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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
522/856

518階 帰還

「ほう・・・あの召使いは戦えたのか」


「油断大敵!・・・乾坤一擲!」


「油断などしておらん。お主の攻撃に飽きただけじゃ」


素早さで翻弄し隙を見て攻撃を仕掛ける・・・色々な手段を持っておるが結局はその繰り返し・・・ならどうするかは簡単じゃ


来た攻撃を受け流せば良い


「っ!・・・」


虚実の攻撃を上手いこと混ぜおる。じゃが虚から実・・・すなわち牽制から攻撃に移る際、ほんの僅かではあるが手に力が込められる・・・ならばワシはその力が込められた攻撃だけを捌けばいい


「今のはなかなか良かったぞ?じゃがまだまだじゃな・・・」


「・・・海千山千・・・弱肉強食・・・」


「また訳の分からん事を・・・しかし・・・」


弱肉強食はその通りじゃな


弱い者は強い者に食われる・・・ワシがこやつを・・・そしてあの男がサラを食わんとしているように・・・


コゲツと言ったか・・・奴は・・・強い!


普段のサラなら戦えぬ事もないだろうが気負い過ぎてか上手く力を出せてないように見える


まあ無理もない・・・夫が倒れ苦しんでいる中、傍にいることも出来ないのだから・・・


何とか助けに行ってやりたいが攻撃をいなせているだけでこやつも決して弱い訳では無い・・・もし隙を見せればサラの元に辿り着くことなくやられてしまうだろう


どうにか隙を作れないものか・・・む?


背後からこちらに向かって来る気配を感じる


敵か味方か・・・ワシの背後はエモーンズ・・・となると味方の可能性が高・・・


「てめえクソジジイ!ニンジャマスターに何してんだ!!」


むっ!敵か!


怒気を孕んだ怒鳴り声と共に迫り来る影


目の前の男・・・アッシュと比べると全てが拙いのう・・・気配を消す気もないようじゃ


「んなっ!?見ないで躱した!?」


躱した事に驚かれるとは思わなんだ・・・この乱入者は自分の実力すら分かっておらんのか?気配を撒き散らし怒鳴りながら走ってくれば誰でも躱せるじゃろうに


本気で躱されると思っていなかったようで目標を失った乱入者・・・覆面姿の面妖な男はつんのめって転びそうになるも何とか耐えて胸をなで下ろした


「よ、よく躱したなジジイ!けど今度はそうはいかないぞ!」


「・・・何者じゃ?お主」


「俺の名はヤット・・・『忍者』ヤットだ!」


短剣を逆手に持ち決めポーズを披露するヤット・・・助っ人にしては弱過ぎるし一体こやつは何をしに出て来たのか・・・


「・・・」


どうやらアッシュも知らないようじゃな。眉間に皺を寄せながら首を傾げておる


はてさてどうするか・・・こうしている間にもサラが・・・んん?・・・ほう・・・暫くは保ちそうじゃな


「この歳で2人相手は骨が折れるが仕方ない・・・心してかかって来い忍者達よ──────」





「余り物には福があるって言うけど・・・なかったみたいだな~」


「そうね・・・ハズレを引いたみたい・・・」


『拳豪』コゲツ・・・下手したらあのジルバと同じくらい強いかも・・・体も重たいし普段通りの力が出ないっていうのもあるけどこのままじゃ・・・負ける・・・


「何だか調子が悪いみたいだが関係ないよな?もしかして戦ってるうちに熱くなって実力を発揮するタイプか~?ならもう少し痛めつけてやるか」


そんな訳ないでしょ勝手に決め付けないで欲しいわね


にしてもこのままじゃ厳しい・・・コゲツと私はタイプが似ているから実力差がなかなか埋まらない


キースさんやジルバのような力で押し切るタイプなら技術で補えるけどコゲツは私と同じ技で戦うタイプ・・・同じタイプだと一発逆転は難しい


・・・いや、何を考えている・・・勝つのが目的ではない・・・なら・・・


「またその扇子か?いい加減鬱陶しいな」


全開で・・・ぶっぱなす!


