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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
502/856

498階 その者の名は

そのまま応接間で待っているとアルオンが現れた


一応客として座らせてコーヒーを出すと何も喋らずカップに手を伸ばし優雅に口へと運ぶ


「うーん、城で飲む最高級のコーヒーと遜色ない・・・いえ、むしろこのコーヒーの方が美味しいまである・・・香り、コク、苦味・・・淹れ方なのか豆自体なのか・・・どちらですかね?」


「知らん帰れ」


「・・・遠路はるばる来た友人に対して冷たくありませんか?」


「友人になったつもりもないし呼んだつもりもない・・・それに『遠路はるばる』は今日2回目だから飽きた・・・送ってやるから帰れ」


「用事も聞かずに?」


「どうせくだらない用事だろ?国が関係しているなら報せてから来るはずだし国を通して来るはずだ。それが何の前触れもなく来るって事は個人的な用事・・・もしくはあまり関わりたくない用事の可能性が高い。よって聞く価値は皆無・・・いやむしろ聞いたら損するまである」


「酷いですね・・・ここまで来るのに私がどれほど苦労したことか知ってて言ってます?」


「知らないし知りたくもない・・・勝手に来たのに苦労を押し付けるな。・・・ハア・・・一応聞くだけ聞いてやる・・・何の用事だ?」


どうやって来たかは知らないけどそれなりの日数はかかっただろう・・・リガルデル王国の将軍がフーリシア王国に用事があると言って簡単に来れるはずもないから色々と苦労してここまで来たのは容易に想像出来る・・・聞くだけ聞いてやろう


「忠告に来ました」


「忠告?」


「勇者が現れ破竹の勢いで各地のダンジョンを攻略し魔族を倒しているのはご存知ですか?」


「あ、ああ・・・何となくは聞いているけど・・・」


「我が国や北のシャリファ王国・・・今はラズン王国にいるとか・・・そして私が小耳に挟んだ情報ですと最終的にはここフーリシア王国に訪れるとの事です」


「へぇ・・・そりゃあ待ち遠しいね」


別に勇者が来てダンジョンを攻略しても問題ない・・・エモーンズに来たとしてもここのダンジョンを破壊するのは勇者であっても不可能だし


「・・・ピンと来ませんか?」


「何が?」


「勇者はフーリシア王国を最後に選んだのです。勇者の目的地・・・最終目標は魔王を討伐すること・・・つまり勇者はここフーリシア王国に魔王がいると睨んでいるのです」


「フーリシア王国に魔王が?」


確かにアルオンの言う通り勇者は各国で力をつけ仲間を集い最終的に魔王と対峙する事になる。だから勇者の最後目的地には魔王がいるはずだ。って事はつまりこの国に魔王がいると考えている事になる


勇者って啓示を受けるとか何とか聞いたような・・・もしかしたら魔王の居場所も啓示を受けたとか?


「ええ・・・そしてその魔王は・・・貴殿です。ロウニール・ローグ・ハーベス公爵閣下」


「へぇ・・・え?」


「恥ずかしいお話なのですが我が国は未だ次期国王となられる方が決まっておりません。もうとっくに決まっていてもおかしくない時期なのですが・・・。決まってない理由はひとつ第一王子の対抗馬であられる第二王子クーガ・エリエント・リーブル様の存在です」


「ちょっと待て・・・私が魔王と言ったりいきなり王位継承権争いの話をしたり・・・意味が分からんぞ!?」


「繋がっているのです・・・実は──────」



そう言ってアルオンが語ったのはリガルデル王国第二王子であり王位継承権二位のクーガ・エリエント・リーブルの話


すんなりと第一王子テメント・アースド・リーブルが次期国王に収まるはずだったがクーガはそれに待ったをかけた


そして始まる兄弟同士の骨肉の争い・・・しかも父親である現国王公認の争いだ


時には互いに兵を出し戦争したり暗殺者を雇い殺そうとしたり・・・かと思えば歩み寄り懐柔しようとしたりとありとあらゆる手を使い自分が王様になろうと必死だったらしい


そしてその手は他国にまで及ぶ


第二王子であるクーガはファミリシア王国と手を組んだのだ


さすがに他国を巻き込むのはやり過ぎに思えるがそれも王の資質であると現国王が認めた為に第一王子テメントは劣勢に立たされる。そこでテメントはクーガがファミリシア王国ならとある国に目を付けた


それがシャリファ王国だ


リガルデル王国の第一王子テメントとシャリファ王国の将軍であったラドリックは手を組む。ただラドリックの反乱に他国の王子であるテメントが加担する事は出来ない為に反乱の邪魔をせず、もしラドリックの反乱が成功した暁には互いに協力し合うという約束を交わした


だが現状は反乱が失敗に終わりテメントは孤立・・・逆境に立たされているらしい


そして更にクーガは仕掛けてくる


ファミリシア王国に現れた勇者を使い王位継承を決定的なものにするつもりなのだとか


「で、私を魔王に仕立て勇者に討伐させる、と」


「はい。閣下はリガルデル王国にとって怨敵と言えます。その怨敵を勇者を誘導し討ったとあらば間違いなく次期国王はクーガ王子になるでしょう」


・・・その怨敵を友と呼ぶ奴が目の前にいるのだが・・・ん?そうか・・・もしかして・・・


「お前・・・テメント派だな?」


わざわざエモーンズまで来て教えてくれるって事はクーガが王様になるのを避けたいから・・・つまりアルオンはテメントが王様になる事を望んでいるテメント派・・・


「違いますよ?」


違うんかい!


