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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
523/856

519階 エモーンズの守護者

視界が霞む


膝が震え歯を食いしばらないと立ってられないくらいだ


エメンケだったか?コイツの技の正体が何度食らっても分からねえ・・・見えない何かに殴られたような衝撃が突然襲って来る・・・しかも前だけじゃねえ・・・後ろからも・・・


「ハッハッ!流石はタンカー・・・しぶとさが取り柄なだけはあるな」


「ケッ・・・しぶとさだけじゃねえってのを見せてやるよ!」


突進し訳も分からず四方八方から殴られる・・・何度目だ?一体どうやったら奴に近付く事が出来る?


「しつこいな・・・まだ分からないのか?お前ごときが俺に攻撃どころか触れることさえ出来ないって事を」


「そうかよ・・・じゃあ触れたら俺様の勝ちって事だな!」


コイツの攻撃手段が見えない手だけなら勝機はある!


近付き掴まえて見えない手を出す暇もなく殴りつづけりゃいいだけだ!


その為にぶっ!


「ちょ・・・待っ・・・て・・・コラァ!ガッ!」


そ・・・そもそも近付けねえ・・・


クソッ・・・ならフェイントを織り交ぜれバァッ!


・・・


「もっと工夫しなよ。他がまだ終わらないから殺さないだけで他が終われば・・・一瞬で殺す」


・・・なんちゅう殺気だ・・・


勇者パーティーや十二傑なんてとんでもねえ・・・コイツはただの・・・


人殺しだ


「ハッハッ!なんだ黙りこくって・・・殴られたら『ギャン』と鳴け!ギャンギャンギャンギャン鳴けば鳴くほど俺を熱くさせる!勇者の前じゃ抑えてたけどやっぱり楽しいよな・・・弱い者イジメ」


・・・んだよ・・・しかも昔の・・・俺かよ・・・


「どうした?もう突っ込んで来ないのか?他より先に殺しちまったら暇になっちまうだろうが・・・もっと俺を楽しませろよ・・・しぶとさだけが取り柄だろ?」



ムカついていた


努力もしねえで『出来ねえ出来ねえ』ってほざく奴に心底ムカついていた


天才?ふざけんな・・・こっちはタンカーの適性があるって分かってから血のにじむような努力をしてきたっつーんだ・・・天才なんて一言で片付けんじゃねえ・・・


だから同じように天才と言われていたペギーに惚れた


彼女もまた俺と同じ努力をしていたから・・・


でもマナ量が少ないと分かると彼女からみんな離れていった


それでも彼女は努力した・・・どうにもならないと知りながらも


だから俺は彼女の代わりに天才ってやつを演じ続けた・・・マナ量さえあれば彼女が至った位置に居続けようと決めたんだ


学校を卒業してから更に力を得ようと高難易度ダンジョンのあるマーベリルに向かった


そこでもまた歯を食いしばり何とか認められるようになって・・・


けど・・・帰ってみりゃ俺達と正反対だった奴がいい気になってペギーにまとわりついていやがった


力もねえのに努力もしねえ・・・クソみたいな奴・・・常に俺の下にいたはずの奴が何故か俺の上にいやがった


魔王を倒し貴族になり領主となりやがった



ムカつく



お前は俺に守られる立場のはずだろ?なのに・・・お前も俺達と同じだったってか?影の努力がようやく実を結び花開いたってか?


ふざけんな・・・俺は認めねえ・・・お前は守られる立場だ・・・俺がエモーンズで一番で・・・お前は単なるエモーンズの住民だ・・・


だから・・・


「・・・俺様が守ってやる」


「あぁ?」


「ムカつくよな・・・弱い奴・・・何も出来ねえクセにピーピーピーピーうるさくて仕方ねえ・・・イジメたくなる気持ち・・・すげえ分かるぜ?俺様も昔はそうだったからな・・・けどよ・・・強くなって分かったんだ・・・弱い奴にも弱い奴なりの強さがあるってな・・・だから・・・」


