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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
517/856

513階 人類の希望VS人類の敵

「・・・厳しい・・・のう・・・」


ヘクトは目を細め戦況を見つめていた


予想に反して善戦はしているように見えた・・・が、徐々に終わりが近付いているように思えた


「よくやってますよみんな・・・相手は勇者と勇者パーティーに選ばれた者達・・・世界を救う為に選ばれた奴らなんですから」


ヘクトの横に立ち同じように戦況を見つめるフリップは自慢の斧を地面に突き刺した


「・・・お前さんも出るのか?」


「まさか・・・手伝いたいのは山々ですが足でまといになるだけです・・・万が一彼らが軍を通してしまったとしたらその時は時間稼ぎでもしようかと・・・非戦闘員である住民が逃げるまでの時間をね」


「ワシの仕事を奪う気か?」


「ヘクトさんには住民を連れて行ってもらいたい・・・誘導も門番の仕事のひとつ・・・でしょう?」


「言うわい・・・まあ抜かれた時に考えるか・・・しかしそれにしても・・・強いのう」


「ええ・・・よくやっていると言いましたが・・・予想より遥かに強い」


2人が見つめる中、戦況は悪い方へと傾いていく


実質キースとオルシアの一騎打ちになっているキース&シツジVSオルシア&ダンテの戦いは拮抗しているように見えるがキースは傷付きオルシアは無傷・・・その理由は・・・



「おい!気の利いた事は出来ないのかよ!?」


「お茶でもお入れ致しましょうか?」


「っの野郎!」


キースとオルシアの実力は同等・・・だがキースがオルシアを斬りつけてもダンテがそれを回復してしまう。逆にキースが傷付いてもシツジは特に何をする訳でもなくただ立って戦いを見つめているだけだった



「なぜあの執事はあそこに?」


「聞いた話によると向こうのダンテって奴はヒーラーだから誰かと組む事になる・・・で、同じリガルデル王国のオルシアと組む可能性が高い・・・キースはオルシアと戦いたいが彼は人と組むのが苦手・・・という訳であの執事を連れて行ったらしいですよ」


