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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
529/856

525階 ルール

さてと・・・勇者とのご対面したはいいけど果たして素直に聞き入れてくれるかどうか・・・既に臨戦態勢だし困った困った


「魔王・・・お前の部下が言っていたぞ?『人間を殺すな』と命令していたらしいな・・・とんだ勘違い発言だ・・・命令しなくてもお前達は誰一人として傷付ける事は出来ない!それは何故か・・・それは僕が・・・勇者である僕がいるからだ!」


・・・えっと・・・決めてるところ悪いのですが見る限り君の仲間ズタボロですけど・・・


『誰一人として傷付ける事は出来ない!キリッ』って新手の冗談か?乗った方がいいのか?


《貴方の仲間ほぼ壊滅してますが・・・》


「黙れ魔族!こっからが勇者の本領発揮だ!もう誰一人として傷付けさせやしない!」


ナイスベル・・・どうやら否定ではなく乗るのが正解のようだ


「ほう・・・ならばその実力見せてもらおうか・・・とその前に」


「いいだろう!決着をつけるぞ!魔王!!」


「いや待て話の途中でしょうが・・・ってうおい!」


コイツ本当に斬りかかって来やがった・・・せっかく乗ってやったのに話を聞けってぇの!


「どうだ!そこの魔族が偉そうに本気を出せばとか言ってたがお前らが本気を出したところでどうって事ない!」


んのガキ・・・


「へえ・・・そんな事を言ってたんだ」


「ラナを・・・みんなを守れないとか言っていた!そんな事はない・・・僕は・・・勇者だ!」


「知ってるよ・・・じゃあ賭けるか?」


「・・・賭け?」


「ベル達が本気を出した時、本当に周りの人を守れるかどうか・・・賭けに勝てば私は配下を失い負ければ勇者・・・君は仲間を失う。守れると言うなら賭けようじゃないか」


「バカなことを・・・人の命を賭けれるか!」


「いやいや・・・ならそんな簡単に出来るとか言うなよ・・・試したくなるじゃないか・・・ゲート」


素早くゲートを開いてその中に手を入れる


柔らかい感触のものを掴むと勇者は僕を鬼の形相で睨んだ


「ラナ!!・・・てめえ魔王!!」


「動くな。少し力を入れればこのか細い首なんて一瞬で握り潰せるぞ?」


「このっ!・・・汚いぞ!!」


無論ラナって子の首を握り潰すつもりはない



けど少し・・・腹が立つな・・・



「お前達はルールを破った」


「・・・ルール?何のルールだ!」


「『6縛りの結界』は魔王と勇者の唯一無二のルール・・・そのルールを破り大軍で押し寄せお前達は何をしようとしていた?」


「・・・それは・・・お前らが何を仕掛けて来るか分からなかったし・・・僕達も万全の準備を・・・」


「なるほど・・・で?」


「別に!・・・仕掛けて来たら戦ってただけだ!いいからラナを離せ!」


「互いの種族の生存権を賭けた戦い・・・勇者が勝てば人間の勝利、私が勝てば魔族の勝利・・・単純明快それ以上でもそれ以下でもない。で、だ・・・逆の立場になって考えてみろ。魔物が大軍で押し寄せる。先頭は私と魔族達・・・で、私がこう言う『仕掛けて来たら戦うが仕掛けて来なければ何もしない』・・・さてお前達は信じてくれるかな?」


「・・・魔族の言うことなんて信じられる訳ないだろ!」


「では私はこう返そう『人間の言うことなんて信じられる訳がない』と。つまり大軍で押し寄せて来たのは万全を期してではなく単純に攻めて来た・・・そう判断せざるを得ない。って事はここにいる人間は全て敵・・・私達を殺しに来た敵という事になる」


「・・・だったらどうした?」


「認めるのか?なら私が掴んでいるこのか細い首の持ち主も敵という事になるな。人間は魔物を見たらどうしていた?捕まえて敵意がなさそうなら逃がしていたか?」


「それは・・・」


「魔族の立場になって考えろとは言わない・・・が、人間がやってもいい事を魔族がしてはいけないというのは傲慢だ・・・逆もまた然り・・・それがお互い様ってやつだろ?私が人間で今私が捕らえている女性が魔物だとしたら・・・君は何と言うだろうな・・・『殺せ』か?」


