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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
三部
544/856

540階 三大魔族

「お、親子喧嘩ぁ!?緊迫している場面でいきなりほのぼの話ぶっ込んで来んじゃねえ!」


「ワグナ国王もするでしょ?ギリスと」


「おうしょっちゅうだ・・・ってそうじゃねえ!」


「そんなもんですよ事の発端なんて・・・まあただの親子喧嘩とは訳が違いますが・・・」


「それは違うでしょうけど・・・にわかに信じられません・・・人間が魔族に創られたなんて・・・」


「まあそうでしょうね。私も聞いた時は信じられなかった・・・けど創れるのは事実です。魔物が創れるのに人間は創れない道理はないでしょう?」


「それはそうですが・・・ではなぜ魔王インキュバスは人間を?わざわざ敵対するものを創ったのですか?」


「・・・魔族にとって必要なものは?」


「?・・・魔力・・・ですか?・・・っ!そんな・・・」


「フレシア国王の想像通りですよ。インキュバスが人間を創造したのは魔力確保の為・・・言わば人間は魔族にとって家畜のようなものです」


「っ!!おいコラロウニ!そらゃいくらなんでも・・・」


「人間は高尚な生き物と言いたいのですか?魔族と同等・・・いやそれ以上の存在ですと?残念ながら現実は違います・・・ダンジョンが魔力を溜める装置だとしたら人間は魔力発生装置・・・初めはその為に創られたものなのです──────」




ダンコに聞いた話を皆に話す


それは世界の最初の話


『創造』のインキュバス


『再生』のウロボロス


そして『破壊』のアバドン


初めはこの3人の魔族しか存在しなかった


そこに存在するだけの存在・・・初めはそんな感じだったらしい


なぜなら何をするにも魔力が必要・・・つまりインキュバスが魔力を『創造』するのも魔力が必要になるからだ


だから何も出来ず存在するのみ・・・けどインキュバスはある時考えた


魔力を生み出すものを『創造』すれば世界に魔力が溢れ存在するだけの存在から抜け出せるのでは?と



「・・・それが人間・・・」


「そういう事です。ですが最初は難航したみたいですよ?人間が魔力を生み出すにはどういう風に創ればいいか試行錯誤し、魔力を生み出しインキュバスが『創造』せずとも自ら増やす事の出来る人間がようやく完成した・・・」


「解せねぇな・・・もし本当に俺ら人間が魔力を発生する装置ってやつならもう少し魔族に都合よく創れば良かったんじゃねえか?それこそ物言わぬ木みたいによぉ」


「初めはそうだったかもしれません。しかし魔力を発生させるには負の感情が必要・・・物言わぬそこに存在するだけの人間が負の感情である魔力を発生出来ればそれで良かった・・・けどそれでは魔力が発生しない為に今の人間になったのです──────」




人間に魔力を発生させるには負の感情を持たせなければならない。負の感情を持たせるにはどうすればいいか・・・答えは単純・・・反対の感情も持たせればいいだけ


負の感情の逆・・・つまり正の感情を持たせる事により負の感情を持たせる事に成功したインキュバスは『創造』で増やすよりも自ら増やす事が出来る存在へと創り変えた・・・それが今の人間の原型だ


順調に人間は増え続け魔力を供給し続けた・・・問題もあったがインキュバスはその度に解決し軌道に乗ったところである問題が発生した


『破壊』のアバドン・・・魔力不足で活動出来なかった奴が人間が生み出す魔力によって活動できるようになったのだ


『破壊』のアバドンの能力はその名の通り破壊・・・奴はインキュバスが創った人間を破壊し続けた


もちろんインキュバスも黙って自分の創ったものを破壊されるのを見ていただけではない。人間を破壊から守る為に自ら戦ったり仲間を創ったりして必死に抵抗した・・・が、『破壊』のアバドンには及ばなかった


『破壊』と『創造』の戦いは『破壊』に軍配が上がる・・・が、そこに『再生』が加わる事に・・・


『再生』のウロボロス・・・ウロボロスは『破壊』された人間やインキュバスが創った俗に言う魔族を『再生』させる


そんな事を繰り返しているとやがて魔力は枯渇しアバドンは活動を停止せざるを得なくなった


けどまた人間が魔力を生み出すとアバドンが活動を再開・・・また『破壊』が始まる



『創造』と『破壊』と『再生』・・・三つ巴の戦いが繰り返されていた──────





「ハア・・・その話はどこで?」


「記憶です。インキュバスが創ったサキュバスの・・・だから間違いはありません」


「なぜ記録にねえんだ?俺は本は読まねえがそう言うのを記すもんがひとつくらいあってもおかしくねえだろ?」


「『破壊』されたら何も残りませんので・・・今の人類が残した歴史は一番最後にアバドンが活動した時までしか遡れません。なぜならアバドンが活動すれば人間は滅亡してしまいますから・・・」


