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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
501/856

497階 来訪

後悔したその日から平穏な日々が続いた


大都市計画も順調に進み、しばらくするとムルタナの住民がエモーンズに移り住み、ペギーが言ってたように冒険者も増え続け広さに対してスカスカで落ち着いた雰囲気だった街も人が増えた為か活気を取り戻していった


色々な事があった


人手が足りないとフレシア女王に魔法大工を借りに行ったり船が入れる港を作る為にデュラン王の所に行き建築士を借りたり・・・そんなこんなで1年・・・エモーンズに腰を据えて内政に精を出す日々はダンジョンを作ってから続く慌ただしい日々が嘘のように穏やかだった



そんな穏やかな日もある家族の訪問で終わりを告げることになる



「・・・帰れ」


「おい!遠路はるばる来たダチを即追い返そうとすんな!」


「すんな!」


「誰がダチだ誰が・・・」


突然の来訪に頭を抱える


こんなにも嬉しくない客がかつていただろうか


「魔族・・・シュルガットは来たのか?」


「いや・・・てか、来てたらこんな所に来ねえよ。いい加減待つのは飽きたがかと言って警戒を緩める訳にもいかねえし・・・頼みのディーンは行方知れずのままだしおちおち散歩も出来やしねえ・・・てな訳でしばらく厄介になるぜ?」


「なるぜ?」


「・・・」


キース一家揃いぶみで訪ねて来たと思ったら・・・やはりそういうことか


シシリアちゃんが魔族であるシュルガットに狙われているから警戒を怠れない状態が続いている。もしディーンがいればそれなりに助けてくれただろうけど・・・


もう一年か・・・ディーンが行方不明になってから


「うちの旦那は人望ないからね・・・頼る所が少ないんだよ。まあ元々魔族を相手に出来る人物自体が少ないってのもあるけどね」


「いい屋敷じゃないか・・・ここならあたし達の部屋くらい余ってるんだろう?ケチケチしなさんな・・・公爵だろう?」


「ソニアさんにラディルさん・・・それにシシリアちゃんはいいにしても・・・」


応接間で既に我が家のようにくつろぐ2人・・・まあ恩もあるし3人は別に構わないけど・・・と、一番偉そうにするキースを見るとソニアさんは頷いた


「分かるよその気持ち・・・旦那じゃなければ世界で一番家に上げたくない男だからね・・・うちの旦那は」


「ハア・・・本当力だけしか取り柄のない男だよ。シシリアもこの男だけには似ないで欲しいもんさね」


「おい!言い過ぎだろ!」


「だろ!」


「言い過ぎなもんか。あんたここに来た理由は何だったか忘れたの?自分の娘が魔族に襲われるかもって時に『飽きた』とか言って・・・」


「いやだからそれは・・・だってそうだろ?四六時中家に籠ってする事ねえし・・・喧嘩相手のディーンは何処にいるか分からねえしロウニールはなかなか王都に来ねえし・・・あのままだと暇すぎて死んじまうわ!」


暇すぎで死にはせんだろ・・・まあでも言わんとしていることは分かる


「ここにいたら更に来ないんじゃないか?見つけられないかもしれないし王都のキースの屋敷より敷居は高いぞ?ここは」


シュルガットはサキから逃げたみたいだし・・・そうなるとサキと同等かそれ以下って事だろ?ならこの屋敷には寄り付かないはずだ・・・僕やサラ・・・それにベルやケインもいる・・・余程のアホじゃない限りこの屋敷に侵入しようとはしないはず