「ぐっ・・・ジ、ジーク・・・」


「ま、待て!・・・何が望みだ!」


「信じてくれた・・・と思っていいのかな?それなら話は早い・・・仕切り直しといこう」


「仕切り直し?」


「私もここで戦って大事な人を守り切れる自信が無い。私が君と戦っている間に何をされるか不安なんだ。だから()()()()()といこうじゃないか。私達はここで会っていない。ここでの戦いも全てなかった。私は屋敷・・・城で待つからそっちはいつも通り勇者と愉快な仲間たちで城に攻めて来るといい」


「6縛りの結界・・・か」


「そうだ。本来勇者は仲間達と魔王城に訪れ最終決戦に挑むはずだろ?それが何故か今回に限り大軍を引き連れて・・・あまりにも物語から逸脱しているし結果的に意味もなかった・・・だから仕切り直しだ。勇者は仲間だけを連れてエモーンズに来た・・・そして仲間の中から5人を選び結界の中へ・・・そして私と対峙する・・・」


「死ぬのは僕達6人かお前、か・・・いいだろう・・・その提案受けてやる!」


いちいち大袈裟な奴だ・・・てか受けざるを得ない状況ってまだ理解してないのか?


「おい・・・受けてやるって言ってんだからさっさと離せ!」


「剣をしまったらな」


聖剣・・・ってやつか?僕を倒す為に手に入れて来たのだろう・・・マナが溢れ出てやがる。アレは食らったら痛そうだ


「怖いなら最初からそう言えよ・・・ほら、これでいいだろ?」


勇者は背中についている留め具に剣をかけると勝ち誇った表情でフフンと鼻を鳴らす。彼女の首へし折ったろか


「・・・軍は退き始めている。私の敵は徒歩で帰り味方はすぐにでも自国に辿り着くだろう。徒歩の軍が見えなくなったら街に入りこれまでの疲れを癒せ・・・そうだな・・・1週間後くらいにしておこうか」


「・・・は?」


もう脅しも必要ない・・・彼女の首から手を離すと呆ける勇者に歩み寄る


「エモーンズの飯は美味いぞ?流行りの服も売ってるし風呂屋もある・・・なんなら歓楽街もあるが・・・」


っと、勇者の彼女・・・ラナに睨まれてしまった


睨んだのは首を掴まれた事に対してか勇者に歓楽街を勧めようとしていたからか・・・どっちもって感じだな


「まっ、ゆっくりしていってくれ。通行許可証はいらない・・・私が許可しよう。ダンジョン都市エモーンズへようこそ──────」




「お疲れ様・・・なかなか堂に入っていたわよ?魔王様」


勇者達から離れてサラの元に戻って来た


どうやらさっきのやり取りを見られてたみたいで・・・ちょっと恥ずかしい


「からかわないでくれ・・・それより少し辛そうだけどヒールもう一回かけようか?」


「平気よ。で、これからどうするの?」


「シャリファ王国軍とラズン王国軍・・・それにアーキド王国軍を送った後、勇者達を街に入れる。勇者とやるのは1週間後・・・それまではのんびりしようかと・・・」


「なるほど・・・ね」


「それはそうとみんなは?ベル達魔族以外誰も居ないけど・・・」


「キースさんとシツジ・・・じゃなくてレオンはドラゴンを見に行ったわ。その他の人達は街に・・・そう言えばシークスが言ってたわよ?あなたを殴るって」


「ふーん・・・なんで?」


「なんでって・・・置いてけぼりにしたからでしょ?」


「ああ・・・すっかり忘れてた。やっぱり怒ってたか」


「当然でしょ?・・・でもまあ別の理由っぽいけどね」


「別の理由?」


「一応あなたの事をライバル視しているみたい・・・なんでも置いてけぼりにされた後で十二傑のコゲツに弟子入りしていたみたいよ?本人は弟子になったつもりはなさそうだけど・・・」