「滅亡・・・人間が存在しなくなれば歴史を記す者も存在しない・・・過去に歴史は途絶えていた?」


「そういう事です。一度ならず何度も人間の歴史は途絶えています。その度に『創造』されて来た・・・ただそれだけです」


「『それだけ』って・・・頭が痛くなる話を簡単に言ってくれるなぁ」


「事実ですから」


そうこれは実際に起こった事実・・・この世界の史実だ


「んで?なぜ人間は創造主であるインキュバスと戦ってんだ?アバドンじゃなくインキュバスと戦う理由は?」


そう・・・なぜ『創造』のインキュバスが人間を創造したと考えにくいのか・・・それはインキュバスが魔王だからだ


人間の天敵である魔王・・・その魔王が理由はどうあれ人間を創造したなんて思いもよらなかっただろう


人間と魔王・・・いや、人間とインキュバス・・・創られしものと創りしものが争うことになったのは些細なきっかけだった


創った初期の人間は非常に脆い存在だった。だがインキュバスにとって人間は所詮消耗品・・・脆くても創って増やせばいいだけの消耗品だった為に気にもしていなかった


「ちょっといいか?脆いと分かっててそのままにした理由はなんだ?頑丈にしない理由は?」


「それはもちろん魔力を生み出す為に創り出されたのが人間です・・・頑丈になればなるほど負の感情・・・つまり魔力は生まれにくくなる。皆が皆ワグナ国王みたいに頑丈だったら負の感情はどうなります?」


「俺みたいに?・・・なるほど・・・分かってんじゃねえか」


・・・なぜ嬉しそうにする。負の感情を生み出させる為にわざと弱く創られたって話なのに・・・


「・・・話を戻します。人間は脆い存在だった・・・そしてある現象が起きた事により人間を変えざるを得なかった・・・」


「ある現象?」


「・・・『魔蝕』です」


「魔蝕・・・人を魔人化させるあの・・・」


「ええ。魔蝕は人間の体を魔力が侵食し体を強化する代わりに自我を崩壊させる病気・・・その病気が蔓延し始めたのです。それによりインキュバスは人間に核を付け足しました。魔力を人体に影響のない力に変える核・・・その力はマナと呼ばれています」


「順序がおかしくねえか?それまで核がなかったってことだろ?なら鬼化・・・魔人化はなぜそれまで起こらなかったんだ?」


「人類が『創造』ではなく『再生』されたからと考えられます。初めは人体に影響を及ぼす事はなかった魔力・・・ですが『再生』され人類はゼロからのスタートではなく一からのスタートとなったから・・・」


「???・・・アーキドの」


「恐らくだけどインキュバスが創った人間は魔力は生み出すけどその体は魔力に馴染まなかったんじゃないかな?馴染む頃にはアバドンに滅ぼされていた・・・けど『再生』のウロボロスが参戦し人間は絶滅したくなった・・・それまでゼロになっていたのがゼロにならなくなり人間は子孫を残していく・・・その中で人間は魔力がある生活に慣れて来て体に馴染むようになり魔人化が起きるようになった・・・かな?」


「その通りです」


「ううっ・・・頭痛がしてきやがった・・・で?話を戻すと核が取り付けられて人間は魔蝕から解放されて晴れてまた魔力発生装置に逆戻りしたんだろ?何の問題があるってんだ?」


「分かりませんか?人間は期せずして手に入れたのです・・・魔族に対抗する術を」


「・・・マナか」


「はい。魔力から人間を守る為にした事が人間に戦う力を与える事になってしまったのです・・・ただ魔力を生み出す存在が・・・家畜だった人間が・・・反旗を翻したのです・・・創造主に対して──────」




