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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
549/856

545階 フェルカトの冒険者

フェルカトの街の冒険者ギルドにやって来た


どうしても冒険者ギルドは緊張する・・・初めて訪れるギルドだと特に


その理由は・・・


「おっほー見てる見てる・・・なんだか懐かしいねぇこの感じ」


ギルドの中には多くの冒険者達がいた


その冒険者達は俺達が入って来た瞬間に会話をやめ品定めするようにジッと見慣れない俺達2人を見つめる


ケンは慣れた感じだけど・・・やっぱりこの雰囲気はいつまで経っても慣れないな


「よぉボクちゃん達は誰かを探しにでも来たのか?残念ながらボクちゃんのママはここには居ないぜ?」


もはや定番とも言うべき初顔イジリ・・・ここで下手に出れば今後俺達は雑魚扱いされ立場は下に・・・


だからここはガツンといきたいところだけど今回は我慢だ。ここは王都の鼻の先・・・目立てば王都にいる奴らにバレるかもしれない。なので目立たないようにするには・・・


「あ、あなたには関係ないだろ・・・・ど、どいてくれ」


絡まれた新人冒険者は立ち塞がる先輩冒険者に目を合わせずどもりながら迂回してやり過ごす・・・こうすれば目立たず先輩冒険者を刺激せず目立たない・・・まあ雑魚扱いされるのは癪だがここは致し方ない


「なんだコラ」


ケーン!


目立つなと言ったのに立ち塞がる先輩冒険者にイキるケン


いやそりゃケンはもはや中堅冒険者であり実力もある


だから格下と思われる先輩冒険者にキレるのも・・・え!?


振り返るとまさかの展開・・・立ち塞がっていた先輩冒険者は立ったままでケンは・・・倒れていた


振り返るまでの間に何があったんだ?争った気配はなかった・・・それなのになんで・・・


「て、てめえ・・・ぬぁっ!?」


立ち上がろうとしたケンがまたすっ転ぶ


先輩冒険者は特に何かしているようには見えなかったし感じなかった・・・一体何が起きているんだ?


「相棒のようにコソコソ生きればいいものを・・・」


あ、ヤバい


立ち上がれないケンに向けて殺気を放ってやがる


どうする・・・始末するか?でも果てしなく目立つよな・・・クソッ


「すみません!田舎から出て来て礼儀を知らなくて・・・俺から言っておきますから今日のところは勘弁して下さい!」


とりあえず謝り倒しこれでも殺気を収めなきゃ仕方ない・・・大乱闘になりそうだけどケンを殺させる訳にはいかないしやるしかない


「・・・フン!よく出来た相棒だ・・・今度から気を付けろよ?雑魚が」


褒められたみたいだけど全く嬉しくないし雑魚呼ばわれしてキレそうだがここは我慢だ・・・この怒りは・・・後でケンにぶつけよう


先輩冒険者は鼻を鳴らすと気が済んだのか元いた場所に戻って行き野次馬達もそれに合わせて興味を失ったのか何事も無かったように会話を再開し始める


どうやらここにいる連中にとっては特に珍しい光景でもなかったらしい・・・ただ新人冒険者が先輩冒険者に洗礼を受けた・・・ただそれだけ


「大丈夫か?ケン」


「・・・大丈夫だロウ・・・ハー」


答えながら床を触り頭を傾げるケン。さっき転んでいたのは床に何か仕掛けられたのかさすったり叩いたりしている


「何してるんだ?」


「・・・床がまるで氷みたいにツルツル滑って・・・おかしいな・・・俺の足の裏か?・・・いや、手をついた時も滑ったからやっぱり床が・・・でも・・・」


「床が突然そんなに滑るようになったり滑らなくなったりしないだろ?何言ってんだ?」


「いや本当なんだって!アイツが俺の足元に唾を吐きかけた後急に・・・」


唾?アイツの唾がよく滑るって言うのか?そんな事・・・


〘・・・ありえない〙


ですよね・・・ってダンコ?


突然呟いたダンコの声は震えているように聞こえた


『ありえない』その言葉が意味するものは何なのか・・・気になった俺は冒険者ギルドからケンを連れ出し一旦宿へと戻った──────




宿に着いた俺はダンコに問い質す


何が『ありえない』のかを



〘・・・あの人間は恐らく唾を床にかけてその周囲を凍らせたのよ〙


〘なんだそんな事か・・・珍しい魔法だな〙


〘魔法じゃない・・・ある魔物が持っている能力よ〙


〘へえ・・・まさか実はアイツがその魔物って事?〙


〘違う・・・あれは人間よ・・・だからありえないの〙


〘え?〙


〘その魔物は生殖機能を持っていない・・・つまり人間がその魔物の能力を持つ事はありえないの〙


〘・・・ダンジョンを出て進化したんじゃないの?〙


〘それはないわ。もし仮にそうだったとしてもありえないのよ・・・〙


〘なんで?〙


〘進化の目的はなに?〙


〘進化の目的?・・・ダンジョンから離れたら減る一方だから増やせるもしくは存続させる為に・・・〙


〘そう・・・だから生殖機能を進化して得たとしてもありえないのよ・・・もし生殖機能を得て人間と交わったとしても目的は種の存続・・・産まれてくるのは魔物の形をしていないと意味ないでしょ?〙


・・・あ


〘たとえ人間の女を使ったとしても産まれてくるのは魔物として・・・それなら種の存続となるけど人間の姿をして能力だけを与えるなんて意味がないの・・・だからそんな進化はしないはず〙