「なるほど・・・初めから1人で2人を相手にしようと・・・執事は数合わせ・・・」


「らしいです。ですがどうやらキースはあの2人を低く見積もり過ぎてたみたいですな・・・このままじゃ・・・」


「思った以上にオルシアという者が強かったかそれともダンテという者の補助が良いのか・・・」


「まああのキースの事・・・何とかしてくれるでしょう。その隣の方が深刻です・・・」


「・・・サラ・・・ロウ坊の奥さんか・・・」


「ええ・・・決して弱い訳じゃない・・・いや、フーリシア王国でも上位に位置するサラが手も足も出ないなんて・・・」



サラの相手はコゲツ


同じスカウトで体術を駆使する2人だが差は歴然だった


サラの攻撃は空を切り風牙龍扇を使い繰り出す攻撃は掻き消される


衝撃的なのはコゲツは一歩も動いていない事だ


横に回ろうが背後に回ろうがコゲツは微動だにせずサラが攻撃を仕掛けて来た時だけ腕を動かし全てを弾き返してしまう


サラが手の届かない背中付近に攻撃を仕掛けてもまるで背中に目があるかのようにその場でしゃがみ躱していた


足を狙えば飛んで躱し背中を狙えどしゃがんで躱す


それでも攻め続けるサラに疲労が見え始め、焦りが表情を曇らせる



「挑発に乗りやがって・・・冷静になればもう少しやり合えるってのに」


「ロウ坊の状態もある・・・それにロウ坊の代わりもしておるのだ・・・致し方なかろう」


「そう・・・ですね。くそっ・・・事務仕事ばっかりやってないでもっと体を鍛えておくべきだった」


「・・・未来を若者に任せるのも先人の務めじゃぞ?」


「その先人が勇者パーティーの1人を相手に圧倒しているのですが・・・」


フリップの視線はサラのすぐそばで戦っているハクシに向いていた


素早さで翻弄しようとするアッシュ


だがハクシは一歩も動かず来た攻撃だけを見事に捌いていた


「ふむ・・・優勢なのはハクシ殿か」


「ええ真逆ですな・・・サラとコゲツ、ハクシ殿とアッシュ・・・相手を交代すればいい勝負になりそうですが・・・」


「いや・・・あえてじゃろう」


「やはりそうですか・・・けど見守っているこっちの身にもなってもらいたいもんです。心臓に悪いったらありゃしない」


「じゃが予想より遥かに強かった・・・コゲツと・・・あの魔法少女は特に」


「魔法少女って歳じゃないでしょ。ウルティア・・・ファミリシア王国にあのような魔法使いがいたとはね」


「ソニアさんもペギーも頑張っておるのじゃが・・・如何せん魔法が届いておらん」


「風魔法使いは何度か見た事ありますがアレは異質です。もしかしたら対魔法使い最強なのは風魔法使いなのかもしれませんね」


ソニアとペギーの2人は火魔法使い


ウルティアは風魔法使い


相性的には悪くないはずだった


しかし2人がどんな魔法を使おうともウルティアには届かない・・・なぜなら彼女の周りには常に風の壁が存在しているからだ


彼女が台風の目となりその周りを暴風が吹き荒れる


その暴風はソニアとペギーの魔法を掻き消すほど強く近寄れば切り裂かれるほど鋭い


故に彼女はただ2人に近付くだけで2人を圧倒出来てしまう


『天侯爵』・・・竜巻と化した彼女を止める術は2人には・・・ない


「・・・くっ・・・俺が突っ込んで・・・」


「足でまといになりたくないと言ってなかったかのう?」


「しかし!」


「ワシが我慢しておるのじゃ・・・お前さんも我慢せんと」


「え?・・・あっ」


フリップはヘクトの視線を追い、気付いた


ダンが既に敗北寸前である事に


「何がどうなって・・・まさかあのダンが・・・」


「分からぬ・・・見えない何かに殴られている・・・そんな感じじゃった」


「見えない?・・・マナならば見えるはず・・・一体何が・・・」


「不肖の孫ではやはり無理か・・・今からでも誰かと交代して・・・」


「ヘクトさん」


「・・・なんじゃ」


「とりあえず落ち着きましょう・・・で、信じましょうよ・・・自慢のお孫さんを」


「しかし・・・」


「最初はね・・・厄介な奴が戻って来たもんだと思いました・・・尊大で口が悪く喧嘩っ早い・・・ギルド長からしたら厄介極まりない奴・・・そんな印象でした。けど実際はどうだ・・・リーダーシップがあり面倒見が良くそして・・・強い・・・初めは組合長なんてとても務まらないと思ってましたが逆でした・・・組合長なんかにゃ収まらないですよ・・・ダンは」


「・・・じゃが・・・明らかに実力不足・・・皆の足を引っ張る事に・・・」


「何言ってんですか・・・魔王討伐パーティーの一人・・・そして俺がダンを最も評価しているところは・・・『諦めの悪さ』です」


「諦めの・・・悪さ・・・」


「引き際が肝心とか言うでしょ?でもダンは敵わないと知りながらも決して諦めない・・・ダンジョンで行き詰まっても平気な顔して毎日のように挑んでいく。恋敵が魔王を倒したとんでもない奴でも決して引かない・・・そんな背中を見て組合員達も俺も俺もと倒れても立ち上がり前へ前へと進んでいく。だからほら見て下さい」


