534階 ネコさん
ジーク達が魔王討伐に向かった後、ラナは一人宿屋で祈りを捧げていた
ジークの勝利を願って
本当は結界の傍で見届けたかった
城の中に入ってしまえば声など届かないと知っても声を張り上げ声援を送りたかった
しかしそれをエメンケ達に止められてしまう
ここは敵地
ジークが戦っている最中に魔族がラナ達を襲わないとも限らない。もしかしたらラナを人質にするかもしれない。そう言われて今回選ばれなかった仲間達がいる宿屋にて祈りを捧げる事しか出来なかった
ジーク達が結界を越えてから暫く経つ
もう決着はついたのだろうか。まだ戦っているのだろうか
ラナは目を閉じ手を合わせながら悪い結果はなるべく考えずただひたすらジークの無事を祈る
コンコン
ラナの部屋のドアが鳴る
ジークが帰って来た!そう思い勢いよく立ち上がるとドアに駆け寄り開け放つとそこにはジークではなくエメンケが立っていた
「あ・・・エメンケさんどうしました?」
「よぉ・・・ラナちゃんって処女?」
「え?・・・は?」
「いやぁ俺ってさお天気オバサンみたいな年増じゃなくて君みたいな若い方が好みなんだよな。穢れを知らないっていうの?花で言うと満開とかじゃなくてまだ開いてない蕾の状態の方が良いってタチでね。んで改めて聞くけど・・・処女?」
「ちょっと何を・・・あ、オルシアさん!エメンケさんを止めてください」
下卑た笑いを浮かべながら部屋に入って来るエメンケ
ラナは後退りながらエメンケの背後にいるオルシアに気付き助けを求める
「さん?オルシア様と呼べ下賎の者のくせに。それにしてもこのような貧相の体のどこがいいか分からんな・・・まだ子供じゃないか」
「分かってないな・・・そこがいいんだよ・・・まあ将軍は興味があっても抱けないだろうけどな。抱いたら裂けちまうから・・・死んだら元も子もないだろ?」
2人の会話は確かに耳に入ってはいたものの理解出来ず混乱していると突然首が締まり体が宙に浮く
「きゃ・・・く・・・」
「おい・・・殺すなよ」
「分かってるって・・・人質は生きてるからこそ価値がある・・・穴がどうなろうと生きてさえいればな」
「な・・・何を・・・」
見えない手で首を絞められ必死に足掻きながら尋ねるとエメンケはラナに顔を近付け頬を舐める
「ナニを、だよ!心配すんな!無数の手でイかせまくってやるよ!何せ俺の手は・・・『神の手』だからな」
ラナの体は宙に浮いたまま移動させられベッドへ
そのラナに服を脱ぎながら近付くエメンケ
オルシアは腕を組むながら溜息をつきドアにもたれかかった
「早く済ませろ・・・目的は貞操を奪う事じゃないからな」
「皆まで言うなって・・・くっくっ・・・でも楽しみだ。自分の女の処女が魔王と戦っている最中に奪われたと知ったらあのクソガキはどんな顔するのやら・・・もしかしたら人質の価値がなくなっちまうかもしれねえな・・・」
「かもしれんな。まあそうなれば殺すだけだ・・・魔王を倒し疲れ果てたガキなど殺すのなど容易い」
「・・・あなた達初めから・・・ジークを・・・」
「ようやく気付いたか?てかそれより今は自分の心配しな・・・大事に大事に守ってた処女膜が今から破られちまうんだからな・・・さっさとやらせてやればよかったものを・・・」
「っ!だ・・・んん!」
「おっと・・・ここにはまだ居残り組が居るんだから叫ぶなよ・・・喘ぎ声なら大歓迎だけどな」
見えない手で口を塞がれ声を封じられる
そしてエメンケは全ての服を脱ぎ去ると両手を広げ満面の笑みを浮かべた
「さあ始めようぜ!」
このままでは犯される・・・ようやく事態が呑み込めたラナは必死になって体を動かすがいつの間にか見えない手は体全体を押さえ付け身動きが取れない
ベッドに押し倒され体中におぞましい感覚が這い回ると服は破かれ下着を剥ぎ取られる
