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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
498/856

494階 ファーストコンタクト

「これにて完了っと」


リガルデル王国の王都サーテルデールにある城から出て軽く伸びをする


長かった・・・軽く引き受けたはいいけど色々と大変な目にあった・・・それもこれでおしまいだ


「これで各国の調査は完了・・・結局勇者は見つからなかったけど・・・まあ勇者捜索はオマケみたいなもんだから問題ないだろう」


「お疲れ様でした。これからどちらに?」


「せっかくだからリガルデル王国の王都を見て回ろうと思ってね・・・サラと一緒に」


リガルデル王国国王ファーデムに魔物の調査が終わったと告げると宴を開くとか言い始めたので丁重にお断りして急いで外に出た。堅苦しい宴もお断りだが何よりアイツに・・・アルオンに出会す前に逃げるように


また会ったら憂さ晴らしに付き合えだの言われそうだし何となく苦手なんだよな・・・かと言ってせっかくサラとリガルデル王国に来たのにそのまま帰るのももったいないし・・・


という訳で見つかるまで王都を満喫して見つかったら全力で逃げよう!


「・・・そう言えば宜しかったのですか?あの事をお伝えしなくて」


「あの事?」


「魔蝕が聖女でなくとも治せるという事を・・・」


「僕から伝えなくても数日後にはフーリシア王国の王様から伝えられるさ。僕からよりも国から正式に発表された方がインパクトがあるだろ?」


「ですがそれでは・・・」


「もうこれ以上手柄はいらない・・・それに発見したのは僕じゃなくベルだしね」


「ご主人様が調査を命じて発見したのですからご主人様の手柄です。それを国に譲るのはどうかと・・・」


「誰が手柄を立てようが関係ないよ・・・魔蝕さえ治ればそれでいい。それに今でも充分過ぎるくらいの地位をもらってるしね」


公爵の上は王様だけだ。これ以上手柄を立てたらどっかの誰かさんに睨まれてしまう・・・もう遅いかも知れないけど・・・


「・・・ご主人様がそれで良いのなら・・・」


「サラだってあんまり手柄とかそういうのに興味ないだろ?」


「私はありませんがご主人様の手柄を誰かに横取りされるのがあまり・・・その・・・」


そっか・・・確かにサラが手柄を立てたのを誰かが横取りしたら面白くないと僕も思うだろう・・・だからサラは・・・・・・この辺に宿屋はないかな?はっきりと言えずにモジモジしているサラを見たらもう・・・ん?


宿屋を探す為に辺りを見回しているとどこからともなく視線を感じた


気配を消しているのかどこから見ているのかは分からないが確かに僕を見つめている


誰だ?まさかアルオン?・・・いや、アルオンなら堂々と姿を現すはず・・・なら一体誰が・・・


「・・・ご主人様?どうされたのですか?」


「・・・いや、宿を探そうと思ってね」


「宿?まだ日は高いですし今から探さずとも・・・それにわざわざこの街で泊まらずともよろしいのでは?」


「恥じらうサラを見てたらつい・・・」


「・・・っ!まさか真昼間から・・・」


「・・・うむ」


「『うむ』じゃないわよ!何を考えて・・・コホン・・・失礼致しましたご主人様・・・せっかくご主人様と王都を散策出来ると思ったのですが・・・残念です」


「うそうそ・・・僕もサラと一緒に王都を見て回りたいと・・・」


「では参りましょうご主人様」


この変わりよう・・・騙されたか


怒ったかと思えばいきなり悲しそうな顔をするから焦って嘘と言ってしまった・・・本当は・・・まっいっか。夜になればどうせ・・・それにサラも一緒に王都を見て回るのを楽しみにしていたのは嘘じゃなさそうだし・・・


そんな会話をしているといつの間にか視線は感じられなくなっていた


誰が何の為に見てたのか定かじゃないけど・・・あまりここに長居するのは危険かもな


ベルのお陰でやっと平和な生活が送れそうなんだ・・・魔族はもうそろそろ出てくるであろう勇者に任せて国同士のしがらみは国のトップ達に任せて僕は気ままに街作りと子作りに励むとしよう