もちろん初めはインキュバス率いる魔族側の圧勝だった


しかし魔族側には弱点がある・・・人間を絶滅させる事が出来ないという弱点が


だから人間はいつの日か勝つ為に少しずつだけど力をつけていた・・・今勝てなくてもいずれ・・・その思いで身に付けた技を継承し徐々に力を増していった


それでも人間は勝てなかった


だがある人物が人間側についた事で状況が一変する


『再生』のウロボロスだ


『創造』のインキュバスと魔族VS『再生』のウロボロスと人間


この戦いは長きに渡って続きとうとう人間側が勝利する


その時に輪廻が・・・正確には輪廻転生が発生した


「・・・輪廻転生・・・」


「はい。人間の中から魔王を倒せる者・・・勇者が誕生しその勇者と魔王インキュバスの間に輪廻が生まれた。魔力とマナがぶつかり合い強大な力が発生しそれを『再生』のウロボロスが利用したのです・・・人間と魔族はその輪廻に巻き込まれ繰り返す事に・・・それがこれまでの勇者と魔王の物語・・・」


「なぜウロボロスは輪廻を?何か目的があるのですか?」


「そこまでは・・・今話している内容は全てサキュバスの記憶です。ウロボロスが何をしたかは何を考えているかまでは・・・」


「そうですか・・・先程ダンジョンは魔力を溜める装置と言ってましたが輪廻で復活出来るならダンジョンは必要ないのでは?」


「輪廻転生でもインキュバスだけは復活させる事は出来ないのです。いえ恐らくウロボロスそしてアバドンも・・・」


ダンコが言うにはその3人の魔族は同等なのだとか。インキュバスが創れるのも同等以下の魔族・・・それはウロボロスも同じ・・・輪廻の中心であろうとインキュバスは復活させる事は出来なかった


しかし完全に復活させる事は出来なくとも魂と呼ばれる土台は転生させる事に成功したらしい。けどそのままでは復活出来ない・・・復活させるには膨大な魔力が必要なのだとか


だからインキュバスの分身とも言えるサキュバス達は必死に魔力を集めたのだ


「あー・・・話の半分も理解出来なかったが」


おい


「とりあえずなぜその話を俺らに?正直知らない方がいい話ってのもあるもんだ・・・知ってもクソの役にも立ちはしねえしな。それにもし理由があって話したんならファミリシアも居た方が良かったんじゃねえか?まさかまた集めて同じ話をするって言わねよな?」


「クソ忙しいワグナ国王にそんな事は言いませんよ」


「・・・なら個人的に話すのか?それとも・・・」


「ファミリシア王国はどこまで知ってるか知りませんが少なくともウロボロス・・・そしてアバドンの事を知っています」


「っ!?なんだと?」


「皆様は名前すら聞いた事がなかったはずです。歴史にも記されていませんし・・・ですがファミリシア王国は知っています・・・全国民とまでは言いませんが王族や貴族の一部は知っていると見ています」


アイツがどの立ち位置にいたか知らないがアイツが知っているって事はかなりの人数が知っていると思って間違いないだろうな


アイツ・・・オロチことエメンケ


ベルはこっそり教えてくれた



『あの人間はアバドンとウロボロスを知っている』と



どうやってそれを調べたかまでは聞かなかったけどダンコ曰く『頭の中を見た』らしい・・・怖いぞベル


名前を知っているから何なんだと思っていたけどダンコ曰く2人の名前は魔族の間でもほとんど口にしないらしい。ましてや人間が知る事などありえないのだとか・・・アバドンは分かる・・・奴が復活すれば人間は滅ぼされてしまうし後世に残しようがないから・・・けどウロボロスは知られてもおかしくないのでは?そう思っていたが・・・


正直この話を聞いた時は驚いた・・・人間側についたとは言えまさかそんな表立って魔王と勇者の戦いに参加していたとは・・・


ウロボロスは人間側につき勇者パーティーに参加していた・・・セーレンに名乗って


つまりだ・・・セーレン教ってそういう事だよな?


魔族を信仰していたと知ったら・・・セシーヌ卒倒しそう


・・・でもまあ人間の味方だし良いのかな?


ともかく人間側についたウロボロスは偽名を使っていた。なのでウロボロスという名前を知る由もないはずだ


それを知っているって事はウロボロス自身が名乗りファミリシア王国に近付いた可能性が高い・・・そこでアバドンの名前を知ったのかも


ウロボロスと名乗りファミリシア王国に近付いた理由・・・アバドンの名前まで出したとなると考えられるのは・・・


「で?知ってたら何なんだ?」


「・・・ウロボロスはこれまで偽名を使い人間に味方していました。それが本名を名乗り近付きあまつさえアバドンの名前まで教えたと言う事は・・・」


「言う事は?」


「ウロボロスはファミリシア王国を使い復活させようとしているのかもしれません・・・アバドンを──────」

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