そして・・・
「ラナァ・・・ヒーラーだろ?治してくれよぉ・・・この腫れ上がっちまった一物をよぉ」
「チッ・・・飲み比べで負けなければこんな事・・・さっさと終わらせろ!戻って来るかもしれんだろう!」
「はいはい・・・あー、将軍の声で萎えちまったよ・・・仕方ねぇ・・・その可愛いお口で・・・・・・・・・ネコ?」
《信じられないくらい下品な生き物にゃ・・・私が食いちぎってやろうか?》
ラナのお腹にいつの間にか黒猫が座りエメンケを見て呆れていた
「い、いつの間に入った!?・・・いや、そもそも・・・喋る猫!?」
《下品な人間の相手はしたくないけど・・・仕方ないにゃ。どう?私と一戦交える?》
そう言うと黒猫は瞬く間に女性に姿を変えエメンケに近付く。そしてエメンケの顎をそっと指で撫でると顔を向けさせた
「・・・はっ、悪いな好みじゃねえ」
《あらそう?良かったわ・・・好みじゃなくて》
エメンケは目の前の女性に向けた『神の手』を繰り出す
無数の見えない手が拳となり女性に打ち込まれた
「誰だか知らねえがここは貸切だぜ?招かれざる客は帰んな!」
止むことを知らない『神の手』
エメンケは女性に不気味さを感じ必要以上に打ち続ける・・・が
《貸切・・・ねえ。ここは私の主の土地・・・だから私が立ち入ったらダメな場所など存在しない・・・にゃ》
無数の打撃の嵐からぬっと手が伸びエメンケの首を掴む
そして女性はエメンケを引き寄せるとブラブラと動くモノを反対の手で掴んだ
「おっ!?」
《あらごめんなさい・・・猫の習性で動いているのを見ると・・・握り潰したくなるのよね》
「そんな習性聞いた事・・・ちょ・・・まっ!・・・ぎゃあああああああああ!!」
エメンケは叫び女性に放り投げられた後、下半身を押さえながら転げ回る。その様子を見て初めてドア付近に立っていたオルシアが動いた
「・・・貴様何者だ」
《私?私はサキ・・・ただの飼い猫にゃ──────》
「ラナ・・・ラナ!!」
「ジーク!!」
感動の再会・・・なのか?
シーツをまとった少女を見て勇者は駆け寄ると熱い抱擁・・・なぜシーツ・・・
「サキ・・・助けた・・・んだよな?」
「あのシーツに付いた血は破瓜の血じゃないにゃ。襲おうとしていた人間の血にゃ」
「破瓜って・・・そもそもなんでシーツを纏ってるんだよ」
「確認してみればいいにゃ。見た事は全部サラに言うけどそれでも良ければだけどね」
「・・・シーツの中身がどうなってるか大体想像付いたよ・・・」
「襲われた!?誰に!!・・・まさか・・・」
「ジーク違うの!突然エメンケさんが・・・アイツが・・・」
「エメンケだって!?・・・あの野郎・・・よくも・・・」
怒りの矛先が俺達に向きそうになるもラナが勇者の袖を掴み真実を打ち明ける。てか怒りの度合いが城で戦ってる時と比べて段違いなんですけど・・・
「襲われそうになって・・・その時そこの猫さんが助けてくれて・・・」
「ネコさん?・・・そうか・・・礼を言うよネコさん!ラナを助けてくれてありがとう!」
「だって、ネコさん」
「鰹節で殴るわよ?」
それはやめて
とにかく間に合って良かった・・・ギリギリまで助けるなとは言っておいたけど本当にギリギリだな・・・もう少し前で助けろよったく・・・
「・・・エメンケは?・・・殺したのか?」
「どうなんだ?」
「怒りの矛先がないと収まりが悪いでしょ?ちゃんととってあるから心配しないで・・・まっ、一部もぎ取っちゃったけどね」
「何を?」
「ナニをよ」
「・・・玉は?」
「それ聞く必要ある?自分で確かめなさいよ・・・もう一人の大男と一緒に閉じ込めてるから」
もぎ取ったと聞いて玉がヒュンってなったからその玉ごと取ったのか気になったけど・・・見るのは勘弁だな
「もう一人の大男?」
