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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
500/856

496階 ペギーデート2

ペギーを待っている間に通信道具を使ってサラに報告・・・返って来た答えは『ご主人様のご自由に』だった


思い返せばサラが一緒に来なかったのも用事じゃなくて冒険者ギルドに・・・つまりペギーが居る所に行くから遠慮したのかも・・・そうだったとしたらサラに聞いたのは卑怯だったな


「お待たせ・・・ってどうしたの?暗い顔して」


「・・・いや、何でもないよ。じゃあ行こう」


「うん。気になってたけどまだ行けてない店があるの・・・そこでいい?」


「任せるよ」


着替えて出て来たペギーと共に街を歩く


きっとサラは今頃・・・いや今は考えないでおこう・・・後で許しを得るまで謝り倒せば・・・


「ロウニール君?やっぱり何かあった?」


「え?いや・・・まぁその・・・あはは・・・」


「・・・別にいいんじゃない?たまには()()で食事するくらい」


「・・・だよね。いや・・・多分サラもそう思って送り出してくれたと思うんだけどさっき確認しちゃって・・・」


「ああ、そういうことね。確認した方は気が楽になるけどされた方は・・・ね」


「うん。後ろめたくないなら黙って行って来れば良かったんだとあとから気付いて・・・確認された方の気持ちを考えてなかった・・・」


「うんうん、ダメとも言いづらい状況だと『聞くなよ!』って思っちゃう・・・まあどっちにしろやきもきはするけどね」


イライラしてるかな?・・・帰るのが恐ろしい・・・



ペギーが行きたかったと言ってた店に2人で入ると酒と料理を注文し料理が来るまで雑談に花を咲かせる


取り留めのない会話だが久しぶりに同期と話せて昔に戻った気分だ・・・魔王討伐以来怒涛の日々が続いたせいかこういう時間が取れなくなってしまっていた・・・こういう時間もたまには必要だな


頼んでいた酒が来て2人で乾杯し喉を潤す


しばらくして料理も運ばれてきて酒を飲み食事をしながら会話を弾ませる・・・が、食事を終え2杯目の酒に手を出した頃から様子が変わって来た


『聞いてよ』から始まった愚痴の数々・・・ほとんどがギルドに来る冒険者に対してだ


どうやらここ最近他の街からこの街に来る冒険者が多いらしい


その背景には国自体・・・いや、大陸自体がダンジョンにいる魔物よりも表に出ている魔物を優先して倒す流れになっておりこれまで通りダンジョンに潜っても儲けが少なくなってしまったからだ


その理由はダンジョンの入場料を取らない代わりに魔核の買取額をかなり下げた事によるもの・・・およそ半額くらいになったらしく入場料が取られないにしても割に合わない金額だ


逆に依頼を受けるとこれまでと同等かそれ以上貰えるという現実・・・なぜなら依頼は依頼達成料プラス倒した魔物の魔核を売れるからだ


だもんで各地のダンジョンは今や閑古鳥が鳴いている状態らしい・・・けどエモーンズダンジョンは変わらず大盛況・・・その理由は街の中にダンジョンがありかつ各階にゲートがあるから


入場料がなくなっても冒険者を続けるにはかなりの費用がかかる。装備はもちろん滞在費やダンジョンに潜る際に持って行く食料や備品の数々・・・街から離れているダンジョンではそれらが必須となるけどエモーンズダンジョンは気軽に入れて目標額に達成すれば帰ればいい。お腹が空いたってだけで帰っても儲けを出すことが可能になる


だから早い者勝ちの依頼を受けるよりこれまで通りのダンジョン攻略を望む冒険者達がこぞってエモーンズへと来ているのだ


エモーンズの領主としては人が増えるのは嬉しいけどペギーにとっては嬉しくない事らしい


いや、普通の冒険者なら歓迎なのだが・・・


「本当っ!ムカつくの!用もないのにギルドで話し込んだりさっきみたいに喧嘩したり・・・これまでだったら冒険者がいなくなったタイミングで休憩したりみんなと話したり出来てたのに・・・冒険者が1人でもいると受付に立ってニコニコしてないといけないのよ?分かるこの辛さ!」