「私はリガルデル派です」


「・・・リガルデル派?」


「私が誰かの味方になると()()()()()()()()()・・・だから中立を保つ事にしています。なので誰かに忠義を尽くすのではなく国に尽くす事にしたのです」


「大した自信だな。じゃあなぜわざわざここまで来て教えてくれたんだ?」


「言ったじゃありませんか・・・友人だからです」


・・・この野郎・・・


どこまで本気なんだ?てかそもそもコイツの話を鵜呑みにしていいのか?でもリガルデル王国からエモーンズまで来て嘘をつく理由はないよな・・・


「で、私にどうしろと?」


「どうしろ?いえ別に・・・」


「・・・え?」


「私はただ忠告に来ただけです。友人が何の準備もせずやられてしまうのを見てられなかったので・・・」


「なるほど・・・大した友情だよ・・・」


そりゃあアルオンには関係ないだろうけどさ・・・教えてくれるなら少しは何か対策とか考えてくれてるかと・・・


「ああ、それとひとつだけお願いがあります」


「なんだ?」


「負けないで下さい・・・私以外には」


「・・・誰にも負けないさ・・・お前にもな」


「それでこそロウニール公爵閣下です」


何が『それでこそ』だ


「あっ、もうひとつお願いがありました」


「ひとつじゃないんかい!」


「明日辺りに私をリガルデル王国まで送ってくれませんか?あまり長い間留守にしているとバレそうなので──────」




厚かましい奴だ・・・しかも『今日一日はこの街を満喫したいので』だと?今すぐにでも送り返してやりたいところだが・・・


更に厚かましくお腹が空いたと言うので今はサラに案内してもらって食堂に行き食事をしている。そんな訳で僕は1人応接間である事を考えていた



それは・・・勇者の事



〘ダンコ・・・勇者ってやっぱり強い?〙


〘魔王として戦う気?〙


〘まさか・・・でも避けられないような気がする・・・魔獣を操っているのを見られてるしね〙


魔王ではないにしても魔族や魔族側の人間と思われても仕方ない行動を取ってしまっている。僕を魔王に仕立て上げるのに当然その事を勇者に話しているはずだ・・・勇者としては魔獣を操る者を放ってはおかないだろう


〘口封じで全員始末すれば良かったのに・・・〙


〘10万の兵士をか?5万でもやり過ぎだと思ってるのに10万はさすがに・・・〙


〘5万も10万も変わらないわよ。どうせあの人間共はロウがいなかったら同じ事をしていた可能性があるんでしょ?殺られる前に殺っただけ・・・何度この話を議論すればいいのかしら?〙


〘まあそうなんだけど・・・〙


〘それに中途半端だからこうなるのよ・・・火の粉を振り払ったつもりが周りに引火して今まさに焼け死にそうになってるなんて後世に語り継がれるくらい間抜けな話よ?〙


〘うるさい・・・ん?て事は勇者は僕を焼き殺すくらい強力ってこと?〙


〘放っておけばね。勇者は魔王を討伐する為に仲間を集め自らを鍛える・・・って事はつまり仲間を集め鍛えなければ魔王には勝てない事になるわ〙


そうか・・・放っておけばあの魔王と同等かそれ以上になるけどその前なら魔王に及ばない・・・今ラズン王国にいるって言ってたよな・・・そこからどこに向かうか分からないけどシャリファ王国は行ったって言ってたから次はアキード王国辺りか・・・今どれ位の強さなのだろう・・・もしかしたら既にかなり強くなっているかも・・・となると僕の取る行動はどちらかだ



先手必勝か魔王を超えるか



魔王もいない事だし勇者の役目は終わったも同然・・・リガルデル王国のクーガって奴に操られて僕を狙うと言うならこっちから・・・


〘私は魔王を超える方をオススメするわ。勇者は魔王亡き後も人類の希望・・・もし勇者が突然死んだと分かればこの大陸は闇に閉ざされる・・・〙


〘・・・てっきりダンコなら『殺られる前に殺るべき』って言うかと思ったけど・・・〙


〘そうね・・・・・・・・・アナタに話してなかった事があるの〙


〘話してなかった事?〙


〘ええ・・・疑問に思わない?勇者が勝利するならともかく魔王が勝利した後はどうなるか・・・〙


〘魔王が勝利したら?・・・魔王に唯一対抗出来る人間である勇者が負けたらそれは人間の敗北となる・・・そっから魔族の支配が続く・・・次の勇者が現れるまで・・・でしょ?〙


〘いえ・・・そうはならないの・・・本当はアナタに話さないで済むなら話したくなかったけど・・・〙


〘僕達は一心同体だろ?隠し事はなしだ〙


〘・・・ええ、そうね・・・。・・・魔王が勝利した時・・・つまり人間の希望が潰えた時、大陸は闇に覆われる。その闇は魔力となり魔族や魔物に無限の力を与えると同時にある者を起こしてしまう・・・〙


〘ある者?〙


〘・・・その者は勇者に勝利した魔王すらも()()してしまう・・・他の魔族も・・・もちろん生き残った人間も・・・。決して起こしてはいけない相手・・・その者の名は・・・『アバドン』・・・『破壊』のアバドンよ──────〙

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