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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
533/856

529階 酔いどれカレン

パーティーはまだまだ続いていた


フラフラしていると色んな人が目につく


その中で食事にも手を付けず直立不動で突っ立っている男が一人


「腹減ってないのか?」


「っ!い、いえ!私が食べていいものかどうか・・・」


「残った理由を考えると飯が喉を通らないってか?シャス」


「・・・」


僕とサキとでゲートを使って各自の国へ帰すこと三万人・・・最後の方になると僕は疲れ果てサキはイライラが頂点に達していた


そんな時に兵士達が全て国に戻ったのを見届けたシャスがバウムを連れて僕の元へ


そして意外な言葉を僕に向けて発した


『私達は残ります・・・勇者パーティーの一員ですので』


その言葉を聞いた瞬間のサキは恐ろしかった


猫姿のままだったサキは『裏切り者』と言わんばかりに毛を逆立て殺気を放つ・・・それはもう狩りをする猛獣のようで・・・猫だけど


何とかサキをなだめて理由を聞くと勇者パーティーの法則と言うか暗黙の了解的なものがあるというのを聞いた


適性が被らず国も被らないようにする、というものだ


つまりはシャスの国・・・シャリファ王国からも一人選ばれる事になる


そこで疑問が生まれた・・・って事はフーリシア王国からも?という


フーリシア王国の中で選ばれるとしたら十二傑の二人・・・ディーンとキースが有力だ。タンカーのシャスならともかく近接アタッカーである二人のどちらかが勇者パーティーに入るとなるとやりづらいな・・・そう思っていたがシャスはまたもや意外な言葉を・・・



『勇者ジーク殿はフーリシア王国出身です』



頭の上で『?』がグルグルと回る


確か勇者はファミリシア王国出身のはず・・・そう聞いていたのになぜと首を傾げているとシャスは勇者出生の秘密を話してくれた


孤児と思われていた勇者に父親が現れた・・・その男はフーリシア王国から派遣されていた元聖者・・・そいつがフーリシア王国に一時帰還した際に教徒の女性と一夜を共にして出来た子供が勇者って訳だ。元聖者はそれを知らずにファミリシア王国に戻り女性は一人で勇者を出産し育てた後、何かしらの理由があり勇者の父親である元聖者を訪ねようとする・・・が、これまた何かしらの理由で女性は亡くなり幼くして一人残された勇者は孤児院で育った・・・らしい


まずどうやって元聖者が自分の子だと調べたか疑問に残るし出身地ってのも微妙だ・・・産まれたのはフーリシア王国だけど育ったのはファミリシア王国・・・どちらが出身地になるのか議論を呼びそうな感じだけど・・・


まあ僕としては勇者がフーリシア王国出身の方が都合がいい・・・ディーンとキース・・・どちらも敵に回すと厄介この上ないしね


んで、その話を聞いた上でシャスが考える選ばれし五人を聞いてみた


シャスは『勇者、ウルティア、自分(シャス)、コゲツ、ソワナ、ダンテ』で間違いないと言っていた


理由は消去法で考えるとそうなるらしい


今の勇者パーティーにはヒーラーが二人いる


ダンテと勇者の恋人?であるラナだ


勇者はラナを危険な目に合わせたくないからヒーラーをダンテにする・・・となると近接アタッカーはオルシアとソワナしか居ない為に必然的にソワナが選ばれる。そしてファミリシア王国は残る二人が遠距離アタッカーの為に遠距離アタッカー枠はファミリシア王国に・・・で、ウルティアとエメンケどちらが選ばれるかと言ったらウルティアだろうとシャスは言う


で、残りは三枠・・・勇者は確定だから残りはスカウトとタンカー・・・タンカーはシャスで決まりで残りのスカウトはアッシュかコゲツか・・・実力的にはコゲツだと言うのでほぼ決まりだとシャスは言う