「五式・暴風!」


荒れ狂う風がコゲツを襲う


だけど彼はその風を引き裂き距離を詰め・・・


「どこを叩けばいい音が鳴る?腹か?」


「くっ!」


その言葉に反応し咄嗟にお腹を守る・・・が


「いや、顔面か」


コゲツが繰り出した突きの軌道は腹部から顔に向けて変化する。何とか顔を横にズラし躱そうとするが間に合わず拳は掠め頬の肉が削ぎ取られる


「んっ!」


「いい音を奏でるじゃないか・・・お次は・・・っと!」


体を回転させ蹴りを放つがコゲツは飛び退きその蹴りを躱す


「足癖悪いな」


「そっちの手癖程じゃないわ」


一歩も動かず私の攻撃を全ていなしたと思ったら今度は動いて私に攻撃を当て私の攻撃を躱す


通じない・・・けど!


「闇雲に向かって来るかと思えば逃げ、逃げると思えば向かって来る・・・どうせ無駄なのに頑張るねえ~・・・もしかして手詰まりか?」


「な訳っ!」


ただ立っているだけなのに隙がない・・・なら!


「四式・竜巻!」


「接近戦仕掛けようとして範囲技か・・・それで虚をついたつもりか?」


竜巻をコゲツの前に作り出す


するとコゲツは両手をパンと音を鳴らして合わせただけで竜巻を消し去ってしまった


そんなふざけたやり方とは思わなかったけど消されるのは分かってた


竜巻を出した目的はダメージを与える為じゃない!


「・・・なるほど・・・そう来るか・・・」


消される前に竜巻が起こした土煙・・・その土煙に紛れ姿を隠す


「目眩し・・・確かに砂が入るから目が開けられないが・・・」


背後から襲ってもダメだったんだ・・・目を閉じさせたとしても攻撃は通らないだろう。けど目的は攻撃を通す事じゃない・・・


土煙の中コゲツの背後に回り込み攻撃を繰り出す


するとコゲツは目を閉じたままその攻撃を受け止めた


「無駄・・・だ?」


これまで遠距離では風牙龍扇で魔法を繰り出し、近距離では足や拳を使っていた。だから当然近距離での攻撃は足か拳が来ると思っていたはず


竜巻で土煙を起こして目眩しした理由は隙を作る為じゃない


「拳で突いて来ると思った?残念・・・視界を奪ったのはこの為よ・・・零式・風喰い!」


視界を奪ってもコゲツには通じないだろう・・・けど視界が開けている状態よりは余裕はないはず。躱したりいなしたりする余裕がなければ防ぐはずと睨んだ


そして案の定コゲツは気配を察知し()()()・・・風牙龍扇を持つ私の一撃を


「っ!ガッ!!」


私の拳を受け止めようと開いた手のひらに風牙龍扇を突き出し風喰いを喰らわす・・・多分この方法が通用するのも一度きり・・・しかも殺してはダメだから手加減して気絶するくらいの威力しか出せないけどそれで充分・・・気絶させて後は・・・え!?


「・・・ってえな~・・・中を攻撃すんのは反則だろオイ~」


効いてない?・・・いや・・・足りなかった?


殺してはダメだと威力を殺したのがアダとなったか・・・しくじった!


「・・・痛かったのなら寝ててもいいわよ?終わったら起こしてあげる」


「アンタみたいな美女に起こしてもらうってなら寝るのも悪くねえが心地いい刺激を与えられて体が起きちまってな・・・今は暴れたくてウズウズしてんだよ・・・当然付き合ってくれるよな~?」