そうなるといつまで経ってもシュルガットの影に怯える羽目になる


「分かってんよ・・・だけど奴も追い込まれているはずだ・・・お前も聞いてるだろ?勇者の噂・・・」


勇者か・・・各地でダンジョンを破壊しまくってるって噂だな・・・しかも魔族も何人か倒したって話も聞く


仲間を集めダンジョンを攻略しつつ力をつけ魔族を倒す・・・絵本で言うところの中盤ってところか。勇者してるよ本当・・・最終目標がいないにも関わらず・・・


「確かに勇者の話をシュルガットが聞けば焦って行動に出るかもな・・・ならそれこそ王都にいた方が襲われやすいんじゃないか?」


「だから言ってんだろ?我慢の限界だって」


「・・・ソニアさん・・・なんでこんなのと結婚したの?」


「言わないで・・・日々後悔しているところよ」


「だからあれほど言ったのに聞かなかったアンタが悪いさね」


「くっ!言いたい放題言いやがって・・・とにかく!しばらく厄介になるからな!おいそこの執事!俺達を適当な部屋に案内しろ!」


「・・・ロウニール様?」


「・・・ハア・・・部屋は余ってるだろ?なるべく襲撃にあっても安全な部屋に案内しろ。それとキースの部屋は私の部屋とはなるべく離せ」


「畏まりました」


「・・・?別に家族全員同じ部屋でもいいんだぞ?」


「そんな部屋がいくつもあると思うな。部屋は大体1人部屋で頑張っても大人2人に子供1人までだ・・・となるとシシリアちゃんとソニアさんとラディルさんで一部屋・・・余りは離れにでも行ってくれ」


「余り言うな!・・・まあいい。同じ屋敷内ならいざという時守れるしな・・・おい執事!俺の部屋はソニア達の部屋の隣にしろ」


「どう致しますか?」


「好きにさせろ・・・任せる」


まさかキース達と暮らす羽目になるとは・・・屋敷をもう少し大きくするか?今でも充分だと思ってたけどキースがいるとなると途端に狭く感じてしまう


「てな訳でよろしくな!・・・・・・?」


「ではご案内致します」


キースが立ち上がり執事の肩を叩いた後、少し首を捻って彼を見つめた。執事はそれを意に返さず4人を部屋へと案内する


まさかキースは気付いたのか?正体を知っている僕でさえ本当にあの執事が魔族であるって事が疑わしく思う時もあるのに・・・


「賑やかになりそうですね」


キース達が出て行った扉を見つめていると後ろに立っていたサラが嬉しそうに呟く


「騒がしくなるの間違いだろ?メイドはともかく執事をもう1人くらい増やした方が良さそうだな」


「2人もいるのにですか?・・・あ、そうか・・・そういう事ですね」


「うん。それにしても・・・ったくなんで僕が気を遣わないといけないんだよ・・・」


「すぐに見つかると思ったのですが・・・なかなか上手くいきませんね」


「だね・・・魔族が変装・・・いや、変身か・・・したらここまで見分けがつかないなんてな。何処にいるかも分からずしかも人間と見分けがつかないなら探しようがない・・・同族ならもしかしたらと思って探させたけど無理だったし・・・」


それこそセシーヌの持つ『真実の眼』くらいじゃないかな?見分けられるのは


1年程前・・・逃げに徹している魔族を見つけるのは難しいとダンコに言われたけどベルにシュルガットを探させた。シアやもう1人の魔族も見つけた実績があったから期待してたけど無理だった・・・まあシアは純粋な魔族ではないしもう1人の魔族は行動パターンを知り尽くしてたから見つけられただけと言ってたしな・・・でもシュルガットを見つけないと見つかるまで居着くつもりっぽいし・・・どうしよう・・・


