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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
505/856

501階 師の師

「はあ?それでロウニール様だけ行かせちゃったの?この間までずっとそばに居て離れなかったのに?」


「・・・うん、まあちょっと思うところがあってね・・・」


ロウは強くなった勇者に勝つ為に修行の旅に出た


当然私もついてくるだろうと思っていた彼は私が行かないと告げるとかなり驚いていた・・・目の前のファーネと同じように


「道理でメイド服でもなく武道着でもなく珍しく普段着だと思ったら・・・そういう事だったのね。それで私をカフェに誘って何の話をする気?暇だから・・・って感じじゃなさそうだけど・・・」


「そうね・・・・・・・・・最近どう?」


「何よそれ・・・ざっくばらん過ぎない?それに話があるのはそっちでしょ?」


「・・・そうね・・・そうよね・・・」


「もう・・・調子狂うなぁ・・・何かあったの?まさかロウニール様に飽きたとか?それなら私が・・・」


「・・・それもいいかもね・・・」


「・・・ちょっと・・・冗談でもそんな事・・・サラ?本当に何があったの?・・・まさか・・・おめでた?」


「・・・逆」


「逆?・・・おめでたの逆って何よ」


「・・・出来ないの・・・」


「え?」


「もう付き合って一年以上・・・それなのに・・・」


「ちょ、ちょっと待って・・・私も経験ないしあれだけどそういうのってタイミングでしょ?そんなポンポン出来るようなもんじゃ・・・」


「でもありえる?都合の悪い時以外はほぼ毎日よ?初めはそういうものだろうと思って気にしてなかったけど・・・」


「ほぼ毎日・・・羨ましい・・・じゃなくて、それでも別にまだ悩む程じゃ・・・ない・・・と思う」


「・・・もし私のせいなら?ロウは貴族・・・それも一代限りではない爵位の中で最高位の公爵・・・周りも世継ぎを望んでいるはずよ?それなのに・・・」


「別にまだ若いのだし平気でしょ?」


「けど・・・ロウは私以外はって言ってるし・・・その私がもし産めない体だったら・・・」


自分の体は自分が一番よく知っていると思ったけどこればっかりは分からない・・・もしかしたらロウの方にあるかもしれない・・・でもそれを確認する術はない・・・どっちかの問題なのかそれともファーネの言う通りタイミングなのか・・・


もしそれを確認するとしたら・・・今の環境を変えるしかない・・・


「第二夫人や妾は必要ないって言ってるんだっけ・・・まあ確かにプレッシャーよね・・・」


「彼はそれとなく私と一緒になろうと言ってくれるけど・・・」


「なに?悩み風の惚気?」


「違う・・・もし私と彼が・・・結婚したらその・・・」


「ロウニール様には相談したの?」


「出来るわけないじゃない!・・・きっと彼はそれでも・・・」


「まあそうね・・・もし出来ないと分かっててもサラを捨てるなんて事はしなさそう・・・待ってあなたまさか・・・」


「・・・うん・・・」


どっちかの原因だったとしたら・・・確かめるには私以外で試す他ないと思う。もし仮に私以外ならすぐに出来るとすれば私に問題があるし出来なければ・・・


「・・・ロウニール様に相談してないんだよね?」


「うん」


「・・・なんで?」


「だからそれは・・・答えが分かってるから・・・」


「ならいいじゃない」


「そういう訳には・・・」


「じゃあ何?ロウニール様があなたに求めているのは子供を作る事なの?そうじゃないでしょ?そうじゃないってあなたも知ってるから答えが分かってるんじゃないの?それなのに身を引こうってわけ?」


「彼が普通の人なら・・・けどさっきも言ったように彼は公爵・・・この街の領主・・・彼がこの街を住みやすい街にしようと努力している姿をずっと見てた・・・街が変わる度に住む人の笑顔が増える様子も見てきた・・・傍で見てて誇らしかった・・・その笑顔を絶やしちゃいけないと思った・・・」


「別にロウニール様の子供じゃないといけないって事はないでしょ?ロウニール様の意志を継ぐ人なら誰だって・・・」


「本当にそう思う?色んな貴族を見てきたけどほとんど私利私欲に走る人達ばかり・・・住みやすい街づくりなんて興味ない人がほとんど・・・そんな人達の中から新たな領主が選ばれて今の街が維持出来ると思う?」