「・・・ダン・・・」


見えない攻撃に為す術なく倒れていたダン・・・だが地面を掴み膝を立て力を振り絞り立ち上がる


「こっからですよ・・・諦めの悪さっていう本領を発揮するのは・・・」


「ワシよりも孫の事を知ってるみたいじゃのう」


「何言ってるんですか・・・死地とも言えるあの場に送り出したのはヘクトさん・・・あなたじゃないですか」


サラがみんなを集めて作戦を伝えた時、このメンバーにダンを推薦したのはヘクトだった


「あれは・・・他に誰もいなかったから・・・」


「自慢していいですよ・・・お孫さんの事」


「・・・ま、まあアレは人より頑丈に出来ておるから心配はいらん・・・ところで1人少女のような見た目の子がおったがあの子の事・・・知っておるか?」


「いえ・・・そう言えば2人を相手に・・・っ!?なんだあの煙は・・・あ、赤い?」


ヘクトに話を振られて見てみると赤い煙で姿が見えなかった


「どうなっておるんじゃ?何も見えないが・・・」


「サラが選ぶくらいなので弱くはないとは思いますが・・・」


「ワシらが心配したところでどうにもなら・・・っ!」


ヘクトの言葉を遮るようにフリップが突然前に躍り出て飛んで来た何かを受け止めた。ヘクトは驚きフリップが受け止めたものを覗き込むと・・・


《ガハッ・・・危ねぇ・・・死ぬところだった・・・んにゃろうめ!》


飛んで来たものの正体はベリト


口から出た血を拭いながら吐き捨てるように呟くと自分を飛ばした相手・・・勇者ジークを睨みつけながら再び戦場へ


「一番安牌だと思っていたが・・・やはり勇者は勇者か・・・」


「魔族が参加すると聞いて敵になると恐ろしいが味方になるとこの上なく頼もしい・・・そう思っておったが敵になった勇者は更にその上を行くか・・・」


ジークは無傷


対するベリトとバフォメットは傷だらけ


ジークの後ろに控えるラナはヒーラーであり実質一対二であるにも関わらずジークが魔族2人を圧倒していた


「正直他が劣勢でも何とかなると思えましたがあそこは違う・・・なぜだか分かりませんがあそこが負けたら全てが終わるような・・・」


「それはそうじゃろうのう・・・何せ相手は『希望』なのじゃから・・・希望に負ける・・・それは即ち『絶望』を意味する・・・」


「『人類の希望』が敵・・・じゃあ我々は一体何なんでしょうね」


「そりゃあ・・・『人類の敵』・・・じゃろうのう──────」





「いい港じゃないか・・・誰もいないけどまだ開港前なのかい?」


「さあね。こんな場所がある事自体初めて知ったよ」


「やっと・・・やっと戻って来た・・・屈折・・・何年だっけ?」


「泣くなよ・・・これから泣かせに行くっていうのに・・・なああの木の板は乗っても平気なの?」


「桟橋かい?そりゃあ船から降りる為に作られた物だから・・・ってちょっと!」


「船賃はここの領主に請求してくれ・・・ボクの精算が終わった後で生きてたら・・・だけどね」


「お、おい()()()()!置いてかないでくれよ!」


「お前もここから飛び降りればいい・・・忍者ならこの高さから降りても平気だろ?ヤット」


船のへりに乗って振り向いたシークスはヤットに微笑みかけそのまま飛び降りた


そして音もなく桟橋へと降り立つと街の方角を見て首を傾げる


「ここに人が居ないだけじゃなく街が妙に静かだ・・・何かあったのか?・・・ん?」


あまりの静けさに疑問を抱いていると上から叫びながら落ちてくるヤットに気付き嫌な予感がしてその場から飛び退いた


するとヤットはシークスが元居た場所に落ちて来て盛大に桟橋をぶち抜いた


「・・・おい忍者」


「・・・プハッ!た、助けてくれシークス!お、泳げな・・・」


桟橋をぶち抜き海に潜るとしばらくして浮き上がり溺れながらシークスに助けを求めるヤット


その様子を見て頭を抱えながら再び街の方角を睨みつけた


「いつもと雰囲気が違うね・・・一体何が起きているやら・・・」


「それなら・・・今!・・・まさに!・・・お仲間が溺れ中でしょうが!」


「溺れている割には余裕そうだな・・・忍者なら自力で何とかしてろ・・・ほら水遁の術?」


「出来るかぁー!!・・・・・・」


最後の力を振り絞り全力でツッコミを入れた後沈むヤット。シークスは沈みゆくヤットを眺めたあとため息をつく


「ハア・・・これからボク達を置いていったロウニールに仕返ししようって時に何をやってんだか・・・」



ロウニールにラズン王国に置いてけぼりにされたシークスとヤット・・・エモーンズに帰還──────

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