「え、あ、はい・・・そうですね・・・」


「それに何度も喧嘩の仲裁していたら陰で『爆弾受付嬢』とか呼ばれるし・・・こっちは好きで仲裁している訳じゃないのに・・・」


仲裁?・・・あの片方を数メートル吹き飛ばすのが仲裁なのか・・・


「国が組合を解散させてから更に酷くなるし・・・もう辞めたい・・・けど・・・」


「けど?」


「他にいい就職先がないのよね・・・」


「そうなんだ・・・冒険者は?」


「冒険者・・・私は向いてなかった・・・」


「向いてない?マナ量も多いしぶっちゃけBランク・・・下手したらAランクぐらい強いと思うけど・・・」


「強さじゃなくて単純に向いてないの・・・ハーニア達にダンジョンに誘われて何度か行ったけど・・・私は()()()にはなれないなって・・・」


「・・・どうして?」


「ほら冒険者の人達ってこの先に何があるか分からないって状況で進んで行くでしょ?魔物がいたりトラップがあったり・・・それでも冒険者は進んで行く。覚悟を決めて命を懸けて。でも私は・・・この先に何があるか分からないって思った瞬間に足が止まるの・・・『マナが尽きたらどうしよう』とか『トラップでみんなとはぐれてしまったらどうしよう』とか考えると・・・そう考えてしまうと足が止まり先に進めなくなる・・・」


「・・・」


「マナ量が多いって言ったけどそれにも限度があるでしょ?この先で魔物が大量に現れたらって考えるとなるべくマナを消費しないようにしようとしてしまうの・・・結果魔法が打てずみんなに迷惑かける事になって・・・」


疑心暗鬼・・・実力があっても仲間を信じていたとしても()()を信じられていないって事か


でもどうして・・・ペギーは元々天才と呼ばれるほどの実力者だった・・・ただマナの育ちが思うようにいかなくて結局ギルドの受付に・・・でも今はマナの量は普通の人よりかなり多いしかつての天才と呼ばれていた自分に近付きつつあるはず・・・・・・・・・いや、待てよ


ペギーは何もなければ・・・勇者が魔王を討伐する物語だったとしたらどうなっていたのだろうか


僕がダンコを飲み込まなかったら・・・ダンコはエモーンズの広場にダンジョンを作りエモーンズは街へと変わったかもしれないがペギーは・・・おそらくダンジョンが出来たことにより新設された冒険者ギルドの受付嬢になっていたはず・・・マナ量が少なく上位の魔法が使えないままだったはずだ