「セシーヌ様に頼んで一緒に探しに行きますか?魔蝕も他の人が治せるようになってますので頼めば手伝ってくれるかと」


「うーん・・・そうするしかないか・・・」


〘無駄よ〙


〘マジ?〙


〘前にベルフェゴールに探させると言った時も言ったでしょ?シュルガットを探すのは困難・・・ほぼ見つからないと思った方がいいわ〙


〘じゃあ待つしか手は無い?〙


〘そうなるわね。あとはシュルガットが狙っている人間を囮にするとか・・・〙


シュルガットが狙っている人間って・・・シシリアちゃん!?無理無理・・・そんな事出来るはずがない


「・・・どうやら待つしかないみたいだ・・・」


「ダンコが?」


「うん。確かに隠れている場所が分かっていれば探す事も出来るかもしれないけどそれも分かってないしな・・・下手したらフーリシア王国にいない可能性もあるし・・・」


シシリアちゃんを狙っているならフーリシア王国内にいる可能性は高いけど何とも言えないしな・・・探せないし囮作戦も使えないとなると待つしかないか・・・


「誰か!」


部屋の中から声を張り上げるとすぐにドアが開き執事のシツジが入って来た


「お呼びでしょうか?」


「ちょうどいい・・・知ってると思うけどキース一家が来た・・・で、しばらくこの屋敷で過ごすことになりそうだけど・・・どうする?」


「どうするとは?」


「・・・執事を1人とメイドを何人か増やした方がいいか?」


「いえ・・・一家族増えたくらいなら私とベル殿で充分かと・・・メイドも数は足りています。それともしよろしければ私めにキース様達を担当させてもらえませんか?」


「・・・マジ?」


「はい」


何を考えているんだ?・・・まあ本人がやるって言うなら別にいいけど・・・


「なら任せる・・・今はベルが部屋を案内しているから引き継いでおいてくれ」


「畏まりました」


シツジは返事をするとそのまま部屋を出て行った


シツジがキース一家を担当するなら確かに執事を増やさなくてもよさそうだ。ベルはシツジと共に執事服を着て執事の真似事みたいな事してるけど中身がアレだしな・・・それにベルには色々とやってもらう事があるし・・・


「・・・大丈夫なんですかね?」


「本人から言ってきたんだ・・・大丈夫だろ?・・・それにしても最近・・・と言うかここ1年くらい僕の周りで行方不明者が多いような気がするけど気のせい?」


「そうですか?シュルガットという魔族にディーン様の2人では?」


「シークスとヤット・・・それにケン・・・」


「・・・確かに多いですね」


シークスとヤットはともかくケンは・・・王都までシルを追ってきたところまでは分かっているがその先が不明だ。どこで何をしているのやら・・・


「ディーンは結局戻らず第三騎士団は第一と第二に吸収されたんだよな?」


「後ろ盾であった第三騎士団を失った第二王女のスウ様はどうしているのでしょうか?」


「あー、それなら大丈夫・・・第三騎士団の代わりに宮廷魔術師が後ろ盾になったから」


「それって・・・」


「サマンサと第三騎士団の副団長ジャンヌを強引に仲間に加えて魔法兵団を設立してスウ王女の後ろ盾になったんだと。犬猿の仲に見えたけど実は仲が良かったらしい・・・シーリスは公爵家だから数は少なくても第一第二騎士団と張り合えると思う」


「いつの間に・・・」


「僕も聞いたのはつい最近なんだけど実際はディーンが居なくなってすぐの事らしいよ・・・もしかしたら計画的なのかも」


「計画的・・・ですか?」


「うん。ディーンの失踪も含めて、ね。ほぼ次の国王は第一王子のマルスに決定しているからスウ王女も自分の身を守る為に色々と画策しているのかもね」


マルスは自分が王になるのは決定したような口ぶりだった・・・つまりスウは敗れたって訳だ。となると次の戦いが待っている・・・今までの戦いは王になる為・・・これからは自由に生きる為の戦いだ


「手伝わないのですか?」


「向こうが手伝ってくれと言ったら手伝うよ・・・けど多分上手くやるさ・・・何せ僕よりも優秀な妹だからね」


「この世にご主人様より優れた方がいらっしゃるとは思いもよりませんでした」


「いやいやごまんといるのは知ってるだろ?僕なんて・・・」


サラの褒め言葉に照れながら返事を返している途中で応接間のドアが開き朴念仁が部屋の中へと入ってくる


「ロウニール様」


「・・・なんだベル」


せっかくのサラとの一時を邪魔しやがって・・・くだらない用事ならぶっ飛ばす


「お客様がお見えです」


「客?今日はやたら騒々しいな・・・一体誰だ?」


「お客様は『リガルデル王国の友達が来た』と言えば通じると・・・」


リガルデル王国の友達?はて・・・リガルデル王国に友達なんていたか?てかリガルデル王国からわざわざエモーンズを訪ねて来たってことか?そんなヤツは・・・あ・・・


「サラ・・・どうやら僕より優れた人がやって来たらしい」


「ご主人様より?リガルデル王国にそのような方がいるのですか?」


「普通にいるよ・・・ただ来たのは多分・・・とびっきり優秀なヤツだ」


「とびっきり・・・その方は一体・・・」


多分・・・いや間違いなくアイツだ


でもなんで・・・まあ会ってみれば分かるか


一体何しに来たのやら・・・リガルデル王国将軍アルオン・マダスト・エシリスは──────

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