「いやいや・・・お前弱いだろ?何言ってんだ?」


「・・・てめえは気付けなかったんだな・・・俺様も気付けなきゃてめえみたいになってたかと思うとゾッとするぜ・・・」


「・・・なんだと?」


「そのまま弱いままでいてくれよ・・・そしたら俺様が勝つから・・・」


「意味分からねえ事を・・・おい・・・なんで盾を・・・」


盾を地面に置き鎧を外した


随分と身軽になったな・・・風が心地いい・・・


「まさか盾と鎧を脱いだ分軽くなったから俺に近付ける・・・そう思ってんのか?まあ確かに身軽になりゃ速くはなるだろうけどその分食らうダメージも増えるって理解してんのか?」


「・・・てめえの軽い拳なんていくら食らってもわけねえよ・・・試してみろよ!」


これが最後だ


もうほとんど力は残ってねえ


これが最後の・・・


「いやいや本当意味が分かんねえ・・・馬鹿なのか?」


そう言って初めて奴は両手を動かした


俺の足目掛けて突き出すように


すると両膝が見えない手で押され前につんのめる


倒れる訳には・・・そう思い地面に手をつこうとするがその手さえ弾かれた


「ぐっ!」


「どう足掻いても・・・俺に近付けはしない!」


倒れた俺の背中に衝撃が・・・それでも立とうとすると今度は押し潰すように力が加わる


「何が『守る』だ。お前が何を守れるって言うんだ?てか俺の『神の手』を遠くの奴を殴るだけの能力とでも思ったのか?押すも引くも叩くも抓るも自由自在・・・もちろん斬る事だって出来る。こんな風に、なっ!」


ヤバいのが来る


直感でそう感じて地面にうつ伏せになった状態で体を捻るとついさっきまで俺の体があった地面が突然抉れた


「ハッハッ!躱すかよ・・・そのまま芋虫みたいに転がって躱し続けろ・・・いい暇潰しになるから、よっ!」


奴が手を振った瞬間に俺は再び体を捻り転がるとまた地面が抉られる


もしかしたらコイツは本当に暇を持て余し遊んでいただけなのか?


「やるじゃないか・・・では次は転がった先を斬り刻もう・・・さて、右か左か・・・好きな方に転がれ」


両手を振る素振りをしてケタケタ笑うエメンケ


ダメだ・・・格が違う・・・コイツにとって俺はただのオモチャ・・・何をしても・・・・・・・・・いや・・・それでも俺は・・・


「・・・絶対・・・てめえをぶっ飛ばしてやる・・・」


「ハッハッ!いいね・・・やってみな!」


来る!


逃げるな!・・・逃げずに・・・前へ!


正面と右か左かどちらかに来る・・・なら俺は・・・


「バッカ右か左に躱せよ・・・そのぶちゃいくな顔が抉れ・・・え?」


タイミングは分かった


これまでのように見えない手だけだったらどのタイミングで来るか分からなかったけど奴は斬る時は手を振る・・・その手の振りに合わせて左肩を出しマナを込めると衝撃波が見えない斬撃を掻き消す


すると奴との道が開ける


エメンケはなぜ目えない斬撃が消えたか理解出来ずに呆けている・・・今が最大で最後のチャンス!


アイツの作った道具に助けられるのは癪だが今はそんな事を気にしてる余裕はねえ・・・一気に近付いてもう一度・・・


「お前何をしやがった!!」


また無数の見えない手に殴られる


焦っているのか狙いなどそっちのけでボコボコに


けどそう・・・奴は焦っている


なぜ斬撃が消されたか分からず焦っているんだ


だから俺は足を動かす


いくら殴られようとも・・・一歩・・・また一歩と前に


「このっ!・・・死にさらせ!!」


斬撃が来る


躱すかもう一度肩当から出る衝撃波で掻き消すか・・・いや・・・


「がっ!・・・痛えな・・・コラ・・・」


躱せばまた隙が生まれる


衝撃波で消せば次の衝撃波を出すまで時間が掛かる


なら俺の選択は・・・躱さない


「バカが・・・っ!?」



前へ



前へ



奴が仕留められる距離まで!