まあコゲツは僕が指名したし間違いなくアッシュではなくコゲツが来る・・・逃げなければの話だが



という訳で一週間後にシャスは僕と戦う可能性が高い。なのでパーティーという気分でもないのだろう


「別に殺し合いをする訳でもないし気にすることでもないだろう?」


「・・・勇者ジーク殿はロウニール様を殺しに来ますよ?」


「お前も?」


「そんな!・・・私は・・・」


「シャスはタンカーとしての役割を果たせばいい。向かって来たら手加減しても万が一があるかもしれないけど防御に徹してくれれば手加減は出来る・・・間違っても誰かを守ろうとして僕の攻撃の前に出るなよ?」


「・・・タンカーの矜恃をご存知で?」


「死ぬ時はタンカーが最初とか何とかだっけ?なら大丈夫だ」


「え?」


「誰も死なせはしないから、な──────」




シャスと話して大体誰に頼むか決めた


仮想勇者パーティー・・・一週間後に向けて何もしない訳にはいかない。なまった体を鍛えるのと一週間後の勇者との対決に向けての訓練・・・模擬戦だ


勇者役にディーン、ウルティア役にはソニアさんに頼もうと思ったけど別の人に頼む事に・・・で、コゲツ役にジルバ、シャス役は・・・まあダンか・・・数段劣るが仕方ない・・・ダンテ役にセシーヌでソワナ役は・・・


「あっはー!感謝してもいいですわ!私達の反乱がアーキド王国を寝返らせたのですから!」


ふんぞり返り顎に手の甲を当てて僕を見下ろす


カレン・・・事実を言ったらショックを受けるかな?カレン達が反乱を起こさなくてもアーキド王国から船でやって来たネターナ達がアーキド王国が寝返るきっかけを作っていたという事実を


まあでもネターナ達の行動を待っていたら犠牲がかなり出ていたかもしれないし・・・とりあえずふんぞり返るだけふんぞり返らせてやろう


「助かったよカレン。今度何かで返すよ」


「何かなどと抽象的な言葉でなくてナニでもいいですわよ!あっはー!」


「・・・おいアンガー・・・カレンに飲ませたな?」


「少々」「大量じゃバカタレ」


アンガーが答えるとダハットが呆れながらツッコミを入れる


侯爵令嬢の痴態はそれはそれで面白そうだがこのまま放っておくと嫁の貰い手がなくなりそうだな


「メイドに部屋を用意されるから少し休め」


「あらぁ?部屋に連れ込まれてわたくしナニをされてしまうのかしらぁ?」


ダメだ話している間にも酔いがドンドン回っていってるっぽい・・・ここは酔い醒ましに・・・


「ナージ!ちょっとこっちに」


酔ってハイテンションのカレンに常に冷静沈着・・・もとい仏頂面のナージを当てる。カレンの酔いが覚めるかナージが釣られてハイテンションになるか・・・どっちも見ものの対決だ