「弟子入りしたのに弟子になったつもりはないって・・・」


「コゲツは鍛えてやったから弟子と思っててシークスはただ単にコゲツを利用して強くなろうとしていただけっぽいわね・・・あなたに勝つ為に」


「へぇ・・・で、強くなってた?」


「・・・風牙龍扇を持たない私よりは確実に・・・持っても五分(ごぶ)・・・いえそれより低いかも・・・」


そりゃ相当強いな


サラだってサキやシアに鍛えられていたし実力はかなりのもの・・・本人は自信ないみたいだけど今や誰もが認めるSランク冒険者だ。そのサラの上を行くか・・・


「まっ、ちょっと体調が今ひとつっていうのもあるけどね」


「え!?さっき平気って・・・やっぱりまだどこか痛むとか?」


「違うの・・・多分緊張したからかな?あなたが来るまで時間稼がなきゃって・・・危機も去ったし寝れば治ると思うから大丈夫よ」


本当かな?心配だな


もしかして何か特殊な攻撃を食らったりとか・・・後でこっそりセシーヌに診てもらうか


そんなやり取りをしていると向こうの方から団体さんがやって来た


これまた奇妙な組み合わせ・・・ディーンにジャンヌ、それとシャスとギリスと・・・他3人は知らない人だ


「何か問題でも?」


「いえ各国の代表の方がロウニール様に挨拶をしたいと・・・」


「シャリファ王国の代表としてこの度連合軍に参加しましたサッズ・タレス・オードと申します。知らなかったとはいえロウニール様の領地に攻め入るという愚行を・・・何とお詫びしたら・・・」


「詫びなんてとんでもない。まだ詳しくは聞いてないがシャリファ王国が味方してくれなかったら危なかった事くらいは分かる・・・味方してくれてありがとう」


「そんなもったいない!頭をお上げ下さい!」


ドラゴンに乗り空から見た光景は大軍同士が今まさに戦争を始めようとしているところだった


その中でも中央でリガルデル王国軍と対峙していたシャリファ王国軍・・・多分シャリファ王国が中心になって連合軍に対抗してくれたのだろう。感謝してもし足りないくらいだ


「おう!もっと感謝しろ!感謝してるって割にはちぃと頭が高いんじゃないか?」


「・・・ギリスか・・・そう言えばシャリファ王国で私に攻撃を仕掛けて来たことの礼がまだだったな」


「お、お前そんな昔の事を・・・」


「あの時はいつの間にかいなくなっていたが今日は逃げないのか?それとも味方したからあの時の事が帳消しになるとでも?」


「・・・あー、くそっ・・・帳消しだ!それで手を打ってやる!」


「いやならんだろ」


「ぐあっ・・・て・・・てめえ・・・」


鳩尾に思いっきり拳をめり込ませるとギリスの体はくの字に曲がる


「これでトントンくらいかな?文句あるならサシで来い・・・あの時みたいにどさくさに紛れて攻撃して来るんじゃなくてな」


「・・・いいぜ・・・やってやる・・・・・・・・・いずれ、な」


「アンタ!」


「大丈夫だケティナ・・・行くぞ・・・」


ケティナ?どこかで聞いた事あるような・・・


ギリスは腹を押さえながらそのケティナと共に去って行った。ったく何しに来たんだか・・・まあこれであの時の件はチャラだ・・・またいずれ会う事になるだろう・・・僕がカミキリマルを持っている限り・・・


「ラズン王国軍が味方してくれたのはかなり大きいかと・・・もう少し感謝しても良かったのでは?」


「いいんだよディーン・・・ラズン王国は大体こんな感じだ・・・言葉で語るんじゃなくて拳で語れってね・・・ギリスの奴も分かってるさ」


「・・・そうでしょうか?かなり恨みのこもった目で閣下を見ていたような・・・」


「気のせい気のせい・・・それで初対面の人がもう1人・・・」


「お初目にかかります。私はアーキド王国の代表シュベルツ・モード・レギナと申します」


「アキード王国・・・そちらも味方してくれたみたいで・・・ありがとう」


「いえ、ロウニール様に味方した三ヶ国の中で最も判断が遅れました・・・実は国王陛下より言われていたのです・・・『天秤にかけ傾いた方に味方せよ』と・・・申し訳ありません」


「あの王様らしいな・・・別に謝ることではないと思うが・・・もし負けたら自国が危ないかもしれないし・・・」


「・・・そう言って頂けると・・・」


「それに別で動いてくれてたろ?」


「ご存知でしたか・・・」


ドラゴンの背に乗りここに向かう前・・・港に一隻の船が泊まっているが見えた。あれはアーキド王国の船・・・多分デュークが寄越したものだろう


「にしてもいつから?船の方が軍の進みより早いとはいえ結構前から準備してないとこの日に間に合わなかったんじゃないのか?」


「連合軍が向かう先がロウニール様の居られるエモーンズというのは早くから知っていました。情報を何よりも重要視する方なので諜報員を何人か忍ばせておりまして・・・なので分かった時点で船を出したのかと・・・」


どんなつもりで船を出したのかは不明だけど多分僕達を助ける為だろう。魔王討伐に軍を出しているのに別で動く意味がないし・・・それにデュークとは友達だしね



三ヶ国が味方してくれなかったら今頃どうなってた事やら・・・全てが終わったら個別に礼を言いに行こう・・・結婚報告も含めてね──────

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