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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
553/856

549階 雑用係の反乱

「・・・ケン・・・殴っていいか?」


「殺す気か?」


ギルドを出るなり笑顔で無茶なことを言うロウハー・・・断られると次に俺を見た


「む、無理に決まってるだろ!?いきなり何言ってやがる!」


「・・・」


どうやらフェルノとのやり取りで相当鬱憤が溜まったらしい・・・目がマジだ


「そんなにムカついたんなら暴れりゃ良かったのに・・・お前ならあそこにいた連中くらい瞬殺だろ?」


え?そこまで強いのか?・・・いやいやフェルノより強いかもしれないがまさかそこまでは・・・


「さすがに瞬殺は無理だ・・・2秒くらいはくれ」


2秒で殺せるんかい!何?瞬殺の瞬って1秒って事なのか?てかさすがに冗談・・・だよな?


「はいはい・・・で?どうすんだ?アイツの言う通りに動いてその間に情報を集めるのか?」


「少し気になる事があるからな・・・面倒だがそうしようと思う」


「気になる事?」


「ああ・・・なあエドバン」


「お、おう!」


急にこっちに振るもんだから動揺してしまった・・・まだあのギルドで頭を下げている時に見せた顔が忘れられない


・・・とりあえず怒らせないように気を付けるしかねえ


「ギルドにいた連中は全員ギフト持ちか?」


「お、おう・・・その通りだぜ!」


「?・・・変な奴・・・まあいいや。やっぱりそうか・・・となると・・・ふむ・・・エドバン」


「お、おう?」


「また教えてもらいたい事がある──────」





宿に戻ってからまた質問攻め・・・しかも『人気の職業ベスト10を教えろ』って・・・なんだそりゃ


一応答えたけど何が知りたいのかさっぱりだ


そして・・・そんな訳の分からない奴らと共に地獄の日々を過ごした


来る日も来る日も雑用三昧の日々・・・よくまあキレないもんだ俺は別に構わねえが2人はコイツらより強い可能性があるのに言われるがまま雑用をこなしていた


ロウハーなんざギルドから帰って来ると妖怪『殴らせろ』になるくらいストレスを溜めてやがるし・・・ならさっさと殴りたい奴を殴れってんだ


てか・・・そこまでして何の情報を得たいんだ?


いや詮索しちゃならねえ!絶対にマズイ事に巻き込まれるに決まってる


ここは情報収集とやらに協力してさっさとどっかに行ってもらおう。何か問題が起きて取り返しのつかない事になる前に・・・


「なに?ダージスクの奴らがやられた?」


フェルノが何やらきな臭い報告を受けていた


ダージスクって言えば隣街・・・っ!?


朝一番のギルド内の雑用を終えたロウハーがどこから取り出したのかコーヒーカップを傾け口からドバドバと吐き出していた


「おい雑用!せっかく掃除したのに汚してんじゃねえよ!」


掃除したのは俺達だ・・・いや、そんな事はどうでもいい。これは・・・絶対に何かある


「・・・で?やりやがった奴らは?」


「へえ・・・聞いたところによると奇妙な2人組でして・・・老人と執事みたいな格好をした奴みたいです」


老人と執事?そりゃまた確かに奇妙な組み合わせ・・・っ!!?


また吐き出している・・・今度は滝のように


「てめえまた・・・つーか誰がコーヒーなんて飲んでいいと言った!?雑用のクセに生意気・・・」


「少し黙ってろザード・・・・・・俺は今からちぃと出掛ける・・・その間はザード、お前にここを任せる。緊急性のある依頼以外は俺が戻るまで受けるな。それと・・・」


フェルノは出口に向かって歩き出しすれ違いざまにザードの肩に手をポンと乗せて呟いた


何を呟いたか聞こえなかったが聞いた瞬間のザードは不気味に笑い視線は俺達に向けていた


最悪だ・・・ここを仕切るフェルノはまだ分別がついていた。雑用をやらされていたとは言え無茶は言ってきていない・・・精々掃除やパシリくらいのもの・・・けどザード・・・コイツはギフトの有無やどんなギフトかを見極める為に新たにギルドに来た冒険者に喧嘩をふっかける役を自ら買って出ているような奴・・・その理由が人を痛めつけるのが好きだからっていう根っからの狂人だ・・・コイツがここを仕切るとなると俺らは・・・



