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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
506/856

502階 フラグ

「ようやく戻って来た・・・ここが僕の出発点・・・あの戦いを見て逃げた時から始まったんだ・・・僕の物語が・・・イテッ!」


「何格好つけてんのよ・・・さっさとあの魔族達を倒してフーリシア王国に行くわよ・・・ジーク」


ラナ


「あの時は逃げたのではありません・・・戦略的撤退です」


ウルティア


「それを逃げたって言うんだよ・・・行き遅れのお天気ババア」


エメンケ


「やめて下さい。こんな場所で嵐でも起こされた日にはせっかくの門出が台無しになってしまいます」


シャス


「よもや2人は好きあっておるのか?やめておけ・・・結婚してから地獄を見るぞ?」


バウム


「どうでもいいけどさっさとその魔族をぶっ飛ばしてフーリシアに行こうぜ?今のジークなら楽勝だろ?」


コゲツ


「油断大敵・・・余裕綽々」


アッシュ


「どっちよ・・・アンタ本当言葉数少ないし意味分かんない。それより魔族二体いるならアタシに一体ちょうだいよ・・・この槍が魔族の血を吸いたいって騒いでるんよ」


ソワナ


「俺は魔族の血には興味ないから遠慮しとこう・・・人の血であれば別だが、な」


バベル


「くだらん・・・なぜこの俺が・・・」


オルシア


「旦那まだ言ってんのかよ・・・諦めな・・・それにここが終われば念願の再戦だぜ?」


ダンテ


ラナと各国で得た10人の仲間達・・・とうとうここまで来たんだ・・・後は過去を清算して未来を掴む!


「みんな聞いてくれ!ここにいるであろう魔族は僕が倒す!2年前のあの時は正直ビビった・・・魔族とはこんなに恐ろしいものなのかとビビって逃げた!このままじゃ魔王に勝てない・・・挑む資格がない!だから・・・ここは僕に任せてくれ!絶対に勝って僕は・・・魔王に挑む!」


「・・・ジーク・・・」


みんなは僕の言葉に頷いてくれた


まあ不服そうな人もいたけど・・・この次に戦う事になる相手を考えればここで頑張る必要もないと思ってくれたのだろう


魔王・・・首を洗って待ってろ!ここの魔族を倒し更に強くなってお前を倒す!


「出て来い魔族!この僕が相手だ!」


なぜ魔族同士で戦ってたか知らないけどあの強さは今まで戦ってきた魔族とは一線を画す・・・そんな魔族を倒せればきっと魔王も・・・


「・・・」


静かだ・・・まさか僕に恐れをなして隠れているのか?


「どうした?仲間達は手を出したりしない!僕一人で相手してやる・・・だから出て来い!」


・・・・・・・・・反応がない


まさか共倒れしたか?それとも別の場所に移動した?


せっかくここまで来たのに・・・気合い入れて来たのに・・・まさかの不在!?


「おーい・・・頼むから出て来てくれ・・・」


・・・


「アッシュ魔族の気配感じられる?」


「・・・存在皆無・・・五里霧中」


「なんじゃそりゃ。逃げたか?」


逃げた・・・近くの村の人達の話だと最近まで戦っている音は聞こえていたみたいだし・・・って事は本当に・・・


「しゃーねぇな。ここで待ちぼうけしてても仕方ねえ・・・行こうぜ魔王退治ってやつ」


「フン、やっとか・・・陛下はフーリシアを訪れる前にリガルデルに寄って欲しいと言っていた・・・なので一旦王都まで戻るぞ」


「肩透かしだねぇ・・・アタシの槍が泣いてるよ」


ソワナの言う通り肩透かしを食らった感じだ。せっかく魔王退治の景気付けにと思ったのに・・・


それにしてもリガルデルの王様はなんで寄って欲しいなんて言っているのだろう?確かにファミリシアからフーリシアに行くのにリガルデルを経由するけど王都まで行くと遠回りなんだけど・・・


「リガルデル王国の国王陛下に何か考えがあるのでしょう。魔王討伐はこれまでの戦いと違って失敗の許されぬものになります・・・もしかしたら国王陛下はそれを懸念して何か手助けをしてくれるのやも・・・」


そう・・・これまでは負けたり逃げたりしても何とかなった・・・けど魔王との戦いは・・・負ければ終わりだ


僕達だけじゃない・・・僕達の負けは人類の負けを意味する


決して負けることの出来ない戦い・・・今の肩透かしを食らった状態で挑むべきじゃないかも・・・何の用事か知らないけど気持ちを切り替えるにはちょうどいいか・・・


「分かった!行こうリガルデルへ!そしていざ最終決戦だ!」


「おお!」


長いようで短かった旅がもうすぐ終わる


謎の声に勇者と言われたあの日から始まった僕の物語・・・魔王を倒してその後に・・・


「・・・なに?」


「な、なんでもない・・・行こう!」


「変なジーク・・・6人の中に私を入れなさいよ?魔王にビビってるジークのお尻をぶっ叩いてやるんだから!」


「ははっ・・・お手柔らかに・・・」


ごめんラナ・・・もう連れて行く5人は決めてるんだ・・・その中に君は入っていない・・・君には帰りを待っていて欲しいから・・・6人の中に入れないで怒るかもしれないけど・・・6縛りの結界の外で待っていて欲しい・・・きっと帰って来るから!