「どうやら起こし方がまずかったみたいね・・・寝起きが悪いなら先に言ってくれれば良かったのに」


まるで今まで寝てたかのような言い草・・・まあ実際そうなんだろう


明らかに雰囲気が変わった


眠れる獅子を起こしちゃったって訳か


勝機はない。たとえ体調が万全だったとしても大して変わらないだろう。敵わぬと分かっていて挑むは愚か者のする事・・・勇敢ではなく無謀だ。ここは恥を忍んで逃げるべき


「おっ、覚悟したって面構えだな・・・いいね~」


逃げよ逃げよと心は叫んでいるのに意思とは反対に足が前へ前へと繰り返す



いつからだろう



「ねえ・・・ひとつ聞いていい?」


「なんだ?」


「『強さ』って何だと思う?」


「あん?藪から棒になんだ?」


「色々あると思うの・・・『強さ』って。力が強かったり技が優れてたり・・・速いってのもそうだし特殊な武器を持っているっていうのも『強さ』のひとつだと私は思う」


「そりゃそうだ・・・なんだ~?武器を使った事の正当性を認めさせたいのか?なら気にしなくていいぜ?別に武器を使うのを卑怯だとか言ったりしない」


「そうじゃない・・・ちょっとね・・・私の『強さ』って一般的にどうなのかなってふと思って・・・」


「アンタの強さ?」


「ええ・・・いつからだったか忘れたけど私の『強さ』は・・・」



まだ私は強くなれる



だけど才能のない私はゆっくりとしか強くなれない



それでもこうして強敵と戦う事になったら・・・自分の『強さ』に頼らざるを得ない



最初は悔しさが勝っていた



けどある時から・・・受け入れることにした



その『強さ』が彼との出会いを引き起こしてくれたのだから



「コーゲーツー!!」


「な、なんだ!?」


「私の『強さ』は『縁』・・・人との繋がりが私に勝利をもたらす」


「縁・・・だと~?」


「何が『勝利をもたらす』だよ!コゲツが終わったら次は君の番だ!サラ・セームン!」


「・・・たまにこういう『奇縁』もあるのが玉に瑕なのよね・・・まあとにかく無事で良かったわ・・・シークス」


ラズン王国に置いてきてしまったシークスがこのタイミングで戻って来た。しかもコゲツと顔見知りでしかも恨みを持ってるみたい。都合が良すぎるけど今はその都合の良さに感謝する・・・悔しがるのは後でいい・・・今は自分の『強さ』を最大限に利用するのみ!


「『無事で良かった』だって?よく言えたもんだね・・・手伝わせておいて置いて行った分際で!」


「手伝い・・・そうね・・・手伝って・・・くれた・・・のにね」


「くっ!確かにあの時は役に立たなかったかもしれないけど・・・もしかしてあれか?役に立たなかったから印象に残らず置いて行ったとでも言いたいのかよ!?」


「そんな事・・・ないわ」


「~~~!このっ・・・絶対ぶっ飛ばしてやる!・・・でもその前に!・・・コゲツ!」


「あのな~師匠か兄貴と呼べと何度言ったら・・・」


「黙れ!確かに色々教わったけどそれ以上にやれあれを買いに行けだやれ飯を作れだと散々こき使いやがって・・・しかも用事が出来たとボクとヤットを放置して突然居なくなりやがって・・・あれからボク達がどれだけ苦労してここまで辿り着いたか知らないだろ!」


「仕方ないだろ~?勇者に帯同しろって殿から突然言われたんだ・・・それにお前らなら何があろうと平気なくらい鍛えたし・・・問題なかっただろ?実際」


「黙れよコゲツ・・・そろそろ仕返ししてやろうと思った矢先に消えやがって・・・一発・・・いや二発くらいは本気で殴らないと気が済まない!覚悟しろ!・・・それとサラ!お前とロウニールも同じだ!ボクをコケにしたツケ・・・ここでまとめて払ってもらうよ!」


・・・どうやらシークスの身に色々と災難が降りかかったみたいね・・・


「分かった・・・コゲツの後ならば甘んじて受けよう」


『縁』が『強さ』など他人任せもいいとこだ


けど何としてでもこの局面を乗り越えなくてはならない・・・だから感謝する・・・たとえこの縁が奇縁だったとしても


「・・・チッ・・・何がどうなっているのか知らないけど・・・とりあえずコゲツ!まずはお前をぶん殴る!」


「・・・飼い犬に噛まれるとはこの事を言うんだな」


「誰が飼い犬だ!」


「・・・しかも狂犬ときたもんだ・・・どうやら躾が足りなかったようだな・・・これを機に二度とそんな口を聞けなくさせてやるよ・・・シークス」


「やってみろよ・・・コゲツ!」



『狂犬』シークス・・・参戦──────

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