フェルノは何人かを引連れてどこかへと行ってしまった


残った冒険者達はどいつもこいつもタチの悪そうな顔をしてやがる


ザードはフェルノの定位置に座り足をテーブルの上に乗せなふんぞり返りながら俺らをニヤニヤと見つめる


すぐに仕掛けて来ないのはフェルノが離れるのを待っているのか?


「・・・そうビクビクするなよエドバン・・・フェルノから『殺すなよ』と言われてんだ・・・殺しゃしねーよ」


最悪だ・・・つまり殺さなきゃ何してもいいって事だろ?くそっ・・・フェルノの奴『手を出すな』くらい言えってんだ


「さて・・・何をするか考えていたんだがどれも面白そうでひとつに決め切れねえ・・・だから選ばせてやるよ・・・『裸で氷の上でダンス』か『3人で殴り合う』か『真っ裸で街中をダッシュ』・・・どれがいい?」


二つ目俺の死亡確定じゃねえか・・・いやギフトを隠してるんだワンチャン・・・


「・・・どれもいいですね・・・全部やりましょう」


うぉい!ロウハーお前・・・


「なに?全部って・・・」


「やはり殺すなってだけじゃダメだったか・・・もう少し具体的に・・・いや、動きがなかったからこれはこれで正解か・・・もしかしたら殺してないかもしれないし・・・」


ザードを無視してブツブツ言うロウハー・・・何か物騒な言葉が並べられているが・・・もしかしてダージスクの街の奴らをやったのって・・・


「おい!なに1人でボソボソと・・・全部るって言うなら全員脱げ!自分から選ぶって事は余程自信があるようだな・・・見せてみろよ・・・お前らの粗チンをよぅ」


ケタケタ笑う周りの連中・・・冗談じゃねえ!女もいるし受付嬢だって・・・って、興味深そうにこっちを凝視してんじゃねえよ!


「ああ・・・分かった」


()()()()だあ?てめえ誰に口聞いてんだ!」


「お前にだよ・・・しばらく大人しくしておこうと思ったけど予定が変わった・・・とりあえずここに残った連中は・・・ぶっ飛ばす」


「・・・はあ?お前フェルノがいなくなったからって調子に乗ってんのか?無能が有能に?・・・お前笑えねえよ・・・冗談で済まされねえぞコラ」


「冗談じゃない・・・ケン、ザードはくれてやる」


「ありがとよ・・・あの時転ばされてムカついてたんだ・・・本当殺気を消す訓練していて良かったぜ・・・お陰でバレずに済んだからな」


ふ、2人共やる気だ・・・フェルノが何人か連れて行ったとはいえギルドにはまだ20人以上の冒険者が居る・・・しかも全員ギフト持ちだ


どっちが勝つか・・・そんなの決まってる


フェルノが居ない今・・・いや居たとしても2人がやられるビジョンが浮かばねえ・・・たとえ20人以上居たとしても・・・全員ギフト持ちだとしても・・・


勝つのはロウハー達だ──────




「・・・マジかよ・・・」


結果は予想通り・・・いや予想以上だった


嬉々としてザードの前に躍り出たケン・・・ザードもそれを受けて立ち2人の戦いが始まった


ザードのギフトは『あらゆる体液を氷に変える』というもの・・・唾はおろか汗や血も・・・おそらくだが小便も・・・かかった場所一面を氷に変えちまう


当然体にかかればその部分が凍りつく・・・使い方次第じゃかなり強いギフトに思えた


もちろん使い方なんざギフトの所持者が知らないはずはない・・・すぐさま出せて遠くに飛ばせる体液って言ったら・・・


『血』だ


ザードは慣れた手つきで指先をナイフで切り血を出すと手を振りケンに血を浴びせた


ケンも警戒して距離を取っていたが血はいとも簡単にケンの元へと飛んで行く。それを受けたケンの腕は瞬く間に凍りつき腕は使用不可能に・・・本来ならそこで決着が着きそうなものだが相手が悪かった・・・ケンのギフトは既に発動していたのだから・・・