けど本当びっくりしたよな・・・まさかあんな簡単な方法で魔蝕が治療出来るなんて・・・




──────それは4日前の事だ


第三騎士団の駐屯所に行ったその日の夜、ベルから『魔蝕の治療方法が分かりました』と連絡が入った


すぐにエモーンズに戻ると言うので僕とサラは急いで王都の屋敷からエモーンズへと戻った


通信で聞いても良かったけど歴史的快挙を通信で聞くのは気が引けてしまい逸る気持ちを抑えながら今か今かと帰りを待った


そしてとうとうベルが戻って来た


小汚いオッサンを小脇に抱えて


「大変お待たせして申し訳ありませんロウニール様。ベルフェゴール・・・いや、ベル只今戻りました」


屋敷の執務室で迎えるとベルは抱えていたオッサンを壁際に放り投げ膝をつき頭を下げた


「いやもっと時間がかかると思っていた。それで・・・本当なのか?魔蝕の治療方法が見つかったというのは」


あのオッサンは何なのだろうと思いつつも今一番気になる事を尋ねるとベルは顔を上げると僕を見つめコクリと頷いた


「そうか!よくやった!・・・それでその治療方法とは?」


「はい・・・それではまず──────」



そこからベルの長い話が始まった


治療方法を聞いているのに魔蝕となる原因や過程まで細かく説明してくれたのだがぶっちゃけ治療方法が分かれば原因など聞く必要がない


まあけどせっかく調べてくれたのでと耳を傾けた


魔蝕は魔力をマナに変換する核にヒビや傷が入りそこから魔力が溢れ人体に悪影響を及ぼす病気だ


ではなぜヒビや傷が入るのか・・・その答えは魔力をマナに変換する時に起こる負荷によるものだとベルは言う


魔力をマナに変変換する際に負荷が掛かりある一定の負荷が掛かると核が傷付きそこから魔力が溢れる・・・そこまでは何となくだが分かっていた。で、ここからが初耳だった


核は人によって耐久度が違う


例えば核を取り出して同じ高さから落とした場合、片方にはヒビが入っても片方は無傷であったりするらしい。厚さなのか強度なのかは不明だが耐久度に違いがあるのは間違いない


で、耐久度の低い核は魔力をマナに変換する際に発生する負荷に耐え切れなくなるのだとか


実際にベルは核に魔力を注ぎその核が熱を持ったのだと・・・その熱こそが負荷であり魔力を注ぎ続けると熱はどんどんと上がりやがて核は耐え切れなくなりヒビが入る


「・・・お前どうやって人間の核を・・・」


「たまたま歩いていたら襲われまして・・・仕方なく返り討ちにし手に入れました」


「・・・そうか・・・」


むむむ・・・かなりグレーだが・・・襲われたら仕方ない・・・よな?


「んん!魔蝕の原因は分かった・・・で、肝心の治療方法は?」


「人間は核がなくとも生きていけます」


「?・・・いや核がないと魔人になってしまうだろ?死に至る事もあるし・・・」


「魔人になるのも死に至るのも魔力ありきです。逆を言えば魔力がなければ魔人にもならず死にも至りません」


「ま、まあそうだな。で?」


「つまり人間にとって核は必ずしも必要なものではないのです」


「う、うん・・・で?回りくどく言わずに結論から言ってくれ。治療方法は何だ?」


「はっ、治療方法は・・・」


「治療方法は?」


「人間の使う回復魔法です」


「うむ、ご苦労だった死ね」


「お待ち下さい!言葉足らずで申し訳ありません!回復魔法は回復魔法でも個人にかけるものではないのです」


「ん??」


「先程申し上げました通り核は必ずしも必要なものではございません。環境に適応する為に生まれたものです。人間の進化とも言いましょうか・・・本来ならなかったものなのです。そしてなくても存在出来るものなのです・・・魔力がなければ」


「それは分かった・・・で、結局何が言いたいんだ?」


「魔蝕にかかった人間に回復魔法をかけても治らない・・・その理由は人間にとって核は異物だからなのです」


「核が・・・異物?」


「人間には内蔵・・・生きる為の臓器が存在します。血を巡らせる心臓であったり呼吸する為の肺であったりと様々な臓器があるのですが核は違います」


「どう違うんだ?魔力をマナに変換するのは必要な事だろう?心臓や肺と変わらないじゃないか」


「人間という生き物を構成する上で必要な臓器とそうでないもの・・・核は後者にあたるのです。なので人間が魔蝕にかかった人間を治療する目的で回復魔法を施しても核が除外されるのはその為です」


「だったら治しようがないじゃないか・・・結局聖女達が使う『真実の眼』で核の傷の場所を特定して回復魔法を唱えないと・・・」


「いえ個人を治そうとするから核が除外されるのです。ですので全体を回復するような魔法・・・広範囲魔法を使えば核も同時に治療されます」


広範囲魔法と聞いてピンとすぐに来なかったが確かセシーヌが以前使ってたのを思い出した


「オールキュアとか一気にみんなを回復するような魔法の事か?でもそれくらいならこれまで試した事があるんじゃ・・・いや・・・普通にヒールで治せないのに広範囲魔法を使うか?普通は使わないよな?マナの消費は激しいし『真実の眼』を持たない人は広範囲魔法で治ったかどうかも確認出来ないし『真実の眼』を持つ聖女達はそもそもヒールで治せるから広範囲魔法を唱える必要もないし・・・だから思い付きもしなければ試そうともしないかも・・・ケド本当にそれで治るのか?」


