合員を増やそうと月の金を取ってない組合もあるくらいだからな」


「その買取額から数パーセントっていうのは冒険者に支払われるお金からですか?」


「いんや、それとは別だ。そのパーセンテージはギルドへの貢献度で上下するが冒険者に支払う金とは別でギルドから組合に支払われる。それだけギルドにとっては組合って存在はでけえのさ・・・冒険者が減ればギルドの収入も減るからな」


なるほど・・・そうなるとかなりの金額が動きそうだ・・・やはり早めに信頼出来る商人を見つけないといけないな


「とにかくまずは組合員集めからですね。お金の管理はお言葉に甘えて職員の誰かに任せます」


「ああ、俺から言われたと言えばいい。職員も組合は大歓迎だからな・・・嫌な顔はしないはずだ」



こうして組合が設立された


エモーンズ初の組合・・・そしてなんと言ってもローグ様が組合長の組合・・・ローグ様の為にも、冒険者の為にも何とか軌道に乗せたいものだ・・・しばらく頑張るとするか──────

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