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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
532/856

528階 勇者戦に向けて

1階に降りてパーティー会場となっている広間に行くと既に盛り上がっていた


「ん?おっ、ロウニール!遅かったじゃないか!」


僕の存在に初めに気付いたのはアーキド王国海軍大将ネターナだった


相変わらずガタイのいい体を揺らし骨付き肉片手に近寄って来た


「アタイを放ったらかしでどこに行ってたんだい?プロポーズの準備だったら許してやるけど他の用事だったら容赦しないよ!」


「誰が誰にプロポーズするんだ?」


「・・・変わったねアンタ・・・あの時は子鹿のようなプルプル震えていたのにさ」


「記憶を捏造するな。あの時ってどの時だよ・・・まあいいや。今日の一番の功労者だから好きなだけ言わせてやる・・・乗組員達にも充分な報酬を約束するよ」


「太っ腹だねぇ・・・じゃあモッツを連れ帰っていいかい?やっぱり久しぶりに食うと逃がした魚は大きいって言うか・・・なあいいだろう?」


「アホか・・・そんなに食べたきゃネターナがうちに来い。立派な港も出来たことだし活躍する機会はうちでもあるぞ?」


「それもいいかもね・・・プロポーズの言葉として受け取っていいかい?」


「・・・やっぱりデューク国王に熨斗をつけて返しやる」


アプローチが露骨・・・まあ冗談だろうけど


それにしてもネターナ・・・彼女が一番の功労者だと言ったのは何も大袈裟なことではない。彼女・・・ひいてはアーキド王国国王デュークのお陰で誰も犠牲にならずに済んだ


シークス達を運んでくれたのも彼女達がこのタイミングでエモーンズに訪れたのも・・・全て見抜いての事だったとしたらデュークこそ敵に回すべきじゃない人かもしれないな



「随分とモテるじゃない」


「じゃない」


「ソニアさんとシシリアちゃん・・・怪我はもう?」


「ええ。もう平気よ・・・それよりも心の傷の方が重症だけどね」


「・・・ま、まあ落ち着いて・・・」


ソニアさんとペギーで十二傑の一人ウルティアと戦ったらしい。やられそうになったところで間一髪シュバルツが助けに入って事なきを得たけど本当に危なかったらしくソニアさんは瀕死だったらしい


そんな奥さんを放ってキースはレオンを連れてドラゴンを見に行きはしゃいでいたって言うのだから・・・どうしようもないな・・・キース・・・


「だからあんな男やめとけって言ったさね・・・どうしようもない男につかまるのは家系なのかねえ」


会話を聞いていたラディルさんが割って入るとソニアさんはキース・・・そしてシュバルツを見て肩を竦めた


「・・・どうしようもなくはないわ・・・どっちもね」


「ハッ、一度助けてもらったからって孫を誘拐しようとした事実は変わらないよ」


「それもそうね・・・けど過去は変わらないけど人は変われる・・・あの人は魔族だけど、ね」


「どうだかね」


ラディルさんとソニアさんはもしかしたらシュバルツの事を許したのかな?一応シュバルツは僕の配下だし仲良くしてくれるに越したことはないけど・・・



「・・・なんでコイツ倒れてんだ?」


「あん?おお!ロウニールじゃねえか!まあ気にすんな!」


いや気になるわ!


キースの足元に倒れている男が一人・・・コイツは確かレオンのとこの・・・


「私が説明しよう。なぜオードが倒れているかを」


おお、そうだオード!・・・確か今はケインの元で兵士として働いているんだったな


「どうせキースが気に入らないとかで殴り飛ばしたんだろ?」


「近いな・・・オードは自慢げに『天侯爵の使った魔法・・・俺も使えるぜ』と言って騒いでいたのだがその魔法がどうやらソニアを傷付けた魔法らしくてな・・・ソニアに散々絞られたキースは虫の居所が悪くその話が耳に入るや否やオードをぶん殴り気絶させた・・・って訳だ」


予想よりもくだらなかった・・・ただの逆恨みじゃないか


「おい言うんじゃねえよ!・・・だってよぉ・・・コイツがあまりにも調子に乗ってるから・・・」


「許せなかった、と。そりゃあそうだよな・・・奥さんがやられた魔法を自慢されたら腹立つのは分かるよキース・・・自分が倒れているのに嬉々としてドラゴンを見に行く配偶者を見た時くらい腹が立つよな」


