表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
559/856

555階 贈り主

ファミリシア王国フェルカト


再教育から三日後、とうとうフェルノ達が戻って来た


ザード達の教育は行き届いているから密告される心配はないと思う。それに演技もかなり指導したし・・・


「お、雑用もちゃんと逃げずに来てるじゃねえか・・・しごかれて逃げ出していると予想したのにな・・・外れちまったよ」


「フェ、フェルノが言ったんじゃないか・・・程々にしとけって・・・」


『殺すなよ』じゃなかったのか・・・ザードの野郎・・・


「ああ、そうだったな・・・せっかく手に入れた雑用係がやめちまったら誰かが代わりにやらねえといけなくなるしな。簡単に巡って来る機会じゃねえし大事にしないとな」


「あ、ああ・・・」


「ところで変わった事はなかったか?どうやら依頼はなかったみたいだが・・・」


「な、ない・・・別に何も・・・フェルノは何かあったのか?急に王都に行くなんて・・・」


おっ、早速か


ザード達にはあるお願いをしている


俺達の事をバラすなと何をして来たか探れと


ただあまり深く追求すると怪しむ可能性があるからあくまで自然流れで聞けと言っておいたが・・・今のはまあ自然か?これですんなり話してくれるといいけど・・・


「・・・なーにくだらねえ内容だったよ。ダージスクのインドゥがやられちまったから気を付けろよって内容だ。どうした?そんなに気になるか?」


「い、いや・・・別に・・・」


「・・・まあいい。くだらねえ用事で呼ぶなってんだよなクソダリィ・・・狭い馬車の中でやる事もなく座ってるだけだったし肩が凝っちまった・・・おい雑用!こっち来て肩揉んでくれや」


フェルノは自らの肩を擦りながら俺を見た


教育済みの冒険者達の顔が一斉に引き攣るのが見えた


「はい只今」


一応バレるまで雑用係を演じるつもりだが俺達の事を知る冒険者達は気が気でないらしい。俺とフェルノ・・・数日前まではフェルノの方が強いと思っていただろうけど今はどちらが強いか分からなくなっているみたいだ


フェルノの背後に回り肩を揉み始めるとみんなの表情がよく見える。フェルノと共に王都に行った冒険者以外の顔が引き攣ったまま固まっているので思わず吹き出しそうになった


「あーいい・・・なかなか力が強えじゃねえか・・・これでギフト持ちならいいとこまでいけたんじゃねえか?」


「恐れ入ります」


「ここ数日雑用ばかりで飽きたろ?体を動かすついでに間引きにでも行こうと思ってんだがついて来るか?」


「間引き・・・ですか?」


「ああ・・・ダンジョンから出て来た魔物・・・そいつらが繁殖し増えてるのは知ってるだろ?普段は何か被害が出るまで放っておくんだが増え過ぎると街に被害が出始める・・・だからその前に間引くんだ・・・被害が出ないようにな」


「なるほど・・・でもなぜ間引くのですか?また増えてくるのは目に見えているので間引くよりも全て倒してしまえば・・・」


「そんな事したら商売上がったりになっちまうだろ?冒険者は魔物がいてなんぼの世界・・・店で言えば商品と同じだからな・・・魔物は」


ダンジョンのように無限に出て来ない事を知ってるのか・・・俺は知ってて当然だけど一介の冒険者であるフェルノがなぜそれを知ってんだ?


「そうでしたか。私でよければご同行させていただきます」


全員で行く訳じゃないみたいだな。この機会に近付いて少しでも情報を得られればいいけど・・・


「ああ・・・気晴らしにはなるだろう・・・多分、な──────」





午後になり街周辺の魔物を間引く為に外に出た


どうやら周期的に間引きを行っているらしく前回は西側だったから今回は北側を攻めるらしい


王都に伸びる街道から少し外れた場所にある森の中・・・そこに到達すると魔物を探しながら進んで行く


さほど広い森じゃないのかフェルノ達は軽装だ。てっきり何日かかけて行うのかと思ったけど日帰り・・・しかも午後からだと大して成果もなさそうな気もするけど・・・


「なあ雑用」


少し開けた所に出ると突然フェルノは立ち止まる


なるほど・・・そういう事か


「なんでしょうか」


「ギフト持ちがギフトなしと偽るのは違法だ・・・知ってたか?」


「初耳です」


「そうか・・・改めて聞くがお前はギフト持ちか?」


「いえ・・・ギフトは持っていません」


「そうか・・・分かった」


木の上にいた鳥達が危険を察知したのか飛び去って行く。それと同時にフェルノ以外の冒険者達が俺達を囲むように動いた


「もう一つ質問だ・・・魔族と共に王都に行き何をするつもりだった?」


「仰っている意味が分かり・・・ハア・・・下手な演技は時間の無駄か・・・」


「そうそう諦めが肝心だ。で?痛い目みて吐くかその前に吐くか今すぐ決めろ」


どうして分かったか気になるところだけど聞いたところで素直に答えるとは思えないか・・・


「どうせなら木の陰に隠れている人も一緒に聞けばどうだ?2回喋るのは面倒だし」


「・・・へぇ・・・見つかったヤツが間抜けなのかお前が優れてるのか・・・バレてるみたいだぞ?出て来い!」


フェルノが叫ぶと6人の冒険者が木の後ろからゾロゾロと出て来た


見た事ない人ばかり・・・王都の冒険者?