「ご心配なく。ワタクシは回復魔法を使えないので協力者にお願いしまして実験済みです。ヒビの入った核を埋め込んだ人間にヒールを唱えさせヒビが治ってないのを確認した後で同じ方法で広範囲魔法を唱えさせるとヒビは見事に消えていました」


「・・・と、とにかくこちらでも確認してから公表しよう。セシーヌに頼めば魔蝕の人に広範囲魔法をかけてもらって実際に治るか見てもらえるはずだ。わざと核を壊したり取り出して確認しなくても・・・」


どうやって発見したか言わないでおいた・・・たとえベルを襲った奴らでもさすがに非人道的過ぎるし・・・そいつらって生きてるのかな・・・聞くのが怖かったから・・・



そして確認してもらう為にセシーヌを訪ねるとちょうど魔蝕にかかった人がいて実際に試してもらった


結果は大成功・・・セシーヌが『真実の眼』でヒビを確認し念の為にセシーヌではない人に広範囲回復魔法のオールキュアをかけてもらい再度『真実の眼』で確認してもらうとヒビはキレイさっぱり無くなっていた



こんな単純な方法で治るなんて驚きだ・・・多分聖女しか治せないという思い込みが色々試すのを邪魔していたのだろう


広範囲回復魔法のオールキュアなら各国に使い手はそれなりにいるはず・・・もしかしたら各国どころか各街にいるかもしれない。わざわざ治療院を作って受け入れずとも治せる・・・治療費も抑えられるだろうし今後魔人化する人や魔蝕で亡くなる人はいなくなるかも・・・いや、いなくなるはずだ


フーリシア王国の王様にはもう既に伝えてある。慎重にならざるを得ない案件の為に公表するのは元聖者であるゼンによる検証が何度か行われた後になると言われた


セシーヌに確認してもらった時はたまたま魔蝕にかかった人がいたけどそう何人も都合よくいるとは限らないのでしばらくかかるかも・・・まっ、その辺は気長に待つしかないな



──────そんなこんなで今は公表待ちの状態・・・そう言えばベルガ連れて来たあのオッサンは一体何者だったのだろうか・・・魔蝕の事が気になって結局聞きそびれてしまった


「ご主人様?」


「ん?ああ、ごめんちょっと考え事していて・・・さてどうしようか・・・少し小腹が空いたから軽く食事でもする?」


「そうですね。実は気になっている店がありまして・・・」


そう言って視線を向けた方向からは甘ったるい匂いが漂ってきた。見ると可愛らしい装飾がされた店があり店の外には客と思わしき女性達が列をなしている


なかなかに入りにくそうな店だけど・・・サラが望むなら・・・


「じゃあ入ってみようか」


「はい!」


店はガラス張りになっており少し見えたけど店内も女性ばかりだった・・・これで僕が入ったらかなり目立つだろうし居心地悪そうだけどあまりどこどこに行きたいとか言わないサラが行きたいと言った店だし嬉しそうにしているし・・・ここは僕が我慢しよう。サラの笑顔が見れるのならこれくらいの我慢なんて安いもんだ



サラが嬉しそうにしている姿を見てこれからこんな穏やかな日が続く・・・そう思っていた


けど現実は・・・





「どうだった?ジーク」


「うーん・・・よく分からないな。けど・・・分からないから逆に怖い」


「もう少し近付きゃ俺の能力で殺れるかも・・・どうする?」


「やめて下さい。もしダメだった場合街の方々を巻き込む事になります。それに本当に彼がリガルデル王国軍10万を1人で相手した人物ならおそらく・・・」


「今の僕じゃ勝てない・・・か。けどあいつが魔族か・・・ましてや魔王かどうかこのままじゃ確認しようがない・・・どうすれば・・・」


「このまま旅に出ましょう」


「え?」


「陛下からは許しを得ています。勇者は旅をし行く先々で仲間を得て問題を解決し最終的に魔王を討ちます・・・なのでそれに倣い旅に出るのです・・・各地にいる仲間を求め困っている人を助け力をつけるのです」


「人にピュアとか言っておいてやっぱりお前もピュアじゃねえかメルヘン女」


「違っ・・・私はあくまでこれまでの勇者の行動を参考にしただけで・・・」


「はいはい・・・『仲間を求め困っている人を助け力をつけるのです』・・・とても具体的で参考になる意見ですこと」


「ぐぬぬっ・・・もう我慢の限界!表に出なさい!」


「いやここ表だろ」


「よせウルティア、エメンケ・・・・・・そうだね・・・確かめる為にも強くならないと・・・ファミリシアで見た魔族にも・・・アイツにも負けないって言えるくらい強く・・・行こうみんな!いずれ戦う事になる魔族達を倒す為に仲間を集め・・・そして僕自身も強くなる為に!──────」

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