〘けど魔族の力を持った人間はいるだろ?〙


〘人間が魔族の能力を一部継承する・・・それは人間側の進化によるものよ。魔族や魔物に対抗する力を得る為にね。進化の目的は増やすか存続させる為と自分で言ったでしょ?不老不死であった魔族には必要なかったのよ・・・進化は〙


確かに不老不死なら必要ないわな・・・魔族の力を得られたのは人間側の進化、か・・・で、魔物の進化はあくまで魔物に対してのもの・・・人間に力を与える進化はありえないか


〘じゃあ人間が進化したとか?魔物の力を得られるように・・・〙


〘それならこの地には魔物の力を持った人間で溢れているでしょうね・・・この国だけではなく〙


〘・・・それもそうだな。この国だけの人間が進化するなんて少し考えにくい・・・となると・・・うん?じゃあなぜアイツは・・・〙


〘だから『ありえない』と言ったのよ。魔物の力を得るなんて普通ならありえない。普通ならね〙


〘なんだもう分かっているような言い方だな〙


〘ええ恐らくだけどね〙


〘ふーん・・・で、聡明なダンコさんのその『恐らく』は?〙


〘・・・付与〙


〘付与?それって俺が武器にするとかのあれ?〙


〘そうよ。どうやってか知らないけどどっかの誰かが人間に魔物の力を付与した・・・そうとしか考えられないの──────〙




宿屋に帰ってから聞いたダンコの話には衝撃を受けた


『人間に魔物の力を付与する』


それがどんな事か最初はピンと来なかったが考えれば考えるほど怖くなって来た


人間に付与するのは道具に付与するのと訳が違う・・・ダンコすら付与した人間にどんな影響があるか分からないと言うのだから


恐らくだが人間の体内にある魔力をマナに変える為の核に付与しているとダンコは言う


俺も魔道具技師として何個も魔道具を作っているから分かる・・・あれは生きたモノにしていいものでは無いことを


何せ付与に失敗すれば付与先は壊れてしまうのだから・・・つまり付与先・・・人間の核が壊れれば当然・・・


ゾッとした


壊れるかもしれないと知ってか知らずか分からないが、付与する者も付与される者も狂ってる


いや付与される者は知らない可能性が高い


だが付与する者は知っているはずだ・・・付与に失敗し壊れる人間を何度も見ているはずだから・・・


農(能)王国とはよく言ったもんだ・・・もしこれが国の主導で行われていたとしたらと思うと・・・ハア・・・


「・・・おい・・・人を呼び付けといて何をするかと思えば黙りこくってしかもため息だ?・・・ふざけてんのか?」


「・・・お前は気楽でいいな・・・ハア・・・」


「てめえ!・・・っ!?」


ドンと壁が鳴る


どうやらお隣はご立腹のようだ


「・・・誰が気楽だコノヤロウ・・・」


「気楽だろ?目立たないようにって言ってたのにいきなり喧嘩し始めるくらいには」


「うっ・・・だってよぉ・・・あんまりにも舐めた態度でいやがるから・・・」


「冒険者ギルドお決まりの新人いびりだろ?それくらい何度も経験してんじゃないのか?」


「してるさ・・・けど俺はもう新人じゃねえ」


「ここでは新人だろ?」


「それはそうだけど・・・最近は初めて行くギルドでも絡まれなくなった・・・絡まれたのはお前がオドオドしてっからだ」


「・・・そりゃどうも。つまり俺の演技はばっちしだったって訳だ」


「チッ・・・ああ言えばこう言う・・・以前は可愛い門番だったが変わっちまったな」


誰が可愛い門番だ。門番としてはそんな絡みないし!


「それで?これからどうするんだ?俺は演技の上手いお前と違って演技なんて出来ねえぞ?またアイツが絡んで来たら・・・」


「すっ転ぶ?」


「てっ・・・てめえ・・・」


一応声のトーンは気にしているみたいだな・・・もう遅いと思うけど


「演技が出来ないなら仕方ない・・・別のやり方でいこう」


「別のやり方?それって・・・」


「何度言や分かるんだこの野郎!話をするなら外でしろ!寝れねえじゃねえか!」


部屋のドアがけたたましく開かれたと思ったら冒険者らしき男が怒鳴り込んで来た。どんだけ薄いんだこの宿屋の壁は


「わ、わりぃ・・・おいロウ・・・ハー、外で話すぞ」


「いやここでいい」


「はぁ?お前何言って・・・っ!」


ここで話してればいずれ怒鳴り込んで来るとは思ってたけど意外と早かったな・・・相手が短期なやつで良かったよ


しかもおあつらえ向きに冒険者っぽいし


「・・・いい度胸だ・・・俺様が誰だか骨の髄まで教え込まねえと分からねえみたいだな・・・」


「知る訳ないだろ?」


「あ?んだとてめぇ・・・」


「知ってるのは隣の客って事と・・・情報提供者って事くらいだ」


「・・・は?情報提供者?」


「{跪け}」


「っ!?」「???」


言霊を発すると怒鳴り込んでいた冒険者とケンが跪く・・・範囲間違えた・・・まっいっか


とりあえず冒険者ギルドで得ようとしていた情報・・・少しでもこの宿屋住まいの冒険者から得てみようか


「とりあえず知ってる事を話してもらおうか・・・骨の髄まで教えてくれるんだろ?」


「~~~!!・・・て、てめえは一体・・・」


「質問するのは俺だ。お前は俺の質問にだけ答えろ・・・生きてこの宿を出たければな」


殺す気は全くない・・・けど素直に話してもらう為に脅しておく


動けない相手にたっぷりと濃密な殺気を込めて


すると冒険者風の男は跪いたまま顔を引き攣らせ、ケンは顔を青ざめさせる


「さて・・・じゃあ名前から聞こうか──────」

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