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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
509/856

505階 エモーンズの未来

「何か思い付いた?」


自室のテラスで街を見ながらボケっとしているとサラが僕に声をかけた


「何も・・・ナージ達が何も浮かばなきのなら僕なんかが考えても無駄って今更ながら気付いたよ」


「そうでもないと思うけど・・・これまでだって何とかしてきたでしょ?」


「たまたま上手くいってただけど・・・それで調子に乗ってハメたと思ったらハメられてたって訳だ・・・笑えないね」


慢心していなければチャンスはあったはず・・・それを勇者が強くなってたから叩くなんて悠長な事を言っているから足元をすくわれた


フーリシア王国はリガルデル王国と組まないと勝手に思い込み秘密は守られると思っていた・・・宣戦布告のタイミングと勇者がリガルデル王国から軍を率いてここに向かって来るタイミング・・・これが偶然と言うならどんな奇跡だって感じだよ


リガルデル王国の上層部・・・王様や第二王子は少なくとも僕が魔王を討伐し、魔王を演じていると知っているだろう・・・でもそれを勇者に告げず上手く利用して・・・


ったくマルスの野郎・・・やってくれるな本当・・・


「フーリシア王国はあなたは手に負えないと判断したのね・・・聖女達のように上手く利用しようとしたけど無理と諦め違う利用方法を思い付いた・・・なんだかフーリシア出身というのが恥ずかしくなってきたわ」


「そう言うなよ・・・腐ってるのは上辺だけだし・・・まあでもこんな事ならレオンと共に王族をぶっ潰してしまえば良かった・・・抑止力になると思ったんだけどなぁ・・・」


「抑止力?他の国から攻められないように?」


「いや・・・馬鹿な事をしないように・・・フーリシア王国が、ね」


「あなたの顔色を伺ってた人達がよく裏切ったわよね・・・勝てる自信があるのかしら?」


「あるから裏切ったんだろ?自分達じゃなく他力本願っぽいけどね」


勇者という他力を当てにした・・・魔王を倒す事が出来る勇者なら魔王を倒した僕も倒せるはず、と


「もう少しアピールしとけば良かったね」


「アピール?」


「ロウがどれだけ強いかを」


「逆効果になったかもしれないよ?それに勇者の強さは未だに不明だし・・・」


負ける気はしないけど逆にそれが不気味だ。普通じゃないのは間違いないはず・・・勇者特有の何か・・・それが分かるまでは油断は禁物だ


「・・・なら逃げる?私はロウとならどこでもいいよ」


くっ・・・可愛いことを!


冗談だと分かっていても今すぐ2人で何処かへと行ってしまいたくなる


てかもうこれプロポーズでは?散々僕のそれっぽい言葉を躱しといて・・・あっ、そうだ!


「サラ」


「なに?」


「勇者との戦いが終わったら・・・んぐっ!?」


サラは突然僕の口に手を当て言葉を遮る


何をするんだ・・・シャスの真似をしようとしたのに


「知ってる?本の中の主人公の仲間は大抵約束をして戦いに出ると死んじゃうの・・・お約束ってやつね」


ああ・・・だからシャスの言葉が何となく嫌な感じがしたのか・・・それにしても・・・


「サラが本ね・・・」


「何よ・・・私だって本くらい読むわよ。その本好きのお姉さんがお約束を破る方法を伝授してあげましょう」


「はいはい。で、本好きのお姉さんはどうやってお約束を破るんですか?」


「それはね──────」






僕は今馬に乗り悠然とフーリシア王国の最南端にあるエモーンズを目指している


これまでなら仲間達と和気あいあいとした雰囲気で目的地を目指していたが今は背後にプレッシャーを常に感じている状態


何万にも上る兵士が常に僕達を見ているからだ


居心地が悪い・・・その一言に尽きる中、また居心地が悪くなりそうな報が届いた


「フーリシア王国マルス王子様御到着です!」


ファミリシアのとある人物とリガルデルの第二王子と共に今回の作戦を考えた一人・・・フーリシア王国第一王子マルスなんちゃら・・・到着したって事は・・・


「勇者殿ー!ようやく集まりましたので一旦止まって打ち合わせをしましょう!」


一応僕の軍って事らしいけど実際軍を指揮するのはコイツ・・・リガルデルの将軍アルオン


フーリシアに入ってしばらく経ったけど未だにリガルデルとの国境を越えてない兵士もいるらしく止まって一箇所に集まるまで各国の主要メンバーが一堂に会し打ち合わせをすることになった