僕は歩き出す


僕は魔王を倒しラナと一緒にファミリシアに戻って来る!そう強く心に誓い──────




「行ったか?」


「はい・・・何故ここで始末されなかったのですか?」


「まだ旅の途中だろ?ここで倒しても立ち上がる・・・勇者ってのはそんなもんだ」


「なるほど・・・最後の最後で始末してこそ勇者の心を折ることが出来る・・・そういう事ですね」


「そうだ・・・てか始末言うな。何度も言ったろ?勇者は殺しちゃダメだ・・・他の奴らもな」


「ハッ!・・・しかしあれが今世の勇者パーティーですか・・・あまりにも・・・」


「そう言うな。てかまんま十二傑を連れて来たって感じだな。後の2人はフーリシア王国で、か。十二傑を選ぶとしたらディーンとキースか・・・しかしディーンは行方知れずのまま・・・キースは・・・。前途多難だな勇者も」


「集まるまで攻めて来ないのでは?」


「かもな・・・その時はシャドウに化けさせて加入させるか・・・どうせ名前だけで選んでいるんだ気付きはしないだろ」


「恐らくは。しかし困りましたね」


「何が?」


「もう少し骨のある方々と思っていたのですが・・・あれでは一方的すぎて興が乗りません」


「まあな・・・もしかしたら僕が原因かも・・・」


「どういう事ですか?」


「・・・本来勇者が倒すはずだった奴らを僕が倒しちゃったっぽい・・・多分」


「ああ・・・ベルゼブブにパズズは確かに放っておくと厄介・・・それを早々に始末してしまったのでしたね」


「うん・・・シャリファ王国とラズン王国は苦労したはずだよ。あのままだったらね」


「その経験がない分ですか・・・それにしてもあまりにお粗末・・・もしここに2人が残っている状態で何も知らずに来ていたらと考えるとゾッとします」


「間抜けな勇者共が2人に挑み死に絶えてこの世が滅びるか・・・そう考えると僕は世界を救った英雄って事になるな」


「そうなりますね」


「・・・知らぬが仏とはよく言ったもんだ・・・帰るぞベル・・・茶番の幕が上がる前に」


「ハッ!」


ゲートを開き僕達はファミリシア王国の通称『嘆きの山』からエモーンズにあるダンジョンの司令室へと戻った


そこには3人の魔族が帰りを待っており僕が到着すると片膝をつき迎えてくれた


《お帰りなさいませ・・・魔王様》


魔王様・・・か・・・まあ演じると決めたからには呼ばれても仕方ないけど・・・慣れないな


司令室に用意した玉座に座るとベルが横に立つ


あれから1年か・・・よもやこんな事になるとは・・・


《どうでしたか?勇者の野郎は》


「可もなく不可もなく・・・予想通りの成長だったよ。お前とバフォメットを倒しに来たらしいけどいなくて残念がってたぞ?」


《はっ・・・俺とバフォメットを、ね・・・》


「あのままお前らが残ってたら・・・世界は滅亡へ一直線だったな」


《つまり勇者は私達より弱い・・・ということですか?》


「多分ね・・・でも油断は禁物だ。勇者というくらいだから特別な何かがあるかもしれないし・・・」


1年前にベリトとバフォメットが争っていた山を訪れた際、ベルが2人をボコボコにした後で話をした。僕が訪れた理由とアバドンの話だ


訪れた理由は勇者に対抗する為に力をつけるというもの。アバドンの話はダンコから聞いた事を話した


ベリトとバフォメット、それにベルはアバドンの存在を知っており師匠は初耳だった・・・師匠が知らないのは人間の歴史に魔王に敗れた時の事など存在しないから当然と言えば当然だった


状況を察したベリトとバフォメットは快く(仕方なく)僕に協力してくれる事になり、僕を鍛えてくれた


初めの方は師匠の師匠であるベリトとそのベリトと同等の力を持つバフォメットを僕が敬い教えを乞う形であった・・・けど徐々にその関係性は逆転し今では完全に僕の方が上の立場となり2人は僕に従う事に・・・まあそう仕向けたのはこと男・・・2人を瞬殺してしまったベルことベルフェゴールだ