「お呼びでしょうか?」


「カレン嬢の相手を頼む。まだ私は挨拶をしないといけない相手がいるもんでね」


「・・・畏まりました」


表情は変えなかったけど不服そうな感じのナージ・・・対するは完全に目が据わってきたカレン・・・ちょっと離れた場所で見学見学っと


「少々飲み過ぎでは?カレンお嬢様」


「ん~?いいでしょちょっとくらい・・・ってアンタ誰よ・・・ロウニールは?」


「ナージです。ご主人様は他の場所へと移動しました」


「ナージ?・・・ナージ・・・ナージ・・・あー!アンタが約束を破るからわたくしは・・・」


「私は約束をしただけです。破ったのはご主人様です」


「・・・どう違うの?」


「・・・聞き流して下さい・・・なんでもありません」


おっ?ナージの奴面倒くさくなったな。何を言っても今のカレンには通じなさそうだしそれが正解かも


「ん~・・・何の話だったっけ・・・」


「くっ!」


今確実にイラッときたな


アンガーもダハットも珍しい組合せを楽しむようにニヤニヤしながらやり取りを見ている


するとカレンはテーブルの上に置いてある酒の入ったグラスを取ろうと手を伸ばした


その行動に気付いたナージがその手を掴み止めると邪魔された事に腹を立てたカレンがナージを睨みつける


「・・・誰よアンタ・・・わたくしの手を掴むなんて・・・」


「ですから・・・いや、もうこれ以上はおやめ下さい。体に毒ですよ?」


もはや名乗っても無駄と判断したナージが首を振り説得を試みるとカレンは・・・


「楽しいかね?」


「ええ・・・だから邪魔すんな」


「す、すんな・・・ゴホン!ローグ卿」


「ん?・・・ああ、これはグルニアス卿・・・今いい所なので後にしてもらえませんか?」


「・・・私の娘を隠れ見て楽しいですかな?」


「ええとても・・・グルニアス卿も見たらどうですか?なかなか見れるものではありませんよ?娘の痴態」


「ローグ卿!」


「・・・ハア・・・なんです?」


ファゼンがうるさくて集中出来ない・・・そもそもなんでコイツはここにいるんだ?


「・・・カレンから聞いていると思いますが我が軍が反乱を起こしたからこそ今がある・・・恩着せがましい言い方かもしれませんが国を裏切ってまでローグ卿に味方した事・・・ゆめゆめ忘れないで頂きたいものですな」


「忘れませんよ・・・ただひとつ気になることが・・・」


「気になること?」


「反乱とは信頼を得てるからこそ成るもの・・・つまりグルニアス卿は余程マルス王子に信頼されていたのかと・・・」


「そ、それは・・・あ、あの時の為に信を得ていたのであって・・・」


「なるほど・・・余程上手いみたいですね・・・演技が。私も気を付けないといつ背後から刺されるか分かりませんね」


「なんだ・・・と?」


「信頼を得る為に相手の懐に入る・・・では『今』がその時ではないと誰が証明してくれますか?もしかしたらマルス王子の為に私の懐に入ろうとしているのでは?・・・そう疑わざるを得ないと思いませんか?・・・グルニアス卿」


「・・・私は・・・本当に・・・」


「何を言っても無駄ですよ。もし本当に最初からマルス王子を裏切るつもりだったと言うならセシーヌの『真実の眼』で見てもらいましょうか?彼女の目は嘘を見抜く・・・彼女の目の前で潔白を証明してみて下さい。もし貴殿の言っている事が真実なら謝罪しますよ」


「・・・」


まっ、出来るわけないよな。カレンがここに居て私のお陰だとふんぞり返る理由はただひとつ・・・彼女が反乱を起こしたからだ。決してファゼンの指示ではなく


大方ファゼンがマルスと共にエモーンズを攻めると聞いてカレンだけは反対してくれた・・・が、その反対意見を聞かずにファゼンはマルスと共にエモーンズへ・・・カレンはと言うと黙って軍に入り込み機を見計らって反乱を起こした・・・娘を守る為か形勢を見てか知らないがファゼンもそれに乗り結果的には僕達の味方に・・・そんなところだろう


それなのに感謝しろだと?笑わせるな


「私が貴殿を信用する事は今後ないと思って頂きたい。一度敵に回るというのはそういう事ですよ。ただ・・・カレンお嬢さんは信用しています。この意味分かりますか?」


「?・・・貴殿がカレンを信用しているからなんだと・・・」


「察しが悪いですね。まっ、いずれ分かると思います・・・その時貴殿がどう判断されるかで侯爵家の運命が決まるでしょう。それでは私は他に挨拶するところがあるので失礼します・・・ああそうそうカレンお嬢さんを一週間お借りしますね」


「カレンを?・・・何をするつもりだ」


「激しい運動を少々・・・ね」


ソワナ役はカレンにやってもらおう・・・と思って言ったけどファゼンは複雑な表情を浮かべていた


何を考えてんだか




一通り挨拶を終えてパーティーも終わりに近付いた


終わり際に疲れ果てたのか酔い潰れたのか部屋の隅に置かれた椅子で大いびきをかいて寝ているダンを見つけたので近寄って叩き起す


「んだあ?・・・なんだロウニールか・・・何だよ人がせっかく気持ち良く寝てたのに・・・」


「明日から付き合ってくれ」


「付き合え?どこに?」


「訓練場・・・お前はただ盾を構えてくれるだけでいいから」


「は?・・・何をする気だ?」


「訓練場でやる事と言ったら決まってるだろ?訓練だよ・・・勇者パーティーをぶっ倒す為の、な──────」

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