ザードも注意深く見てれば気付いていたはずだ・・・ケンの背後に三本の短剣が浮いており剣先がザードに向いている事に


ケンは凍りついた腕を見て舌打ちした後に三本の短剣を操りザードに向けて放った


短剣に気付いてなかったザードは突然飛んで来た短剣に為す術なく両足と右腕を刺され呆気なく倒されてしまう。急所を狙わなかったのは恩情かと思ったが・・・


『裸は勘弁してやる・・・踊れ』


そう言ってケンは突き刺した短剣をそのままの状態で操り始めた


自分の意思とは関係なく動く手足・・・動く度に傷口が痛むのかザードは悲鳴をあげながら踊っていた・・・いや踊らされていた


見ているこっちも痛くなるような光景・・・死の舞踏はロウハーが残りの全員を倒すまで続けられた



ロウハーの方は・・・もう言うまでもない


今更ながら俺はこんな奴に喧嘩を売ったのかと後悔した


20人以上を相手にあのギフトを使わずに鼻歌交じりで倒していく・・・ギフト頼りの冒険者の戦いばかり見ていたからその光景はかなり新鮮だった


何人かはいいギフトを持っていたが関係ないと言わんばかりに容易に躱し気絶させていく・・・さすがに女には手を出していないが気付けば野郎共は全員床に転がっていた


強いなんてもんじゃねえ・・・化け物だ


これでギフトを使ったらと考えると・・・ゾッとしねえ


これが・・・ロウハーとケンの・・・実力──────




「て・・・てめえら・・・よくも・・・」


立っているのはガタガタと震える女共と死の舞踏を続けるザードのみ・・・そのザードがようやく周りの連中が倒された事に気付くとケン・・・そして近付いて来たロウハーを睨みつけ呟く


「俺達にやらせようとしていた事だろ?踊らせて殴り合いさせて・・・後は街中を裸で走らせるだっけか?それは勘弁してやろう」


「・・・それはありがてぇ・・・な!」


ザードは不用意に近付くロウハーに向けて刺された傷口から流れ出る血を自由の効く左手で拭うとそのままロウハーに向けて払った


その血はロウハーの頬にかかるとザードはニヤリと笑う


「この短剣を抜け!さもないとコイツの顔は凍りつき窒息するぞ!」


ケンが操る短剣は抜こうとしても抜けないのかザードは脅して抜かせようとする・・・が、ロウハーはそんな事お構いなしにザードに更に近付き・・・


「やれるものならやってみろ・・・氷の彫刻になるのも悪くない」


「っ!・・・てめえ・・・やらねえと思ったら大間違いだ!まずはてめえから氷漬けにしてやる!!」


マズイ!このままじゃ頬に着いた血から凍りつきロウハーは息が出来なくなり窒息しちまう!・・・ってあれ?


「な・・・何故だ!?何故凍りつかれねえ!?」


ザードが驚くのも無理はない・・・さっきケンの腕を凍らせたのと同じようにロウハーの顔も血を中心に凍りつくはずだった・・・なのにロウハーの顔は凍りつくどころか霜も付いちゃいねえ


「それは俺がギフトの贈り主を知っているからだ」


「ギフトの・・・贈り主?」


「まあそんな事はどうでもいい・・・フェルノが戻って来るまでの間、知ってる事を洗いざらい喋ってもらおうか。それと・・・しっかり調教しないとな」


お、贈り主って言葉も気になるが今のロウハーの顔・・・怖過ぎだろ


調教という言葉とあの顔が相まってザードや倒れて起き上がろうとしていた奴らがカタカタと震え出す


こういうのをなんて言うんだっけか・・・・・・ああ、そうそうこういうのを


絶望


って言うんだろうな──────

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