肩から腰くらいまで斬られた


けどまだ死んじゃいねえ


だから出せ


前へ


そして出すんだ・・・エメンケを仕留められる距離で衝撃波を


「このっ!調子に乗るな!」


見えない手の攻撃は止むことを知らない


だが鎧を脱ぎ捨て盾を置いて来て生身で食らってようやく気付いた


コイツは安全圏から攻撃し相手を圧倒して来たから効率ってもんを考えていない・・・自分の身が脅かされる事がなかったから如何にして相手を素早く倒すか・・・そんな研究なんかして来なかったんだ


ただ闇雲に殴り急所なんて狙って来ない・・・痛みを知らないから相手の痛い所が分からない・・・そんな攻撃が・・・


「効くかよ!!」


もはや限界を迎えていた


それでも一歩踏み出して左肩をエメンケに向ける


この距離なら・・・仕留められるはず!


「食ら・・・え!!」


奴はまだ何故見えない斬撃が消えたか理解していないはず・・・その正体を今見せてやる!


「なっ!?・・・ガハッ!!」


俺は宣言通りエメンケをぶっ飛ばした


これでもう俺には何も残っていない


アイツの魔道具に頼ったってのは癪だが仕方ねえ・・・守ってやったんだから貸し借りなしって事で・・・・・・・・・嘘・・・だろ?


「・・・なるほど・・・肩当てが魔道具になっていたか・・・そこから出る衝撃波を斬撃にぶつけて消したって訳か・・・ああ、そうそう言ってなかったが俺の『神の手』は押すも引くも叩くも抓るも・・・斬るも守るも自由自在・・・惜しかったな・・・ダンとか言ったか?光栄に思え俺が名前を覚えておいてやる」


「・・・クソッタレ・・・」


これでも届かないのかよ


結構頑張ったのに・・・ダメなのかよ・・・


せっかくアイツが戻って来た時に『エモーンズを守ったのはお前じゃねえ!俺様だ!』って胸を張って言おうと思ってたのに・・・ざまぁねえ・・・


「さらばだ・・・ダン!」


盾・・・は置いてきたか・・・まああっても腕はもう上がらねえしどうせ防げなかった・・・今になって抉られた傷が痛みやがる・・・もうどうしようも・・・


「なかなか見込みがあるな・・・剣奴に向いている」


ドシンという音と共に僅かに地面が揺れた


そして背後から聞き覚えのない声・・・それに・・・剣奴?


「・・・なんだ?誰だお前?」


「見届けるだけにしとけと言われたが熱くなって出て来てしまった・・・さて、剣奴になる気はないか?」


そう言って背後から俺の肩を掴む


何とか後ろを振り返ろうとするがもうマジで体力の限界・・・ギリギリ見えたのは俺の肩に乗せられた巨大な手だけだった


「・・・ならねえよ・・・」


「そうか残念だ。気が変わったら教えてくれ」


変わらねえよ・・・てかヤバい・・・意識が遠のきそうだ・・・早く何か・・・


「という訳で選手交代だ。ジルバだ」


「は?選手交代!?」


「こっちが名乗ったんだ・・・お前も名を名乗れ」


「ちょっと待て!いきなり出て来て何仕切ってんだ!そいつのトドメを刺した後ならいくらでも相手してやる・・・まずはトドメを刺させろ!」


「人の話を聞かない奴だな・・・コイツは気が変わったら剣奴になるんだ・・・殺させる訳ないだろ?」


「何を・・・」


「もういい。ウダウダ言ってないでかかって来い・・・お前相手では気が乗らないが相手してやる」


「このっ・・・いいだろう!貴様から殺してや・・・」



『剣奴王』ジルバ・・・参



「・・・え?」


「やはりつまらんな」



俺は夢を見ているのか?


俺の背後にいた男はその巨体を震わし前に躍り出ると一瞬で間合いを詰めエメンケを殴り飛ばしてしまった


数メートルぶっ飛び背中から落ちるとピクピクと痙攣しそこから動く気配はなかった


俺があれだけ苦労した相手に・・・くそっやってらんねえぜ・・・


・・・まあ何はともあれこれで俺の出番は終わりだ・・・後は任せたぜ・・・


ちゃんと守れよ・・・ロウニール!




『神の手』エメンケVS『気絶』ダン&『剣奴王』ジルバ・・・決着──────

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