「大男って言ったらオルシアだろ?リガルデル王国とファミリシア王国の十二傑が仲良く勇者の留守を狙って少女を襲ったってわけだ。人質に取るだけと思ってたらまさかねぇ・・・」
てっきり味方につけるつもりだと思ってたけど奴らの判断は『邪魔になりそうな奴には死を』って訳か。ラナを人質に勇者を殺す算段・・・確かにそれなら綺麗じゃなくてもいいわな
「・・・案内してくれ・・・二人の元に」
「どうするつもりだ?話を聞くつもりとか?」
「別に魔王・・・ロウニール達を疑っている訳じゃない。僕は世界中の人達の声よりラナの言葉を信用する・・・だから二人に聞くのは今の話が真実かどうかではなく『なぜラナを襲おうとしたのか』だ」
こりゃまた強烈なアプローチですこと・・・けどラナは顔を赤らめているが当の本人は全く気付いてないみたいだけど・・・
「頼むロウニール!」
「分かった分かった・・・で、1人か?それとも・・・」
俺が視線をラナに移すと勇者はラナの手をぎゅっと握り俺を真っ直ぐに見つめた
「もちろん2人で、だ!もう二度と1人にはしない!」
「・・・ジーク・・・」
・・・この野郎イチャイチャしやがって・・・誰のせいでサラとイチャイチャ出来ないと思ってんだ
「ハイハイ・・・なら2人共ついて来い」
事前にどこに閉じ込めておくかは指示しておいた
出口のない部屋・・・ダンジョンの中に特別に作った監禁部屋だ
腐っても十二傑だし逃げられたら堪らない・・・まあ見張りを立ててるから逃げようにも逃げられないとは思うけど・・・
俺はゲートを開き最初に入ると2人とサキもついて来た。俺が言うのもなんだがもう少し人を疑うってのを知った方がいいな2人共。これが罠だったらどうするんだって話だよ
「・・・エメンケ・・・オルシア・・・」
ゲートを通ると勇者が呟く
監禁部屋はそんなに広くない
ゲートを通ると部屋になっておりその部屋の一番奥に上から垂れた鎖で繋がれているエメンケとオルシアがすぐ目に留まる
てかアイツら・・・何やってんだ?
《おお!来たか!見てくれ魔王・・・じゃなくてロウニール様!最高傑作の出来上がりだ!》
《何が最高傑作だ・・・趣味の悪い》
《てめえバフォメット!お前だって嬉々として手伝ってただろう!?》
《嬉々?嫌々の間違いだろ?》
エメンケ達の前で揉めてるベリトとバフォメット
誰だこいつらを見張り役にしたのは?・・・俺か・・・
《チッ!まあいい・・・それよりも見てくれよロウニール様!ついさっき作り終えた最高傑作・・・その名も・・・『オロチ』》
「っ!・・・きゃ!」
自慢げにベリトが見せてきたのはエメンケの股間に生えた八本のアレ
何をどうやったらこうなった?確かサキがもいだはずだけど・・・
《あなた達!人がせっかくもいだのに増やしてどうすんのよ!》
《バッカお前サキュバスてめえ・・・男の象徴をもぎ取るんじゃねえよ!これはなぁ・・・言わば男の本体なんだよ・・・だからもぎ取られたコイツが可哀想で可哀想で・・・だからわざわざ落ちてたヤツを拾って来てバフォメットに付けてもらったんだよ・・・少しばかりパワーアップさせてな》
少し!?8倍が・・・少し!?
《これでコイツも目を覚ました時は感動してロウニール様に従います!とか言ってくんじゃねえか?》
いや要らんし
「『オロチ』・・・カッコイイ・・・」
「カッコ・・・ジーク!ジークがあんなんなったら絶交だからね!」
価値観の違い・・・ってレベルではないな・・・勇者の美的感覚を疑いたくなる
「・・・遊んでないでとっとと起こせ。勇者が聞きたい事があるんだとよ・・・そいつらに、な」
さてさてどんな反応を見せるのか・・・シラを切るか嘘をつくかそれとも・・・まあとにかく一旦勇者にこの場は任せよう
面白い話が聞けるといいけどな──────