「それはロウニール様の子供だって同じ事でしょ?いくら親がそういう信念を持ってたとしても子供がそれを受け継ぐか分からないし・・・」


「けど自分の子ならそういう風に育てる事が可能じゃない?」


「育てるなら養子って手もあるわよ?幼くして両親を亡くした孤児を養子にして育てればよくない?」


確かにファーネの言う通りだ・・・私自身孤児だったし・・・けどそれはあくまで最終手段・・・可能性があるなら別の人と・・・


「とにかく!自分の意見ばかりじゃなくてロウニール様の意見も聞くべき!答えが分かってるからって聞かないで自分だけで決めるのは独りよがり過ぎるわよ?」


「・・・そうね・・・」


「・・・答えが分かっているくらい分かり合えているのでしょう?そんな相手が簡単に見つかると思う?あなたが何も言わず消えたらロウニールは何もかも捨ててでも必死であなたを探すと思うわ・・・そんな真似させる気?」


「うっ・・・」


「ハア・・・それで聖女様に診てもらったりしたの?体は」


「いや・・・エモーンズを去る前に診てもらおうか悩んだけど結局・・・」


セシーヌは今王都にいる・・・ずっとエモーンズにいると言っていたのだが父親に王都に一時でもいいから戻って来いと言われたらしく渋々戻って行った。彼女の『真実の眼』ならもしかしたら子が出来ない原因が分かったかも知れないけど・・・


「まあロウニール様を取り合った仲だもんね・・・『ロウニール様との子供が出来ないから診て』なんて気軽に聞けないか・・・」


「うん・・・相談すれば診てくれたと思うけど頼みにくくて・・・」


「まっ、さっきも言ったように養子って手もあるわけだし気長に頑張ってみれば?それか私が試してみようか?出来たらあなた達2人で育てればいいし」


「あのね・・・彼はしないだろうし例えして出来たとしてもそれなら貴女と彼が・・・ああ、やっぱりダメ・・・想像したらイラッとするわ」


「ちょっと!さっきまで『それもいいかもね』とか言ってたくせに!」


「その考えを改めさせたのは貴女でしょ?」


「う゛っ・・・言わなきゃ良かった・・・」


「良かったわ・・・貴女という友達がいて」


「ここ・・・奢りだからね」


「相談料としては安いものね。どうせ彼のお金だし」


「キィー!その喧嘩買ってあげる!」


「ちょうど良かった・・・今から鍛えに行こうと思ってたところよ」


ファーネに相談してから決断しようと思っていた


もし彼の前から去るべきならこのまま街を離れるつもりだった・・・そうじゃなかったら・・・


「・・・それ以上強くなってどうするのよ・・・」


「意外とあるのよ?強くなる必要が」


まだ子供だったけど私の蹴りを躱した・・・それにシャスさん曰く成長速度が早いらしいしうかうかしてられない・・・彼の元を去るのなら勇者であるあの少年を・・・と思ったけどロウと添い遂げるなら彼と共にあの少年を迎え討つしかない・・・その時に少しでも力にならないと・・・


「さあ行くわよ・・・ちなみに訓練相手はあの2人だからね」


「あの2人?・・・まさか・・・」


「そのまさかよ・・・手加減なんて知らないから気を付けてね」


「やっぱりやめようかな・・・」


「ダメ・・・貴女は街の防衛を担う兵士でしょ?強くなってもらわないとね」


「だからって!半魔と魔族の相手なんてイヤよ!そんな敵なんて襲って来ないでしょ!」


「来るわよ・・・それ以上の敵が」


「へ?・・・魔王を倒したんだしもう平和なんじゃ・・・まさか魔王以上の敵がいるってこと?」


「ええ・・・魔王と同等かそれ以上の敵・・・勇者が、ね──────」





「師匠・・・これは何の冗談でしょうか」


「冗談じゃと?壊すのがダメならこうするしかあるまい」


「こうするって・・・どうするんです?」


「ワシを鍛えてくれた師に師事を仰ぐしかないじゃろう?だからお主をここに連れて来た」


「この・・・冗談みたいな場所にですか?」


ファミリシア王国にいる師匠を訪ねてから数時間・・・僕は山があった場所に案内された


師匠の強さは知ってるけれどあのやり方は僕には合わない・・・他の方法で強くなれないかと尋ねたらここに連れて来られたのだが・・・


師匠曰くかなり高い山だったらしい・・・木が生い茂り動物が多く住む何の変哲もない山・・・その山が削られ既に丘と言っても過言ではないくらいの高さになっている。しかも所々には何者かが戦った痕跡が・・・どれほど激しい戦いを繰り広げればここまで荒らされるのだろうか・・・


「近くの村の者に聞いたらかなり前から時折激しい爆発音のような音が聞こえてきたらしい・・・それは今も続いているということは多分師が何者かと戦っておるのじゃろう」


「師匠の師匠って確か魔族ですよね?その魔族とここまで激しい戦いを繰り広げるって・・・」


師匠の師匠である魔族を討伐しようとしている人間がいる?力が拮抗していて勝負がつかないって事なのか?