そうだ・・・彼女は・・・僕が余計な事をしなければ・・・


「ロウニール君?」


「あ、ああ・・・ちょっと考え事を・・・うん?」


僕の様子がおかしいと覗き込むペギーになんでもないと言おうとして顔を上げると彼女の後ろに4人の冒険者らしき人達が立っていた


「あれ?誰かと思ったらペギーちゃんじゃん!・・・コイツは?」


初対面なのに『コイツ』呼ばわりか


「エルロンさん・・・彼は学校の同期で・・・」


「同期?そんな奴と2人でメシって・・・いいのか?こんな事知れたらダンさんが黙って・・・」


「ダンは関係ないでしょう?」


「・・・そうかい。まあいいや・・・じゃあな」


そう言って彼らは店をあとにする


・・・何だったんだ一体・・・



その後少し経って僕達も店を出て少し酔っているペギーを家まで送った


久しぶりに酒を飲んで少し酔っ払った状態・・・この状態で帰るとサラの怒りを増幅させると思いゲートを使わずに帰ろうと歩き出すと突然道を塞がれた


「よお、ちょっといいか?」


道を塞いだのはさっき店でペギーに話し掛けたエルロンとか言う奴とその仲間達だ


「何の用?」


「・・・ここじゃ何だから場所を移そうぜ」


あまり気乗りしないけど断ったら暴れ出しそうなので黙ってついて行く事に・・・すると人気のない路地へと入って行き突然振り向くと僕の胸倉を掴んだ


「どういうつもりだ?」


「・・・何が?」


「ペギーちゃんはダンさんの恋人だ」


「・・・へぇ・・・それは知らなかったな」


「しらばっくれるな!それなのになぜお前はペギーちゃんを誘って・・・まさか横恋慕ってやつか?」


「本当に知らなかったしペギーに惚れてもいない。ただ同期として食事をしていただけ・・・」


釈明している最中にエルロンは胸倉を掴んだ手に力を込め僕を壁に押し付ける


「能書きはいい・・・二度と近付くな」


「それを言う為に僕が1人になるのを待ってたのか?どうしてそこまでして・・・」


「・・・ダンさんに世話になったからだ。もう解散しちまったけど組合に入ってそれこそ手取り足取り教えてもらった・・・返しきれないくらいの恩があんだよ。だから少しでも返す為に・・・」


「・・・分かった。けど同期で集まったり話すくらいはいいだろ?」


「・・・勝手にしろ!ただしペギーちゃんに色目使った日にゃ・・・」


「安心しろ。そんな気は毛頭ない」


「ならいい・・・もう行け」


そう言って手を離すとサッサと行けと手を振った


多分まだペギーとダンは付き合ってないはず・・・僕はともかくペギーに近付く他の人にもこんな事をする気だろうか・・・でもここでそれを聞いたり他の人にはやるなと言うと角が立つよな・・・後でダンにやめるよう言うように言っておこう


「待て!」


解放されてやっと帰れると思い歩き出した矢先に背後から声を掛けられた・・・もうなんだよ・・・


「そういや名前を聞いてなかったな・・・なんて名前だ?」


「・・・ロウニール・・・ロウニール・ローグ・ハーベスだ──────」





今度こそ本当に解放され酔いも覚めたのでゲートを使い屋敷の自室へ


しかし僕の正体に気付いた時のエルロン達の顔ときたら・・・そりゃあ驚くだろうな。さっきまで胸倉掴んで壁に押し当ててた相手が貴族・・・しかも公爵だったのだから


それにしてもあの顔は・・・


「随分と楽しそうですね?・・・おかえりなさいませご主人様」


思い出し笑いをしながらゲートを潜るとメイドなサラがお出迎え・・・しかもその顔には笑みすら見え隠れしていた・・・その笑みが怖い・・・


「あ・・・う、うん、ただいま・・・」


「お風呂にしますか?それとも・・・」


「怒ってる?」


「怒りですね?畏まりました」


「いやいやいや!お風呂か怒りかって選択ある!?僕はただ・・・」


「ただ・・・なんでしょうか?」


「・・・なんでもありません」


怒ってる・・・そりゃあ怒るよな・・・他の女性と2人っきりで食事に行ったのだから・・・僕が逆の立場なら相手の男を殺しかねん


「それで・・・楽しかったですか?お食事は」


「あ・・・まあ・・・それなりに・・・」


「へぇそうなんですね。それは何よりです」


「・・・えっと・・・ごめん!食事程度ならって・・・もうしないので許して下さい!」


この怒りを収めるには謝罪しかない!


頭を下げて誠心誠意謝るのみ!


許しを得るまで頭を下げ続けているが反応がない・・・気になって顔を上げると少し顔を拗ねらせたサラがそっぽを向いた


「・・・今回だけだからね・・・」


「っ!ありがとう!」


良かった・・・じゃあ早速・・・


「・・・何?」


「いや、仲直りの記念に・・・」


「は?ダメに決まってるでしょ!しばらく禁止!」


サラに手を伸ばしたらペシって叩かれた


どうやら僕はかなり罪深い事をしてしまったみたいだ・・・


今度からは絶対に女性と2人っきりで食事をしないと心に誓い今日のところは枕を涙で濡らすのであった──────

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