当然パーティーメンバーも参加すると思いきや参加するのは僕だけだった


「お初目にかかりますマルス・オギナ・フーリシア様。私は・・・」


「リガルデル王国の将軍アルオンだろ?知っている・・・それにしてもまあ何とも言い難い顔触れだな」


急ごしらえで用意した天幕の中には僕とアルオン、それにシャリファ王国代表サッズ・タレス・オード、ラズン王国代表ギリス・ザジ、アーキド王国代表シュベルツ・モード・レギナ、ファミリシア王国代表ベニア・サナド・イノスが座っていた


マルスは座っている人達を見渡しほくそ笑むと空いている席へと移動し腰を落とした


「僭越ながら私めが進行させて頂きます。先ず初めに今回の作戦の概要を・・・」


「おい!そんなまだるっこしい事言ってないで本題に入れ!」


アルオンが話し始めるといきなりテーブルに足を乗っけてがなり立てる男がいた


ギリス・ザジ・・・今までは一番身分が高くて偉そうにしてた奴だがこれからは・・・


「無作法な田舎者がいるな・・・未開拓の地で住むと品格は必要ないと言う事か?」


「あ?もう一度言ってみろド田舎の王子様よぉ」


ギリスとマルスがいきなり一触即発の雰囲気


今まではギリス以外は将軍止まり・・・ギリスはあんなでも一応ラザンの王子だから一番位が高かった


けど今は・・・同じ王子であるマルスがいる


次期国王である2人・・・その2人を止める事が出来るのは・・・


「黙れよ2人共・・・アルオンが喋ってるだろ?」


勇者である僕しかいない


この作戦は僕がいないと成り立たないはず・・・それに僕は・・・この中で一番強い!


「・・・ケッ!」


「・・・これはこれは・・・失礼しました勇者殿」


ギリスは合流してからずっとこんな感じだ。もう無視すると決めたけどこのマルスって奴もいけ好かないな・・・まるで僕を品定めするように見つめ笑みを零す


「・・・皆さん落ち着いたようなので話を進めさせていただきます。現在我々は──────」



アルオンの話はリガルデルを出発する前に散々聞いた話だった


僕達のパーティーはあくまで魔王討伐が目的だ


ただ魔王は魔物を召喚し何万もの人を虐殺した過去を持つ極悪非道な相手・・・僕達が魔王を討伐しに行っている間にエモーンズ周辺の街が魔物に襲われるかもしれないと懸念したリガルデル王国第二王子のクーガが人々を守る為に各国から人を集め軍を編成した


それが連合軍


連合軍はあくまで僕達のサポート・・・魔王城へは6縛りの結界がある為に6人までしか入れないので必要ないと思うけどもし万が一魔王がまた魔物を召喚してしまったら少人数の僕達じゃ守り切れない・・・なので仕方なクーガの提案を受けた


アルオンが総大将となり各国の軍はそれぞれの国の者が担当する事になっているけど・・・不安だな


「──────魔王がいるエモーンズに到着後軍は外で待機し勇者であるジーク殿が選抜した6人で魔王の居城に・・・その間に何かあればその都度指示をする形で・・・」


「ちょっと待った」


そこまでは僕も聞いていた


しかしそれに待ったをかけたのはマルスだ


「エモーンズには既に宣戦布告している・・・エモーンズのどの辺から結界が始まるかまだ分からないがその手前に住む住民には充分時間を与えている・・・それなのに逃げないって事は魔王の味方と見てもいいんじゃないか?」