「・・・ロウニール・・・それをどこで・・・」


「実際に見てたし・・・家族が大事みたいな事言っていて所詮そんなもんか・・・どう思う?レオン」


「最低だな」


「ぐっ!てめえら寄って集って・・・仕方ねえだろ!?ドラゴンだぜドラゴン!間近で見たいって思うに決まってるじゃねえか!だから俺は・・・」


「キース・・・その辺にしておいた方がいい・・・後ろにドラゴンより恐ろしいものが睨んでいるぞ」


「え?・・・げっ!」


キースが振り返ると少し離れた場所で酒の入ったグラスを傾けながらキースを見るソニアさんがいた・・・怖っ・・・目が座ってるよ・・・


「・・・ロ、ロウニール・・・俺をどっか遠くの場所に連れてってくれないか?・・・ほとぼりが冷めるまで・・・」


「共犯者になりたくないからパス」


「このっ!・・・レオン!何とかソニアをなだめてくれ!一応まだ俺の執事だろ?」


「ロウニール様、こちらが退職願いです」


「うむ、受け取ろう」


「てめえら!・・・ああ、くそっ・・・萌える炎は構わねえが燃える炎は勘弁してくれ・・・や、やめろ・・・やめ・・・アツッ!」


股間をピンポイントで燃やされるキース・・・僕達夫婦はこうはなるまい



色々回り少し疲れたから休憩がてら料理に手を伸ばす


久しぶりの食事に胃がビックリするかと思い抑え目に食べようと思っていたけど一口食べるとその美味しさのあまりバクバクと食べ始めてしまった


やはりモッツ料理は最高だ・・・デュークが今回の件で『モッツを返せ』と言ってきても絶対に断ろう


そんな事を考えながら口に料理を放り込んでいると何故か室内なのに影が差す。何事かと見上げるとそこには上半身裸の巨大なオッサンが立っていた


「・・・どうも」


「ロウニール・ローグ・ハーベスだな?立ち合え」


「パーティー中ですが・・・」


「ある意味パーティーだろ?立ち合いも。それとも殺し合いにするか?」


何この人・・・警備機能してないのか?不審者入ってますけど


「立ち合いも殺し合いもしません・・・お帰りはあちらです」


「手助けしてやったのに冷てえじゃねえか・・・俺が助けなかったらタンカーのあんちゃんは死んでたぜ?」


タンカーのあんちゃん・・・ダンの事か


と言うとこの人がディーンの言ってた・・・『剣奴王』ジルバか・・・最初は何の冗談かと思ったけど本当に・・・


「ジルバさん・・・ですよね?明日でもよくないですか?今日は色々あって・・・それに今はパーティー中ですし」


「関係ねえ・・・俺は美味いものには目がなくてな・・・目の前にあるのならすぐに手を伸ばしちまうくらいにな」


僕はデザートか何かか


このまま暴れられたらパーティーは台無しになるな・・・かと言ってのらりくらりと躱すのは無理っぽいし・・・さてどうしたものか・・・


《何かお困り事ですかい?ロウニール様》


ちょうどいい所にピッチピチの執事服に身を包んだベリト現る


何がちょうどいいかって・・・押し付けるにはちょうどいい


「料理には食べる順番があるように戦いにも順番があると思います。という訳で行ってらっしゃい」


「あん?」《へ?》


ジルバとベリトの背後にゲートを開くと先ずはジルバをそのゲートを通るよう蹴り飛ばす


《お、おいちょっと・・・》


「適当に相手しておいてくれ。じゃ、頑張れよ・・・あ、あと殺すな」


そう言ってベリトをゲートに押し込んだ


ふむ・・・これでよし!


けど・・・負けないよな?魔力を封じているとはいえ魔人をマナを使わずに倒したって聞いてたけど・・・さすがに魔族は・・・


「すみません!うちの父が・・・って一体どこに?」


ジルバが僕に絡んでいるのに気付いたディーンがジルバを止めようと慌てて僕の元へやって来たが時すでに遅し・・・ジルバの姿が見えずキョロキョロするディーンの肩に手を乗せた


「ちょっと席を外してもらった・・・ひとつ聞きたいんだけどジルバさんってどれくらい強い?」


「え?強さ・・・ですか?」


「うん。ちょっと暴れそうだったからうちの者に相手してもらおうかと思ってね。殺すなとは言っておいたけどちょっと気になって・・・」


手加減出来るレベルじゃないならもう一人・・・バフォメット辺りでも追加で送ろう


「強さ・・・そうですね・・・強さだけを語るなら私と同レベルかと」


「含みのある言い方だけど他に何が?」


「『怖さ』」


「怖さ?」


「『恐れ』とも言いますか・・・とにかく対峙すれば分かると思います。自らが傷付く・・・いえ、死すらも恐れず向かって来る相手に感じるのは恐怖しかありません。私はこれまで勝つか負けるかの戦いは幾度となくして来ました。もちろん結果的に相手が死んでしまうことも・・・ただジルバ・・・父の前では勝つか負けるかではなく生きるか死ぬかの殺し合いとなるのです」


剣奴ならでは、か


剣奴の試合は殺し合い・・・相手が死ぬか自分が死ぬかのどっちかしかない。剣奴王ともなれば僕が経験した以上の試合を経験しているはず・・・なれば自然と戦いイコール殺し合いとなり普通の人からしたら()()と感じるだろう


まあでもジルバはその先を行っているみたいだ・・・自分が死んでも構わない・・・そう思われて突っ込んで来られたら僕でも怖い・・・流れで殺してしまいそうで


「バフォメット!」


《はっ!お呼びでしょうか》


「これから送る先でジルバって人間とベリトが手合わせしてる。お前は様子を見ながら危なかったら止めてくれ」


《承知致しました。ベリトが人間を殺さないように・・・でお間違えありませんか?》


「うん・・・多分ね」


《・・・では行って参ります》


ゲートを開くとバフォメットは一礼して中へと入って行った


これで大丈夫だろう・・・いや、ベルも送っておくか?


バフォメットにはべリスがジルバを殺さないよう見張ってくれと頼んだけど本当は充分逆もあり得ると思っている


ディーンと同じくらい強くて更に()()・・・か


願わくばベリトもしくはバフォメットで満足してくれ


「そう言えば閣下の話をしたら非常に興味を持たれてました。もしかしたら手合わせしたいと願い出て来るかもしれませんが無視してもらって結構なので」


お前が原因か!


「?どうされました?」


僕が深くため息をついているとディーンは自分がしてがした事に気付きもせず首を傾げる


何となく・・・何となくだけど明日とは言わないけどいずれやり合う事になるかもな・・・ジルバと


どうせなら組み込んでみるか・・・明日からの仮想勇者パーティーに──────

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