地形が変わるくらい激しい戦闘・・・それを師匠の師匠である魔族とかなり前から続けてた・・・こりゃあ相手も化け物だな・・・


「ふむ・・・しかし良かった」


「何がです?」


「この様子だと酒を飲む暇もなかったじゃろうて・・・念の為に多めに酒を用意して良かったと言ったのじゃ」


そういえば師匠・・・ここに来る前に酒を買ってたな・・・自分で飲むかと思ったけど貢物だったのか


「酒が切れると話すら聞いてくれんからのう」


「どんだけ飲んだくれなんですか・・・てか、もしかしたら既にやられているかもしれませんよ?」


「ハッあの師がそう簡単にくたばるとは思えん。確かに実力は伯仲しておるみたいじゃが師が負ける姿など想像つかん」


伯仲してんなら負ける事もあるだろうに・・・まあでも最近も音は聞こえてるって話だからまだ決着はついてない可能性が高い・・・けどどうやって探すか・・・っ!?


《脆弱な気配を感じて来てみりゃ・・・ハクシじゃねえか》


「師よ!ご無事でしたか!」


どうやら探す手間が省けたようだ・・・向こうから来てくれた


しかし・・・


《持ってんだろ?さっさと出せ》


「は、はい!」


師匠は急いで持っていた酒瓶を差し出す。すると奪うように取り上げ封をしてある注ぎ口を噛み砕くとそのまま酒を飲み始めた


ボロボロの体・・・ここで激しい戦闘を行っていたのは間違いないようだな


《ブハッー!やっぱりうめえ!もう一本・・・と、その前に・・・誰だソイツは》


「あ・・・その・・・ワシの弟子でして・・・」


《弟子?・・・はっ、お前も偉くなったもんだ。あのハナタレ小僧が弟子とはな・・・その弟子を連れて来て何の用だ?俺はちぃと忙しい・・・弟子の紹介ならまた今度にしろ》


「一体何が・・・いや誰と戦っておるのですか?」


《お前にゃ関係ねえ・・・さっさとソイツを連れて山を下りろ・・・じゃないと来るぞ・・・アイツが》


「アイツ?アイツとは・・・」


《チッ!早速嗅ぎつけやがったか・・・行け!さもないと・・・》


《私に敵わないと助けでも呼んだか?ベリトよ》


《・・・コイツらは関係ねえ!まだ再戦まで日があんだろ?引っ込んでろバフォメット!》


どこからともなく現れたもう1人の男・・・コイツが師匠の師匠・・・ベリトの相手バフォメットか・・・


〘ダンコこの2人知ってる?どうやら魔族みたいだけど・・・〙


〘・・・ええ。まさかアナタの師の育ての親がベリトでその相手がバフォメットとはね・・・〙


〘ヤバい奴らなのか?〙


〘そうね・・・ベルフェゴールを呼んだ方がいいかも〙


〘そんなに?〙


〘いえ・・・そっちの方が話が早いからよ〙


話が早い?どういう事だ?


《再戦の日?そんなもの決めた覚えはないが・・・互いに回復したら戦う・・・それだけだろう?まさかまだ痛むと泣き言でも言う気か?》


《チッ・・・》


ダンコと話している間に一触即発の雰囲気・・・地形が変わるほどの戦いに巻き込まれたら無事では済まない。ゲートで退散する手もあるけどここはダンコを信じて・・・


「ゲート」


《あん?》


《なんだ?》


ゲートを開くと2人が振り返り僕を見た


すると運良く・・・まあほとんど僕の部屋から動かない事は分かっていたからいるとは思ってたけど・・・ゲートの先である僕の部屋にいたベルがゲートを通りコチラへとやって来た


「ロウニール様何か御用でしょうか?・・・おや?ベリトとバフォメット?」


《ゲッ!ベルフェゴール!?》


《なんで貴様が・・・》


「ふむ・・・さすがロウニール様。密かに戦力増強を画策されてるとは存じ上げませんでした。ただ少しばかり行き違いがあるようですね・・・ロウニール様の前で平伏せぬとは・・・」


《何言ってやがる・・・平伏だと?》


《貴様とち狂ったか!なぜ私が人間なんぞに・・・》


「・・・どうやら少々教育せねば使い物にならなそうです。ここはワタクシめにお任せ下さい・・・きっちりと教育してロウニール様に相応しい配下に仕立てあげたいと思います──────」

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