「私の色気は木一本じゃ隠し通せなかったのかしら」


「よく言う・・・ただ間抜けなだけだろ?」


口を開いた女性はフェルノと同格なのか親しげな感じだ。どこでどうやってバレたか知らないけど別のギルドのフェルノと同じような立場の女性と組み俺達を捕まえようとしているみたいだな


「これだけか?もっといるなら呼んで欲しい・・・さっきも言ったけど何度も話すのは疲れるからな」


「もういねえよ・・・これでも多過ぎるのにこれ以上いてどうすんだよ」


「そうか・・・ならまず話を聞く態度になってもらわないとな・・・{跪け}」


「ぐっ!」「なに?」「また俺まで!?」


ケンとエドバン含めた全員が跪く。一応特定の人物だけって感じでも出来るけど・・・ただ面倒だった


「さて・・・何から聞きたい?」


「て、てめえ!こりゃ何のギフトだ!?」


「ギフトギフトギフト・・・何でもギフトと思うのは勝手だがそんなのと一緒にするな。お前らみたいに楽して得た力じゃなくて結構努力して自分で得た力なんだから」


「・・・なに?」


〘私からの贈り物って意味じゃ同じじゃない?〙


お黙り・・・拾い物だよ


「・・・とにかく話をしよう・・・まずどうして分かった?」


「・・・何がだ?」


「自分で考えろよ」


「・・・ったく・・・ムカつく奴だ・・・クソッタレ・・・こんなもん・・・」


おぉ!?いきなりフェルノの全身が炎に包まれた


まさか自死した・・・訳じゃないよな?


「おいロア!手伝え!」


「約束した報酬じゃ・・・割に合いそうにないわね!」


全身火だるまになったフェルノが叫び、ロアと呼ばれた女性は跪きながら地面に手をついた


すると目の前の地面が盛り上がりまさかのゴーレム登場・・・創造した?いやそんなはずは・・・


「ハッハー!動けたぞ!てめえはもう終わりだ!雑用!!」


「へぇ・・・どうやら資格はあるようだ・・・なら遊んでやるよ・・・素直に話したくなるまでな」


ロアは動けないみたいだけどフェルノは火だるまになりながら動けるようになったみたいだ。あの火で言霊が遮断されたのかな?・・・どうでもいいけど熱くないのか?


「バカが・・・動けりゃこっちのもんだ!」


動けるようになり嬉しそうに突っ込んで来るフェルノ・・・文字通り熱い抱擁でもする気なのか知らないけど全力でお断りしたい


かと思ったらいきなり立ち止まり両手を突き出した


すると両の手の平から螺旋状に広がる炎が・・・ファイヤーストーム?詠唱はともかくマナの動きもなかったのに・・・


〘なるほどね・・・この人間はおそらく『サラマンダー』ね〙


サラマン・・・


「ヒャッハー!丸焦げになりやがれ!」


「ロウニール!!」


ダーって?


〘・・・アナタ一応はリアクションしてあげなさいよ・・・外野はアナタが炎に包まれて盛り上がってるわよ?〙


いいよ面倒くさい・・・で?サラマンダーってどんな魔物?


〘面倒くさいって・・・呆れた。まあいいわ・・・創った事ないから知らないのも無理はないわね。サラマンダー・・・簡単に言うと炎に包まれたトカゲよ。全身炎に包まれ口から炎を吐く魔物・・・ダンジョンに置くなら下層のボス部屋に置くのが妥当ね。対策無しで突っ込めば全滅必至の厄介な相手だと思うわ・・・人間にとっては〙


上級か・・・それも上級の中でも上の方って事かな?


〘ええ・・・それより平気なの?〙


少し熱いくらいかな?魔族や勇者と戦ってて感覚がおかしくなったのかこれくらいの魔法なら躱さないでもいいかもって咄嗟に思って・・・現にほとんどダメージ通ってないし。もしかして俺の体ってもう魔族になった?


〘・・・自然と魔力で防いでるみたいね。魔族と言うか半魔族かしら?〙


中途半端な・・・ん?


周りを覆っていた炎が晴れる


すると目の前にいるフェルノと目が合い表情が得意気な笑みが驚きの表情に変化した


「なっ!?・・・なんで・・・」


「退きなさいフェルノ!熱いのは得意みたいだけどこれならどう?」


ダンコ、コイツは?


〘『ノーム』ね。人間の姿形をした小人で人間で言うと土魔法使いってとこかしら。サラマンダーと同じく上級上位・・・弱点は虚弱な肉体だけどそれを補う為に見ての通りゴーレムを作って戦わせたりするわ〙


ふむふむ・・・対抗して本物のゴーレムを出してやりたいがゲートはなるべく使いたくない。一応ゲートは身バレしてしまうしね


なので巨大なゴーレムの拳の軌道を手で逸らし懐に入り込みゴーレムの体に触れると魔力を流した


するとゴーレムは音もなく崩れ去り、これまた表情の変化を見ることが出来た


「うそ・・・でしょ?どうして・・・」


コイツらのギフトの元は魔物・・・魔物から魔核を取り出し人間の核と融合させその力を引き出せるようにしたもの


その魔物を創造したのはどこかのサキュバスだ


となるとサキュバスの力を持つ俺はコイツらの力の元である魔物の創造主って事になるのかな?・・・厳密に言うと俺が創造した魔物じゃないけどまあ細かい事は気にしない・・・要は創造出来るか出来ないかで創造出来るから俺が創造したも同じって事にしよう


んな訳でコイツらにとって俺は・・・


「創造主に逆らうとどうなるか・・・その身をもって知れ・・・サラマンダーにノームよ──────」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