「・・・と言いますと?」


「結界前まで突っ切る・・・勇者の障害になるもの全て蹴散らしながら、な」


「っ!それはエモーンズの住民を皆殺しにしてという事ですか?」


「そうだ。さっきも言ったが逃げ出す時間は充分に与えている」


「そんな事!・・・もしかしたら脅されているかもしれないのですよ?」


「その可能性を考えるなら操られていたり人類を裏切っている可能性に目を向けた方がいい・・・勇者がやられたら人類は終わる・・・もしエモーンズの住民が被害者ヅラして勇者に近付いて来たらどうする?助けてくれと手を伸ばし助けようと差し出した手を噛まれたら?責任は取れるか?アルオン殿」


「・・・」


可能性で考えればどちらの可能性も考えられる


安全を期するならマルスの考えは正しいのかもしれない・・・だが・・・


「僕が下手を打つと思うか?マルス王子」


「・・・分からない。分からないからこそ慎重にならざるを得ない・・・その辺を理解してもらえると嬉しいのだが」


「安心しろ・・・僕は何があっても魔王を倒す・・・それが勇者に選ばれた使命だから・・・」


「・・・悪かった・・・余計な心配だったな」


?・・・案外すんなり引き下がったな。もう少し食い下がると思ったけど・・・王族とか貴族とか自分の意見が通らないとすぐにムキになる印象だったがマルスは違った・・・その時はそう思っただけで終わった・・・が



その後アルオンから細かい作戦が告げられ一旦解散となった


まだ伸び切ってしまった列はこの地点まで辿り着いていない為、しばらく休息する事に・・・その間にある出来事が起きてしまう


休憩している僕達の元に助けを求める女性・・・どうやら道を歩いていると魔物に襲われたらしい


魔王を倒す事だけじゃなく人助けも勇者の仕事と勇み、魔物に襲われた場所にその女性と共に赴くと・・・


「この辺?」


「は、はい・・・この先の・・・あ、ちょうどその木の陰から・・・」


既に魔物は逃げたのか気配はしない


念の為に周辺を探ろうと一歩踏み出した時、何かが動いた


「っ!?・・・なっ!!」


一瞬の出来事で何が起きたのか全く分からなかった


ただいつの間にか僕は逆さ吊りにされ魔物に襲われたという女性にナイフを押し当てられていた


「その格好でもう一度同じセリフが吐けるか?勇者」


そう言ってどこからともなく現れたのはマルスとアルオン・・・マルスは苦笑いを浮かべアルオンは手で顔を覆っていた


「・・・これは何のつもりだ?」


「安心出来るか試しただけだ・・・もしこれと同じ事がエモーンズで起きたとしたら・・・人類は魔王に滅ぼされるだろうな」


「・・・」


なるほど・・・この女性は仕込みか・・・罠をしかけそこに誘導する・・・それに僕はまんまと引っかかった訳だ


くそっ・・・あの時簡単に引き下がったのはそういう事か・・・


「・・・もう少し警戒すべきでした・・・他の方達には事情を話しジーク殿お一人でここに来るよう仕向けてもらいました。そこの女性が警戒している者達をすり抜けてジーク殿に助けを求められたのもその為です」


・・・思い返せばおかしな点がいくつもあった


休憩中は兵士が見張りをしているしいつもなら誰かしらついて来るのにみんなは僕だけを行かせた・・・なのに僕はほいほいとついて行き罠にかかり・・・


背中から剣を抜き足に絡みついたロープを切ると逆さ吊りの状態から脱する


騙した女性とマルスを睨みつけるが・・・騙された僕が悪い


「・・・どうするつもりだ?」


「人類の存亡がかかっています・・・魔王が何を仕掛けてくるかも分かりません・・・エモーンズの住民が脅されてその場にいるとしても人質にされるかもしれません・・・なので・・・」


もう罠にはかからない・・・そう言えたらどんなにいいか・・・けど言えない・・・あんな無様なところを見られた後では


「我々には安全に勇者であるジーク殿を魔王の場所まで送り届ける義務があります。なので結界の前まで・・・露払いはお任せ下さい」


この瞬間、エモーンズに残る者達の未来が決まった──────

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