まさかここまで強いとは・・・シアと戦っていた時はかなり手を抜いていたんだな。それに僕と対峙した時も・・・


ベル曰く『ゲート』を見た瞬間から頭が混乱を極めていたらしいから戦いどころではなかったのかもしれない・・・『ゲート』はサキュバスとインキュバスしか使えない能力・・・その能力を僕が使ったらそりゃあ驚くはずだ


そんなこんなでベルは2人を僕の知らない間に説得(洗脳)して僕の配下にしてしまった


元々彼らはベルと同じく魔王の配下だったらしい


いつの時代も


ベルフェゴール、ベリト、バフォメット・・・それにヴァンパイアを加えた4人は常に魔王の配下として活躍し『四天王』と呼ばれていたらしい


けど今僕の前にいるのは・・・ベルフェゴール、ベリト、バフォメット・・・そして・・・


「6縛りの結界は完成したか?()()()()()()


《ハ、ハッ!恙無く》


「僕を魔王と思わせるには6縛りの結界は必ず必要だ・・・失敗は許されないぞ?」


《ハッ!》


四天王・・・と言っていいのか分からないけど最後の一人はシシリアちゃんを狙っていたシュルガットだ


僕がベリトとバフォメットに鍛えられている間にシレッとベルが見つけて来た


ベルの『探求』の能力は便利だな・・・魔王が重宝していたのも頷ける・・・まさか隠れていたシュルガットを簡単に見つけてしまうとはな


見つけて来た後は大変だったな・・・とりあえずキースがボコボコにしてそれからソニアさんとラディルさんまでも加わって・・・僕が止めなきゃ細切れになっていたところだ


本当は止める気はなかったけどシュルガットの能力は作戦に必要不可欠だったので止めさせてもらった



その作戦が『ロウニール魔王化作戦』だ



勇者は僕を魔王と思い込んでいる・・・リガルデル王国の第二王子が吹き込んだらしいけど否定出来る気がしない・・・なぜなら僕がやって来た事は魔王と言われても仕方のない事だから・・・


魔物・・・本当は魔獣だが・・・を創り操って人間を大量に殺した・・・僕にも言い分はあるけどやった事はは紛れもない事実だし僕の言い分なんて聞いてはくれないだろう


ならいっその事魔王を演じて勇者を迎え討つ方がいいのではないか・・・そう思うようになった


なぜなら『一回で終わらせたい』からだ


僕と戦って魔王じゃないと思われてしまうと奴らはまたやって来る・・・最終的な目標は『魔王を倒すこと』だから


なので僕を魔王じゃないと気付いてしまうと奴らは僕の事を物語で言う『壁』と認識してしまう。物語を盛り上げる為か知らないが勇者には挫折を味わう為に『壁』が設けられるのだ


勇者はその『壁』を乗り越えまたひとつ強くなる・・・『壁』と思われた方としてはたまったもんじゃない。強くなる為の踏み台にされるのだからな


そうならない為にも僕が最終目標である魔王になる必要があった・・・で、その為には魔王の代名詞でもある『6縛りの結界』が必要だった


その結界内には6人しか入れない・・・あの時もその結界があった事により結界の先にいるのが魔王と認識されていた


じゃああの結界はどうやって出来ていたのか・・・てっきりサキか魔王が作り出したものかと思っていたのだがどうやら違うらしい


魔王と勇者の決め事・・・簡単に言うとそんな感じだ


魔王は大量の人間が向かって来るのが煩わしく、勇者は犠牲を多く出したくない・・・その思惑が合致して輪廻に組み込まれたのだとか


という訳で『ロウニール魔王化作戦』の肝は如何にして6縛りの結界を作り出すかだった


んで白羽の矢が立ったのがシュルガット・・・『閉鎖』という能力を使うシュルガットなら作れるのでは?という事でベルが探して来て今に至るって訳だ


期待通りシュルガットは6縛りの結界を完成させた


そして勇者は各国を周り残すはフーリシア王国のみ


遂にやって来る勇者・・・後は完膚なきまでに叩きのめして二度と歯向かわないようにする


遺恨を残さないように誰も殺さない・・・ぐうの音も出ないくらいけちょんけちょんにして説教垂れて勇者から『勇』の字を奪ってやる・・・そうすれば二度と僕に挑む気にはなれないだろう・・・その後で僕はようやく・・・


「サラと結婚出来る」


《は?》《あん?》《今なんと?》《???》


「ん、んん!・・・何でもない・・・」


魔王になろうとしているのに結婚なんて出来やしない


魔王の状態でサラと結婚したらサラは『魔王の妃』とか言われてしまうし・・・だからプロポーズはこの件が終わるまで控えている


この件が終わったら・・・申し込むんだ結婚を!


・・・ん?どこかで聞いたようなセリフ・・・まあいっか


とにかくさっさと終わらせてやる・・・だから早く来い勇者!お前をただの『(しゃ)』にしてやる──────

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